機動武闘伝Gガンダム~その2・師との絆、友との絆、そして・・・~

 本作の主人公ドモン・カッシュは多くのファイターたちと拳を交えることで、わかりあっていく。ネオアメリカのチボデー・クロケット、ネオフランスのジョルジュ・ド・サンド、ネオチャイナのサイ・サイシー、ネオロシアのアルゴ・ガルスキー。彼らはバトルイレブン編で初めてドモンと対決しドモンのライバルとして登場する。そして新宿編では心のすきを突かれて力に魅入られ、デビルガンダム細胞に犯されてしまう。だがシャッフル同盟のメンバーが、命を賭して彼らを救いだす。それは彼らがシャッフルの紋章を受け継ぐにふさわしい男たちであったからだ。結果的にドモンをはじめとする5人は「シャッフル同盟」という「絆」で結ばれたのである。だがこの「絆」は、本質的にはドモン自身が拳を交えることで、自らを傷つけることで手に入れた「絆」なのである。このように本作では、一見すると当たり前のように物語に存在しているドモンを中心とした「絆」が、本質的に別の意味を伴っていることが多い。本作の登場人部にとっての「絆」が、さまざまな意味が重なっていることを、今回は少しだけ考えてみたい。先に答えをばらすようであるが、本作の「熱さ」の秘密がここらへんにあるようなのだ。

<熱いバトルの背景にある絆>
 本作ではより単純化したロボットバトルの解りやすさが、見るものにダイレクトに伝わる構造を持っている。例として「超電磁ロボコンバトラーV」で考えてみると比較しやすいかと思う。通常のコンバトラーの敵となるどれい獣やマグマ獣には背景がない。だが二人の将軍が自身のマグマ獣を競わせて、勝ったほうをコンバトラーに挑ませたり、2体のマグマ獣を合体させたりすれば、それだけでやられメカは背景を持つ。その背景こそがバトルを盛り上げる。ましてや最終決戦に挑んだガルーダが、ビッグガルーダに乗り込んで挑む戦いには、さらなる盛り上がりが期待できるのは必然だろう。つまり敵味方双方に情報を付加することにより、戦う理由を見出し、戦いの趨勢を熱いものにすることができるのである。本作のガンダムファイトが「戦争」と同一の意味を持っていることは前回指摘した。そして戦う者同士が理由や事情があるということもまた、このバトルが「戦争」にも等しいことを、あからさまに示している事実だといえまいか。

 本作ではまさにベストバウトとでも言うべきいくつもの名勝負が繰り広げられている。きっと人それぞれの心の中に、本作のベストバウトが存在するだろう。ここからの話は、みなさんが思うベストバウトの背景にある人の絆を思い出しながら読んでいただきたい。 
例えばドモンが本作で明確に「負け」を認めた試合は1度しかない。そのたった1度は、17話でのネオドイツのガンダム・シュピーゲルとの試合である。シュピーゲルのガンダムファイターはシュバルツ・ブルーダーという男である。バトルイレブンの時にはまったく触れていないネオドイツのファイターとの戦いが、なぜここまで盛り上がるのかを考えてみたい。一つにはガンダム・シュピーゲル自身のかっこよさにある。ドイツの軍隊を想起させる鉄兜っぽいヘッドの形状。それでいてネーデルガンダムやマーメイドガンダムのようなギャグ寄りのデザインではなく、わかりやすい黒を基調としたデザインとカラーリング。なによりシュバルツの動き「ゲルマン流忍術」を最大限にトレースして動く直接的な強さを持っている。そして重要なのはシュバルツ・ブルーダーそのものにある。通常のファイトであれば間違いなくとどめを刺すであろう展開を寸止めにしておき、誰がどう見てもシュバルツはドモンを教え導こうとしているではないか。だが口調はあくまでドモンを挑発するのみである。だがその声は、ドモンの兄・キョウジの声と同じ声なのだ。だがキョウジは6話にてデビルガンダムとともにコロニーから地球へと逃亡し、デビルガンダム事件の首謀者として、弟のドモンからすら追われる身であるはずの男なのである。本作最大の謎である「デビルガンダム事件」の真相にまつわる謎、そして誰が聞いても明らかなキョウジの声。シュバルツ→ドモン→キョウジという3人の関係性。この不安定な絆こそが、この17話のバトルの背景にあることで、このバトルがより熱いものになっている。

