「超人機メタルダー」~その2・魅力的な敵、ネロス帝国~

 草も生えないような荒野を、ヨロイをまとったり異形の怪物がほぼ横一列に進軍する。その進軍は1歩もとどまることなく、自らの主の欲望の赴くままに、世界を蹂躙する。その前には、第二次世界大戦中の旧日本軍の秘密兵器ですら容易に踏みにじるほどの圧倒的な質と量を誇り、いかなる近代兵器も寄せ付けない。

 「超人機メタルダー」のOPに流れる映像、続くゴーストバンクでの圧倒的な力強さを見せる映像には、上記のような説明がよく似合う。戦後を背景にのし上がったゴッドネロス率いるネロス軍団の特徴を一つ上げるとするならば、それは圧倒的とすら言える「質と量」ではないか。「量」についてはすでに説明した通りだし、実際にOPの映像を見てもらえばすぐにお分かりいただけるだろう。そして「質」に関しては、個々の軍団人の能力もさることながら、個々に与えられた性格やエピソードに起因していることがある。今回は東映が生み出した圧倒的な質と量を誇る「ネロス軍団」およびゴッドネロスについて語ってみたい。

<ゴッドネロス、その世界戦略>
 ゴッドネロス。その正体は桐原剛造。表の顔は桐原コンツェルンの総帥であり、世界経済に影響を与えるほどの巨大企業であり、関連企業の中には兵器の密売企業なども含んでいる。そしてその正体は村木國夫。古賀博士の元助手である彼は、超人機開発のために人体実験を繰り返したため、戦犯として捕らえられる。シンガポールの刑務所に収監され、一度は死刑を宣告されながら、要人を買収することで死刑を逃れる。その後渡米して巨大シンジケートの一員となる。さらに正体を隠し、顔も整形をほどこして日本に帰国し、企業を立ち上げることになるそうだ。彼の経歴から伺えることをまとめてみよう。

・軍団員の製造に当たっては、古賀のロボット技術が背景にある。
・ネロス帝国創造の背景には、アメリカのシンジケートの影響がある。
・帝国の資金源はあくまで表の桐原コンツェルン。
・帝国の破壊活動が桐原コンツェルン発展の礎となっているため、表裏一体
・桐原の表向きの慈善事業は、ただの気まぐれ

考えてみると、ゴッドネロスの世界支配計画は一見ものすごく合理的に見える。帝国の軍団員が戦争の火種を作り、戦争が勃発すれば戦争国を相手に兵器の売買をして利潤を得る。出来た利潤は新しい兵器の開発のために投入され、研究成果は軍団の強化と販売する兵器の水準を引き上げる。当然資金だけでなく資材も必要であるから、資源を持っている国はこうした対象になりやすい。つまり要人暗殺やテロなどのきっかけを作り、戦争状態を作り出し、資材と引き換えに兵器をやり取りすることで、世界中のあらゆるものや人を自由にできるというわけだ。つまり世界を舞台にしたすべてのパワーゲームは、資金や資材を背景としてネロス帝国と桐原コンツェルンが主役となる。暗い地下の基地の奥でふんぞり返っている悪の首領よりも、よほど実質的な支配体制であると言える。
 ところがこの支配体制は、基本的に資本主義経済を強硬に推し進めた形態である。本来資本主義とは右肩上がりを続けることが前提となっている経済体制であり、現在の日本が経済的に破たんしているために、国内の生産力や国としての発展が完全に足踏み状態にあることからも解るように、何らかの事情で経済成長が望めなくなった状態では維持できない。簡単な話、もしも核兵器などでネロス帝国が戦争状態へと陥れた1国が滅びるとしたら、そこからは何も得ることができない。そして再度その国から何物かを搾取するためには、莫大な資本を投資させられる必要に迫られる。ネロス帝国が戦争状態を一層強く推し進めることで、桐原コンツェルンは資本の支出を余儀なくされる。こうして世界の戦争状態が悪化することで、ネロス帝国は資金源を失い、維持しようと思えば表の顔である桐原コンツェルンは金を出し続けることになる。これでは帝国の維持はおぼつかない。結局ネロス帝国がいつまでも破壊活動を続ければ表の顔が維持できないし、破壊活動をしない兵器には威嚇以上の存在意義がない。ほどなくネロス帝国は有名無実化し、桐原にとっての不良債権と化すのである。こんな皮肉もないだろう。そしてそうならないために桐原=ネロスは世界の安定を望むしかない。最近のような日中や日ソの領土問題や中東の地域紛争が激化すると、おびえて暮らすのはむしろ桐原=ネロス自身ということになる。平和維持のために帝国の軍団員を出撃させたり、裏で桐原が莫大な資金を背景に敵対する国々を和合させるために働くハメになる。これで世界も幸せになれるではないか! 悪の帝国を作ったつもりが、いつの間にか平和維持に駆り出されるネロス帝国である。こんな悪の帝国も珍しい。

