「ゼイラム」~存在感のある女性アクション~

 劇場版「牙狼<GARO> RED REQUIEM」公開で、映画監督としてもノリに乗っている雨宮慶太監督。監督自身がキャラクターをデザインし、その魅力あるキャラクターが、監督自身の演出で動くという、おそらく世界でも類を見ない制作形態が、雨宮監督の最大の特徴だろう。一見して動くところが想像できないほどの緻密でアグレッシブなデザインでありながら、映像化して動いた時の驚きや感動が、画面からダイレクトに伝わってくる感じは、雨宮監督作品ならではの長所である。
 そんな雨宮監督が2作目に監督した作品が「ゼイラム」である。公開された当時ですらややカルトぎみの作品であったが、「仮面ライダーZO」や「人造人間ハカイダー」を制作した監督として認知された近年では、レンタルDVDでも本作などを見ることができるようになった。劇場版「牙狼」のヒットを祈念して、今回は雨宮監督の出世作となった「ゼイラム」を取り上げてみたい。

<雨宮監督作品前史>
 本ブログで雨宮監督作品を扱うのは、何も初めてではない。「鳥人戦隊ジェットマン」に関しては「悪人冥利」でトランザを取り上げたし、「人造人間ハカイダー」も取り上げた。また「仮面ライダーZO」および「~J」もとりあげたが、雨宮作品としてひとまとめにして雨宮作品について紹介したことはない。そこで以下に概略ではあるが雨宮監督作品を発表年順に並べてみた。

1988年 未来忍者 慶雲機忍外伝(ビデオ作品)
1991年 ゼイラム(映画)
1991-1992年 鳥人戦隊ジェットマン(TV各話監督、パイロット担当)
1993年 仮面ライダーZO(映画)
1992-1993年 恐竜戦隊ジュウレンジャー(TV各話監督)
1994年 仮面ライダーJ(映画)、ゼイラム2(映画)
1995年 人造人間ハカイダー(映画)
1997年 タオの月(映画)
2000年 鉄甲機ミカヅキ(TV)
2005年 牙狼<GARO>(TV)
2006年 牙狼<GARO>スペシャル 白夜の魔獣(TV‐SP)
2010年 牙狼<GARO>~RED REQUIEM~(映画)


ここにご紹介した作品群はあくまで主要な映像作品のみであり、それ以前にキャラクターデザインやアドバイザーなどで参加した作品については示していない。それらを示すと膨大な作品量になる。そして雨宮氏がいかに東映作品に貢献したかがわかろうというものだ。気になるのは2000年前後に作品がぱったり見られないことだ。2000年以前については「ミカヅキ」にかかりっきりだろうし、2000年以後は現在につながる「牙狼」の制作前段階になるから、作品として結実したものは少なくても、かなりの仕事量をこなしていたと思われる。現在カルト的な人気の雨宮監督ではあるが、その歩みは「ゼイラム」の成功に負うところが大きいだろう。

<概要および物語>
 「ゼイラム」は19991年12月に劇場公開された雨宮監督初の劇場公開作品である。主人公となるイリアやゼイラム、リリパットや劇中に使用される文字や武器などのデザインを雨宮監督がほぼ一人で手掛けた上、脚本にも加わっている。キャラクターや使用される小物など、その独特のデザインセンスで統一された世界観が功を奏し、本作をきっかけにして雨宮監督は注目されていくことになる。

 物語は宇宙の刑務所を脱走したゼイラムが、地球に逃亡するところから始まる。警備兵の銃弾をものともせず、まさに蹂躙するかのように脱走したゼイラムであったが、すでにその報告を受けて先に地球に到着し、ゼイラムを拿捕しようとする一人の女性がいた。その名はイリア。名うての賞金稼ぎである彼女は、相棒の人工頭脳・ボブとともに、ゼイラム捕獲作戦に乗り出していた。その作戦とはゼイラムを無人の密閉空間である「ゾーン」に引きずり込んで、力づくで捕獲する作戦である。だが作戦遂行の最中に、神谷と鉄平という2人の日本人が偶然にこれを邪魔してしまう。彼らは電気工事の会社で働くエンジニアであるが、引きこみで勝手に電気を浪費しているイリアたちを問いただすために、偶然通りかかっただけであったのだが、運悪くゼイラム捕獲のための罠に落ち込んでしまう。だがゼイラムはゾーンに入り込んでも関係なく鉄平やイリアに襲いかかる。激しい肉弾戦が繰り返される中、倒しても倒しても形態変化をしながら襲いかかってくるゼイラム。イリアの作戦はゼイラムのしぶとさやゼイラムの放った人工生物によりたびたび邪魔されて混乱する。鉄平も神谷も幾度となくゼイラムに襲われて、息つく暇もない。だが彼らはイリアと共同戦線を張ることで、現実世界に復帰する。だがその時、時間とともに消滅するゾーンの中にイリアが閉じ込められてしまう。ゾーンの消滅まであとわずか。イリアはゼイラムを撃退し、消滅寸前のゾーンから生還できるのか?

