「大逆転」の構図~その1・映画「マジンガーZ対暗黒大将軍」


  ♪愛する 友の まなざしが、倒れるたび、傷つくたび俺を強くする
   ルール破りの 悪の超人 さあ、お遊びはここまでだっ!
   ラスト5秒の 逆転ファイター 俺は炎のキン肉マン

 私は「キン肉マン」の連載開始をリアルタイムで読んでいた世代であるが、アニメとなり「キン肉マン消しゴム」などに手を出した世代ではない。ただ小学校から中学校に上がるころに、アニメ「キン肉マン」が流行っており、物語は知っていたのでなんとなくテレビアニメも見ていたのである。上記の歌詞はキン肉マンが「悪魔超人編」や「夢の超人タッグ編」などに入った時に変更になった主題歌「Mustle! キン肉マン」という曲の歌詞であるが、私はこの曲が大好きである。あまりに好き過ぎて、このくだりをカラオケで歌うたびに涙があふれるので、カラオケに行く時には決して歌わない曲である(一人で風呂に入っていて、口ずさみながら涙ぐんでしまうほどである)。だが同時にこれほどまでに「大逆転」という構図を表現できている歌詞を、私は他に見たことがない。この歌詞には主人公・キン肉マンというヒーローの勝ちパターンが、完全に集約されていると言っていい。
 「大逆転」というシチュエーションは、見る人に最もわかりやすい感動を与えるのではないかと思う。こうした大逆転は、バトル物にはありがちなシーンであるが、当然それこそが「王道」であるゆえにありがちとなっている。近年では「カードゲームバトル」などでは、この要素なくしては物語が成立しないといっていい。ドラマにあっても「逆転劇」という言い方があるぐらいだから、見る人にとってカタルシスや充足感が得やすいのではないだろうか。そこで今回は劇場用アニメ作品2本をテキストとし、「大逆転」に至る構図を存分に味わってみたいと思う。今回のお題は劇場版「マジンガーZ対暗黒大将軍」である。

<概要と物語>
 劇場版「マジンガーZ対暗黒大将軍」は1974年7月の「東映まんが祭り」の1本として公開された作品である。当時としては珍しくテレビシリーズ「マジンガーZ」の最終回を、テレビに先駆けて公開するという内容であり、続編の「グレートマジンガー」への橋渡しを行う作品となっている。テレビ版「マジンガーZ」の最終回放映が同年9月であることから、事実上2カ月も早いお披露目だったいうことになる。なおテレビ版最終回でもグレートとの引き継ぎは行われているのだが、マジンガーZのやられっぷりがあまりに過ぎている感じは否めない。結果としてグレートがおいしいところをかっさらっていく展開は同じであるのだが、こちらの劇場版のほうが人気絶頂であった「マジンガーZ」への哀悼と感謝の意が込められている感じがする。その理由はおいおい説明しよう。

 物語はすでにドクター・ヘル率いる機械獣軍団を打倒した兜甲児はさやかやボスたちとともに日常を楽しんでいた。そんなときボスたちはにわかにかき曇った夏の海で、預言者が新たな敵の到来を予言する。その直後、世界の主要都市はなぞの戦闘獣軍団に蹂躙される。次の戦闘獣の狙いは東京だ。13体の戦闘獣が東京に向け進軍を開始する。甲児は休暇を中断しマジンガーZを駆って東京に向かう。だがそこに現れた戦闘獣軍団は、機械獣軍団と異なり人の顔を持ち、己の意思で戦うメカニックであった。そしてまた機械獣よりも強い戦闘獣の能力は、次第にマジンガーZを圧倒していく。溶解液で溶かされる超合金Z。ジェットスクランダーの翼は破られ、マジンガーのボディも溶かされる。だが機略と勇気でピンチを脱する兜甲児とマジンガー。だが戦闘の中で光子力研究所にまで攻撃がおよび、甲児の弟・シローが怪我を負ってしまう。甲児はシローのために輸血する。だが再び戦闘獣軍団の襲来に、甲児は血が足りない状態のまま、修理の終わっていないマジンガーZで出撃する。体調不良に加え満身創痍のマジンガーZ。内臓武器による必死の反撃もむなしく、ついに追い詰められたその時、預言者の皮を脱ぎ棄てて、出撃命令を下す甲児の父・剣造。その命令に従い噴火する火山からブレーンコンドルに乗る剣鉄也が現れる。そして海中より現れ出でるグレートマジンガー! 次々と技を繰り出して戦闘獣を葬り去るグレートマジンガーにより、戦況は一転する。そしてグレートから託されたマジンガーブレードを使い、甲児は残る戦闘獣にトドメを刺すことに成功する。ここに戦闘獣軍団の第一陣は退けた。だがさらなる戦闘獣軍団を擁する暗黒大将軍ひきいるミケーネ帝国とグレートマジンガーとの戦いの火ぶたは、まさに今切って落とされたのである。

