「超人機メタルダー」~その1・孤高の青年、戦争の落とし子~

 第二次世界大戦中に開発された秘密兵器が現代に甦る、というシチュエーションの作品がある。古くは横山光輝先生の「鉄人28号」がそうだ。またビデオオリジナルの特撮作品としても名高い「ミカドロイド」に登場する「ジンラ號」もその一つである。以前本ブログで取り上げたOVA「機神兵団」に登場する4機の「機神」などもそうだ。
 それにしても「第二次大戦中の秘密兵器」とは、なんて甘美な響きだろうか。SF設定としては実に興味深いし、ミリタリー的な興味も尽きない。「鉄人28号」はいくどもアニメ化されるが、なぜか作られるたびに「大戦中の秘密兵器」という設定に改変が加えられる。「ミカドロイド」に至っては、ジンラ號が暴走することにより惨劇が起こるというホラー仕立ての作品だ。近作では「二十面相の娘」という作品では、二十面相の正体を旧日本軍の科学者とした上で、彼の研究した「水の第四形態」という秘密を縦軸に、その機密の争奪戦を繰り広げる物語であった。多分に第二次大戦の秘密兵器とはきな臭く、どこか淫靡であり、なぜか背徳の香り漂うものである。そこには実際の旧日本軍や諸外国の研究施設が、非道な実験や人体実験などを背景に秘匿されたことに起因するのだろうが、それだけに興味も尽きない。
 今回取り上げる「超人機メタルダー」も、日本特撮史上に残る「第二次大戦の秘密兵器」の一つであるのだが、さすがに子供向けの特撮番組である以上、背徳感やきな臭さはやや薄味に感じられる作品だ。では戦争という背景を薄味にしてまで、本作で語られたこととは何だったのだろうか?

<作品概要>
 「超人機メタルダー」は1987年(昭和62年)3月から翌年の1月にかけて、全39話が放送された。「宇宙刑事ギャバン」から連なるいわゆる「メタルヒーローシリーズ」の6作目であり、それまでのメタルスーツを着込むヒーローから一転して、ロボットを主人公とする作品である。メタルヒーローシリーズでロボットを主人公とした作品は、本作以外には「機動刑事ジバン」と「特捜ロボジャンパーソン」の2作品がある。比較すればこの2作品がともに警察機構に所属するロボットである点で、完全に「ロボコップ」であり「ロボット刑事」の範疇であるが、本作はそうした組織に所属しないため、物語に自由度が高いという特徴がある。なお25話で一度放送時間枠が変更され、「巨獣特捜ジャスピオン」放送中に変更された金曜→月曜の時間枠が、月曜→日曜早朝に変更となり、この時間枠が現在の平成仮面ライダーに至る時間枠の元となっている。

<戦時中の開発兵器>
 物語はロボット工学の権威・古賀博士が日本に帰国したところから始まる。帰国した博士は、第二次世界大戦で死んだ息子の墓に花を手向ける。だがその姿は何者かの監視下にあった。その者の名はゴッドネロス。彼は自らの科学力で作り上げたネロス帝国の軍勢を用いて、世界を混乱に陥れようとしていた。ゴッドネロスはその一方で表の顔・桐原コンツェルンの総帥・桐原剛三として慈善事業を行うかたわら、経済による世界支配をもくろんでいた。そしてそれを事前に察知した古賀博士は日本に帰国したのだ。その理由は、かつて敗戦色濃い日本を救うために、極秘裏に開発された1体の超人機をこの世に復活させるためであった。その超人機の名は「メタルダー」。ネロス軍団が攻撃する中、旧日本軍の秘密シェルターに入り込み、古賀博士はメタルダーを起動させる。だが起動したばかりで状況すら飲み込めないメタルダー=剣流星は、ネロス帝国の攻撃で死にゆく古賀博士の姿を見て、初めて「死」を感じる。そして人の死に反応して怒りを感じ、剣流星は初めて目タルダーに瞬転する。ネロスの先兵と戦うメタルダー。だがそこに現れたヨロイ軍団凱聖クールギンとの一騎打ちに敗れ、メタルダーは崖下に落下する。だが自力で動き出すメタルダーは、自分が抱えた思いを吐き出すように空に問いかける。「風よ、雲よ、心あらば教えてくれ。なぜに私は生まれたのだ!」と。こうしてメタルダーとネロス帝国の戦いの火ぶたは切って落とされた。人間として街の中で生きる剣流星は、仰木舞や北八荒らと出会い、またネロス帝国から送られてくる刺客と戦う中で、人間という存在や人間社会を知り成長する。そしてネロス帝国の裏切り者であるベン・Kやトップガンダーなどとの共闘を経て、メタルダーはネロス帝国を徐々に追い詰めていく。剣流星=メタルダーは果たしてネロス帝国を壊滅させ、世界の平和を守ることができるのか?