<4軍団、そのバラエティ>
 さて経済ジョークはこれぐらいにして、ネロス軍団の魅力に迫ってみたい。
 ネロス帝国は「ヨロイ軍団」、「戦闘ロボット軍団」、「機甲軍団」、「モンスター軍団」の4つから構成される。その軍団もそれぞれが階級制度による序列がある。この階級制度が上を目指すハングリー精神を生み出す。上の者は自分の地位を維持しようと努力するし、下の者は虎視眈々と下剋上を狙っている。このある種緊張感を持った組織が、ネロス帝国の基礎にある。
 この4つの軍団もそれぞれが協調関係にあるわけでなく、互いが切磋琢磨するように設定されているようである。そのため4つの軍団は、それぞれのカラーがあると言っていい。もっとも際立ってそれが見えるのが「戦闘ロボット軍団」と「モンスター軍団」だろう。

 「戦闘ロボット軍団」は凱聖バルスキーを頂点にいただく軍団であり、それぞれが強力な武装や能力を有して、敵と対峙した時には1機で敵を撃破することが求められる。そしてこの軍団の特徴を一言で言うならば、「仲間に対する忠実」ということになるだろうか。首領・ゴッドネロスに対する忠実さは帝国随一であるし、軍団員同士の情にも厚い。特に軍団長バルスキーに寄せる他の軍団員の信頼は厚い。特にバルスキーの片腕である豪将ガルドスや爆闘士ゴチャックとの会話は信頼を基本としている。また強闘士ローテールからは愛情を寄せられ、自分の戦闘データのすべてをバルスキーに引き継いで死んでいった。
 ここで興味深いのは、これら戦闘ロボット軍団を作った技術は、そもそも古賀博士の技術であることだ。古賀博士が最終的にメタルダーを完成させ、自制回路を搭載させたことを考慮すれば、戦闘ロボット軍団は命令者の命令に従うことのみがインプットされており、メタルダーよりも旧タイプのロボットたちであることが伺える。恐るべきはバルスキーたちが仲間を思う心や他人を愛する心を持ちえたことであり、メタルダーに搭載されている自制回路(+記憶型コンピューター)のプロトタイプが搭載されている可能性に思い当る。その上で、ネロスは自制回路+αを積極的に開発しなかったことを考慮すれば、ネロスは「自制回路」にあまり重きをおいていなかったのではないか? ここに古賀博士と桐原の確執が想像され、桐原が古賀のもとを離反して人体実験を繰り返した事実と符合してくる気がするのだ。

 「モンスター軍団」はバイオテクノロジーによって生み出された軍団員で構成される。軍団長である凱聖ゲルドリングがなぜ関西弁をしゃべるのかは置いておいて、彼らの特徴を一言であらわすなら、「卑怯、未練、恥知らず」であろうか。中にはメタルダー抹殺により軍団内での出世を目指した軽闘士ヘドグロスの妻であったウィズダムやその息子ヘドグロスJr.などは例外的であるが、彼らはそろいもそろって卑怯者であった。
 だがこのパーソナリティがゴッドネロスの一部だと勘ぐれば、清廉潔白ではありえない悪の組織の「負」の部分の代表であり、同時に汚れ役を買って出るだけの気概のある連中であると見ることもできる。バルスキーとガルドスが会話するように、ゲルドリングと豪将ブライディが会話しても同じように聞こえないのは、常日頃からモンスター軍団では下剋上を狙っていることが見て取れるだけに、ネロス帝国内部の緊張感を代表する存在だと言える。

