「仮面ライダーW」~その1・風都という箱庭の探偵物語~

 最近、立て続けに「電王」と「キバ」を見直している。また現在放送中の「000(オーズ)」を見ていると、「平成仮面ライダーシリーズ」の面白さを実感する。たとえどれだけ突飛な発想や設定でも、きちんと「人間ドラマ」として展開し、「仮面ライダー」という枠組みの中に着地させる作劇には、本当に頭が下がる思いだ。
 さて、今回はこの9月にテレビ放映が終了した「仮面ライダーW」を取り上げて、その面白さの理由を少しだけ掘り下げてみたいと思う。「仮面ライダーディケイド」という10周年の節目を越えて制作された「W」とはどんな物語であったのか。そこに秘められたテーマに触れることで、私が感じた面白さの理由に迫ってみようと思う。

<概要と物語>
 「仮面ライダーW」は2009年9月から2010年8月末まで放送された平成仮面ライダーシリーズの第11作目にあたる。前作「ディケイド」が半年の役割を終えたことにより、2009年からライダーシリーズは秋スタートとなることで、番組編成が変更になった。これは東映のスタッフ側の問題で、毎年「戦隊」と一緒のスタートすることにより、撮影所の混乱を最小限にする効果があるらしく、大泉撮影所の所長である白倉プロデューサーの意向により実現した話だそうだ。そしてこの編成は、夏の劇場版にも影響を及ぼす。「仮面ライダーW」では現在まで3本の劇場用作品に登場している。1作目は「ディケイド」の夏の劇場作品に、チョイ役で出演、2作目は「ビギンズナイト」として翔太郎とフィリップの出会いを克明に描く物語、そして3作目は風都を脅かしたT2ガイアメモリ事件の顛末を描いた「A to Z運命のガイアメモリ」の3作品です。実はこの12月に公開される映画でも、「ビギンズナイト」に登場した翔太郎のおやっさんこと鳴海壮吉が変身する「仮面ライダースカル」のスピンオフ映画もあり、「W」の活躍はまだまだ楽しめそうだ。

 物語はある組織「ミュージアム」から翔太郎が6本のガイアメモリとWドライバー、そして特別な力を持った少年・フィリップを奪ったところからスタートする。彼らは風都を舞台に活躍する二人で一人の「仮面ライダーW」となり、日頃は所長である鳴海亜樹子とともに探偵稼業を行いながら、捜査の過程で現れるドーパントと戦い、風都の平和を守るのだ。フィリップの特殊な能力とは「地球の本棚」であらゆることを検索すること。あるキーワードをもとに検索し、地球上のありとあらゆることが記録されている「地球の本棚」にあアクセスに、事件解決の糸口をつかんで、翔太郎の捜査に協力する。
 ある日風都警察署に着任した刑事は、亜樹子の幼馴染の照井竜。彼はドーパントに家族を殺されており、その復讐のために、仮面ライダーアクセルに変身し、ドーパントと戦う。最初はいがみ合う照井と翔太郎。だが風都という街を心から愛し、そこに住む人の平和を願う翔太郎とフィリップの戦いを目の当たりにし、やがて共闘するようになる。
 その一方で、園咲家の家族がばらまくガイアメモリにより、ドーパントによる犯罪は後を絶たない。しかもナスカドーパントやウェザードーパントなどの強力なドーパントとの戦いで、傷つき倒れる若きライダーたち。だがそこに現れる不思議な女性・シュラウドにより、幾度となくピンチを乗り越えるライダーたちに敵はない。そして園咲を操っていた謎の組織・財団Xからの刺客を倒した翔太郎は、かけがえのない相棒であるフィリップを失ってしまうが・・・・。

<「風都」という箱庭>
 ・・・まあ、フィリップ戻ってくるんですけどね!
 本作の仮面ライダーWの特徴といえば、「半分こ」。左右対称の形状でありながら、その色は左右非対称。そして翔太郎の左側の能力に、フィリップの右側の能力を上乗せすることができる。左右3本ずつ、計6本のメモリは順列組み合わせで9通りのフォームで戦うライダーだ。さらにフィリップを守るために現れたファングメモリによるファングジョーカー、そしてエクストリームメモリによる最終形態「サイクロンジョーカーエクストリーム」で、なみいるドーパントを蹴散らす。

