時をかけても・・・~時空戦士スピルバン~

「時空戦士スピルバン」は、1986年に放送された作品であり、「宇宙刑事ギャバン」から数えて5作品目にあたる、いわゆるメタルヒーローシリーズの1作である。視聴率不振にあえいだ前作「巨獣特捜ジャスピオン」の反省を踏まえ、さまざまなてこ入れを行い、新機軸を盛り込んで挑んだ作品であった。

 例えば、本作の主人公のスピルバンには、「宇宙刑事シャリバン」で主役を演じた渡洋史を配した。またギャバン以来の伝統である女性の相棒も、本作では「ダイアナレディ」に変身する。敵対するワーラー帝国を含めて、キャラクターデザインを、雨宮慶太率いるクラウドが担当し、統一感のあるデザインで見るものを魅了する。またヘルバイラという名の少女仮面戦士を配置し、スピルバンと熾烈な戦いを繰り広げる。そのヘルバイラの素体であるヘレンは、スピルバンの実姉であるが、実の父により、ワーラー帝国にとらわれの身である、悲劇のヒロインである。彼女の役を、「宇宙刑事シャイダー」で素晴らしいアクションを見せた森永奈緒美がキャスティングされている。また敵のワーラー帝国の女王パンドラ役には、故・曽我町子と、キャスティングやデザインワークスの面では、これ以上ないほどの豪華さだ。
 
 物語はワーラー帝国がスピルバン達の故郷であるクリン星を滅ぼしたところからスタートする。生き残ったクリン星の人々は、わずかな食料にあえぎ、スピルバンとダイアナの二人の子供に、クリン星の将来を託して、死んでいく。やがて大人に成長したスピルバン達は、きれいな真水をもとめて宇宙をさまようワーラー帝国を追いかけ、地球に到着する。この地球にて、スピルバンの復讐の戦いが始まる、というのが骨子である。

 ワーラー帝国には、改造されて帝国に寝返ったスピルバンの父が、ドクターバイオとしてパンドラにつかえていた。それは帝国にとらわれていた娘・ヘレンの身を案じてのことであった。そのドクターバイオも、ヘレンをヘルバイラに改造し、スピルバン抹殺の尖兵としてしまう。幾度となく激しい戦いを繰り広げるスピルバンとヘルバイラ。ヘルバイラの変身継続時間により、とどめを刺すまではいかないものの、劣勢を強いられるスピルバンであった。ところがこの状況に業を煮やしたパンドラの命令で、ドクターバイオは、スピルバンと戦う羽目になる。その戦いを止めに入り、ヘルバイラとドクターバイオが、父と姉であることを知り、スピルバンは激しく動揺する。しかし帝国を打倒することが父と姉を助ける唯一の方法であると信じ、戦い抜くことを誓うスピルバンとダイアナであった、というのが中盤の盛り上がりの話だ。さらにその後の話でヘレンが帝国を脱走し、ヘレンレディとして戦うことになり、帝国とのバトルは激しさを増していく。

 さて、ここまで書くと、結構面白そうに見えるものである。確かにヘレンとスピルバンのすれ違いなど、やきもきするようなドラマティックな展開も含まれてはいるものの、全体的には、こどもを中心として、各回1つの事件を解決していく構成となっており、連続ストーリーに偏った構成ではない。逆に言えば、連続ストーリーにこだわった構成のほうが、すれっからしの特撮ファンには、好評を博したかもしれないが、現実にはそうはなっていない。

 ところが本作の最終回には、実にトンデモなことがおこるのである。いや実にトンデモだから、知らない人は心して読んで欲しいし、知っている人はだまっておつきあい下さい。

 最終回の前話で、スピルバン達の基地兼住居である戦闘空母グランナスカは、敵の破壊工作のため、エネルギーが底を尽き、稼働不能状態になってしまう。残るは一部のマシンと、自分たちのハイテク・クリスタルスーツだけだ。これで最後だとばかり、ワーラー帝国の移動要塞に突入するところから、最終回が始まることになる。
 雑兵を倒しながらパンドラのもとに近づいていくスピルバン達。そのころ眠らされていたドクターバイオは、何の因果か急に元の姿に戻り、スピルバン達の父・ベンとして覚醒する。その上、これまで自分が行ってきた恐ろしい実験の数々や、スピルバンとの戦いの記憶を持っていたため、激しく我が身を恨む。そこで自らが研究した劇薬をもって、帝国の守護神ワーラーの正体であるパンドラを倒そうとする。そのころスピルバン達は、戦闘機械人と戦闘生命体に分離したパンドラと戦っていたが、その強力さに劣勢を強いられていた。やがて再度1つとなるパンドラは、ベンに劇薬を注射され、その苦しさにもだえる。いきおい放り投げられたベンは絶命する。父の死を看取ったスピルバンは、「俺に怒りは今、爆発!」とばかりに、パンドラを必殺のアーク・インパルスにて倒すことに成功する。その時、同時にワーラーの要塞も爆発し、スピルバン達は白い光に包まれる・・・・。
 と、スピルバン達は砂漠のなかで倒れていた。近くにはひっくり返ったワーラーの要塞がある。スピルバンは帝国を確かに倒したはずだ。しかしここはどこだ? 遠くにかすんで見える人影、それは在りし日のスピルバンとヘレンの両親、そしてダイアナの母の姿であった。彼らは生まれた故郷に帰ってきたのだ。そして明らかになる驚愕の事実、クリン星は未来の地球であること、ワーラー要塞には、時空を超える装置が搭載され、最後の爆発でそれが作動したのだ。過去の地球で戦っていたワーラーは滅びたので、スピルバン達はこれからは父母達と幸せに暮らすことが出来ることがわかったのだ。
 ああめでたし、めでたし・・・・って、ちょっと待てィ!

