仮面ライダー The First~世界平和よりもフェミニズム~

 ヒーローが持つ属性の一つに、コメディリリーフとしての側面がある。あの「宇宙刑事」シリーズに登場したヒーローはすべからくヒロインと共にあったが、エピソード的にヒーローとヒロインが恋仲となっている表現がされているのは、ギャバン隊長とミミーだけではないか。そしてヒーローの資質を隠ぺいするために、わざとコメディリリーフを演じるわけで、この部分が女性を遠ざける結果となる。テレビの前の子供(私)は、ヒーローの隣にいながら彼らの本質に気付かないヒロインを見て、何度「気づいてやれよォ!」と叫んだことか。

 言うまでもないことだが、ヒーローはすべからくフェミニストでもある。女性に優しく紳士的。女性に対して手をあげたり声を荒げたりすることなどほぼない。そうしたフェミニズムが徹底されているのは「平成ライダー」シリーズではないだろうか。彼らが必要以上にイケメンであることを差っ引いても、世の奥様方にアピールしていることは重要な示唆があるといっていい。そうした観点に立脚すれば、今回のお題である「仮面ライダーThe First」は実にフェミニズムにあふれた作品となっている。問題はそのフェミニズムはヒーローの「資質」であって、作品のテーマにはならない。ましてや「世界平和」というお題目にも優先される事項ではないと思うのだが・・・・。

<作品概要など>
 劇場版「仮面ライダーThe First」は2005年11月に劇場公開された作品。基本的には現在の技術で名作「仮面ライダー」をリメイクした作品である。そもそもはオリジナルビデオ作品として企画されたものを、急きょ劇場公開した作品だそうで。過去に存在したOVAにも似たような作品がある。OVAが誕生した20数年前も現在も状況はまったく変わらないんですなあ。

 本作はテレビシリーズ「仮面ライダー」の物語を踏襲している。大学で雪の結晶を研究している本郷猛(演 黄田川将也)はある日突然何者かに誘拐される。誘拐した謎の組織ショッカーは、本郷を改造人間ホッパーに改造する。ホッパーはショッカーの指令に従い次々と悪事に手を染める。スパイダー(演 板尾創路)がショッカーの存在を嗅ぎまわる緑川あすか(演 小嶺麗奈)の恋人である記者の暗殺を行った際、ホッパーは本郷としての記憶を取り戻す。その時にあすかは本郷の顔を見たため、この殺人の犯人を本郷であると勘違いし、以降本郷に付きまとうことになる。そしてこの事件をきっかけに、本郷はショッカーと袂を分かち、ショッカーにつけ狙われるあすかをガードするようになる。
 だが裏切り者である本郷を、ショッカーが放っておくわけがない。ホッパーと同型の改造人間を送り出し、本郷の命もつけ狙う。あすかが出会った自信ありげでキザな青年・一文字隼人(演 高野八盛)は、あすかにほれ込んだ挙句、本郷を始末する報酬としてあすかを要求するホッパーの2号であった。一度は本郷と対決する一文字であるが、彼はリジェクションのためにトドメを刺すには至らない。その上で、あすかを愛してしまった一文字は、ショッカーに誘拐された彼女を助けるために、本郷とともにショッカーへの反撃を企てる。バットや新たな改造人間であるコブラやスネークが待ち受けるショッカーの秘密基地に潜入する。ダブルライダーはショッカーの改造人間たちを倒せるのか、あすかを無事に助け出せるのか?

