コードギアス 反逆のルルーシュ~STAGE22「血染めのユフィ」~

<物語>
 ユフィの発案した行政特区「日本」は、内外に大きな波紋をもたらす。キョウトにとっても黒の騎士団にとっても、またブリタニアにとっても、この行政特区は自分の立ち位置を見直す結果となるが、同時に賛同しないものを否定してしまうことになる。それは世論を真っ向から無視する政治方針となるため、結局はユフィの思惑に乗らざるを得ない。そして正式な発足に際して、多くの人間たちが富士山周辺に集うころ、式典の場に来ないと思われたゼロはガウェインに乗って会場に到着する。そしてゼロはユフィとの二人だけの会談を申し込む。
 ルルーシュはユフィにギアスを使い、ゼロ暗殺の汚名をユフィに着せて、その上で、行政特区日本を掌握する計画であった。だがその時スザクに接触したC.C.をキーにしてギアスが暴走を始める。ルルーシュはユフィにギアスをかけようとしたが、ユフィは皇位継承権を返上したことをルルーシュに告げる。ユフィはナナリーのために継承権を破棄したのである。その人となりに、ルルーシュはユフィと手を結ぶ。だが暴走したギアスは、ささいなルルーシュの言葉を実行する。「日本人を殺せ」。そして式典会場はユフィの放った一発の銃声を合図に血に染まる。騎士団はゼロの命令により、ブリタニア軍と全面衝突に入る。

<わずかばかりの幸せの時、騎士団の苦悩>
・今回はアバンのナレーションがなく、いきなり暗い部屋で話し込んでいる貴族たちの姿から始まる。彼らはクロヴィス政権下でキョウトと癒着していた文官たち。自分たちの権益をさも当然だと思っている人たちである。すぐにダールトンに逮捕されてしまうのだが、「行政特区日本」の波紋は、こうした裏で暗躍する人々まで浮足立たせてしまうのである。

・バトレーのクロヴィスへの義理堅さも際立っているが、それらを見逃してきたクロヴィスにこそ問題があるのではないか。だがこうした人々の権益がそこそこ守られていて、金銭が集まるべくして集まっている状態は、平穏だともいえる。そうでなければ金にうつつを抜かしてなどいられないだろうから。

・特区日本への申請が20万人を越えたというスザクの話。日本の現在の人口は1億3千万人ほど。ブリタニアの侵攻で多くの死傷者が出たとしても、24時間で勝敗が決した戦いに数10万単位での死傷者が出たとは思えない。特区に申請してきた日本人の多くはブリタニアに住家を追われた都市部の人間だろう。現在(2010年8月)の時点での東京都の人口が約1,300万人であるから、20万人とは少なすぎる。

・ささやかなユフィとスザクの時間が流れる。会話から二人の仲が少しだけ進んだことを思わせる。

・古いKMFガニメデのとなりで一人座り込んでいるニーナ。明滅している明りは、どうやらロイドからもらったサクラダイト炉心らしい。街頭モニターのユフィをにらみつけるルルーシュ。そのゆがみかたは尋常ではない。

・特区日本が日本を揺るがす。シュナイゼルとコーネリア、キョウトの老人たち、そして黒の騎士団。統治者としての矜持、老獪さだけの老人たち、それぞれの思惑がぶつかる騎士団内。それぞれがそれぞれの胸に秘めた思いを、特区日本にぶつけている。これは問いかけなのだ。あなたが大国の支配に軋轢を感じ、窮屈な思いをしている時、すべてに平等をうたう特別区域ができたとき、どうするかという問いかけ。そして組織などに縛られない個人となったとき、あなたはどう判断するのか?

・ヴィレッタのことがあるから、めずらしく扇が語気を強めている。そりゃそうだろう、ベッドぎわのあのなまめかしい肢体をみたら、誰だって(以下略)。

・日本人の子供を痛めつけるブリタニアの貴族。ルルーシュの怒りの本質はわかる。それは自分が努力もせず有している既得権にすがって、他人の上に立っていることを当たり前に感じている貴族という生き物に辟易しているからだ。「銀河英雄伝説」のラインハルトも同じ考えに沿って立っている。ことさらギアスを使ってみせたのは、あの貴族に行使できる力をはく奪されたことを考えて見ろという、ルルーシュの皮肉である。ルルーシュは上からしかものが見えないユフィの博愛とは、たんなる思い上がりだと断じている。

・ダールトンと桐原の密約のシーン。同じ場所に会って会話しているが、これはどう見てもダールトンは桐原を恫喝している。しかも桐原老は既得権と自己保身を、黒の騎士団との天秤にかけている。だが特区日本構想の中では、桐原が生きる道は、騎士団を切り捨てるしかない。ここに騎士団がルルーシュの指示で流した「偽のファイル」が物を言う。桐原は場合によってはゼロの正体まで、交渉の道具にする人物だろう。桐原をして、何がそこまで自己保身に走らせるのか。自分さえ生きていれば日本は長らえるとでも思っているのか。傲慢にもほどがある。