 物語の特徴としては「風都」という街における「探偵物語」だということだ。まずは「風都」という世界設定について考えてみよう。本作では仮面ライダーが活躍するエリアを「風都」という架空の町に限定しているということだ。
 思い出してほしいのであるが、かつての仮面ライダーシリーズで、これほど活躍の場を限定している作品があっただろうか? もう少し突っ込んでみると、これまでの特撮作品でも、こんなにまで限定している作品は少ない。「機動刑事ジバン」のセントラルシティとか「冒険ロックバット」のどうぶつ国ぐらいだろうか。
 そもそも昭和の「仮面ライダー」は世界平和をうたって戦っている。けれど事件が起きるのは主人公である仮面ライダーの周辺だ。たとえ敵組織の作戦が仮面ライダーと関係ないものだとしても、ライダーはそれを嗅ぎつける。どういうわけか、彼らに情報を持ちこむ人がいたり、FBIや少年ライダー隊などの諜報組織がライダーたちの戦いをバックアップするからだ。一方でライダーを直接倒そうとする作戦の場合には、否が応でもライダーの身の回りで事件が発生することになる。昭和のライダーにとって世界平和をうたいながら、その実体は意外にもライダー自身を中心とする限られた範囲内での出来事だということだ(だからこそ最終回で海外に旅立つという展開が、涙を誘うのであるが)。

 一方の「W」の世界である「風都」という街の設定は、上記の昭和のライダーの世界観をより具体的に形にしたものといえる。また主人公の一人である翔太郎がこよなく愛する街という設定の風都は、翔太郎の「郷土愛」を説明する説得力にあふれている。「世界平和」といっても、見ず知らずの土地の住む人々を容易に愛せるわけがない。翔太郎が風都を愛する理由ではなく、具体的に翔太郎が愛する人々や街並みを見せることにより、限定的ではあっても翔太郎の正義の正体をはっきりとさらしているのだ。
 実はこの世界設定、前作「ディケイド」の世界設定に通じている考え方だ。つまりクウガからキバまでの9つの世界を示す9つの地球の姿は、まさしく区切られた「風都」という箱庭的な世界を示すことであり、一見特殊な世界設定に見えながら、「ディケイド」の設定が生み出した「9つの世界」と双生児となる設定だったのだ。そしてそれは容易に「ディケイド」の世界で11個目の世界となる可能性を秘めているといっていい。

<ディテクティブ・ストーリーとしての「W」>
 「風都」という世界観がもう一つ機能している理由として、本作が「ディテクティブ・ストーリー」であることがあげられる。本作がモチーフとしてレイモンド・チャンドラーの探偵小説が選ばれており、相棒の名前に「フィリップ」と名付けられているのも、ここから取られている。またエピソードの終了時には、毎回タイプライターで報告書を打つ翔太郎で終わっている。こうしたことも探偵小説やそれを題材にした作品をモチーフにしている。

 ただ以前より筆者が疑っていたのは、より強くモチーフとして選ばれているのは、かつて松田優作主演によるテレビドラマ「探偵物語」ではないかということだ。各種雑誌媒体における脚本家やプロデューサーのインタビュー記事を読んで切る限りでは、「探偵物語」をベースにおいているとは書かれていない。だが東京や横浜を舞台に限定し、シリアスとユーモアの境界線上を行ったり来たりしながら、依頼された事件を解決したり、常連のメンバーと親しく会話するなかで捜査の糸口をつかんだりする。正義も悪もなく、自分自身の信念に従い生きている松田演じる工藤俊作という探偵の生きざまのドラマは、本作に色濃く反映されていると思える。
 よしんばモチーフとして「探偵物語」が選ばれていないとしても、こうしたベーシックなディテクティブ・ストーリーが、「W」の物語の基本となっている。探偵といってもその仕事はさまざまであり、人探しや猫探し、謎解きなども含まれる。そうした探偵の仕事のバラエティが、翔太郎や亜樹子と出会う人々にドラマを与えることになる。また探偵には「刑事」の登場がつきものであるが、当初より登場する風都署の刃野や真倉はその典型である。先の「探偵物語」で刑事を茶化しながら情報を聞き出す工藤の姿は、刃野たちとじゃれあう翔太郎に見ることができる。また物語の途中で登場する照井にしても、「風都が嫌い」とか「俺に命令するな」など、どこかダーティな雰囲気が漂うが、これも工藤と対立するダーティな刑事とぶつかったり、工藤がその刑事に命を狙われたりという物語の相似形となっている。

