2月最初はマンガの話題~まだまだ修行が足りません!~

 去年の年末に、例によって発売されました「このマンガがすごい!2011」(宝島社)。去年はアニメ化された作品と、誌上で選ばれた作品との比較をしてみて、人気のあるマンガが選ばれてアニメ化されるという文法は、どうやらちゃんと当てはまりそうにないことを指摘した。この傾向そのものは今回の「このマンガがすごい!」でも同じであったわけで。とはいえ、より細かいジャンルを見比べれば、その各々のジャンルで人気のある作品が選ばれているという可能性もあるようだ。今回「このマンガがすごい!」に関しては特別申し述べることがない。ただ現在もいろいろ読み漁ってはいるが、どうしてもこうした人気ランキングとはかみ合いが悪いようで、これからご紹介するマンガは、ランキングにはほぼ無関係の作品ばかりである。個人的には去年から少女漫画に注目してはいるが、「君に届け」と「ちはやふる」を読み続けている以外、とりたててご紹介できそうな作品もないのが悔しい。次にマンガをご紹介する際には、自分で選んで面白かった少女マンガがご紹介できたらなあと思っている。
 なお、ここではご紹介しないが最近楽しんで読んでいるものに、「ソウルイーター」「それでも町は廻っている」「ハルヒちゃんの憂鬱」「長門有希ちゃんの消失」「WORKING」などがある。「ソウルイーター」については、アニメともども1度取り上げる予定です。

「狼の0(ヴォルフスムント)」(久慈光久著 エンターブレイン)
 ジャンプやマガジンが少年誌、ヤングとつくのが青年誌、そして少女誌と分類があるとしたら、「コミックビーム」ってどう分類したらいいんだろう? ましてや同じエンターブレインが発行するマンガ雑誌「Fellows!」なんて、どうやったって少年誌や青年誌には分類されない。これはあくまで個人的な感覚でしかないのだが、このエンターブレイン発行の雑誌類は、絵柄の多くは同人誌を経由した作家さんが参加していながら、雑誌の色合いは「ガロ」などのリベラルさを併せ持っているように感じる。
 前置きが長くなったが、この「狼の0」は雑誌「Fellows!」に連載されているマンガである。舞台は中世ヨーロッパの山岳地帯。ハプスプルグ家が民衆に対して圧制を強いている時代。圧制に苦しむ人々は反乱のための準備を着々と進める。だがその反乱を邪魔するのは、難攻不落の関所を守る代官・ヴォルフラム。彼は反乱を企む人々を騙し、貶め、そして処刑する。だがそんな恐怖政治の中でも人々は光を見失わず、絶望の中でも反乱の準備を進めるのである。ヴォルフラムの目が怪しく光る。
 この物語、上ではああ書いたものの、現在のところ一条の光も見えない。完全に不幸と残虐の袋小路なのである。はっきりと申し上げて、中世ヨーロッパを舞台にした残虐死刑史の趣まである本作であるが、とにかく一条の光はヴォルフラムに打ち砕かれ、もろくも崩れ去っていく。こうした負の快感というのが確かにあって、関所を通って逃げ出すものすら「裏切り者」の汚名を着せて容赦なく処刑する。当然反乱者は容赦しない。ヴォルフラムにとっては処刑することが目的であるから、処刑される側の人間の慈悲を感じることもないし、反乱者たちのつながりやら背後関係やらをエサに、生き延びさせるなどの話もない。徹頭徹尾、相手を処刑するだけなのだ。
 こんな話の何が面白いかと問われれば、そりゃもう極悪非道をつくすヴォルフラムとハプスブルグ家が、反乱を受けて現在と立場が逆転するであろう状況がきっと起こるであろうことが楽しみでしようがない。マンガとしてそこまで書かないかもしれないが、現実にハプスブルグが衰退していく過程が中世ヨーロッパ末期の歴史観であるから、反乱が成功することは既定の事実なのである。今は全盛を誇っているヴォルラムたちがどのような無残に死んでいくか。残虐な楽しみはこれからである。既刊2巻