<ショッカーという組織>
 暗い劇場の中で聞こえてくるあの有名な主題歌がかかれば、鼻の奥がツンとする人もいるだろう。そして大爆発した炎を背景に、愛車サイクロン号で大ジャンプをかますシルエットに、仮面ライダー特有の大きな目が光るのである。まさにつかみはOK的な出だしで見る者の期待感をあおる。だが物語は意外なほどシンプル。そして現れる映像は現在の映像技術を駆使したものになっている。特に目を引くのは仮面ライダーのデザイン。完全に現代風にアレンジされた1号、2号ライダーのそろい踏みは、背筋が震えるほどかっこ良い。変身シーンはあくまで原作漫画に忠実であるため、腕を振り回す変身シーンはなく、腰のベルトの風車が回るタイミングでボディがサイボーク体にチェンジし、仮面をかぶり、あごのパーツを「カチッ」と取り付けるアクションとなっている。これがアクションの流れに乗ると非常にスマートになっており、変身シーンによる戦闘シーンのつなぎの不自然さが解消されるのである(逆に高揚感はほぼない)。
 リファインされたのはライダーだけではない。ライダーの乗るサイクロン号も、ショッカー改造人間もである。大変ユニークなのは、原点である「仮面ライダー」には「コブラ男」しか出ておらず、「スネーク」と「コブラ」に2体のイメージに分離されることだ。この2つについては原作漫画のほうに登場するコブラ男とヘビ姫のアレンジであり、本作の趣向があくまで原作漫画寄りであることをほのめかしている。だがそのデザインは意外にも「コブラ男」よりであり、コブラ男の男女ヴァージョンのような趣になっている。

 本作に登場するショッカーは老紳士、ストリート・ファッションに身を包む若者、そしてチャイナドレスの女性を日本の幹部としている。一見いまどきの組織構成っぽく演出されてはいるのだが、モニターにて指令を下すシーンを見ている限り、まったく威厳が感じられず、ただ軽薄さを感じてしまう。前線での判断を現場指揮官である改造人間に任せているぶんには、確かに不気味ではあるのだが、直接指示を出さないというチキンぶりには、下位の改造人間から謀反を起こされてしまう心配がある。いくら口で「鉄の掟」などともらしてみても、徹底しなさそうである。組織としての組織力はまったく感じられない、まさに烏合の衆といった感じなのである。また要人暗殺はまだしも、技術情報の強奪に関して言えば、あまり恐怖を感じる設定ではない。序盤に悪役として活躍する仮面ライダー=ホッパーという見せどころではあるのだが、スタイリッシュではあってもショッカーという組織の怖さには程遠い。少なくても本作でショッカーが行った作戦は、かなり行きあたりばったりに近い、適当な作戦である印象がある。そのためショッカーの怖さをあまり感じられないのが残念であった。

<戦う動機、息切れ、めまい・・・>
 一方の仮面ライダーであるが、ショッカーの存在感の問題に呼応するかのように問題が多い。敵であるショッカーがスケールダウンも甚だしいので、仮面ライダーで魅せるべきところであるのだが、こちらも大いに問題がある。
 デザイン、アクションなど、見ごたえのある映像については前述の通りであるが、その一方で本郷や一文字の行動動機が、たった一人の女性「緑川あすか」を根源にしていることである。これには本当に恐れ入った。性格的にかわいげのかけらもない女性の命は、ショッカーの世界支配の危機に比べても圧倒的に重いと断じている物語なのである。確かに物語のレベルで申し上げるのなら、人一人の命と世界人口レベルの命の重さは等価であると主張することもできよう。だが本作の目的はそんな生っちょろいお題目ですらなく、ただの男の本能に根ざしたスケベ根性でしかない。ここにはもはや漫画「仮面ライダーSPIRITS」にある、熱き男たちの命をかけた戦いの歴史は皆無である。その上で物語をみているぶんには、愛した女性を助けることと、ショッカーの野望をくじくことのすり替え作業すら行っていない。以前から本ブログでも何度か申し上げているように、最初は知人縁者を殺された恨みから発した戦いが、いつのまにか人類愛や世界平和への願いに置き換わっていく過程こそ、ヒーローもしくは「仮面ライダー」のアイデンティティだと思っている。だがここには女性とのSEXは世界平和にも勝り、なおかつその女性とのSEXさえあれば、他人がどうなろうと知ったこっちゃないという理論が、物語の根底に横たわっているのである。

