スパイダーマン(東映)~その2・父と母と犬と・・・~

<レオパルドン最強伝説!>
 本作に登場する戦闘ロボット「レオパルドン」。前回も書いたのだが、ほとんどの敵を一撃のもとに下している。この言葉がまったく誇張ではない。冗談ではなく本当に一撃なのだ。これをして「レオパルドン最強伝説」とかいうそうだ(wikiより)。これにはわけがあるらしく、これもwikiを見てもらえば詳細が解るのでここでは省く。とはいえ結果的にはこれがいい方向に作用するのであるから、世の中はどう転ぶかわからない。このレオパルドンがおもちゃ興行として大成功を収めたことで、戦隊シリーズにロボットが導入された。これもまたレオパルドンの成功の波及効果といえる。現行の戦隊シリーズでは、5人のチームワークが敵怪人を倒し、なんらかの方法で怪人が巨大化し、再びロボットでトドメを刺されるというフォーマットになっている。本作ではスパイダーマンに特別な必殺技がないだけに、トドメはレオパルドンが刺す。だからこそレオパルドンの強さがより引き立つ結果となった。しかも巨大戦開始わずか数分での絶対勝利である。とはいえその戦闘シーンはほとんどバンクシーンで構成され、おまけに短い。新作を撮影することができない事情があったからだが、それゆえに巨大戦特撮に時間をかけることなく、ドラマに集中することができた。だからこそ本作は充実したドラマで“魅せる”作品となりえたのかもしれない。

<様々なエピソード>
 本作は主役を演じた香山浩介氏をはじめとして、実に芸達者なメンバーで演じられている。香山氏はこれがほぼデビュー作となっているが、その演技は実に堂々とした主役である。最近の若手役者の演技とはまったく異なる熟達した演技を見せている。また香山氏演じる拓也の周囲を固める女優陣も十分に魅力的であり、アイドル然としたところなど微塵もない。一方の鉄十字団のメンツにしたところで、モンスター教授役の名バイプレイヤー安藤三男氏に、アマゾネス役の賀川雪絵女史である。東映の名悪役に名を連ねるベテラン俳優である。またスパイダーマンと共闘するICPOの捜査官も、いずれも東映作品では常連の皆さんで固められている。通常ここまでベテランで固める事情は、主役に不安がある場合が多いが、本作については主役を演じる香山氏にはなんら問題がない。ではなぜかといえば、それは本作には毎回多くの子役が登場するからではなかろうか。子役の演技はどうしても役者として未熟な部分があるし、個々人の出来具合にでこぼこがあるのが普通である。だからこそ子供を取り巻く周囲の大人はきっちりと芸達者で固めて、画面上の安定感を出す必要があるからではなかったろうか。

 その結果と言ってはなんだが、本作はゲストで登場する子供と母親や父親との関係を扱った物語が圧倒的に多い。一見すればそれは現行の戦隊シリーズの基礎であり、それまでの東映特撮番組の基本フォーマットとも言える作りである。
 心臓病の少年にスパイダーマンが勇気を与える15話「ぼくたちの約束」、予知能力を持つ少女が織りなす親子の物語は20話「謎が謎を呼ぶ私の出生の秘密」、続く21話「大空に散る父の愛」も鉄十字団に捕らえられたICPO捜査官とその息子の物語である。18話「母の胸に甦る少年」は500万円強奪犯と誤認された母親とその息子の人情話である。また28話「駅前横町の少年探偵団」は町ごと鉄十字団に脅迫されて人質を取られた町の少年が活躍する話である。いずれの話もスパイダーマンが実にうまく子供たちと絡んでいくことで、子供たちをインターフェイスとして事件に関与したスパイダーマンが事件を解決する物語である。中には貧乏を事情にした物語も多いが、逆に貧乏に付け込む鉄十字団を浮き彫りにすることで、解りやすい卑怯さと金に執着することへの説教まで含まれている。このあたりは時代を感じさせるエピソードでもある。

 親子といってどうしても避けて通れないエピソードといえば、31話「明日なき子連れ刑事」に登場した宮内洋氏演じる息子連れのGメンだろう。本作と39話「格闘技世界一大会」に関してはスパイダーマンというよりも「宮内洋」回とでも表現した方がいい程、宮内洋全開の2本となっている。特に記憶喪失の息子を護りながら捜査している彼を見ていると、かつて氏が演じた数々のヒーローの姿をまぶたの裏に思いだす。それを見て胸を熱くしたり失笑したりする人もいるだろうが、彼独自のヒロイズムが完全に結実している物語となっていることから、脚本家が彼のために書き下ろしたことは疑い得ない。