<ゼイラム、不死身の恐怖>
 「死なない」って、どういうことだろう? かつて映画に登場した不死身の化物といえば、「ターミネーター」のT-800シリーズ、「ゾンビ」のゾンビ、「13日の金曜日」シリーズのジェイソン、「遊星からの物体X」の物体Xってなところだろうか。こういっては身も蓋もないのであるが、言ってしまえばこれら「不死身」にカテゴライズされる怪物の基本形は、どこまでも「ドラキュラ伯爵」なのではないだろうか。倒しても殺しても甦る不死身の化物。しかも倒すたびに凶暴さを増し、不気味さを増す演出を考えれば、ホラーとしてこうした怪物が「映画」というメディアに向いている存在であることは、ご理解いただけることと思う。本作に登場する「ゼイラム」もこの列に並ぶ存在である。だが本作のゼイラムは、これらの怪物とはちょいと異なる。その魅力について語ってみたい。
 何しろ本作のタイトルを独占している怪物である。まずアバンタイトルから登場し、いきなり凄惨な殺戮を見せつける。その容姿は編み笠をかぶったような修行僧のような格好。しかもぼろ布をまとったその姿は、どう見ても破壊僧のイメージだ。ゼイラムには銃弾がまったく効かない。しかも腕の一振り、足の一蹴りで人間を圧倒して見せる。そこに残るのは血まみれの死体だけ。そんな化物が地球に侵入するのだからたまったものではない。
 ゼイラムの能力について書くとすれば、その能力が実に多彩であることを指摘せねばならない。まず敵対した相手から奪った武器を、一瞬にして自分用にカスタマイズできる能力。しかもその能力にはもともとの武器が持っている能力を上回る。さらに自分の体からリリパットなどの別個体を作りだし、使役することができる。しかも別の生命体の細胞からクローンを作りだす。だがその最大の能力は、ゼイラム自身の体にある。ゼイラムの体は自分が倒したヒューマノイドの体を乗っ取ったものである(余談だが本作の前日談である「イリア」では、イリアの兄の体を奪っている)。だから銃弾などは効かない。というか意に介さないと言ったほうがよさそうだ。実は本体は編み笠の部分であり、体を捨てては新しい体に乗り換える。だからイリアに倒されても、そのたびに体の部分を切り捨てて、新しい姿でイリアたちに襲いかかる。その執念は、本体の編み笠の中央にある白い女性の顔のような部分がヘビのように伸びるとき、新たな殺戮が繰り広げられるのだ。