 この脚本を執筆した井上俊樹氏は、本ブログではどうにも分が悪い方であるのだが、氏の偉大な業績の一つである「鳥人戦隊ジェットマン」のテーマとまったく同じにおいがするのである。だがはっきりと申し述べるが、仮面ライダーというモチーフには、あまりそぐわないテーマではなかったろうかと愚考する。
本作のプロデューサー白倉紳一郎氏は、インタビューに答えて「仮面ライダーで冬ソナをやる」と述べたそうであるが、その発言がこの脚本を前提にしたものか、あるいは企画としてこうしたものをやることが決まっていたことをほのめかしているのかははっきりしない。だがなぜして今更ヒーローの色恋をクローズアップした上で、大そうな技術でスケールダウンした物語を見なければならないのだろうか。
その最大の理由を求めるならば、やはりターゲットとして狙った観客を、子供よりも日頃特撮番組に慣れ親しんだお母さんに絞ったことがあげられるような気がする。本作が「冬ソナ」を目指したのであれば、そのターゲットが暇を持て余した奥様がただからだ。たしかにイケメン二人をそろえ、ショッカーの改造人間側にも板尾創路氏などの知名度のある役者をそろえ、なおかつラブロマンスに徹した物語で、設定すらないがしろにするのである。細かい設定などよりもロマンス部分を重要視していることは一目瞭然である。ということは、本作は仮面ライダーという枠組みで「昼ドラ」を作り、奥様方にお金を落としてもらおうと思って作られた作品といえる。だがしかし、監督はあくまで子供向け特撮作品を監督している人間である。「冬ソナ」作れと言われても、そう簡単にはいかないだろう。そうしたはっきりとわかる齟齬が、この作品には多すぎるのである。そうした作品の齟齬の回収を、観客に依頼するような作りが、本作をして中途半端な作りになっている最大の理由ではないだろうか。

だが本作は2作目が作られ、リニューアルされた仮面ライダーV3が見られるという僥倖に恵まれた。2作目は和製ホラーを下敷きにしたことで、Jホラーのブームにいまさら乗っかろうとした作品と言える。だがそれはショッカーとその背景としての人間社会の闇の部分の恐怖を描くことにより、ショッカーの恐怖が再構築される結果となる。一方でやはり仮面ライダーの活躍が付け足しっぽくなってはいるが、妹を殺された「復讐鬼」としてのV3の姿は、きちんと「ライダー」していて好感が持てる作品となった。現時点では3作目の制作の声は聞かれないのが残念だが、こうした2作目という思わぬ拾いものが生まれる土壌は、すべて本作にあったのである。決してあなどることなかれ。そして本作の是非は、あくまで本作をその目でご覧いただいたあなたにゆだねたいと思う。

仮面ライダー THE FIRST [DVD]仮面ライダー THE FIRST [DVD]
(2006/04/21)
特撮(映像)長石多可男

商品詳細を見る

仮面ライダー THE NEXT [DVD]仮面ライダー THE NEXT [DVD]
(2008/04/21)
高野八誠益子梨恵

商品詳細を見る

いずれちゃんと取り上げようと思ってます。
スポンサーサイト

テーマ : 特撮
ジャンル : サブカル

コメント

非公開コメント

以上、ヒーローに対する手前勝手な固定概念が頭から離れないバカの戯言でした

No title

ライダー100号さま

 「手前勝手な」「バカの戯言」なのは、百も承知ですよ(笑)
 所詮は個人ブログですから、あたりまえじゃないですか。
 
 それがわかっててこうしたコメントいただいたぐらいですから、本記事がお気に召さなかったようですね。ご気分を害したようで、大変申し訳ありません。ですが可能ならば、今後別の記事でライダー100号さんのお気に召すような記事が書けたら幸いです。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
namima2のつぶやき
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
リンク(リンクフリーです)
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
FC2 Blog Ranking
フリーエリア
blogram投票ボタン
ブロとも一覧

あにめにゅ~す の あににゅ

分水嶺☆大分のお土産といえば『ざびえる』

素足のアイドル達

有名人の珍言・名言集

宮廷アリス

TOY BOX
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

[FC2 Analyzer] http://analyzer.fc2.com/ -->