「仮面ライダーW」~その2・ガイアメモリと再生する園咲家の物語~

承前

 32話で登場する「サイクロンジョーカーエクストリーム」は、仮面ライダーWの最強形態として登場した。飛来する鳥型のエクストリームメモリが腰のWドライバーに取りつき、2本のメモリを入れることで、Wの体の中央にきらめくプリズム状のパーツが現れることでチェンジが完了する。個人的な話であるが、この形態、私はあまり好みではない。それまでのWのフォルムがあまりにストレートで、あまりにスマートであったため、このエクストリームの形態があまりにスマートさに欠ける気がしたのである。とはいえ「W」の最強形態であることは間違いない。シールドや剣の無骨なデザインは、メモリをすべて使用するという前提で最高の強さを発揮する、素晴らしいデザインであった。

 本作のなかで「ガイアメモリ」は最重要アイテムである。この物語自体、「ガイアメモリ」無しではまったく成立しないのだ。それまでの平成ライダーに登場した「悪」は、誕生しながらに「悪」に属している存在であり、「悪」を行うが故に人間的な心を持ち、自覚的に人間側に加担する存在が登場する。「キバ」のファンガイアにしても「555」のオルフェノクにしてもこのジャンルに属する。生まれながらに人間と対立する「悪」の存在に生まれながら、人間の心を持つが故の悩み苦しみが、境界線上に生きるジェンダーな存在を生み出して、ドラマを彩るのである。一方で「悪」としてしか存在しえない存在が「クウガ」や「アギト」の敵であったり、「響鬼」の土地の妖怪だったりする。だが本作の敵である「ガイアメモリ」を使って変身する「ドーパント」はこれのどれにも属さない。そもそもドーパントは人間なのだ。この「ガイアメモリ」の存在について考察するところから、今回の話を始めようと思う。

<ガイアメモリ=ドラック?>
 ガイアメモリをドライバーのない状態で直接人体に差し込むと、メモリに封じ込められた地球の記憶が解放されることにより、使用者は怪人ドーパントへと変化する。使用者はガイアメモリを開発・販売する組織ミュージアムの末端からこれを購入するわけだ。使用者はあくまで自分の欲望を満たすことを目的に使用する。他人より購入し、自分の欲望を満たすために使用する。復讐、金もうけ、親孝行、変身願望など、かなえる願いは様々だが、ガイアメモリは本人を怪人化させることにより願望を実現させる。これではまるでガイアメモリはドラッグにようではないか。しかも一度でも使用すると、連鎖的に使用したくなったり、特有の毒素が体内にたまることで、使用者に悪影響を及ぼすところなども、ドラックとよく似ている。
 だが一方我らがライダーにしても、ガイアメモリを使用している。翔太郎とフィリップの願いはたった一つ、「風都を守りたい」ということだけだ。照井にしてもメモリをシュラウドから受け取った時には、失った家族のために復讐を目的にしていたはずだ。つまりこれはライダーも怪人も根源は同じということであり、初代「仮面ライダー」がショッカーに改造された改造人間であることの暗喩ということになる。証拠に変身時の翔太郎の顔をみるといい。変身時の翔太郎の顔には、まるで改造時の傷が浮かび上がる漫画版ライダーの本郷猛のような傷が浮かび上がる。つまり初代ライダー同様に、「W」も怪人と同一根源である意匠を示していることになる。

 その一方でライダーとドーパントの戦いというのは、「ガイアメモリ」という前提を除けば、「人間対人間」という図式が浮かび上がってくる。初期の仮面ライダーでは頻繁に「人間を改造する」というシチュエーションが登場する。「仮面ライダー」の初期編の13話については怪奇性を特徴とするが、この人間の改造シーンは視聴者に恐怖を喚起させる重要なシークエンスである。しかしあまりに怖すぎたために、以降のシリーズでは控えることになってしまう。そのためにライダー怪人が人間の改造されたものであることを、視聴者側でつい忘れてしまう結果になった。「人間対人間」であったライダーの戦いは、「超常のライダー対出自不明の怪人」にシフトした歴史がある。「仮面ライダーW」で限定的に描かれている「人間対人間」の戦いは、怪人の持つ怪奇性や、悪意は人間性に根ざしたものとして、初代「仮面ライダー」の意匠を復古させたものだったのである。
 だが翔太郎たちの戦いは、「人を憎んで人を憎まず」的にガイアメモリのみを憎んでいるのではない。もしガイアメモリが根源的な犯罪原因と考えたならば、翔太郎たちはガイアメモリの流通経路を叩けばいい話である。だが翔太郎たちはそうしない。それはあくまでガイアメモリによる犯罪は、人間の欲望や願いが具体化した事象であるからだ。翔太郎たちの敵は、あくまでも人間の欲望や悪意なのである。「仮面ライダーW」が平成ライダーの列に連なる理由がここにある。