 「機甲軍団」も基本はロボットであるが、戦闘ロボット軍団がそれぞれ突出する能力によるワンオフものであるのに対して、「機甲軍団」の軍団員は凱聖ドランガーを含めすべて量産型であることだ。しかもそれぞれが基本フレームとなるロボットに、アーマーとなる部分をつけて能力を発揮するため、基本フレームのロボットの互換性や、アーマー部分の共通性など、戦闘ロボット軍団や他の機甲軍団のロボットの技術をベースに簡素化、量産化に成功している。こうした量産技術が最終的に桐原コンツェルンの有力商品となっており、この技術開発は欧米を寄せ付けないとするならば、まさにネロス帝国の脅威を象徴する存在ともいえる。世界中のテロ活動に機甲軍団員が単騎で活動しているシーンを見るにつけ(暴魂アグミスなど)、彼らの能力の高さは疑いえない。命令に忠実であることを考えれば、戦闘ロボット軍団の技術が遺憾なく発揮されていることもうなずける。
おもちゃ的にも非常にギミックの多いもので、番組マストアイテムの一つであった「ゴーストバンクシリーズ」という手の平サイズの可動ミニモデルのおもちゃでは、人気の高い戦闘ロボット軍団を差し置いてほぼすべての軍団員が商品化されており、アーマーの着脱機構も再現されていた。

 さて最後になる「ヨロイ軍団」であるが、私にはこの軍団の存在が実に不可解に思えるのだ。他の3軍団がすべて人間の手により開発されてきた経緯を考えれば、なぜわざわざヨロイを着せて強化した人間を仲間にする必要があるのか? 命令をきちんと忠実に守る3軍団と比較すれば、裏切る可能性のある人間を仲間とするには帝国を維持するために不確定要素が増えるではないか。しかもヨロイ軍団の人間たちが、従来の人間生活を含めて二重生活をしているとすれば、私生活がウイークポイントになる可能性だってある。ましてや給与が支払われていたり、金銭でネロスに加担しているとすれば、それだけで敵に付け入るすきを与えるだけである。
 だがゴッドネロスは1話の段階ですらヨロイ軍団凱聖クールギンを重用し、あまつさえ「余の帝国の重鎮」とまで表現した。しかも26話で明らかになったようにクールギンの素顔はゴッドネロスの影武者であったりしたことを考えても、ゴッドネロスがヨロイ軍団を珍重していたことは確かであるし、他の軍団よりも格上に置いていた可能性もある。そこにあるのは組織論としてのアメリカのシンジケートの姿と、信頼関係としてのシンジケートの姿だったのではないだろうか?
 ゴッドネロスが能力優先でネロス帝国を創造したことはよくわかる。それは桐原自身が渡米していた時代に過ごしたシンジケートの組織論の名残だろう。バラツキのある人間の能力をある程度達観し、その上で適材適所をにらんでの人材配置がシンジケートの組織論の要諦が「ネロス帝国」だとすれば、結局能力にバラツキがあっても信じるに足るのは人間であるという結論が、「ヨロイ軍団」だと思える。なぜヨロイかと問われれば、VIPの移動に際して、SPが体を張ってVIPを守る場面で、SPの体をも守るためには、防弾チョッキ以上のヨロイが必要だと考えれば合点がいくのではないか。意外にもやさしいゴッドネロス様だったりする。

