スパイダーマン(東映)~その1・復讐のバラード~

 よく日本人がアメコミのヒーローを演じてみたらどうだろうと考えたことがある。バタくさい日本人顔のスーパーマンが日本人のために戦う姿、暗黒の街と化した新宿・歌舞伎町を舞台に、大富豪が正体を隠して悪人を叩きのめすバットマン、地域紛争を治めるために特殊なスーツを開発する金持ちが変身するアイアンマン、超能力を持つあまり人間世界から隔離されて生活していたものが、悪のミュータントと対決するXメン。そのいずれもが日本人であることを想定すると、かなり魅力を減じてしまうと思うのは筆者だけだろうか? 理由の一端はドリフターズやひょうきん族、そしてとんねるずをはじめとする多くのコント職人が、これらの映画を題材にコントを繰り広げ、すべてのヒロイズムを笑いに転じてしまったことも理由の一つである。だが最大の理由はこれらの作品群がいかに「アメリカ」という国家が基礎にあって、アメリカ人のメンタリティが如実にヒーローの人となりに反映されたものかということだろう。
 ところがここにまことに稀有な例が一つだけある。それが今回ご紹介する「スパイダーマン(東映)」である。実のところ、本当の意味でこの作品は今なお奇形であり、同時に日本のヒーロー番組のマーチャンダイズの基礎を作り上げた作品でもある。そのこと自体はよく知られていることと思うのだが、作品自体は版権の問題で、長らく日本国内ではほとんど見ることができない作品であったが、2005年にDVD-BOXとして発売された映像ソフトをベースにして、作品の持つ魅力について語ってみたいと思う。それはこれまでのヒーローの戦う理由とは少し違う、ちょっと不思議な復讐譚である。

<作品概要および物語>
 「スパイダーマン(東映)」は1978年5月から1979年3月まで41回にわたって東京12チャンネル(現 テレビ東京)で放送された作品。そもそも「スパイダーマン」はご存知の通り、スタン・リーを原作者とするマーベル・コミックス発行のアメコミヒーローである。そのアメコミヒーローは、マーベルと東映の3年間のキャラクター使用提携により日本に登場することになる。それまで日本における「スパイダーマン」の認知といえば、マーベルのアニメに依存する部分が大きく、それはスーパーマンやバットマンに次ぐ認知度ではなかったろうか。スーパーマンやバットマンがまがりなりにも実写化作品があるものの、スパイダーマンのアクロバティックな動きは表現しにくく、アメリカでは1977年に全15話の実写テレビシリーズがあるだけだ。しかも日本で公開されたのは編集版のみらしく、日本における一般的なスパイダーマンの実写作品といえば、2002年以降のトビー・マグワイア主演の劇場版シリーズと本作のみという認識だろう。

 本家「スパイダーマン」については、実験により放射線を浴びたクモに刺された主人公ピーター・パーカーが、クモに由来する超能力を自らの体に見出し、スパイダーマンとなってニューヨークを舞台に活躍するというのが物語の骨子である。一方の東映版では、まず鉄十字団のモンスター教授がスパイダー星を全滅させており、その生き残りであるスパイダー星人ガリアに託された秘宝を追って、モンスター教授が地球に飛来する。その400年後、生き延びたガリアは余命いくばくもない自らを省みて、鉄十字団打倒の意志を、父親を鉄十字団に殺された恨みを持つ山城拓也に受け継いだ。スパイダーエキスを注入され、スパイダー星人の能力を受け継いだ山城拓也は、ガリアの思いと父親の復讐を誓って鉄十字団と戦い続けるという物語になっている。