<金と欲と犬と・・・>
 子供が主役になる話がある一方で、青年が欲や金に目がくらんで、鉄十字団に利用されるという話も多い。17話「プロレスラーサムソンの涙」は兄をトレーナーとしてプロレスで一旗揚げようとしているレスラーの弟が、力を手に入れるべく鉄十字団に改造される話。この力を欲する兄弟を、あの「悪役商会」の八名信夫氏と丹古母鬼馬二氏が演じている。どう見ても悪役顔なのに、結構かわいそうな役どころなのだが、そのミスマッチ感にうっかり爆笑しそうになること必至である。また鉄十字団が経営する裏カジノで身を持ち崩していく若者の姿を描いた23話「家なき子たちに愛の学園を」、26話「絶対ピンチのにせものヒーロー」は、とある青年が名誉欲を刺激されて鉄十字団によって偽物のスパイダーマンにされてしまう話である。いずれも根源的な人間の欲求に根ざしている作戦だけに、見ていて身につまされる思いがする話である。とはいえ23話の鉄十字団の裏カジノでのゲームが、ネズミの競争とか、なにやら子供じみているのが微笑ましい。

 さらに脚本家の趣味なのかもしれないが、「犬」が登場する物語がいくつか散見される。16話「名犬よ父のもとへ走れ」、25話「秘宝と犬と複製人間」、27話「さらば戦友愛しのセパード」の3本だ。いずれの作品も脚本家が異なる。だが故・高久進氏のインタビューでは、高久氏が犬好きでつとに有名であり、自身が手掛ける脚本に犬を登場させる頻度が高いという話を読んだことがある。だとすればこれらの犬関連の脚本は、犬好きの高久氏に対する他の二人の脚本家(一人は本作のメインライターである上原正三氏)からの回答だったのかもしれない。DVD-BOXに封入されている冊子における各話コメントを見ると、各脚本家が競合して本作のシナリオを担当したが、一つの脚本に対して他の脚本家が別の答えを持ちこんでくるという状態があったらしい。犬の件もその流れの一つだったのではないだろうか。

<SF性、後続作品への影響>
 スパイダーマンが山城拓也であることを疑っているアマゾネスであったが、一度ならずモンスター教授の命令に従って、その思いをあきらめることになる。だが一方の拓也もそのために道化を演じなければいけないこともたびたびであり、特に6話「戦慄の実験室!悪魔のモンスター教授」や14話「父に捧げよ 戦えぬ勇者の歌を」などをはじめとして、拓也をコメディリリーフにする回は多い。逆の見方をすればこれだけしんどい話にもコメディじみた話があるもので、7話「恐ろしきヒット曲!歌って踊る殺人ロック」では、あの有名な「スパイダーマン・ブギ」(♪お尻ふりふり~)が披露されている。いったいどんな世間認知のされ方をしているのだろうかと、不思議になる。アメリカでキャプテンアメリカのこんな歌が作られたら、それはそれでおかしな話題になるのだろうけど。

 上記で示した意外にも興味深い物語がいくつも本作にはある。特にSF性の高い物語に関しては、メインライターである上原正三をはじめとした脚本家たちの作家性が如実に表れていると言える。
 19話「まぼろしの少年 地図にない村」は人里離れた村に住む村人たちが超能力を持っており、その秘密を狙って鉄十字団とスパイダーマンの攻防が描かれる物語。まるで恩田陸の書く「常野物語」シリーズのような雰囲気の話である。この超能力を持った村人たちの出自が太古に移住した宇宙人であり、舞台となった村の出入りが実に不可思議であり、この村で起きた出来事がまるで夢オチ的に寓話のように取り扱われていることが面白い。特に最初にたったひとりの少年が拓也に助けを求めに来るあたり、往年の特撮ファンであれば「ウルトラセブン」の名作「ノンマルトの使者」を想起させるだろう。