<離反者、ネロス帝国の限界>
 さてここまでゴッドネロスの言うがままに建設されたネロス帝国であるが、帝国に離反するものが現れる。ヨロイ軍団激闘士ベンKと戦闘ロボット軍団暴魂トップガンダーの二人である。まあ状況からすればヘドグロスJr.とその母・ウィズダム、軽闘士見習いマドンナなどもこの列に並ぶが、前述の二人はともに帝国への貢献も著しく、裏切りを許さない鉄則を持つネロス帝国にあって、特殊な二人である。
 ここで興味深いのは二人のそれぞれの軍団での扱いの差である。トップガンダーはメタルダーとの正々堂々の勝負で敗れた後、帝国に拿捕される。本来なら作戦失敗の汚名により破壊処分を下されるトップガンダーであるが、帝国への貢献が大きい彼に対しては、ゴッドネロスも寛大な処置を与えようとしていたところ、帝国の卑怯なやり方に嫌気がさし、帝国から離れる。このとき彼の上司であるバルスキーは、ゴッドネロスに寛大は処置を賜るように願い出るばかりでなく、トップガンダーの気持ちを汲んでフォローしようとしている。ここにも信頼関係が垣間見えるし、バルスキーの男前が上がろうってもんだ。
 一方のベンKには、メタルダーの戦闘直後に帝国を出奔しているらしく、同様のドラマは見られない。しかも上司であるクールギンに責めを負わせるでもなく、ベンKの裏切りに驚くでもない。ここで「ヨロイ軍団」の特徴が浮かび上がってくる。ヨロイ軍団の素体はあくまで人間である。25,26話でも登場したように、ヨロイ軍団の下級兵士も人間であるため、常に軍団には多くの人間が出入りしているようだ。しかも帝国の裏切り者を始末して功を誇ったヨロイ軍団豪将タグスキー&タグスロンであるが、1度は大爆発して果てたにもかかわらず、7話、劇場版、25話とメタルダーと激闘を繰り広げている。つまり素体である人間が入れ替わってもかまわないのである。おそらくは下級兵士から実力のあるものが抜擢されるものと思われるが、そう考えるとヨロイ軍団の階級とは、個人ではなくヨロイそのものに付けられているとも考えられる。他の軍団とも異なる、かなりシビアなヨロイ軍団の裏事情である。

 ベンKが裏切るのは、以上のような事情を考慮すると、いたしかたないと思えるほどシビアである。だがトップガンダーの離反については、やはり疑問が残る。ゴッドネロスの命令に忠実であることが売りの一つのである戦闘ロボット軍団が離反したのはなぜか? 以前「超電子バイオマン」を取り上げたときにも指摘したが、創造主に忠実なはずのロボットが離反するには、そのコンピューターが善悪を判断できるほどに優秀であるため、創造主である科学者が優秀であるが故に足元をすくわれたようなものだと評した。トップガンダーの場合も同様の例だと思われる。つまりメタルダーほどではないにしろ、十分に優秀なコンピューターを内蔵しているトップガンダーも、自分の意志を持ち始め、自分の美学にのっとった判断基準を持ち始めたことになる。それはあくまでも創造主であるゴッドネロスが優秀であるが故に、離反したのではないか。直接的な事情として、メタルダーとの出会いというアクシデントがあったにせよ、ゴッドネロスが開発したコンピューターは、トップガンダーという体を得て、自我を持ち始めたのである。

 「超人機メタルダー」という作品が、いまだに輝きを放っているのは、こうした魅力ある敵・ネロス軍団の面々と、丁々発止の戦いを繰り広げる中で、メタルダーの側やネロス軍団の側に様々なドラマが発生し、まれにみる「仮面劇」を構成していることである。かつて敵キャラクターにこれほどの個性を持たせた例はほとんどない。通常ならばハカイダーやブラックビート級のライバルキャラにのみ与えられた個性が、メタルダーを挟んで個々に切磋琢磨する様子が、そこにいるかと思えるほどの実在感を持って画面からあふれるようである。メタルダーを演じる演者や戦時中に開発されたメタルチャージャーがマツ○ファ○リアだったりと、突っ込みどころも多いと言われる本作であるが、今年の春先に物故した高久進氏の脚本も娯楽性を持たせながら、深いテーマ性を見せる。本作の面白さは今回ご紹介した点だけではないはずだ。ぜひレンタルなどでご覧頂いて、昭和末期に制作された東映ヒーローの面白さの片鱗を感じていただきたい。

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コメント

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No title

あの、平和維持にためとなっている個所を平和維持のために訂正して貰えますか。

No title

なお様

 ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。申し訳ありません。

No title

帝国の拿捕されるとなっている個所を帝国に拿捕されるに訂正して貰えますか。

No title

なお様

 ご指摘ありがとうございました。修正しました。申し訳ありませんでした。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
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後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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