<再生する園咲家の物語>
 本作の物語は鳴海探偵事務所における翔太郎とフィリップのディテクティブ・ストーリーである。物語の最後に事件の報告書をタイプライターで打つ翔太郎で締めくくられていることが、それを証明している。だが本作の裏テーマとしては、翔太郎たちの敵となる組織ミュージアムの主要構成員である「園咲家」のドラマだと見ることもできる。

 「園咲家」。その構成員は父・琉兵衛と二人の娘、長女・冴子と次女・若菜の3人で構成される。番組当初より登場する人物として、ディガル・コーポレーション(冴子が社長)の有能な社員である霧彦が、冴子の結婚相手として登場し、「W」初期編の中ボス・ナスカドーパントとして登場する。この時点での園咲家の特徴といえば、「母親不在」なのに「女系家族」であるという点である。これが家族として如何に奇形であることはすぐにお分かりいただけると思う。さらに興味深いのは、この奇形の家族に霧彦という新たな家族を迎え入れたことである。ここに琉兵衛は、女系家族である園咲家に男性を入れることにより家族を補強しようとしたのである。その結果、霧彦は若菜とそりが合わず、ガイアメモリの流通経路に疑問を抱いた霧彦は、風都を愛するが故に冴子にとどめを刺されて死亡するのである。死亡した理由はどうあれ、園咲家には男性による支配を受け付けないことがこれでわかる。琉兵衛があまりに強大な力を有するテラードーパントであり、「W」最大の敵である事情もあるが、それ以上に琉兵衛以外の外部の男性を必要としない、「女系家族」であることが示される。これは一種の琉兵衛を中心とするハーレムとも言える。

 その後、冴子は開業医の井坂を抱き込んで、父に反逆しようとする。それは井坂の過去に起因する復讐であったのだが、一向に自分を認めようとしない父、それも園咲家を若菜に継がせようと思っている父に反逆し、ミュージアムの実権を握ろうと、冴子は画策する。だが結局井坂は、家族を殺された照井の怨恨で倒され、井坂の野望もついえることになる。その結果、冴子は会社も家も捨て、ミュージアムの上位組織である財団Xのメッセンジャーである加頭にかくまわれることで、ライダーや若菜を相手に、勝負を挑むようになる。

 若菜は風都のラジオタレントとして活躍する一方、父・琉兵衛からは放置気味にされていた彼女であるが、冴子が霧彦の失敗、井坂の反逆で後退するころに、園咲を担う存在として父から促される。だが彼女の役目こそ、「ガイアプログレッサー」を体内に取り込むことで、「ガイアインパクト」を発生させるキー「地球の巫女」になることであった。ガイアプログレッサーを取り込んだ若菜は、フィリップ同様に地球の本棚に入り込むことができるようになる。互いの正体を知らずに逢瀬を重ねていたフィリップと若菜は、37,38話にて互いの正体を確認することになる。しかもフィリップの正体は故意に記憶を消された園咲家の長男・来人であったのだ。おまけにその後の44話におけるシュラウドの告白により、シュラウドが琉兵衛の妻であり、来人や若菜たちの母親であることが判明する。ことここにいたり、「W」という物語は、ガイアメモリや最終目的により「園咲家」が崩壊した家族であることを示したのである。しかも家族構成や研究の主体がシュラウドであったことを考慮すれば、園咲家がやはり「女性上位の女系家族」であり、それを意のままに操りたかった琉兵衛が力を誇示するために力を手に入れたかった話だと見ることもできる。そうして最後に地球の記憶となって、横一列に並ぶ家族に見守られて、フィリップが最後にデータ化することで地上から消えてしまうシーンは、園咲という崩壊した家庭が再生した物語だといえるのではないか。