狼の口 ヴォルフスムント 2巻 (ビームコミックス)狼の口 ヴォルフスムント 2巻 (ビームコミックス)
(2010/10/15)
久慈光久

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「セックスなんか興味ない」(きずきあきら+サトウナンキ著 小学館)
 セックスは時に人を縛る鎖となる。本作は短編連作方式の作品群である。さまざまな男女がセックスを介して築く関係が、時に人を救い、時に関係を破壊し、時に落ちていく。それは最も生々しい人間自身のドラマだといっていい。この作品中において、タイトル通り「セックスなんか興味ない」というとすれば、そのキャラクターは人間の関係性すら否定することである。作中のキャラクターは人との関わりあいを止めようとしない。だからこそ、弱さゆえに人にすがったり、なし崩しにではあっても「セックス」が発生してしまう。だがそれは強力な毒なのだ。毒は用法要領を守れば薬となるが、間違えたり過度に使えば毒になり、人を癒したり人を苦しめたりする。
 さて能書きはこのくらいにして、本作での私のおススメの話をご紹介しておこう。
 episode4「桃さんの、お見合い」は互いに外見上のハンデを持つ男女が見合いをし、互いに認められないまま時が過ぎていく。だが体を合わせることでお互いが隠し持っている奥深い気持ちをさらけ出すことができ、結婚にこぎつけるという話。外見上のハンデは他人が思っている以上に自らを傷つけ、それを自分でフォローするために理論武装する。理論武装に感情は介在しないから、傲慢さだけが肥大する。本編に登場する男性はそんな人である。自分をかえりみれば痛々しい話。だからこそ桃さんが求める人のぬくもりが、理論武装を突破する瞬間が、感動的ですらある。
 episode6「タッチンの、ナンバー」は、再結成したバンドのコンサートで再会したかつての恋人たちの物語。解りやすいアヴァンチュール。だがそこにあったのは時を重ね、共有できない時間を過ごしてきた男との女である。しかも寄る年波は容赦なく男を打ちのめす。だが女が明かした別れたあとの時間を思いやり、男は涙するしかない。老いは恋を否定しない。だが恋は老いを否定するのか。40を過ぎた私には重い話である。
 この手合の物語の類型をたどれば、榎本ナリ子の「センチメントの季節」を知っている。だが一方的に心も体も傷つけられている「センチメント」の少女たちに比べると、本作は男の側の原罪をきちんと暴いているし、同じように男女ともに傷ついているあたりが、時代が下がってきた変遷を感じさせる。
 今、「ちょいエロマンガ」や「エロマンガ」のジャンルは質量ともにあふれかえっている。だが次代の人気作家はこのジャンルに埋もれているといっていい。


セックスなんか興味ない 2 (IKKI COMIX)セックスなんか興味ない 2 (IKKI COMIX)
(2010/09/30)
きづきあきら、サトウナンキ 他

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「ウイッチクラフトワークス」(水薙竜 講談社)
 魔女である。主人公は男の子。しかもなんの力もないが何かしら特別な男の子。だから同級生の女の子は、主人公の男の子を守るために魔法を使う。敵も魔女であるが、所属が違う。魔女同士の敵対関係の中で、主人公の男の子の争奪戦が繰り広げられる。それがこのお話のあらすじである。もう一つのストーリーとして、魔女の同級生に守られている主人公が、彼女の弟子になるという話。
 さて魔女である火々里綾火(かがりあやか)さんであるが、学校一の美女であり、学内に親衛隊まで有する人気者。しかも長身で寡黙なのである。デレはおおいに期待していいキャラクターだ。しかし彼女の操る魔法の属性は「火」である。本編ではこの火の魔法が、実におどろくほど縦横無尽に使用されている。びっくりするほど自由自在なのである。それを抑えつけられた綾火の感情の発露ととっていいのかどうかは、測りかねる部分があるのだが、今のところ他の魔女の力を一切受け付けないほど強い。
 そして実はもう一つのストーリーのほうが、今後は興味深い。これはまるで「マリア様が見てる」のスールーシステムに近い。いや別に舞台となっている学園にそんなシステムがあるわけではないのだが、現時点で多華宮くんにどんな秘密が隠されているかがまったく不明であるが、1巻の表紙で綾火さんに抱きかかえられている多華宮くんの姿は、完全に逆転したヒロイズムがある。しかも多華宮くんが綾火の弟子となるに至り、バランスを欠いたスラップスティック・コメディである可能性も出てきた。いまどきの萌えアニメにありそうな文法のキャラクター配置であるにもかかわらず、いちいち逆転させる発想でコメディを見せられるかもしれないという予感。本作にはそれを感じさせるに十分の1巻であった。今後の展開が楽しみな1作。既刊1巻。