<復讐者>
 この出だしの違いが日本人とアメリカ人のメンタリティの違いを如実に反映していると思われる。原典では「力を持つものはその行使に責任が伴う」という理論をベースに、戦う意思を固めるピーターである。それは戦う目的を持たず、「街」やそこに住む「人」という架空の護るべきものを護るために、それを脅かすものと戦うという「意思表示」なのだ。対して東映版の山城拓也は、まず第一に父親を鉄十字団に殺されている。第二に鉄十字団に復讐したいと願うガリアの意志を受け継いでスパイダーマンとなっている。拓也の胸にあるもの、それは「復讐」である。拓也は鉄十字団から人々や生活を護るという選択をしつつ、その根底には鉄十字団を壊滅することを望んでスパイダーマンになったのである。ピーターが戦う敵を特定せず私怨がないのに対して、拓也は鉄十字団に限定しており、その目的は復讐なのだ。この差はまことに大きい。まだ歴史が浅く、世代を重ねていないアメリカという国の本質が「公」にあるとすれば、日本は歴史の中で受け継がれていく「血」のつながりと「意志の継承」にあるのではないか。こうした国に根付いているメンタリティの違いが、二人のスパイダーマンに如実に表れているといえる。

 なおこの「復讐者」というワードは、日本のヒーローの戦う理由として数多く選ばれている。ただ面白いことに、この「復讐」という戦う理由は圧倒的にわかりのいい「世界平和」に取って代わられる理由でもある。
端的な例として「仮面ライダーV3」の風見四郎があげられる。彼は両親と妹を自分の目の前でデストロンに殺されてしまう。これを契機に復讐者としてデストロンに立ち向かうために、ライダー1号2号に自身を改造することを願い出る。V3はまず復讐者として誕生したのだ。だがV3として再生した四郎は、カメバズーカによる東京壊滅作戦を阻止するために、カメバズーカを連れ去って自爆する道を選んだ1号2号の意志を受け継いで、世界平和のために戦うことを決意する。
 復讐が世界平和にとって代わられた瞬間であった。すでに超常的な力を持っている「ウルトラマン」一族と違い、等身大のヒーローの原初はあくまで人間自身であるから、肉体を鍛える以外の方法で力を持つことがかなわない。改造や力を得ることは、等身大ヒーローにとって何かと引き換えでなければならない。そしてそのために通常の人間としての生活や、人間としての肉体を捨てることでしか、彼らは力を手に入れられない。だとしたら、自分の身を投げ打ってまで力を求める理由は何か? それを肉親や親友を死に追いやった者への復讐になる。ところがこうした短期的視野の目的は案外と到達されやすいこと、そして「復讐」というやや島国根性ともとれそうなしみったれた理由は、「平和」という長期目的によって霞んでしまう。また復讐というダーティーなイメージは、正義のヒーローにふさわしくない。物語内外の多くの理由により、等身大ヒーローは復讐者ではなくなっていくのが常なのだ。私が知る限りにおいて、日本のヒーローと呼ばれるもので、「復讐者」としての立場を貫いたのは、「快傑ズバット」と本作ぐらいではないだろうか?(他にもいそうだけど。ご意見求む)

 本編の1話では山城拓也がスパイダーマンになる過程が克明に描かれている。地下洞窟に落ちた拓也はそこでガリアと出会う。その時拓也は死の淵にいた。その拓也の命を救ったのはガリアである。ガリアは自分の血である「スパイダーエキス」を拓也に受け継ぎ、息を吹き返した拓也に、ガリアはスパイダーブレスと宇宙戦艦マーベラーを託すのである。このとき、ガリアは拓也に輸血するようにスパイダーエキスを注入することで、拓也は命を救われる。だが同時に拓也は自分の命と引き換えに、スパイダーマンとしての使命をガリアから引き継ぎ託されるのであるが、これって拓也にとっては偶然の産物でしかない。それを偶然に見せない理由は、このシーンの直前に拓也は父親を鉄十字団に殺されているからである。ここでガリアの復讐は拓也の復讐にすり替えられている。だが結果的に目的が合致しているので、これがまた気にならないのだ。