<青年・剣流星>
 前段でおおむね1話の内容について説明した。なにしろ壮大なオーケストラの奏でる音楽に負けない雄々しいささきいさおの歌唱と、それとまったく引けを取らない歌詞の内容に圧倒されてすぐのできごとである。あれよあれよという間に物語は進み、そしてクールギンとの一騎打ちになだれ込み、しかも初回にしていきなり負ける主人公ってどうよ! 当時すでに高校生であった筆者も本気で驚き、この作品が単なる子供向けの作品ではないんじゃないかと思わせるに十分な1話であった。しかもこの重厚で真摯なドラマはまだ続く。2話目でも戦闘ロボット軍団からの刺客・ゴチャックが登場し、まさにロボット同士の肉弾戦が展開する。この時のメタルダーはまだ自分の能力を完全に熟知していないから、相手の戦闘スタイルに合わせて力比べに徹してしまう。メタルダーに手や首を折られても立ち上がるゴチャックの闘志は、倒れたメタルダーの姿に勝利を確信して燃え尽きる。だがきわどい勝負を制したのはメタルダーであったという物語である。このようにメタルダー=剣流星は、日常や戦いの中で人間を知り、自分を知り、そして敵を知ることで、徐々に成長していく主人公として設定されている。

 例えば第3話ではヨロイ軍団ベンKとの戦いの中で「命」の大切さを知りつつ、同時に開発者である古賀博士の慈愛の想いから組み込まれた「自制回路」を活用することを知る。またサッカー少年のコーチを引き受ける中で、兄弟の血のつながりの不思議を目の当たりにすることで、ヨロイ軍団ダグスキー&タグスロンの兄弟コンビを撃破するヒントを得ている。また8話のバーロックとの戦いでは、過去にオリンピックの強化選手に選ばれながら、卑怯な方法で栄光をつかもうとした己を恥じるバーロックと正々堂々の戦いをすることで、人間の業の深さや罪を許すことを知るメタルダーである。メタルダーの初期編には、こうしたメタルダーの成長に関わる重要なエピソードが散見される。
 メタルダーの初期編に込められたテーマはいずれも重い。だがともすれば目先のかっこよさに目を奪われてしまいがちな子供たちにも、噛んで含めるように説明する真摯な態度が、本作の特徴である。だがそれをこともなげにやってのけることができた背景には、主人公・剣流星という青年の設定に負うところが大きい。

<知ることで知らしめる>
 本作のプロデューサーである吉川進氏は、当時のインタビューに答えて、「キカイダーを意識して作っている」と答えている。左右非対称のデザインは、確かにかつての人気作「人造人間キカイダー」を想起させるし、吉川プロデューサー自身は、キカイダーのプロデューサーでもあったから、当時の特撮ファンの多くが、本作とキカイダーの関連を指摘する声も多い。特に「青年の姿をしたロボットが徐々に成長する」というモチーフが2作に共通しているのだが、キカイダーが「悩める青年像」であったのに対し、メタルダーでは「生まれたばかりで何も知らない」という部分を強調したのである(その意味では原作漫画の「人造人間キカイダー」に近しい)。剣流星が「知る」という行為をそのままドラマに直結させることで、伝わりにくい物語のテーマやメッセージをダイレクトに視聴者に伝えることに成功している。

 例えば2話のテーマは「命」であるが、「命を大切にしなければならない」という当たり前のお題目を、ただ主人公に言わせるだけではドラマには程遠いし、見ている子どもたちには届かない。剣流星はまだ生まれたばかりのロボット人間であり、その頭脳にいただいたコンピューターは体験を記録し成長し続ける成長型のコンピューターである。彼の体験するすべてが今後の彼に影響するのである。この設定が剣流星の視線を、見ている子どもたちの視線まで下げることになる。そして何も知らない流星が「命の重さ」を「初めての友達(野うさぎ)」として認識し、野うさぎがベンKに捕まることで、ウサギの命の危険を察知する。戦闘により友達であるウサギを助けたメタルダーは、自分と同等の力を持ちながら実体は人間であるベンKを見抜くことで、その命の重さをうさぎと同等と感じる。そしてベンKの罪を許すという展開にまで拡大解釈を広げるほどの成長を見せたのだ。こうして視聴者である子どものレベルまで下げられた視線は、まるで流星が見たものが子どもの目に映るものと同じであることとして知覚され、さらには「命の重さ」を拡大解釈して敵すら許すという結果を「知らしめる」ことで徹底される。剣流星が何も知らない青年に設定された最大の狙いは、こうしたメインターゲットである子どもたちに、教条的にすぎる言葉を、流星が体験した出来事として認知させることにあったのかもしれない。

<秘密兵器のあるべき姿とは?>
 だがこうしたテーマ性を前面に押し出した作品作りは、長年の特撮ファンからは喝采を持って迎えられはしたが、メインターゲットである子どもたちの人気は芳しくなかったようで、視聴率的にも苦戦を強いられることになる。結局16話の北八荒の登場を持って従来通りのアクション路線に落ち着くことになる。だが本作のほとんどの脚本を執筆した高久進氏はあがき続け、トップガンダーがらみの話数ではメタルダーとの熱い友情路線で物語を進める。しかしながらそれでも視聴率は上がらず、ついには放送枠の移動とあいなってしまった。その放送枠移動直前では手品師・引田天功が登場、また移動後の25,26話ではこれまで東映ヒーロー作品で主役を演じたJACの演者たちが集まり、西部劇映画の名作「駅馬車」さながらの逃亡劇を繰り広げた。
 