 前回コメントをいただいた笠希々さんも指摘していた37話のドモンとサイ・サイシーのラストバトルも実に忘れがたい名勝負である。この背景にあるのは、全勝宣言の誓いを果たそうとするドモンの意地と、今は亡き父親から譲り受けた少林寺再興の願いの重さのぶつかり合いである。すでに3話で戦っている二人であるが、ドモンが決めたと思った瞬間に、首を取っていたというペテンのような勝負で引き分けとなっていた試合である。ドモンいわく唯一引き分けに持ち込んだ相手がサイ・サイシーなのだ。実力伯仲の二人が戦い競い合うのであるから、ただでさえ盛り上がる。その上で、ドモンを「兄貴」と言って慕うサイ・サイシーなのだ。
その彼が真の力に目覚め、両腕を切り落とされてなお気迫で発動させる「真・流星胡蝶剣」である。互いに負けられない気迫と気力のぶつかり合うリングの中で、ドモンの駆るゴッドガンダムの必殺技ゴッドフィンガーをついに砕くことに成功する! 勝利を確信したサイ・サイシー。だがその刹那、左手のゴッドフィンガーがサイ・サイシーのドラゴンガンダムの腹部をとらえた! ドモンがヒートエンドを唱え終わる直前に、ネオチャイナの総帥の声が戦いを止めた。こうして少林寺再興の道が開き始めたことで、ドモンとサイ・サイシーの激闘は幕を閉じたのである。
 この時、ドモンもサイ・サイシーも本気で戦っている。特にドモンは最後の最後まで、決めるつもりで爆熱ゴッドフィンガーを放っている。あのタイミングでの左のゴッドフィンガーが出たのは、右を犠牲にしてのトドメだと考えていたのだろう。だがやはり爆熱ゴッドフィンガーを破壊したファイターなど、完全に封じ込めたシュバルツ以外には彼だけなのである。だからこその最後の「ヒぃ~トォ、エ~ンド!」は殺す気で放っているドモンなのである。わずかばかりの手加減もできない戦いだからこその緊迫感に満ちた展開と描写。わずか10分少々の時間に圧縮された濃密なエピソードと時間の積み重ねが、この熱さを演出しているのだ。

<二人の師匠、別れの悲しみ>
 ドモンには結果的に二人の師匠がいる。一人はマスター・アジアであり、もう一人はシュバルツ・ブルーダーこと兄キョウジである。ドモンの人生を見ていると思うのだが、彼はどうにも人との縁が薄いのである。幼い日のドモンは父や兄との科学的才能の確執から家を出る。だがそんな孤独をかこつドモンには、心やさしき師匠マスター・アジアが現れることで、彼の心は救われている。修行を終えて成長して実家に帰ったとしても、彼はわだかまりなく家族に溶け込めるだけの素養が6話からも見て取れる。それは結果的に見せかけでしかないのだが、「デビルガンダム事件」によりドモンはこの家族を一人残らず失うのである。だがこの時、彼はレインという幼馴染の女性を得ることで、ガンダムファイトとデビルガンダムの捜索に乗り出していく。それは冷凍刑に処された父を助けるためという大義名分があるからだが、彼の心に父親の不名誉をそそぎたいという思いがあったろう。だがデビルガンダム事件の顛末は、敬愛する師匠であるマスター・アジアの心変わりの引き金となり、キョウジすらデビルガンダムに奪われてしまう。こうしてデビルガンダムに奪われたドモンの愛する人々がいる一方で、キョウジの最後の想いがシュバルツを作り、そして新シャッフル同盟の4人との友誼を結ばせるのである。ドモンは誰かがいなくなると誰かが助けるというサイクルを繰り返す。その中でも最も衝撃的であったのはマスター・アジアを失ったことだったのではないだろうか。