 先述の通り園咲家は「女系家族」で「母親不在」の奇形の家族として登場する。琉兵衛は、外部による家族の調停を行おうとしたものの、女系家族である園咲家は、外部の男性の力を必要としないかのように、霧彦や井坂の存在を受け入れるふりをしながら排除した。だがその琉兵衛の気持ちは、冴子と若菜の役目をきっちりと区別することにより、冴子は父親への謀反を志してしまう。父親の権威主義への反乱が冴子の行動動機である一方で、冴子は霧彦や井坂を取り込むことで、自分の役目を果たそうとした。それは琉兵衛に認められたいという冴子の願いだったのではないか。だとすれば冴子も家族を取り戻そうとしていたに違いない。冴子と若菜の対立は、冴子の若菜に対する嫉妬が根底にあるのだが、琉兵衛はそれを故意に意図していた節がある。だが傍目から見れば冴子と若菜の対立は単なる姉妹ゲンカということになる。
 シュラウドと琉兵衛の間柄を考えてみると、優秀な科学者であるシュラウドへの嫉妬や、その能力を自分の力としたい琉兵衛の独占欲が感じられる。琉兵衛という人間が、どこまでも人間であるなら、彼は父親という強権を用いて、家族を統率し、管理したかったに違いない。遠からずそれがミュージアムという組織の理念になっていた可能性は否定できない。だとすれば琉兵衛ですら普通の父親であったことがわかる。そう考えるとシュラウドという傑出した科学者が母親であったが故に、園咲家は崩壊したと言えるし、シュラウドも琉兵衛も、手段は違えど家族を取り戻そうとしていたことは疑いない。結果的に「仮面ライダーW」という物語は、まるで昼ドラ的なテーマである「家族再生のドラマ」という側面を持っていたと言える。そしてこの物語が完結したからこそ、フィリップの復活というイベントを最終回として、翔太郎の物語を完結させるのだ。いや、完成しないハーフボイルドの物語というほうが妥当か。

 「仮面ライダーW」という物語の魅力は、他にもたくさんあるだろう。ヒーローである仮面ライダーW自身のデザイン上の魅力もさることながら、翔太郎やフィリップたちをかこむ風都の人々も魅力的である(あ、AKBの二人は除く!)。だがディテクティブ・ストーリーの形態を持つ本作の横軸と、園咲家再生の物語という縦軸の物語が気持ちよく重なり合って構築された物語は、二つの主軸を越えるバラエティと魅力を兼ね備えている。「平成仮面ライダー」シリーズは1作ごとにバラエティに富んだストーリーを展開しており、いずれも魅力的な作品群である。いま私は「電王」「キバ」「カブト」を見直しているところである。「平成仮面ライダー」シリーズには、まだまだ語られていない側面があるのではないか? 本ブログでは今後も平成ライダーシリーズに注目していきたい。


仮面ライダーW Vol.1 [DVD]仮面ライダーW Vol.1 [DVD]
(2010/02/21)
桐山漣菅田将暉

商品詳細を見る

仮面ライダーW(ダブル) VOL.10【DVD】仮面ライダーW(ダブル) VOL.10【DVD】
(2010/11/21)
桐山 漣菅田将暉

商品詳細を見る
スポンサーサイト

テーマ : 仮面ライダーW(ダブル)
ジャンル : テレビ・ラジオ

コメント

非公開コメント

プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
namima2のつぶやき
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
リンク(リンクフリーです)
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
FC2 Blog Ranking
フリーエリア
blogram投票ボタン
ブロとも一覧

あにめにゅ~す の あににゅ

分水嶺☆大分のお土産といえば『ざびえる』

素足のアイドル達

有名人の珍言・名言集

宮廷アリス

TOY BOX
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

[FC2 Analyzer] http://analyzer.fc2.com/ -->