 スパイダーマンの戦いの中でもとりわけ特筆すべきは、毎回のスパイダーマンの前口上である。毎回鉄十字団とのラストバトルのたびに、「地獄からの使者 スパイダーマン」や「鉄十字キラー スパイダーマン」などと前口上を言ってからいくつかのポーズを決めて戦い始めるのがお決まりのスタイルであった。どんな敵にも臆することなく眼前に立ちはだかり、そして言い放ちポーズをつけるこのシーンこそ、スパイダーマンが真に鉄十字団に対する復讐者であるという宣言であり、同時に日本古来からの歌舞伎の「見栄」としての決めポーズを融合させた名シーンであると断言できる。このシーンがあるからこそ、スパイダーマンは「復讐者」でのみいられたのかもしれない。もっとも前口上に関しては、「少年の友達」だの「犬笛にむせび泣く男」だの、果ては「キノコ狩りの男」だの言い出す始末なので、一概には言えないかもしれないが・・・。

<物語の行方>
 さてこうして山城拓也はスパイダーマンとしてガリアの意志を受け継ぎ、同時に父親の仇を討つという目的のために鉄十字団と戦うことになる。その戦いは鉄十字団がスパイダーマン抹殺の作戦をはねのけたりすることもあるが、その多くは鉄十字団の作戦をスパイダーマンが阻止するという物語が圧倒的に多い。鉄十字団も粗忽なもので、だいだいその犯罪の現場に証人を残し、その証拠隠滅のために動き出してはスパイダーマンに尻尾をつかまれて、作戦を阻止されるのである。そして作戦に関わったマシーン・ベムはスパイダーマンと対決しては巨大化し、スパイダーマンにマーベラーから変形した巨大ロボット・レオパルドンに一撃のもとに倒されるのである。これが各話のフォーマットとなっている。

 1話でガリアは山城拓也に自らの命を託した。2話ではクモとなって生き延びたガリアは、自らの記憶を拓也に聞かせるが、ついに4話でクモの姿のままで命果てる。山城拓也は父を失ったものの、妹と年の離れた弟と一緒に暮らしている。日常生活の中で拓也は妹や弟を護って生活をせねばならない。劇中、山城拓也は鉄十字団からスパイダーマンの正体であるという疑いをかけられる。特にアマゾネスは執拗に山城拓也を疑い、それを証明しようと表の顔である女性編集長・吉田冴子の立場を利用して情報をリークすることで、たびたびスパイダーマンを罠にかける。だが6話や14話のように、拓也は愚か者を演じることで、それを逃れている。拓也がことさら自分の身を隠す事情は、妹や弟へ危害が加わることを抑制したいためだ。だが当の妹や弟が事件に直接的や間接的に関わることで、なんどか危険な目に会っている。父親を失っている拓也はどうしても妹と弟への庇護が強くなる。こんなやさしい山城拓也だからこそ、父親とガリアという二人の父への思いが強く、同時に紡がれる物語も自然と「親と子」に拓也が感情移入する物語が多くなる。これについては、次回に説明したい。5話にはさらにスパイダーマンが死に瀕している孤児に血を分け与える。これによりガリアの血は二人の人間に引き継がれ、山城拓也はこの世界にまた別の血を分けた弟が誕生することになる。その少年は引き続き11話にも登場し、事件の発端になっていく。

 それまでたった一人で戦ってきたスパイダーマンに、強力な味方が登場する。11話でICPO(インターポール)の捜査官・間宮である。彼の登場により、鉄十字団の犯罪は国際犯罪と規定され、その暗躍は広く海外にまで渡っていることが説明される。そして世界中に散らばったICPOの捜査官は、鉄十字団の世界での暗躍をスパイダーマンに知らしめ、同時に来日した鉄十字団のメンバーがさまざまな計画を日本に呼び込むことになる。12話での重要機密を持ち帰った捜査官の警護、21話では鉄十字団に捕らえられた捜査官の決死の脱出行を助けたりしている。まあ結論から言えば、ICPOがスパイダーマンに協力しているというよりも余計な仕事を抱えたようにも見えてしまう。