 そして迎える34話から、本作は最終章に突入する。それはそれまで秘密とされてきたゴッドネロスの正体について触れる時でもあった。仰木舞の父親の帰国により、にわかに身辺があわただしくなったゴッドネロスは、メタルダーとの舞の父親の争奪戦になる。だが舞の父親は徐々にゴッドネロスの正体に近づいていくことになる。その正体の詳細は次回に譲るが、結局帝国を脅かす存在としてメタルダー抹殺に動き出すネロス帝国は、4軍団が総力を結集してメタルダーに挑むものの、十分に成長を果たしたメタルダーの敵ではなかった。そして迎えるゴッドネロスの対決で、辛くもメタルダーはネロスを倒すものの、自らも傷つき、剣流星への転身能力まで失ってしまう。しかも内蔵されたエネルギーの爆発によって地球が滅ぶことが分かった時、メタルダーは親友となった北八荒に自分のトドメを刺すように促す。戦いを終えた大戦の秘密兵器は、こうして姿を消していったのである。

 後続のロボット作品である「特捜ロボジャンパーソン」や「機動刑事ジバン」が、最終回で人の話の中へ帰って行ったことを考ええれば、非常にシビアで悲しい結末に思えてくる。だが戦争の落としごであるメタルダーには、現代の日本で市井にまぎれて暮らすことを良しとしないのである。結果的には地球滅亡がかかっていたためであるが、もしメタルダーが普通に勝ち残っていたとしても、同じように仲間たちから距離をおく別れ方をしたのではないだろうか。そう思える最大の理由は、メタルダーが「第二次大戦の秘密兵器」であるからに他ならない。
 鉄人28号が名匠・今川泰宏によりリメイクされた際、エネルギー問題や「人の犠牲なしには幸せは手に入れられないのか」という命題を持ち出して、傑作OVA「ジャイアントロボ」シリーズ並の作品とした。本来、甦った大戦末期の秘密兵器などは、現代にとってはオーパーツもいいところであり、本質的にはそこにあってはいけないものなのである。だがなぜそこにあってはいけないものなのか? そこには敗戦国として受け入れるべき教訓があるからだ。空想の産物とはいえ、鉄人やメタルダーなどの存在を持ち出して、戦争に勝利することを夢想することは、敗戦から立ち上がり、現在の日本を救った多くの名もなき人々の努力を無駄にすることにつながるからだ。だからあってはいけないのである。甦ってはいけないのである。敗戦によりゼロリセットした日本の昭和という歴史の上に、戦争を想起させるものがあることは教訓として必要だが、「これが戦中に完成していれば、日本は負けなかった」という言葉は、戦後の日本を必死で生きてきた人間の努力を踏みにじるものでしかない。

 剣流星=メタルダーは無知な青年として現代に甦った。そして戦争の亡霊であるゴッドネロスを倒すことで、その役割を果たした。残された彼の使命は、人知れず消え、滅びることである。剣流星がこの結論を得たのは、表向きには地球の崩壊があってのことであるが、自分が戦争の遺物である自覚こそが、彼をして舞や八荒の前から姿を消した本当の理由だと思っている。その意味で39話という物語のテーマを完結したと思える作りになったと感じた。たとえその話数が視聴率に悩んだ末の、打ち切りの結果だとしても。成長し、学習し、人間同士のリテラシーや教訓を学んだ剣流星が、当たり前のように人の前から姿を消すさまは、まるで人類を助けるために自爆して果てた「ジャイアントロボ」や「大鉄人17」の最終回と相似形をなすのである。

 次回はメタルダーの敵である、魅力的なゴッドネロスおよびネロス軍団について、語っていきたい。その魅力こそ、メタルダーの最大の魅力かもしれない。引き続きお付き合いいただければ幸いです。

追記
 本論執筆にあたり、大いに参考にさせてもらったのはDVD-BOXに付属していた豪華ブックレットであったが、なにぶんこれ以上の公式書籍がほとんどない作品である。だが放送当時に発売されていた宇宙船別冊のムックを友人の古書店主より買い受けた。また大学時代に古書店で購入した実に充実した内容の同人誌、そして1998年に販売された同人誌や東映ヒーローMAXのメタルダー特集のページを準備して執筆におよんだ。放送当時はあまり評価が高くなかった本作ではあるが、放送終了後、現在に至るまで「超人機メタルダー」という作品を支持する人々は確実にいるのである。そうしたファンの方々の努力が、本記事のベースにあるのだと、今更ながらこれらの記事を執筆なさった方々の努力に感謝したい。

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テーマ : 特撮・SF・ファンタジー映画
ジャンル : 映画

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No title

必至となっている個所を必死に訂正してもらえますか。

No title

なお様

 ご指摘ありがとうございました。修正いたしました。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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