ウィッチクラフトワークス(1) (アフタヌーンKC)ウィッチクラフトワークス(1) (アフタヌーンKC)
(2010/11/05)
水薙 竜

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「花のズボラ飯」(久住昌之・水沢悦子著 秋田書店)
 夫が単身赴任中の妻。一人暮らしゆえに家の中はぐっちゃぐっちゃ。働いているのでつい食事もおざなりになりがち。そんな彼女のズボラ飯ライフを描くマンガである。原作の久住さんは、谷口ジローさんとの共著「孤独のメニュー」でおなじみ。だからズボラ飯といいながら、作中の飯はいずれも実にうまそう。どれを読んでいても腹が減る。1話1話展開する物語は、取り立てて事件といったものはないに等しい。だが働き疲れて自宅に帰って倒れこみ、疲れた体でジャーから飯をよそう姿は、哀愁よりも笑いを誘う。
 卵かけご飯の食べ方のこだわりもいいし、サッポロラーメン塩味もいい。サケのフレークはアンチョビにはならないとは思うのだが、単行本中盤に登場する「変形ポトフ鍋」には驚いた。申し訳ないがこれがうまいだなんてまったく思えない。しかし見習うべきは人の味覚のデタラメさの上に、味付けで切り抜けようとする主人公の度胸だろう。一般の方にあの味付けをお勧めすることはできない。だが「食」とははっきりと様々なレベルの楽しみ方がある。ようは美味ければいいのである。「美味い!」の前に人はだれもかなうまい。ま、味覚は人それぞれなんですけどね(笑)。
 それにしてもこのマンガ、食べるシーンがなんだか異常にエロいのである。こんなにホンワカした絵柄でありながら、一人で食事しているシーンや、うまそうに悦に入っているシーンには、わかりやすい恍惚感すら感じられる。いや本当にエロいのである。不思議に思って作画を担当している「水沢悦子」をいろいろ調べてみると、この方れっきとしたエロマンガ書きさんであった。
先述の通り、「ちょいエロ」や「エロ」マンガは、現在のマンガ界においては底辺を支える重要なポジションである。しかも短編の限られたページ数で物語を展開し、エロをおりまぜ、しかも読者にヌイてもらわねばならない。そのテクニックたるや、「バクマン」の少年たちも泣いてひれ伏すみなさんなのである。しかもこうした手練手管を持った優秀なマンガ家が、名を売ってから青年誌や少年誌に登壇してくるのである。今、新人漫画家さんを発掘し青田買いするなら、このジャンルで間違いない。既刊1巻