 さて本作に関しては「アニメ新世紀王道秘伝書」(氷川竜介著 徳間書店刊)にて、シネマスコープによる大迫力の構図、強さと弱さの比較論でマジンガーZ、戦闘獣、グレートマジンガーの対比、そしてそこに生まれるドラマについて熱く記事を書かれている。その他、ロボットアニメやスポ根アニメなどについても、「王道」という切り口で語っている。ぜひ一読していただきたい1冊である。

<圧巻の大侵略>
 大逆転のための布石、それは徹底的でいて一時的な主人公側の敗北のシークエンスである。このシークエンスのため、われらのマジンガーZはまさに満身創痍の状態に追い詰められる。
登場する戦闘獣は総勢13体。本ブログの読者にはお若い方もいるだろうから、ちょっとだけ説明させていただくが、本編「マジンガーZ」でマジンガーが戦っていたのは「機械獣」。「機械獣」とは地下帝国のドクター・ヘルが、バードス島のミケーネの遺跡に残されていたロボットの技術を用いて作られたロボットである。だが「戦闘獣」とは機械獣の電子頭脳の部分にミケーネの古代人の脳が使われており、体は巨大であるが実質ロボットよりもサイボーグに近い。体のどこかに必ず人間の顔が配されており、その部分で会話が可能であり、そうした部分がミケーネの科学力と恐怖を体現しており、機械獣よりも圧倒的な能力差を感じさせる。
 そんな戦闘獣が世界の要所に現れては、ランドマークを律儀に壊していく。こうしてみると世界が狭く感じられてしまうのだが、こうしたシチュエーションはむしろ東宝の怪獣映画に似たシチュエーションを求めることができる。この正当な後継者としては「ふしぎの海のナディア」の終盤、ネオ皇帝が世界中の主要都市に自分の巨大な像を映し出したシーンだろう。「幻魔大戦」にも似たようなシーンがある。
 それまでのマジンガーZが、格闘の末に機械獣にダメージを与えたのち、やおら離れて必殺の「ブレストファイヤー」でトドメを刺すというパターンが多用されたが、本編での戦闘獣との戦闘を見てほしい。機動力の差は歴然であり、戦闘獣に翻弄されるマジンガーはなすすべもない。渾身のロケットパンチは溶かされたり破壊されたりと、まったく効果がない。目から放つ光子力ビームも当たらない。そんな距離を保った戦闘では、相手になんらダメージを与えられないと悟った甲児の行動の男気を見よ! なんと彼はマジンガーで相手に組みつき、至近距離から攻撃を当てることで、敵を破壊する。そして相手を誘い出した必殺の距離で放つ内臓武器の数々が、戦闘獣の弱点となる顔の部分を攻撃する。まさに辛勝と呼ぶにふさわしい勝ち方なのである。だがそうした勝利もフイになる程、マジンガーのダメージは大きい。ジェットスクランダーの羽は溶かされ、超合金Zのボディも、所々内部が見えている。なんで大爆発しないかが不思議なほどのダメージなのだ。
 1戦目で辛くも敵の侵攻を防いだもののマジンガーはズタボロ。おまけに怪我をしたシローを助けるために、甲児は輸血する。その体のままで第二陣の攻撃を受けるのだからたまらない。二重三重の不利が甲児を襲う。だがヒーローの資質が甲児を突き動かし、新しい戦場へと彼を誘う!