 12話で初登場したマスターは、当初ドモンの師匠であり、味方として登場する。だが新宿の廃墟での暗躍は、徐々にマスターの真意を現し始め、デビルガンダム細胞で強大な力を得たチボデーたち4人を従えて、ドモンを取り込もうと動きだす。その動きはドモンの修行の場となったギアナ高地までおよぶ。そしてその真意を明らかにしないまま、ひたすらドモンをデビルガンダムに取り込もうとするのである。ここでは新シャッフル同盟となった4人のメンバーと、シュバルツの導きによりドモンは修行を完成させ、ついに「明鏡止水の境地」にいたるのである。その後マスターはマスターガンダムを駆り、ドモンのシャイニングガンダムとの対決に挑むのであるが、決勝大会用の機体であるゴッドガンダムに乗り継いだドモンは、マスターガンダムを一蹴することに成功し、時間ぎりぎりで決勝大会に参戦することになる。
 だがマスターの企みはまだ続く。ネオホンコンで開かれた決勝大会は、ネオホンコンの首相ウォンと結託することにより、ギアナ高地で破壊したはずのデビルガンダムを再生させ、再び暗躍し始める。その真意はガンダムファイトで鍛え上げた愛弟子・ドモンをデビルガンダムのコアとして招き、デビルガンダムを使って地球に君臨し、地球上の人間を一掃した上で、地球を緑あふれる美しい自然の星へと戻す作戦である。だがこのマスターの願いはデビルガンダムを私的な支配欲で使役しようとする人間たちに使われるてしまう。どうしてもマスターの思い通りにはならない。そしてランタオ島での最終バトルロイヤルで、デビルガンダムのコアであったキョウジとキョウジがデビルガンダム細胞で生みだしたシュバルツの二人を犠牲にして、ドモンはデビルガンダムを葬ることに成功する。だがそれを見て烈火のごとく怒りをあらわにするマスターは、ドモンに再び戦いを挑む。それは表面上はガンダムファイトの最終決戦であり、同時にシャッフルの師弟の対決でもある。だが真実は、地球の未来を賭けた戦いでもあったのだ。激しく、激しく、どこまでも激しくぶつかり合う二人。マスターが真意を明かしたとき、ドモンは初めてマスターに反論する。「人間も天然自然の一部であり、それを殺すのは愚の骨頂である」と。だが一度振り上げた拳はもう止まらない。決勝直前にマスターが直接ドモンに伝えた最終奥義「石破天驚拳」を放ち、二人はぶつかり合う。そして己の過ちに気付き、ドモンが師である自分を越えたことを認めるマスター。美しい朝日を浴びながら、ドモンに抱きかかえられつつ流派東方不敗を叫び、マスターは息絶える。ただ涙にくれるドモンであった。

 面白いと思うのは心の修行はギアナ高地でシュバルツに、技の修行の最後はマスターが行っているところだ。ドモンが物語開始当初は無類に強い人物として描かれているのだが、次第に心の弱さが露呈してくる。強いのだが心が弱い。しかも「怒り」に任せてのスーパーモードを操るのに苦労しているのだ。この弱点を1年という放送期間内(あるいはガンダムファイト期間内)で改善して成長する。しかも1度は心を鍛え直し、心と体が成長してところで、マスター・アジア直々に最終奥義を伝授されるのである。まさに見ごたえのある1年といっていいだろう。しかもマスターの死に際の二人の会話は、何度見ても泣ける。愛弟子に解ってほしかった師匠と、師をわかってあげられなかった弟子の、筆舌に尽くしがたい後悔の想いがただあふれてくる。

<ドモンの腕の中に残った女(ひと)>
 最終決戦でドモンがくしくも受戒したように、マスターと張り合うことばかり考えていたドモンは、マスターの真意に最後まで気付けなかった。だが最後の最後で気づけたことで、結果的にマスターに、シュバルツに、キョウジに見守られてここまで戦ってきたことを知ったドモンである。だがすべてを知ったドモンにはキョウジもマスターも生き残ってはくれない。またもドモンは予想だにしない人を失ってしまうのである。そう、これまでドモンを陰になり日向になり支えてきたレインである。

