映画「必殺! THE HISSATSU」~DVDマガジン2ndシーズンに寄せて~

 “寝耳に水”とはこのことか。
 年の瀬も押し迫ったこの時期に、まさか「必殺DVDマガジン」の2ndシーズンが発売の運びとなるなど、夢にも思わなかった。まったく何にも知らず、前回の関連のつもりで「Gガンダム」の漫画を買いに出たら、書店でうっかり見つけてしまった。前回シリーズも即買いだったので、当り前のように購入する。
 と、ここで今回のラインナップをようく見てみると、2度目の中村主水(故・藤田まこと)に棺桶屋の錠(故・沖雅也)である。DVDに収録されている作品については、TV版の2話をチョイスしてあるのかと思いきや、中村主水のほうは劇場版「必殺! THE HISSATSU」と示されているから2度驚いた。テレビ版だとばかり思っていたのでまさか劇場作品までアソートされるなんて思いもよらなかったのである。んで、今回はDVDマガジン発売を記念し、「必殺! THE HISSATSU」について存分に語ってみたい。

<通算600回の軌跡>
 本作は必殺テレビシリーズの600回を記念して制作された劇場用作品。これまで本ブログで必殺を取り上げると必ず触れる話だが、1972年9月「必殺仕掛人」でスタートしたシリーズが、1979年の「必殺仕事人」で息を吹き返し始める。それは三田村邦彦演じる若き仕事人・秀に女性ファンがつき始めたことによる。これを不動のものとしたのは「新仕事人」から登場した中条きよし演じる勇次が登場してからだ。はじめは主水や秀グループと反目し合っていた勇次であったが、やがてなじんでいくことでチームワークが生まれてくる。続く「仕事人III」を経て「IV」で完全に花開いたバラエティ路線のドラマは、現在でも議論が尽きない部分ではあるが、「秀と勇次」という2大看板に、ゆるぎない主役・中村主水ががっちりとタッグを組んだ「IV」は、一見隙だらけのようでいて、まったく隙のないチームワークで、当時のファンの心をがっちりつかんで離さないのである。

 よくテレビの長寿番組などでは、1000回やら100回やらで大騒ぎすることが多い。よく考えてみてほしいのだが、1年はおよそ52週である。最大がんばっても1年で52話しか放送できない。そう考えると通算100回とはおよそ2年で到達できる。600回ということは12年である。これは長い。しかも「仕事人」だけを12年やってきたわけではない。1シリーズだいたい26話程度で構成されている。このシリーズを1作目の「仕掛人」から始まり、2作目「仕置人」を経て600回に至るまでに20シリーズを消化しての通算600話なのである。そう考えると、コーナーのマイナーチェンジはあるものの、「笑ってい○とも」はすごいと思う(ベタにズレる話)。
 とはいえ、必殺シリーズの映画版というのは、何も本作が最初というわけではない。実は今は亡き緒形拳が演じた「藤枝梅安」が主演した「必殺仕掛人」のころに3本の映画が制作されている。その内の1本については主役の演者が異なるので、イメージとしてはかなりテレビとは異なる作品となっている。いずれもDVDになっており、3本目の「春雪仕掛針」とサブタイトルがついた作品については、池波正太郎の原作を踏まえて制作されており、しっとりとしたよい作品となっている。
 一方中村主水を中心とした劇場版「必殺!」もシリーズ化し「主水死す!」で6作品を数える。その後、勇次をフューチャーした「必殺!三味線屋勇次」や田原俊彦が主演した「必殺始末人」が劇場公開されている。なお「始末人」はつい最近までビデオソフト以外の映像ソフトが発売されておらず、最近になってやっとDVDとなって発売された。実はこの「始末人」もなかなかに良い作品なので、DVDを購入した暁にはぜひともレビューしたい作品である。

<とはいいながら・・・>
 さて本作の物語は、ぶっちゃけてしまえば江戸を舞台とした裏稼業組織の抗争劇である。潰した組織の仕事人に六文銭を加えて闇に葬ることから、「六文銭」と呼ばれる組織が次の標的としたのは、中村主水たちのチームであった。六文銭の首領・庄兵衛は替え玉を使ってこれまでの悪行を清算してきた非道の悪党である。しかも配下はみな腕っ節の強い猛者ばかり。技よりも数で押してくるやり方に、江戸に残る他の仕事人チームも、祭りの中の神輿にまぎれて始末されてしまう。おりく(山田五十鈴)の指示で江戸に残った仕事人を探して助っ人を探す加代(鮎川いづみ)たち。だがそれすらすでに手が回って処刑されてしまう。そんな中、主水だけは見込まれて六文銭の仲間へと誘われる。主水は仲間との仲違いを装って単身六文銭に挑もうとする。だが主水の行く先にはいつしか仲間の影が・・・。主水たち仕事人チームの静かで熱い反撃が、今始まる。