<ズタボロの大勝利、感動の正体>
 再びの戦闘に突入する甲児とマジンガー。だが戦況は決して良くはない。再び組みついての戦闘で数体の戦闘獣を倒すも、圧倒的な敵の戦力に包囲されるマジンガーZ。敵の巨大な角に腹を刺し貫かれ、とうとう追い詰められる!
 マジンガー絶体絶命のその時、画面が一転する。遠く火山を見はるかす崖の上に立つ預言者は、その皮を脱いで兜剣造の姿を現し、声高らかにグレートマジンガーの出撃を宣言する。そして始まるグレートマジンガーの主題歌! 剣鉄也が駆るブレーンコンドルが噴火と同時に火山から現れ、上昇して真っ逆さまに落ちたと思えば、海底から現れたグレートマジンガーにファイヤーオン! 頭部や太ももなどに現れる鋭角的なイメージのグレートマジンガーは見た目にも強そうだが、戦場に颯爽と現れて戦闘獣を相手に圧倒的な力の差を見せる。まさに大逆転の始まりだ!雷の力を受けて増幅し、サンダーブレークは戦闘獣を破壊する。マジンガーブレードは敵を切り裂き、アトミックパンチは敵を貫く。ズタボロにやられている甲児は、ただそれを見ているしかできない。そうしているうちにグレートはブレストバーンで敵を溶かし、ネーブルミサイルは敵の顔を破壊する。そして戦闘獣の指揮を執っていた隊長格の戦闘獣もついにグレートの手にかかる。だがマジンガーZをひどくいたぶったケジメはつけておかねばならない。グレートはやおらマジンガーブレードをマジンガーZに放り、直立不動でブレードを持ったマジンガーZは最後の戦闘獣にトドメを刺し、ついにマジンガーZの苦難の戦いは終結する。ぼろぼろのマジンガーを残して新番組の主人公機は颯爽と飛び去っていく。それをただ呆然と眺めるマジンガーZと甲児で、この映画は一巻の終わりとなる。
そしてここで誰もが我に返り、疑問に思う。「あれ?暗黒大将軍は?」と。そうタイトルに歌われている暗黒大将軍はこの戦闘に参加しない。マジンガーZと対決しないどころか、ただ遠くバードス島の奥深くで、戦闘を見つめているだけである。実に「看板に偽りあり」まくりの作品であるのだが、この熱きドラマの充実感に、誰も文句をいうヤツはいないのだ。

 この展開の熱さ、そして大逆転、そして新キャラの大活躍。新番組への交代をこれほど盛り上げるシチュエーションも珍しい。これに類するのは「宇宙刑事ギャバン」の最終回に登場した次回作の主人公「宇宙刑事シャリバン」の登場ぐらいだろう。そしてこの2作に共通するのは、旧作の主人公に華を持たせ、最後のオイシイところを持って行かせる心憎い配慮だろう。結果が同じならどちらがやってもいい状況下で、先達に最後の華を持たせるのは、日本人のつつましやかな美徳のなせる業といってもいいかもしれない。

 全体のドラマとして振り幅が大きい。一方的な戦闘シーン、度重なる主人公への不利な条件、そして愛する仲間や家族を守るために、決死の覚悟で戦いの望む主人公。だがその願いかなわず、やられまくる主人公。そしてそれを助けに来る新主人公の圧倒的な強さ。こうした流れの中で人はドラマ全体の大きな振れ幅に突き動かされるしかない。そして否が応でも動かされた感情は、最後の最大のドラマのテンションに同調し、ラストシーンの気持ちの余韻を最高においしく噛みしめる最良のスパイスになる。これを噛みしめたくって、これを味わいたくって人はこれを見る。そしてそれを繰り返し味わいたくなる。まるで媚薬である。その意味では手っ取り早く人間の快楽中枢を刺激するドラマというのは、こうした大きな振れ幅が特徴となるのではないだろうか。
図らずも「宇宙刑事ギャバン」も本作も同じ「東映」という会社の作品である。そしてこうした物語の展開は、東映という会社がくり返し制作してきた「時代劇」や「ヤクザ映画」のやり方でもあるのだ。つまりこうした感情のダイナミズムというのは、邦画や洋画などにより積み重ねられた歴史ゆえに味わえる側面があるのではないだろうか。私たちが今現在こうしたアニメや特撮作品から得ている感情のダイナミズムは、これまでの数多くの作品の積み重ねが影響していると考えてみたが、さてどうだろうか。

 次回はまた別の作品の「大逆転」の構図をもって、作品から受ける人の感動や感情の振れ幅について、さらに考えてみたい。

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