 最後の土壇場で漁夫の利をさらっていったのがウルベ少佐である。ガンダムファイターであった彼が私怨を晴らさんとの企みは、デビルガンダムを私的に用いての世界制覇であった。しかもキョウジを失ったデビルガンダムのコアは、ウォン首相の研究成果により女性であるレインが選ばれた。そして起動させたデビルガンダムは、ネオジャパンのコロニーで活動を開始し、伸ばした触手を使って地球すら食らい始めた。ウルベは同時にガンダムファイトの無期限停止と世界の覇権が永遠にネオジャパンにあることを宣言する。

 もちろん我らがドモンはこれに反旗を翻す。ここでより重要なことは、ドモンにとって世界の趨勢などどうでもよく、たった一人の自分の理解者であるレインを取り戻したいという思いが彼を突き動かしているという事実だ。そもそもドモンにとってガンダムファイトですらどうでもよく、冷凍刑になった肉親である父親を助けることが第一義であったわけだから、デビルガンダム事件の真相がはっきりとしたこの時点で、ミカムラ博士とウルベ少佐を告発すればよいのであるが、ドモンにはそんなことどうでもよいのである。それよりもレインである。しかも最終的にカッシュ博士が冷凍刑から解き放たれても、ドモンは父親にたいして目もくれない。レインのためだけに戦い、レインのために突撃するのである。アレンビーがアタックしても全く意に介さなかったドモンであるが、決勝バトルロイヤルの当日の朝、ドモンはレインに告白しようとしているのである。すでにドモンもレインも気持ちは盛り上がっているのである。こうなるとウルベの所業は単なる通過儀礼であり、二人が越えるべき最後の障害でしかない。

 その上で、ドモンは親兄弟という肉親を失い、師匠を失っている。代わりに得たものは4人の認め合ったライバルたちである新シャッフル同盟と、競い合ったファイターたち、そしてレインだけなのである。喪失と拾得を繰り返したドモンの人生は、大きな存在の人々を失いながらも、さらに大事な人々を得たのである。それでチャラだとは思わないけれど、最後にドモンは自分の何を捨てても助け出すと決めたレインを手に入れることができたのである。

 そりゃ、天驚拳だってラブラブになるよ(笑)

 だって、人生かけて手に入れた女だもん。
ちょっとだけ冷静になるけどね。やっぱりドモンの人生はしんどすぎたんだよなって思うんだ。だけど本来「機動武闘伝Gガンダム」って物語は、「機動戦士ガンダム」をエッセンスとして引き継いでいるから、「戦争」という単語一つとっても、どうしてもしんどくなってしまうのも仕方ないのではなかろうか。そのしんどさをひとえにドモンは主人公として引き受けてきたのである。だが本質的に「Gガンダム」はロボットバトルというエンターテイメントとしてスタートしている。それを考えれば、きちんとエンターテイメントとして終わらせたい。そんな思いが名匠・今川泰宏監督やスタッフの中にあったのではなかろうか?
 LDの監督インタビューの記事にはさまざまな裏事情が垣間見える、貴重な記事の宝庫である(ウルベ少佐の本名が「笑福亭ウルベ」というネタもここに掲載されている)。見ていた当時、意見百出であった「ラブラブ天驚拳」であったが、スタッフの間でも相当なやり取りがあったそうで、結局は今川監督の強権発動で押し通したそうである。なんにせよ良くも悪くも大きな話題を残した「ラブラブ天驚拳」であった。本作には「コードギアス 反逆のルルーシュ」のメインスタッフである谷口悟朗や河口佳高などが参加しているが、彼らは今川監督の良き理解者であったことも記事には書かれている。けどラブラブ天驚拳はどうだったんだろうか。

 現在月刊「ガンダムエース」誌上で連載されている「機動武闘伝Gガンダム」。年末のこのタイミングで単行本の1,2巻が同時に発売される運びとなった。またバンダイ・エモーションのエモーション・ザ・ベストでも本作のDVD-BOXがエントリーし、安価で発売されている。振り返る機会のが増えそうな本作であるから、この機会にもう一度ご覧になるのはいかがだろうか。気持ちよく見られるし、気持ちよく泣けるし、気持ちよく笑えると思います(初笑い、初笑い)。

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