「銀河鉄道999 エターナルファンタジー」~収束の80年代、拡散の90年代~

 先ごろ発表された「秋の叙勲」。受賞者4173人の内、377名が女性らしい。また2003年に栄典制度が改正されてから、民間人の受賞者は最多となっているらしい。まあこんなことは新聞でも読んでもらえば詳細はわかるだろう。今回の叙勲に関して本ブログ的に特筆すべきは、旭日小綬章に漫画家・松本零士氏が選ばれていることだ。新聞発表によれば受賞の理由は「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」をヒットさせ、同時に長年にわたる漫画界への貢献が認められてのことだという。「読売新聞」の2010年11月3日付け朝刊には、「キャプテンハーロック」の「俺は、俺の旗のもとに自由に生きる」という台詞さえ取り上げられており、まるで記事を書いた記者のはしゃぎようが手に取るようにわかる。
 そこで今回は、松本零士氏叙勲をお祝いすることをいいわけに、近年の氏の仕事のライフワークともなっている「銀河鉄道999 エターナルファンタジー」にスポットをあてて、70~80年代の絶頂期ではなく、近年の時代の松本作品として取り上げてみたい。

<概要と物語>
 「銀河鉄道999 エターナルファンタジー」は1998年3月初旬に劇場公開されたアニメーションである。1996年に漫画で再開された「銀河鉄道999」を原作として制作された本作は、約50分の短い映画となっている。その理由はあくまで本作は「プロローグ」として作成されており、翌年1999年に約2時間にわたる完結編を作成する予定であったそうだが、本作の興業収入がおもわしくなかったため、制作中止となったそうである(wikiより)。

 物語としては前回の鉄郎の旅の1年後、地球に幽閉されていた鉄郎を、メーテルと999が救出するところからスタートする。そして鉄郎はメーテルや車掌と再会し、新しい旅へと旅立つことになる。死んだはずのクレアとの再会、チューンアップされた車両、電子妖精カノンとの出会いを経て、鉄郎は惑星大テクノロジアに向かう途中で、「ブライトリング・ファイヤフライ(輝く蛍の輪)」に立ち寄ることになる。そこは現在の地球が失ってしまった自然と人のやさしさが残る惑星であった。そこでイーゼルという少女のやさしさに触れる鉄郎であった。だがそこで鉄郎は地獄の聖母騎士ヘルマザリアとも出会い、一敗地にまみれることになる。翌日鉄郎はイーゼルと別れて旅立つのだが、イーゼルの星はそのあと消滅してしまう。それは現在の宇宙を支配しようとする機械生命体メタノイドの仕業であり、先兵であるヘルマザリアが破壊したのだ。惑星の破片から逃げる999号。巨大な惑星片が999にぶつかる刹那、それを助けたのはアルカディア号を駆るキャプテンハーロックであった。爆発の影からアルカディア号に攻撃を仕掛けるヘルマザリアの戦艦。2つの戦闘艦は一気に戦闘へとなだれ込む。だが999の後部車両に乗り移ったメタノイドが、鉄郎とメーテルを追い詰める。そして鉄郎はヘルマザリアと一騎打ちとなる。頭上からのヘルマザリアの攻撃に一歩も引かない鉄郎は、ついにわが身を犠牲にしながらヘルマザリアに致命傷を与える。そしてヘルマザリアは鉄郎に自分の死を隠して虚空の彼方へ消え、爆発四散する。ようやく一段落した車内で落ち着く鉄郎を待っていたのは、太陽が爆発し太陽系が消滅した知らせであった。絶望を隠そうともしない鉄郎。だがメーテルは新しい敵の存在を示唆し、ハーロックは希望を教えることで、鉄郎は気持ちも新たに旅を続けることを決意する。その目的は、クレアさえ復活させた何者かに、地球の復活を願うことであった。たったひとつの望みを胸に、鉄郎は新しい旅路に就いたのである。
 
<作品の位置づけ>
 さてここでまず、本作の位置づけを示しておきたい。以前より松本作品に関しては年表を用いて作品の位置づけを示していたが、それは「宇宙戦艦ヤマト完結編」が公開された1983年をもって、松本アニメは終焉を迎えたことにしていたからだ。だが人気やソフトの売れ行きを別とすれば、細々とではあるが、松本作品のアニメ化は続けられていたのである。既出のOVA「クイーンエメラルダス」もこの例に漏れない。以下にテレビアニメやOVAとして世に出た松本アニメ化作品を並べてみよう。