 文章の前半で示したとおり、本作は様々な新機軸を盛り込んだ意欲作である。しかしながら現在までの本作の評価は、ご覧の通りの最終回のトンデモぶりから、その扱いの低さは異常なほどである。季刊誌「東映ヒーローMAX」で、DVD発売を機に、特集記事が組まれたこともあったが、この最終回についての解説は、非常に気を遣って書かれていた記憶がある。どれだけ前半で取り繕うとも、この最終回だけは納得できかねる、当時から現在にいたるまでも、この作品はそういう扱いをされていたのである。

 正直言って私自身も視聴当時はそう思っていたし、その考えは変わらない。ただ、「時空戦士」というタイトルに込められた制作者側の考えは、この作品のタイトルを「時空戦士」と決めた時点で、いずれは時間を超えることを念頭においていたのではなかろうか?

 スピルバンの新機軸の1つとして、宇宙刑事シリーズに見られた特殊な戦闘空間(魔空空間や不思議時空など)の変わりに、スピルバンが戦闘時に、周囲への破壊の配慮のため、別の場所に移動する「バイパス・スリップ」という能力がある。これにより毎回戦闘空間を移動させていたので、「時空戦士」とは、この能力を持って呼称しているのだろうと、考えていた。
 宇宙刑事シリーズは、細々と戦隊シリーズで食いつないでいた東映に、光をもたらした新シリーズであった。視聴率も上がり、おもちゃの売り上げも好調であっただろうから、3作品も続けたし、こける訳にはいかなかった。だからシャイダーで終了させたあとも、メタルヒーローシリーズとして継続したわけだ。
 このとき、宇宙刑事シリーズはまさに地球を舞台としながら、「銀河連邦警察」という凡宇宙的な広がりの魅力的な設定を有している。この宇宙的な広がりに、次作「ジャスピオン」では「巨獣」と登場させ、ウルトラマンのような巨大怪獣特撮をしてみせた。これはさらに「巨獣」というベクトルで言えば縦方向のベクトルが付加されたことになる。
 宇宙刑事で平面方向の広がりを見せ、ジャスピオンで縦軸方向の広がりを見せたわけだ。そうなれば次は三次元を超えた広がりを見せるしかない。その結果、本作のスタッフが、時間を超える手法を選択したであろうことは、想像に難くない(想像だよ) 。

 本作の脚本を担当したのは、上原正三氏である。本作に関しては、最終回の重要な説明部分を、ナレーションでまとめてしまったことなど、放映当時からとかく上原氏を糾弾する物言いがあったが、それは間違いだ。それは彼が物にしてきた作品を顧みればわかるはずだ。「ゴレンジャー」「ロボコン」「レッドビッキーズ」「宇宙刑事シリーズ」などなど。それらはすべて、メインターゲットである子供達の期待を裏切らない作風だったではないか。その作風が時代にマッチしなくなった可能性はあるかもしれない。だからといって本作に限っては、そうは思えない。むしろスタッフの苦渋の選択が、上原氏に対する要請として。そうさせたのだと思う(想像だけどね)。

 アニメーションも特撮作品も、個人でできる作業ではない、さまざまなパートを、様々な職人が、ここの責任において仕事をするわけだから、個人の力量だけではなんともしがたい場面もあるだろう。たぶんに誰かがどこかで「それはやめとけ」と止める事もあるだろうが、スケジュールや予算の都合だってある。どうしても仕方のない事ってのは、どうしても世の中から無くなりはしないのだ。
 でもその苦渋の選択の中から光が見える事もある。それを待つのは忍びないのだが、そうした可能性を秘めているから、たくさんの人が汗水たらしてがんばっているから、ぼくらはこれらの作品を楽しめるんだと思うことにするし、目を細めて見なかったことにもするんだ。

 だからって、許せる範囲ってものがあるけどな(笑)。
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ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

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No title

こちらとしては女王パンドラが嫌いな訳ではないのですが、最終回の結末以上に表向きのボスと最後の大ボスが同一の存在という意外性もへったくれもない脚本がよく採用されたよなと感じます。

No title

なお様

 コメントありがとうござます。
 これはあくまで憶測ですけどね・・・・。
 本文でも触れましたが、最終回の最大に見所は、時間を超えて過去のクリン星に戻ることに主眼をおいていたので、ご指摘の女王パンドラの部分には目をつぶったのではと・・・

No title

あの、ヘレンはお姉さんの名前で相棒は「ダイアナレディ」ですよ。

No title

なお様

 ご指摘ありがとうございました。修正いたしました。毎度申し訳ありません。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
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後期必殺を好み、
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