<イリア、存在感ゆえに>
 さてこれほどの犯罪者を相手に戦うのはイリア。女性の賞金稼ぎである。そして相棒のボブのアシスタントによって、さまざまなミッションをこなしてきた筋金入りの賞金稼ぎでもある。だが相棒のボブに言わせると、彼女の戦闘行為は明らかに過剰であり、行き過ぎた戦闘行為が、賞金稼ぎの上部組織にとってはしばしば問題視されているようである。とはいえイリアが様々なアイテムやウエポンを駆使し、確実に賞金首を捕まえていることは疑い得ない。かの「ダーティペア」のユリ&ケイだと、過剰な戦闘行為が1都市、1惑星ごと崩壊させてしまうことを考えれば、「ややマシ」と言える程度かもしれない。
 そんなイリアであるが、本作でのゼイラム捕獲に関しては非常に苦労を強いられる。その事情の半分はゼイラムの手ごわさであるが、もう半分は地球人・神谷と鉄平によるものだ。彼らがコメディ・リリーフとして、またゼイラムの恐怖を体現する存在として登場するが、最後の最後で神谷と鉄平の電気工としての能力に助けられるわけである。画面を縦に3分割して、イリアを中心にしてしゃべる3人の掛け合いは、どこか漫才じみていて楽しい。その一方でイリアは神谷と鉄平の命を守りながら、自分の命まで危険にさらしながらゼイラムと熾烈な戦いを繰り広げるのである。
 なんといってもゼイラムとイリアのバトルシーンは本作最大の見せ場である。序盤の戦闘では「スーツ」を着用しての戦闘だ。銃器を使わない肉弾戦でゼイラムを追い詰めようとするイリア。暗い工場内での戦闘で、イリアのスーツが部分的に光る。太いパイプの上にすっくと立つイリアの雄姿を見てほしい。戦隊やライダーとも異なるストイックなヒロイズムに、あなたも酔いしれることができるだろう。そして多彩な武器を使いこなし、時に大爆発、時に弾着を浴びながら、臆することなく敵と渡り合うイリアの姿こそ、イリアの魅力そのままである。
 女性がアクションをこなすこと自体、日本初のアクション女優である志穂美悦子を見ている私としては、女性のアクション女優はさして珍しいとはいえない。だが千葉真一率いるJACの門下生である志穂美の他、宇宙刑事シャイダーの「アニー」役森永奈緒美などもいる。また「スケバン刑事」シリーズや最近の「ドラゴネット」などアイドルがアクションを演じる作品も存在する。そしてVシネマなどでは、グラビアアイドルがガンアクションを演じるタイプの作品もある。アンジェリーナ・ジョリーにしてもミラ・ジョボビッチにしても、これと同じなのだ。
そんな中で本作のイリアが一線を画す存在だと思えるのは、銃器を扱うガンアクション系の人物でありながら、同時に体を使ってのアクションもこなす存在でもある。おまけに「スーツ」を着用する「変身ヒロイン」でもある。つまりイリアはアクションヒロインとして、見事なほどに全部入りなのである。そんな彼女がアクションに演技に大活躍する本作は、タイトルは「ゼイラム」でありながら、イリアの魅力満載の作品でもある。その証拠に物語終盤、消滅する寸前のゾーンの中で、じりじりと焦りながらチャンスを待つイリアの額や露出された肌に光る汗を注目してほしい。画面から体臭までも感じられるかのようなイリアの二の腕や首筋に、戦う女性としてのリアルとヴァーチャルが同居する存在感が感じられる。また雨宮監督の言によれば、本作の続編「ゼイラム2」は、「よりかっこいいイリアを目指した」作品であるという。本作よりもより大人びたイリアの、クールビューティーさが魅力な「ゼイラム2」である。
 イリアを演じた森山祐子は当時まだ売り出し中のグラビアアイドルであり、中京テレビの「お笑いマンガ道場」の回答者としてお茶の間の人気を得ていたタレントさんである。その後「ゼイラム2」に出演した後、雨宮監督作品にも登場していた。2000年前後まではVシネマや2時間ドラマなどに顔を出していらしたが、現在はどうしているだろうか。本作でのイリアの存在感は、間違いなく女優・森山祐子自身の存在感、そのものである。

<その後の話、前日談>
 本作のアクションは、まだワイヤーアクションなどが確立されていない時期のアクションだ。この時期はまだ「躁演」といったほうがいいだろう。ワイヤーがない状態でのアクションは、どうしても劇場のスクリーンに縛られてしまう。画面の構成は対立するイリアとゼイラムを両端に置いた横長の画面で固定され、単調な画面となる。いわばゲーム「ストリートファイター」のような画面だと思えばいい。単調になりがちの画面も、雨宮監督はカット割りを細かく設定し、一つ一つのアングルを変えることにより、「マトリックス」と比較しても遜色のないほどにスピィーディなバトルシーンを演出している。また変形したゼイラムにミニチュアを使うなどの演出も、これ以降の雨宮監督の作品に受け継がれていく。まさに雨宮作品の萌芽は、この作品や前作「未来忍者」にある。

 この「ゼイラム」はシリーズ化され、「ゼイラム2」が19994年に公開される。ここではロボットのユニットに組み込まれたゼイラムが暴走し、再び神谷と鉄平を巻き込んでの激闘を繰り広げるイリアの姿がおがめるそうだ。ここではイリア以外の賞金稼ぎが数多く登場し、ゼイラムロボットに一瞬にして殺害されるシーンがあるが、この賞金稼ぎたちはみなその多くが自作で衣装を作成した一般公募の人々であり、当時大いに話題となった。現在著名になられた人々もこの中に混ざっているとか。また前日談となる物語が、OVAとして制作されている。若き日のイリアが出会ったゼイラム、ボブが相棒になった理由、そして最愛の兄を失ったイリアの物語が、全6話で発表されている。この作品についてはいずれ本ブログでレビューしてみたい。まずは本作でイリアやゼイラムのアクションに触れてみてほしい。

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