<「行政特区日本」の姿>
・さてここで「行政特区日本」について、少し考えてみたい。はたしてユフィが言うほど「行政特区日本」はパラダイスだろうか。特区=特別行政区の略称であり、宗主国より大幅な自治権を与えられた領土のことであり、過去には香港やマカオなどがこれに相当する。行政特区とはいわば特別に許された形骸化された「国」である。

・この物語において「行政特区日本」がどれほどなのか。それは駐在ブリタニアにしてみれば、テロは減るし、人心は安定化する。相手を国と認めるならば、物資の出入りはすなわち貿易である。またなにごとかの交渉はすべて行政特区の代表を通じて行うことになる。どこまでも「国」なのだ。

・問題はそれを日本人が勝ち取ったものではなく、宗主国であるブリタニアにお膳立てされたものであることだ。つまりこの恩義に報いるため、行政特区日本の人間は、どうあがいてもブリタニアに膝を屈するしかない。いわば昔の「通商条約」、つまり不平等条約にサインするようなものである。たとえ口で平等や自由を唱えたとしても、それはブリタニアに認められた権益の上で成立する平等や自由なのである。はたしてそれは真に平等や自由といえるのだろうか。「行政特区日本」の道は、結局1970年代の闘争を繰り返した日本を再現するだけではないのか? この闘争が「行政特区」を二分する争いになれば、またぞろブリタニアが首を突っ込んで、「行政特区」の志は踏み荒らされてしまう結果になる。長い目で見ればこの「特区構想」とは、ブリタニアの支配から逃れられない日本という構造を露呈する仕組みになっている。それはアメリカの属国扱いである現在の日本と、まったく変わらない。

・だがこうした上の者からの助け船に乗らないことは、ブリタニアからの譲歩を払いのける形となる。これに反対するものは行政特区の敵となる。劇中の騎士団やキョウトの老人たちの悩みの種は、ここにある。そしてまたそれが人の優しさから発生しているから、なおややこしい。

<ユフィとゼロの会談>
・全世界中継でこれを見ているEU諸国と中華連邦の首脳陣。そしていつもの夕景の空間で立ち尽くすシャルル皇帝。EUも中華連邦もゼロが登場しないと思っている。そしてそれは解りやすいプロファイリングの結果でしかない。同時にこのシーンはEUや中華連邦が、ゼロをはじめ騎士団に接触しようと狙っていることを暗示している。表立っての接触はまだないが、ブリタニアの勢力を掣肘したいと考えている国々にとっては、表立ってブリタニアの敵に回る騎士団とゼロを懐柔し、自分たちの手駒としてブリタニアの力を削ぎたいと思っているからだ。ではルルーシュの心理をシャルルは知っているのだろうか?

・そしてユフィが宣言を行おうと立ち上がると同時に、ガウェインに乗ってゼロが到着する。そしてユフィとの二人だけの会見が始まる。ゼロの真意は、騎士団の思惑どおりなのか? 玉城くんも少しは考えてみるといいのだが、無理か。

・そして本性を現すルルーシュ。その策略はギアスを使ってニードルガンでユフィにゼロを討たせることである。この策が成功すれば、ユフィおよびブリタニアは一気に世界的な信用を失墜させ、日本人にとっても仇敵となることで、騎士団は唯一絶対の信頼を勝ち取れることになる。騎士団が考えるような、ゼロによるユフィの暗殺ではこうはいかない。ルルーシュは自分を傷つけても、ユフィをはじめとするブリタニアの権威を失墜させようとしたのである。だが・・・・。

・ガウェイン内部のC.C.の存在に、なぜかスザクが反応する。これはルルーシュがギアスを受け入れたときとまったく同じ情景である。これはC.C.がギアス適格者の反応だとすれば、これはスザクがギアス能力を持つにふさわしいという証である。だがC.C.は冷静に、神根島と間接接触による影響であることを悟る。

・ルルーシュの左目に異変が! 続いてC.C.にも。それを助けようとしたスザクは、まるでルルーシュがギアスを受け取った時のような映像をトレースしながら倒れこむ。スザクがギアスに関して興味を持ったのは、この時をきっかけにしているのだろう。後々ルルーシュと対峙する際に、彼の能力を知るスザクであるのだから。