 33話「男の子をイビる野生の凄い少女」ではガリアが持ち込んだスパイダー星の宝石によって力を得た少女の物語である。すでに崩壊したスパイダー星の宝が、少女に生きる希望を与えているという話ももちろんファンタジックな話であるが、後続作品である「電子戦隊デンジマン」の劇場版にも、デンジ姫から受け継がれたデンジ星の宝石が、その末裔の少女の心の支えになっているというくだりが登場する。
 さらに39話「格闘技世界一大会」はスパイダーマン抹殺の手段として、洋上の孤島で開催される格闘技大会を開催する鉄十字団の必殺の罠の話。これもよく似た物語を「宇宙刑事シャイダー」の27話「デスマッチの魔島」に見ることができる。またヒーローが闇の格闘技大会に参戦するという似たようなシチュエーションなら、「未来戦隊タイムレンジャー」の13話「バトルカジノ」など、後の戦隊シリーズに登場する。レオパルドンが戦隊にシリーズに与えた事情についてはすでに言及したが、物語的にもその後の東映特撮シリーズに大きな影響を与えている作品なのだ。

<完遂する復讐>
 また最終話である「輝け熱血の勇者」に至るまで、スパイダーマンは「復讐」というワードを忘れずに貫くことができた。アマゾネスがスパイダーマンの正体を拓也だとにらんだ彼女の執念が、拓也のなじみの女性カメラマンを誘拐して人質に取るという作戦を取らせる。これを契機として今度こそ鉄十字団の壊滅を心に誓う拓也の執念もものすごい。人質を救出した際に受けた弾丸や、アマゾネスに受けた毒のムチの影響を、復讐の一念で退ける描写は、それまでの40話を重ねてきた拓也の深き思いが感じられる。そしてモンスター教授はアマゾネスを裏切り、アマゾネスも教授を裏切るなどの細かい内紛をはらみ、最後には巨大化したモンスター教授と最強レオパルドンの一騎打ちだ。そして勝利の凱歌はスパイダーマンに響く。マスクを外して勝利を宣言する拓也の勝利の雄たけびは、亡き父とガリアにささげられて物語は終幕する。

 こうして様々な物語のバラエティを生んで、スパイダーマンは最終話を迎えることになる。本質的に米国版のスパイダーマンは敵怪人との対決とその背景が主軸となっているから、その意味では物語のパターンは個人的には幅が狭い印象を受ける。だが日本版のスパイダーマンは、特撮部分の弊害があったとはいえ、ドラマ部分に注力できたことにより思わぬ幸運をもたらした。またスパイダーマンのアクションを担当した古賀弘文氏のアクションが、これを根底から支えている。手足が長く、筋肉質でありながらマッチョなイメージは毛ほどもない。腰をグッと落とした独特の姿勢は、スパイダーマンのイメージを明確に打ち出している。またスパイダーネットやスパイダーストリングスを使ったアクションは、地味な特撮や撮影手法を使いながら、スパイダーマンらしさをCGなど使わずに演出しているのは、今もって驚きに満ちた映像となっている。これもスタッフ演者が一丸となって、アメージングなアメコミの世界観を表現しようと試みた結果だろう。

 スパイダーマン放送当時、世の中からはこうした特撮ヒーロー番組の数が激減していた時期でもあった。東映ですらこの時期は1本体制であり、スパイダーマンの前には「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」があり、本作の後は「バトルフィーバーJ」がスタート。そして1979年の秋には「仮面ライダー(新)」がお目見えとなる。同時期のヒーローものといえば「戦え!レッドタイガー」や「メガロマン」があり、1980年に「ウルトラマン80」があるだけだ。現在のように東映がライダー(メタルヒーロー)と戦隊の2本体制になるはるか以前の話である。だが現在のように多本数の作品が作られるようになっても、その作品の作り方は別段変わりはない。特撮の技術は日進月歩であっても、カメラの性能が飛躍的にアップしても、人間が演じるドラマである以上根本的な部分に変化は生じない。こうした手作りの力は、特撮作品が激減した時期でさえ、ほそぼそと「スパイダーマン」を作ってきた基礎力がある東映の底力と言わざるを得ない。現在まで続く東映特撮作品の基礎部分の萌芽は、間違いなく本作にある。現行の作品群を楽しんでいる方々にも、このバラエティに富んだ物語をぜひ一度楽しんでほしいと心から願うしだいだ。

追記
 「日本版スパイダーマン」という意味では、池上遼一氏の手によるマンガがある。こちらもライセンスを取得しての日本オリジナル作品となっている。こちらもなかなかダークな内容で、後半には平井和正氏をシナリオに迎えて独自の世界を展開している。文庫マンガとして現在でも購入可能である。ご存じないようであればこちらもお勧めしておく。とはいえ、だいぶ暗くしんどい物語であるからして、正の感動は得られにくい作品となっている。ご承知置きの上、手に取っていただきたい。