 購入したDVDマガジンの裏表紙に掲載されている情報によれば、本作の初期プロットでは、「仕置人」の1話で登場した悪党・闇の御前と最対決するという物語が予定されていたという。実際の作品では、この闇の御前の「影武者」システムを模倣し、江戸の闇組織の対立というシークエンスをプラスしてこのドラマが構成されている。しかもマガジンでも指摘されているように、闇組織の対立という物語自体にも、別段新鮮味はない。だがこの作品は確かに劇場作品特有の大作感がある。それを醸し出しているのはたしかに多彩なゲストである部分が大きいことは否めない。だがあまりにも危機感のある強大な敵の存在こそが、大作感を増すことに成功している。つまり本作はテレビシリーズとなんら変わらない舞台を、劇場版のスケールに、あまりにも上手に広げた作品だということである。

 もしこのDVDマガジンをご購入したなら、マガジンの内容をとっくりとご覧いただきたい。実に多彩な視点で記事が構成してあり、実に楽しい読み物となっている。特にそれぞれの仕事人が何人始末したのかなど記事など、つい数えてしまいたくなる面白さにあふれている。本作が劇場公開当時、本作を特集した番組でも誰が何人殺したという話題が幾度も繰り返されたが、それらの質問の回答として最も多かったのは「秀である」という答えであったことを今でも覚えている。マガジンでは中村主水の圧勝であったが、これにはおそらく事情があるのではないか。どうも実際の撮影ではかなりの人数の仕事シーンを撮影していたが、画面に現れたのは完成作品のものだけであり、幾人かの仕事はカットされた。そのカットされた仕事シーンは秀のものが多かったのではないか。ここには当然、秀の仕事にかかる時間の短さという理由もあろう。そのため尺の調整しやすかったのではないだろうか。まあこれはあくまで私的な仮説ですが。

<見どころなど・・・>
 本作は前述の通り、テレビ版を劇場版に上手に風呂敷を広げたような作品である。それはテレビ版でおなじみのフォーマットに従って引き延ばされている印象が強く、テレビ版を一歩も外に出るものではない。だがそれは本作に限ってはまったく否定語にならない。それ以上に、いつもの顔なじみのあるキャラクターたちが、肩肘張ることなくスクリーンに存在する。加代は特別に何をするでもなく、いつも通りにぎにぎしいし、秀もいつも通り寡黙であり、勇次も色男であった。だから主水&せん&りつのトリオ漫才すらきちんと健在である。大仕事を終えて水中船で逃亡を図る主水たち仕事人チームであるが、この水中船の中でのコントもいつもどおり。しかもうれしいことに御大・山田五十鈴さんもこのコントににこやかに華を添えている。それまでキリリとした表情で敵を闇に葬っていた勇次の母・おりくさんが、主水の心憎い所業に微笑みつつ、水中船の中の空気を心配する表情を見せるのである。それだけで眼福であろう。

 そしてなんといっても本作の最大の見どころは、仲間を殺されながらも、片岡孝夫(現・仁左衛門)演ずる朝吉の手引きによって、人形芝居小屋・中村屋に敵勢を引きずり込んで、反撃に転ずる仕事シーンである。勇次の技や主水の技は多彩であるが、秀の技はどうしても一本調子になりがちである。また勇次の技の多彩さがより光るのは、さまざまな障害物があってのことである。彼らのフィールドは意外にも広々とした郊外ではなく、狭く暗く、隠れやすい屋内なのである。だからこそ人形芝居小屋に入り込んでからの彼らの仕事は、さらに輝きを増す。しかも小仕掛けいっぱいの芝居小屋であるから、いくらでも仕事が展開するのではないか。珍しく巨漢の敵を相手にする主水が見られるのも、本作の面白さである。本来なら勇次や秀に任せてしまいがちの巨漢を相手に、舞台のせり上がりを利用しての一突き。それが効果ないと知るや、抱きかかえられた背後の敵に小刀で一突きし、いつもよりも苦労して相手を仕留めるのである。また暗がりから卑怯技を使っての暗殺剣ではなく、大立ち回りで相手を仕留める主水の姿から、こうした緊迫感はテレビ版では味わえないと思える。敵に追われて窮地に立たされた加代が、意外な方法で相手を仕留めるシーンなども楽しい。こうした様々な仕掛けの妙が、じっくり楽しめるのも、大きなスクリーンを想定して作られた劇場版ならではの楽しみではなかろうか。