・かたくななルルーシュの心を砕いたのは、ユフィの皇位継承権の返上という事実であった。ルルーシュは個人および黒の騎士団としてブリタニアに戦いを挑むにあたり、皇族による権力の掌握というブリタニア帝国の国是の部分については、一度も否定していない。驚くべきことであるが、貴族の既得権による世襲の問題点についてあまり触れていない。それは自分自身すら忘れられた皇位継承者であるという思いがそこにあったからではないのだろうか。ユフィが皇位継承権をなげうってまで設立させた「行政特区日本」は、世襲や貴族制度に縛られていたルルーシュの心を、あからさまに打ちのめしたのである。本作の最大の疑問点だ。ブリタニアを批判するルルーシュにとって、貴族制度や皇位継承問題は、意外なほど精神的支柱であったことになる。つまりルルーシュは、いざとなれば元・皇位継承者という権力にすがろうとしていたのである。ここに本作の貴種流離譚の部分は後退し、ピカレスク・ロマンのみが突出する結果となる。

・そして訪れるささやかな時間。ルルーシュはきっとこのわずかでささやかな時間を、一生忘れないだろう。稚気にすら感じるユフィの物言いが、頭でっかちのテロリストを一蹴するのである。武力などではどうしようもない敵。ゼロにとって武力などなんら問題はない。むしろ無垢の善意こそ、至上の敵だったのである。だがその時間もいきなり終幕のンベルを鳴らす。ここからは悲しい惨劇でしかない。

<破滅する特区、狂乱の富士>
・ユフィの物言いがただひたすら恐ろしい。この無邪気なほどの願いが、日本人に死を与えるものだなんて。声優・南央美の迫真の演技である。「じゃあ兵士の方々、皆殺しにしてください。虐殺です。」本当に恐ろしい脚本である。しかもユフィ自らが銃を持って撃っている。何度見ても自分の目が信じられないほどの衝撃が走る映像である。

・あらゆる状況を想定し、ディートハルトは準備していた。テレビ局にハッキングをかけて情報を寸断させたのも彼なら、現場の状況をネットを使って発信したのも彼である。テレビによる情報を止められた人々が、ネットの世界に情報を求める。その効果を知っている者だけが取りえる情報戦である。

・ガウェインに戻ったルルーシュは、すでにギアスの力を受け入れたことを後悔している。だがあの夕焼けの空間で独り高笑いをするのはシャルルである。まるですべてを見越したように。

・結局自己保身に走るキョウトの老人たち。年端もいかぬ少女に気おされても、今は逃げの一手である。大物ぶりも後ろ盾があってできること。彼らにこの先はない。

・この状況に最大限付け込もうとするルルーシュ。考えてみると、ゼロのしてきたことの多くは、ドサクサで介入して状況を利用することである。自らお膳立てを整えるためには、時間が必要であるが、その時間をゼロには与えられていないことが、最大の原因だとも言える。だがルルが介入したところで、今回の騒ぎは拡大する一方である。まるで悲しみだけが拡散するように・・・。


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コメント

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No title

夕希さま
 毎度コメントありがとうございます。楽しんでいただけているようで、うれしい限りです。
 最初は改ざんされたイギリスおよびアメリカ史ぐらいに考えていたんですが、資料をひっくり返すといやになるほど年表が・・・・w この年表が案外面白いです。わりとアメリカ風刺が強いとは思います。監督や脚本家は、なにかこう「立憲君主制」に重きを置いている感じがします。現在の民主政治に限界を感じているのかもしれませんけどね。物事には様々な面があるので、できるだけ取り上げるようにはしています。こういう架空の中に現実の単語が出てくると、微妙に面白いんですよね。
 ルルーシュの自己顕示欲については納得です。やっぱりそうなのか、という感じ。しかも建国後のルルーシュにもつながる理由も、そのあたりなんですかね。
 いましがた「アマガミSS」を見てましたら、今の主人公・七咲はゆかなさんじゃないですか。なんだかむずがゆいですw
 次のコメント欄に続きます!

No title

夕希さま
 ええーっ! スザクってそういう一族だったんだ!
 ってことはですよ、ファンには申し訳ないけど、ルルとスザクじゃなくても、これらの一族の末裔がでてくれば、いくらでも「コードギアス」の話ができそうですよね。以前考察したんですが、「コードギアス」の物語は、「C.C.」がいればいくらでも物語がつむげると思っていたんです。そうか、「王の一族」と「守護者の一族」か。コンビを組めば最強だけど、敵に回れば対消滅ですね。
 参考図書ですが、いろいろ出回ってるギアス関連図書の中で、吟味に吟味を重ねて買いました。際限なく買うことも考えたのですが、資料性とヴィジュアル面を考慮してこの2点。ロマンアルバムもいいのですが、「電撃データコレクション」は圧倒的な文章量がありまして、このシリーズを読みなれているだけに、こちらをよく参考にしております。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
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スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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