エキセントリック・サウンド・オブ・スパイダーマンエキセントリック・サウンド・オブ・スパイダーマン
(2001/06/21)
TVサントラ、ヒデ夕樹 他

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本編では触れませんでしたが、渡辺宙明氏の音楽もまたこれ以降の東映特撮を支えます。パーカッションを多用した楽曲が特徴的。「宇宙刑事ギャバン」等への流用曲も含まれています。必聴の名盤!
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コメント

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No title

こちらでも失礼。

昭和の時代、小動物を使ったギャンブルというのは
結構ありました。(八百長が出来ないという印象づける為)
衛生・管理面からすっかり消えてしまいましたが、ご参考までに。

もう30年前になる作品ですから立派な「古典」なんですよね。
今では使われない言葉、道具、風習、等が多いので、
若い世代の人達には当時の文化背景も同時に調べて鑑賞し、
分からないからツッコむという単純さから抜けて欲しいと願います。

それに、この作品って注意深く観れば、ほとんど映像で説明されてるんですよね。
むしろソコを活かして無駄なシーンを省略している。
これは当時の映画手法そのもの。行間を読む、というヤツですね。
そういう観る者のセンスも問われる作品だと思います。

No title

歩き目ですさま

 こちらにもコメントありがとうございます。

 とはいえ、手厳しい・・・w

 私自身、あの70年代末から80年代当初に、あのような小動物を使ったギャンブルが行われていた事実を知りませんでした。調べもしなかったのは、画面上あまりにも微笑ましかったからです。動物を使ったギャンブルは、それこそ競馬やドッグレースなどもあるわけですから、単に私の想像力もセンスもが足りなかったということですね。

 ただし、見る側にはそうした知識が必ずしも必要かといわれると、それはあまりにも敷居を上げ過ぎな気がします。わかる人が見てわかればよしかなと。ただ、私のようにネット上で語るには、知識もセンスも不十分だったことは明らかです。その点につきましては申し訳ありません。私のようなものが書く記事でも、作品への導入になればと思いましたが、まだまだ精進せねばなりませんね。

 これに懲りず、今後ともお付き合いくださり、コメントなどいただければ幸いです。

No title

いえいえ、こちらも言葉が足りませんでした。

このブログの解説は数ある中でも非常に好意的で、内容も深く掘り下げ
とても正当評価されてると思いました。

ただ、笑いのネタもダブルスタンダードで見てくれれば良いのですが、
どうも動画サイト等で観た人々はMADの先入観が強いのか、
そっちばかりで、折角のドラマ性を注意深く鑑賞してもらえなくて
残念だなぁ・・・と言いたかったのです。

そして、惚れこんで奥底まで作品の真意に迫りたければ、
時に研究も必要では?という「一般の人達」に向けての言葉でした。
もちろん、サラッとでいいんだよ!という人達に強要はしません。(笑)

実は自分はスーツアクターで、スパイダーマンのショーも演ったコトがあるので
個人的にも大好きで思い出深いんですね。
なので感情的になってしまったかも知れません。ごめんなさい。
もうネットでは真剣に観る時代では無くなったのかもしれませんね・・・。

これからも愛のある記事を期待しております。
お騒がせしました。

ありがとうございます

歩き目ですさま

 ふたたびのコメント、ありがとうございます。

 まさかスーツアクターの方だったとは!
 さまざまな方がいらしてくださるのだなと、改めてネットの世界のすごさを感じます。

 きっかけはどうあれ、作品研究はさらっと見る人にとってできるだけ「新しい知見」であってほしい。私はネットで検索するのも、出版されている書籍や同人誌を読むのも好きですが、新しい見方や分析や意見を発見すると、それだけでワクワクしてきます。2度目3度目の視聴につながり、それゆえにDVDの購入にも踏み切れる。

 今後もできるだけそうした新しい知見を提示できるようなブログを目指したいと思っています。

 真摯なご意見、ありがとうございます。
 手厳しくてもかまいませんので、今後とも気がつかれましたら、ビシーッとご指摘いただければ幸いです。
(その前に興味をひかれる記事を書かねばなりませんが・・・・・w)
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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