 スパイダーマンは全41話であるが、物語自体はこれといって大きな起伏があるわけではなく、やや平坦な印象を与える。だが各話の物語自体は非常にバラエティに富んでいる。先述の親子に関わる物語が圧倒的に多いものの、それ以外にもSFっぽい印象を与える物語や超能力を持ってしまった故に悲しみを背負ってしまった子供を助けるなどの話がある。それはまるで後の「電子戦隊デンジマン」や「宇宙刑事シリーズ」に引き継がれるような世界観の広がりを見せる。そんなわけで次回はバラエティに富んだスパイダーマンの物語に注目して語ってみたいと思います。 

スパイダーマン 東映TVシリーズ DVD-BOXスパイダーマン 東映TVシリーズ DVD-BOX
(2005/12/09)
特撮(映像)、香山浩介 他

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テーマ : 特撮・SF・ファンタジー映画
ジャンル : 映画

コメント

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No title

「マーベル公式サイトで公式配信してくれたおかげで観る事が出来た男!」

しかし、あの『スパイダーマン』がここまで東映テイストな作品になっているとは思いませんでしたよ。
安定したクオリティーで、毎回安心して観れたように思います。アクションもかなりのクオリティーで…。怪人のマシーンベムとの戦いよりも戦闘員のニンダーとの戦いがメインというのも、個人的には面白かったです。
そして伝説の瞬殺ロボ・レオパルドン!色々ぶっ飛ばしてマシーンベムを蹴散らすレオパルドン、大好きです。戦隊ロボの源流でもあるんですよねぇ…。
その一方で、某動画サイトで名乗り向上ばかりがネタにされており、ちょっと複雑な気分であります…。いや、それも面白いんですけどね(笑)。
次回も、楽しみにしております!

No title

飛翔掘削様
 コメントありがとうございます。
 ネタが尽きたなどとおっしゃりながら、毎回飛翔掘削さんのブログも楽しませていただいております。

 東映版スパイダーマンといえば、版権問題と名乗り向上、レオパルドン激強しでしられておりますので、DVDが出たときには家内にお金を借りてまで購入に踏み切りました(笑)。買ってよかったって、いまだに思えるDVD‐BOXです(いや、失敗したって思っているDVDがあるわけじゃないんですけどね(汗))。

 確かに名乗り向上だけの動画もありますけど、あれは次回少しだけ触れますが、向上内容自体に問題ありまくりです。狙ってやってますもん(笑)。
 まあ、わりとしんどい話も多いので、息抜きみたいなもんでしょうかね。1話まるまるのコメディ回もないですしね。

No title

始めまして。

動画サイトにMADが流布した所為で、ネタ先で刷り込まれ
正当評価の出来ない人が多くなってしまった中、実に細かい考察
とても素晴らしいと思います。

ただひとつ。名乗りの口上は毎回奥深い意味があって、
それぞれに趣があります。
最もネタにされる「キノコ狩りの男!」も、キノコンガーを退治する(狩る)者
という意味でサタイアのこもったカッコイイ口上だと感じます。

もっとこの作品のケレン味を理解して、真に楽しんでくれる人達が
増えることを祈っています。では。

No title

歩き目ですさま

 コメントありがとうございます。しかもおほめいただけるなんて、恐縮です。

 さてネタにした「名乗り口上」ですが、繰り返し使用された「鉄十字キラー」などを含め、その回ごとに意匠が凝らされていることは理解しております。が、私自身、DVDを見なおしていて、つい笑っちゃんたんですよね。記事自体もつい笑っちゃった感情のまま書いてしまいまして、ご不快だったかもしれません。申し訳ありません。

 ただ子供のころですら、名乗り口上はネタでした。少なくても私の周りではそんなかんじで受け止めており、スパイダーマンごっこのキモでありました。そんあ当時の雰囲気が伝わればという想いもありましたが、いいわけですね。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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