1994年 ザ・コクピット(OVA)
1995年 YAMATO2520(~1996 ,OVA)
1998年 銀河鉄道999 エターナルファンタジー(映画)
      火聖旅団ダナサイト999.9(映画)
      クイーンエメラルダス(OVA)
1999年 ハーロックサーガ ニーベルングの指輪(OVA)
2000年 メーテルレジェンド(OVA)
2001年 コスモウォーリアー零(TV)
2002年 ガンフロンティア(TV)
2003年 SPACE PIRATE CAPTAIN HERLOCK(TV)
      SUBMRINE SUPER99(TV)
      銀河鉄道物語(TV)
      インターステラ5555(映画)
2004年 宇宙交響詩メーテル 銀河鉄道999外伝(OVA)
2006年 銀河鉄道物語~永遠への分岐点~(TV)
2007年 銀河鉄道物語~忘れられた時の惑星~(OVA)
2009年 宇宙戦艦ヤマト復活編
2010年 SPACE BATTLESHIP ヤマト



 「ヤマト完結編」の終了後約10年にわたる雌伏の時を経て、1994年以降、さまざまな形で作品を世に問い続ける氏の姿が、これでお分かりいただけるだろう。2009年および2010年の「ヤマト」2作品については、あまり細かい突っ込みは無しの方向でお願いしたい。だがこうして並べて見てもらえば、松本氏が「ヤマト」から距離をおいていることは一目瞭然である。また本作が公開された1998年は、これらアニメ化作品の起点ともいっていい位置にある作品であることもわかる。アニメ制作に関しては制作スタジオに預けている状態ではあるが、2003年のハーロックのアニメ化作品では、劇中に登場するとあるマークに関してダメ出しをし、作品の主旨設定に関しては妥協しない氏のエピソードも残されている。今回の叙勲に関しても、氏のそうした真摯な姿勢がもたらしたと言っていいだろう。

<壮大なる序章>
 さて前述のように本作は確かに興業成績は振るわなかった作品である。また50分程度の商品であったことも災いし、内容的にも何かこう物足りない感じがある。この作品の問題点を挙げればきりがないだろう。特に「銀河鉄道999」という一連の作品の中での位置付けには、はっきりと問題がある。鉄郎はTV版であるが、登場するキャラクターや「戦士の銃」、アルカディア号のデザインははっきりと劇場版2作の続きであることを示しており、本作がどちらの後続作品であるかははっきりとしない。公開当時原作である漫画も執筆中であるから、当然この続きに関しては松本氏の頭の中にしか物語がない。とはいえ本作はあまりにも物語の序盤だけを作品化しており、さながら次回作のための盛大な花火といった印象がある。

 またそれまでの作品からのオマージュと思しきシーンが散見されるのも、本作の特徴だ。たとえば機械化人から解放された地球が、食糧に不足することなく堕落し、メタノイドの手先となっていく鉄郎の解説のくだりは、まるでTV版「宇宙海賊キャプテンハーロック」で示されている地球の図である。そしてたった一人ではあるが、こうした堕落した地球の改革を願う鉄郎の姿は、まさしくハーロックの姿の写し身として登場する。TV版「ハーロック」の舞台となっている地球の姿が、政府すら堕落した姿として登場しているが、本作での堕落した地球は、飼いならされて自然という自然を駆逐されてしまった姿として登場する。「堕落した地球」という救い難いヴィジョンそのものは、松本氏の持つ本質的な「地球観」あるいは「日本観」の現れであるが、人が堕落したTV版ハーロックに比べて、自然が駆逐された本作では、松本氏がやや「エコ」寄りになっている思考の変遷が読み取れる。またイーゼルたちの住む「輝く蛍の輪」の風景が地球の対比として登場するが、この情景が忘れかけた日本の原風景であると同時に、「わが青春のアルカディア」に登場した永世中立国スイスやハーロック一族の心のふるさとであるハイリゲンシュタットの風景にも重なる、具体的なあこがれとして登場する。風呂場の風景などはTV版の「999」で幾度も登場したシチュエーションだ。ラストバトルのヘルマザリアと対峙する鉄郎というシチュエーションは鉄郎対黒騎士のシーンであるし、対決を俯瞰するシーンは、はっきりと「さよなら銀河鉄道999」の序盤に登場する、機械化人により衝突寸前になる999号のシーンにそっくりだ。すれ違いながら砲撃するヘルマザリア艦とアルカディア号の砲撃船は、「わが青春のアルカディア」のラストバトルにおけるスターザット号とアルカディア号との対決シーンに似ている。ましてや戦闘シーンでのアルカディア号の主砲の発射シーンや爆発シーンなど、部分的に金田伊功作画のようなエフェクトアニメも登場している。金田氏の名前はスタッフロールに連ねてはいないが、そうした意味でも前2作の劇場版の後継作品として位置づけられることになる。だがこれ自体は作品を彩るアクセサリーであり、本作の売りでもあるCGで作成された「999号」と同列のものである。問題はこれらの映像を使って、何を言いたかったのかということだ。