 他にも殺し屋であることがばれそうになった中村主水が母せんを欺くエピソードや、謎の女・お葉(中井貴恵)との逢引きなど、ここぞとばかりに主水の魅力を深めるシーンが案外多い。助っ人仕事人を探す加代と主水のコミカルなやり取りなどもあり、緩急極まったドラマの充実ぶりは目を見張る思いである。これ以降2作目「ブラウン館の怪物たち」のコメディ寄りのドラマ、3作目「裏か表か」のシビアな世界、4作目「恨みはらします」の深作欣二監督らしい極彩色のイメージある絵作りなど、1作目以降は様々なイメージが去来する必殺劇場版シリーズであるが、意外なほどオーソドックスに作られているのは、本作であると断言できる。いっそ本作を、必殺シリーズを知らない人々に勧める1本に選んでもいいと思えるほど、私にとっては本作の美点が際立つ作品となっている。私は必殺劇場版シリーズのDVD-BOXを所持しているが、DVDマガジンはまたこれとは別腹。せっかく安価で手に入る機会である。ぜひともお手にとって本作を鑑賞し、世知辛い年末のうさを、これで晴らしていただきたい。

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コメント

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必殺マガジン

実は自分も第1期は全部持っております。
第2期、本屋で確認しました。
買わねば‥。
そういえば、時代劇専門チャンネルで毎週「必殺スペシャル」放送してますね。
一応録画しておりますが果たしていつ観れるかです。

No title

geogeoさま
 コメントありがとうございます。
 ぜひ買ってくださいw
 時代劇専門chも拝見してます。いま「うらごろし」も放映中ですね。
 私はひさしぶりの「影の軍団」シリーズを堪能しております。こちらも私の大好物です。ご覧になったことありますか?サニー千葉の脂の乗った忍者アクションと、小器用でコミカルな演技が楽しめるシリーズです。いつかこちらもレビューしてみたいと考えております。

 ちなみに、必殺SPは何がお好きですか? 私は地味な話でしたけれど、「京都・闇討人」の話(藤マリ子が出ていた作品)が割と好きです。あと「仕事人V」の実質的1話である「仕事人意外伝 主水、第七騎兵隊と戦う」が割と好きだったりします。

No title

相互リンクして頂いてありがとうございました。

「必殺」のDVDコレクションは、書店では目にしますが購入したことはありません。
この記事を拝見し、資料としても役立ちそうだと知りましたので、観た事がなかった
作品から購入してみましょう。

かなり前ですが、ビデオで必殺シリーズの「最終回」を集めたシリーズがあって
借りてきて見た中に「新・仕置」「仕置屋稼業」「からくり人」がありました。全部
観たかったんですが、そのビデオ店がつぶれまして・・・
このビデオはDVD化されてないんでしょうか?

No title

シャオティエンさま

コメントありがとうございます。

ありましたねえ、「必殺最終回シリーズ」のビデオ!
松竹ホームビデオから発売されておりました。
それまで発売されていたのは劇場版かピックアップされた物語だけがビデオソフト化されておりました。
それが発表順に2作品ずつカップリングされて、最終回だけビデオ化したものでした。
発売そのものはさらに遡って20数年ぐらい前の話です。発売当時は1本1万円ぐらいしてました。

ところが私が会社に入ったころですから、16,17年前ぐらいの話ですが、
値段が半額以下(確か4千円ほど)になって再発売されました。
私が購入していたのも、再発売されてからです。残念ながらDVD化はしておりません。
そもそも松竹にはDVDによるパッケージ商売にあまり興味がないようで、
ドル箱「寅さん」や「釣りバカ」や、昔の大作映画ばかりソフト化していますので、
必殺には見向きもしなかった頃の話です。

結局、LDによる全話パッケージ化、そしてDVD化によって全シリーズ発売により、
「最終回シリーズ」そのものにはあまり価値がないと判断されたのかも知れません。

そういえばLD時代に「仕置人」と「仕置屋稼業」、「仕業人」については、「傑作選」というLDシリーズがあったのをご記憶でしょうか?
LD全話ボックスがまだ高価だったころ、金はないけど見たくて仕方がなかった私にとっては、のどの渇きをいやす貴重なアイテムでした。こちらもまた資料的価値が高く、必殺BGMシリーズのLPとともに、捨てられないアイテムです。

さて、現在の状況だと、レンタルですべての必殺シリーズが見られる店舗はほとんどないでしょう。
中村主水出演シリーズなら「仕置人」「仕事人」シリーズはありますが、
「仕留人」「商売人」などはほとんど見られません。非主水シリーズはいわんをやです。
DCMやツタヤディスカスあたりに期待するしかないかもしれませんねえ。

そんな中で「うらごろし」や「必殺必中仕事屋」(コメントで間違いえました!すいません)などが見られるのは、現在でも貴重です。ぜひとも密林あたりで手に入れて、ご覧いただきたいアイテムです。もちろん冊子部分も見所が多い良品ですよ!(いや、べつに講談社からお金もらってませんけどねwww)
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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