花のズボラ飯花のズボラ飯
(2010/12/20)
久住 昌之、水沢 悦子 他

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「放課後プレイ」(黒咲練導著 アスキー・メディアワークス)
 人間それぞれに見合ったコミュニケーション・スキルというものがある。そのスキルがまったく役に立たなくなる瞬間があるとすれば、それは誰かに「恋」をした瞬間ではないだろうか。たとえばそれまで女子とあまりお話してこなかった男子は、女子との会話をどう成立させたらいいか解らないだろうし、それは逆もまた同じである。わりと小さなころから女子と近しくお話していた筆者であっても、好意を挟んで女子と対面した時には、その場を逃げ出したい気持ちで一杯であったことを思い出す。
 このマンガに登場するのはたった1組の男女だけ。しかも互いに憎からず思っている二人。舞台は男子の部屋だったり漫画研究会の部室だったりする。んで、繰り広げられるマンガは4コマ漫画で、ネタはゲームやアニメやマンガ等のオタクねた。しかし表面的にはネタを繰り広げながら、水面下ではどうにかして互いに好きと言いたい男子と女子の物語なのだ。当然二人はオタクであるし高校生であるから、そのコミュニケーションスキルはまったく低いと言わざるを得ない。だがそのいじましいほどの駆け引きともどかしい会話は、4コマ漫画のネタ以上にクスっと笑えてしかたがない。実に微笑ましいのである。もちろん当の二人は真剣そのもの。だからこそラストページで抱きしめあったり、キスにいたる二人の落着する物語に、読者は一緒にホッとできる。そう、読者は二人の緊迫した恋の行方を、追体験できるマンガなのだ。前述のようにこのマンガには二人以外のキャラクターがほとんどでとこない。二人の感情がそのままマンガの流れなので、嫌でも二人の気持ちに添うことができる。
 もうひとつ、このマンガの特徴を上げるとすれば、女子の側が特徴的過ぎることだ。このマンガ、1冊で1シーズン制となっている。現在3巻まで発売されているが、3冊それぞれの主人公にはほとんど関連がない、別々のカップルの物語が描かれている。その女の子が、1巻目は幼馴染でややツンデレ傾向のある長髪で黒髪の子、2巻目はメガネでショートの髪の子であるが、そばかすが目立つやや内向的でマンガを書いている。そんなクセのある女の子が、自分自身というハンディを越えるように目の前の男子にのめりこんでいく。そのドラスティックな恋へののめり込みようは、少女マンガのそれとまったく変りない。まさに恋の緊張感が味わえる、ちょっと不思議な4コマ漫画である。既刊3巻。


電撃4コマコレクション 放課後プレイ3 (電撃コミックスEX)電撃4コマコレクション 放課後プレイ3 (電撃コミックスEX)
(2011/01/27)
黒咲 練導

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「つるた部長はいつも寝不足」(須河篤志著 メディアファクトリー)
 主人公は鶴田恵、17歳。メガネ女子でショートカットの高校2年生で美術部の部長である。彼女の絵画やデッサンの力はさほどではない。だからいつも他の優秀な美術部員に引け目を感じているし、後輩の瀬戸君は、部員のデッサン指導をしていることが、この際はコンプレックスですらある。しかも存在感もない彼女は、クラスや美術部においても目立たない。だが彼女はふとしたきっかけで脳内妄想を繰り返す。しかもなんだかエロい方向の妄想ばかり。だから彼女はいつも寝不足で。
 彼女は瀬戸君のおかげで少しずつではあるが美術に興味をひかれ始める。しかも瀬戸君の気を引くためという不純な動機で始めたことではあるが、同級生や後輩の創作物に刺激され、次第に絵画と向き合うようになっていく。そんな彼女に実はホの字の瀬戸くんだったりするわけで。だから鶴田さんの妄想は徐々に現実になる影響も見え隠れするといった物語。2巻では瀬戸くんの兄貴まで登場し、鶴田さんにちょっかい出し始め、瀬戸くんはやきもきしたりして。
 美術ネタのマンガといえば、アニメ化された「GA芸術科アートデザインクラス」や「ひだまりスケッチ」を思い出すが、「GA」や「ひだまり」が女の子だらけの4コマ漫画であったのに対し、こちらは女性の主人公が妄想して暴走しまくるというマンガである。美術ネタなら、裸婦デッサンとかで男子生徒が大興奮とか定番ネタがあるが、こちらも逆転の発想である。先述の「ウイッチクラフトワークス」にしても本作にしても、かつて定番であったネタを逆転させるというネタ作り自体は目新しいものではないはずだ。だが不思議とマンガという媒体で物語が展開されると、思いのほか面白いものが出来上がる。表紙や紹介文だけで判断するよりも、実際に手にとって読むほうが面白い作品がある。だからマンガを読むのは止められない。


つるた部長はいつも寝不足 1 (MFコミックス) (MFコミックス フラッパーシリーズ)つるた部長はいつも寝不足 1 (MFコミックス) (MFコミックス フラッパーシリーズ)
(2010/06/23)
須河篤志

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
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