<すべてを包括する松本ワールド?>
 この作品が盛大なる序章であることはすでに述べた。だがここで思い出してほしい。劇場版の2作品の位置づけは、当時まだだれも知ることがなかった長い物語の先行最終回であったはずだ。しかも「さよなら~」という大きなお世話とも思える後日談まで公開し、「銀河鉄道999」という作品に対して、別れを告げるための作品だったのである。以前「ヤマトよ永遠に」という作品が、それまでの「ヤマトシリーズ」にファン・スタッフともに別れを告げようとするかに見える作品だったと評したことがあるが、実は「ヤマト」だけでなく「999」も同じだったのだ。「ヤマト」に至っては「完結編」を制作しながら、2009年に至って「復活編」を作るということに至り、その別れはまだまだ終わりそうもない様子だ。

 さらに前述の年表によれば、本作が多くのアニメ化作品を生むきっかけとなる位置づけの作品であることはすでに述べたとおりである。つまり1998年に制作された本作の意味するところとは、別れを告げたはずの前シリーズにもう一度再会するための壮大な序章だったと解釈できる。そう考えてみれば、本作の序盤、999がメーテルを乗せて登場するシーンで私は鼻の奥がツンとしはじめ、鉄郎の悔し涙を見てはまなじりに涙があふれそうになり、メーテルと再会した鉄郎の涙といっしょに、私は気持ちよく涙を流したのである。まさに作り手の思うままに泣かされている私を発見して唖然とした。
 かつての70~80年代のアニメ作品群は、あくまでもラストを閉じる方向で制作されていた。だからこそそのブームは終焉を迎えるタイミングで、収束できたのである。だが90年代末にいたり、松本氏の創作意欲は、かつての作品群をさらに拡大解釈し、さらに壮大な松本ワールドを築き上げようとしているかのようだ。構築されたスケールがあまりにも壮大すぎて、執筆する漫画の中に納まりきらないので、アニメ化という別スタイルを用いることで、少しずつまとめようと松本氏は考えたのではないか? それを商業主義ということも可能であるが、資金を出す側がそう考えたとしても、松本氏にとっては作品化できれば細かいことは問わないと言うのであれば、ひとえに松本氏にすべてを受け入れるつもりだろうか。そしてここに広がりを見せた松本ワールドは、あいかわらず拡散し続けて現在に至る。

 終局の80年代に対し、拡散の90年代以降と言えば良いのか。松本ワールドはとどまるところを知らない。しかも本作のラストでは「宇宙戦艦ヤマト」が登場する。漫画版では「まほろば」なる戦艦まで登場し、すべての敵が金属生命体メタノイドであることがはっきりと描かれている。どうやら松本氏の頭の中では、すべての作品のつじつまを合わせるべく、全作品を包括しようとしているらしい。作中に登場するオマージュがここに意味をなす。しかしこれではまるで富野由悠季監督の「ターンAガンダム」のようではないか。前2作の映画やテレビ版との連続を曖昧模糊とさせているのも、これが理由ではないだろうか。それらを「黒歴史」などとせず、いよいよもってすべてをアリとして包括するには、まだまだ明かさねばならない多くの秘密が残されているようだ。1989年にスタートした松本零士氏の情熱は、2010年の今日に至ってもなお衰えない。新しいキャラクターを生み出すよりも、キャラクターの背景を突き詰めることに集中しているように見える。その活動がファンならびにご自身を納得させられると信じているに違いない。秋の叙勲に叙せられた松本零士氏には、まだまだこれからもお元気でがんばっていただきたいと願うばかりである。

追記
 「宇宙戦艦ヤマト」のプロデューサーである西崎義展氏が、昨日(2010.11.7)に亡くなった。「ヤマト」に関しては利権を争った西崎氏と松本氏であるが、このような日を迎えるとは夢にも思わなかった。船からの転落死だという報道であるが、お酒でも飲まれていたのであろうか。このような結果となったことについては、「明暗」ではなく生き方の差ではないかと思う。ご冥福を心からお祈りいたします。

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本文では触れませんでしたが、CGによる「999号」の描写は、セルアニメでは見られない描写がいくつもあります。せっかくのCGですから、こういう楽しみ方もあると思うのですが。
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波のまにまに☆

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