 最終回となる47,48話では、財団Xからの刺客・加頭の変身するユートピア・ドーパントは、己の理想郷実現の目的のために、翔太郎やフィリップの親しい友人たちの顔と夢を奪っていく。翔太郎はフィリップとの別れを知りながら、加頭との戦いに挑む。その姿は風都を守るというよりも、風都で一緒に暮らす仲間たちを助けるために戦う姿なのだ。フィリップの頼みである若菜を助けるために、翔太郎は単身加頭に挑み、最後の変身でユートピア・ドーパントを倒すことに成功する。
 先の松田優作主演の「探偵物語」の最終回でも、工藤は自分の怨恨で無駄に殺された友人たちのために、殺人者となって復讐する物語となっている。黒幕を暗殺し日常に戻った工藤はしかし、あろうことか別の暗殺者によって背後からナイフで刺され、死んでしまうラストを迎えるのである。翔太郎は工藤のような悲劇とは無縁であったことはひとまず安心であったが、「W」のラストがここまで「探偵物語」と似通っていることは、実に興味深い一致だといえる。私が本作と「探偵物語」との関連を最も疑う理由の一つである。

 警察署は所轄というものが存在する。「踊る大捜査線」ではその「所轄」が問題になり、「警察本部」と「所轄」との軋轢がドラマの主体となる。この所轄は各地の警察が受け持つ範囲であり、この範囲を超えることは越権行為となる。この範囲を「風都」と置き換えてみるいとわかりやすい。翔太郎が愛する「風都」という街は、同時に照井や刃野のいる風都署の所轄なのである。ここでも舞台が限定されることにより、効果的なキャラクターの動きに反映されている設定となっている。
 翔太郎が愛する「風都」という街。そして相棒であるフィリップが、物語の進行に従ってどれだけ「風都」を愛せるようになるか、これが序盤のストーリーの隠しテーマとなっている。そして園咲から送り込まれるドーパントの中に、翔太郎のライバルとなる霧彦もまた、「風都」をこよなく愛する人間である。だが共に同じ街を愛する人間にも関わらず、彼らは対立する。それはイデオロギーの対立でもなんでもない。単に所属する立場上の問題である悲劇が、彼らを襲うのである。霧彦は自分の家族となった園咲を疑うことで、翔太郎と対決することなく暗殺される結果となってしまう。それもまた「風都」を愛するゆえに、園咲のやりかた、ガイアメモリ販売による人間と街の荒廃に耐えられなくなったからである。霧彦のドラマは前半の白眉であり、「風都を愛する人々」というキャラクターとして、翔太郎に受け継がれていく。

 興味深いのは、フィリップにしても照井にしても、また霧彦にしたって、誰を相手にしても対立軸として翔太郎の立ち位置が、まったく変化しないことだ。31,32話と「ビギンズナイト」のときに、少しだけ自分の立場について懐疑的になっており、一度ならず探偵を止めようとしているが、翔太郎にとって探偵を止めるということは、日々出会うレギュラーメンバーとの関わりを失ってしまうことであり、それは翔太郎にとって愛する「風都」そのものを自ら拒否する行動になる。翔太郎は探偵という稼業によって、大好きな「風都」の人に触れる。人探しや猫探し、殺人事件などを扱う中で、翔太郎は風都に住む被害者と一緒に悩み、犯人とともに苦しむ。翔太郎のやさしさは風都を中心としており、フィリップはそれをみて「ハーフボイルド」「半人前」と揶揄するが、フィリップにしても翔太郎というフィルターを通して「風都」への愛を募らせるのである。つまり「風都」は翔太郎にとって「人々との絆」であり、翔太郎の愛情の形だと考えられるのだ。

 園咲にとっても「風都」という街は、ガイアメモリの販売ルートであり、ガイアメモリの実験場とある。それだけに選択的に場所を限定していることが、風都という街の存在を浮き彫りにする。さまざまな意味で「風都」という箱庭的世界が、機能している「W」というドラマなのである。次回はこの「ガイアメモリ」について考察しながら、本作を「園咲家の再生」のドラマとしての側面に注目してみたい。


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両方ともインタビューは充実しているんですが、設定やスチールがやや少なめか?でもファンは大満足な1冊!
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