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「俺たちは天使だ!」~軽さとしなやかさ、80~90年代ドラマの萌芽~

 かつてフジテレビ系列で放送されていた「カノッサの屈辱」における「TVドラマの歴史」によれば、1985年に放送された「男女7人夏物語」がトレンディドラマの原点なのだそうだ。それまで日本テレビの「青春・学園路線」やTBSの「お茶の間路線」が主軸であったドラマの世界に、改革を試みた脚本家がいた(笑)。その一人が1977年にTBSで放送された「岸辺のアルバム」の脚本を担当した山田太一氏に他ならない。山田氏は1983年に「ふぞろいの林檎たち」を執筆し、複数人によるドラマの原型を作る。そしてドレンディドラマの原点というべき「男女7人」が登場する契機となるらしい。その脚本を書いた鎌田敏夫氏は、1983年の「金曜日の妻たちへ」や角川映画「里見八犬伝」などの脚本も手がけている。
 我々がよく見知っている「トレンディドラマ」といえば、W浅野やら陣内孝則やら石田純一、柳葉敏郎などが登場するもので、ドラマの内容よりもドラマに登場する家具や車、衣服などの小道具類に重点が置かれ、台詞などにもトレンドを意識させる言葉を反映させて、非常に圧縮された情報量を発信するドラマを総じて呼んでいる(仲谷,1990)。それはあくまでドラマにバラエティの手法を持ち込んだことに起因するものである。そしてなによりも「軽さ」が喜ばれた時代を反映したものだった(それがフジの情報操作だったとしても)。
 それまで重厚なドラマが信条であった刑事ドラマも同様であり、日テレ系列で放送されていた「あぶない刑事」シリーズは刑事ドラマという枠組みの中ではトレンディドラマに近しいニューウェーブであったはずだ。その前には「噂の刑事トミーとマツ」なんていうバラエティっぽいノリの作品があったが、そのあとは「君の瞳をタイホする」があってトレンディドラマに取り込まれ、やがて「踊る大捜査線」の誕生の礎となっている。さて今回ご紹介する「俺たちは天使だ!」という作品は、これら刑事ドラマのニューウェーブの先駆けともいえる作品であった、実に面白くて楽しい作品であったのだ。

<日本テレビドラマの二つの潮流>
 「俺たちは天使だ!」は日本テレビ系列にて1979年の日曜日夜8時に放送されていた作品。この作品の前後はあの人気番組「西遊記」と「西遊記II」であった。私が本作を知っていたのはたぶんこのためである可能性もあるが、いずれの番組も日テレの夕方4時の時間枠でよく再放送していたので、記憶はそれで補完されていたに違いない。
 本作の内容は元刑事であった探偵・麻生勝人(演 沖雅也)率いる麻生探偵事務所の面々が、毎回引き受ける依頼をこなしつつ一攫千金を狙うものの、なぜかうまくいかないというディテクティブ・コメディである。
 さてこのドラマ、本来は「新撰組」として企画されていたものの、同時間帯の時代劇とかち合うのを避けるためプロデューサー判断で現代劇となった経緯がある。だが問題はこのドラマを構成している要素である。まず出演者に関して言えば、沖雅也、小野寺昭、長谷直美は「太陽にほえろ」の出演者である。また柴田恭平もまた日テレの「大都会」や「大追跡」シリーズなどに出演していた。また日曜8時の時間枠は、そもそも「俺たちの旅」や「おれは男だ」などの青春路線が放送されていた時間枠である。後々この時間枠では「陽だまり良好」(竹本孝之主演)が放送されている。つまりこの「俺たちは天使だ!」という作品は、日テレの2大ドラマである「刑事もの」と「青春もの」の2つの潮流を受け継いだドラマなのである。そして見た目には非常に軽いコメディとして描かれており、後の「あぶない刑事」シリーズや「勝手にしやがれ ヘイブラザー」などのベースとなっていく。つまり1980~90年代のドラマへのブリッジ的なドラマとなっている。

<コメディドラマの本質>
 この作品、何が面白いかといえば、芸達者な役者たちが遠慮なく自分たちの演技プランをぶつけ合いながら、楽しんで演じているし、見ているこちらにもそれがすぐにわかることだ。つくづくドラマというのは生ものだなあと思う瞬間である。
 キャプテンと呼ばれる麻生勝人、その秘書であるユーコ(演 多岐川祐美)、ディスコで働くダーツ(演 柴田恭平)、テレビ局で働くジュン(演 神田正輝)、自動車修理工場で働くナビ(演 渡辺篤史)の5人がメインメンバー。これにユーコの兄で弁護士である藤波(演 小野寺昭)とその秘書である久美子(演 長谷直美)の二人も時折加わって、様々な依頼に挑むのである。まあ大体において依頼自体が犯罪に絡んだものであり、麻生探偵事務所の面々は、むしろ騙される形で依頼を受けることが多いのだが、実に優秀なスタッフたちは依頼の背後にある犯罪の匂いを嗅ぎつける。麻生探偵事務所のモットーは、月収200万、普通の人からお金は取らないが、悪い奴方は根こそぎふんだくるっ! だがしかしその犯罪がらみの依頼はどうやってもキャプテンの元同僚である新妻警察署の刑事さんたちを呼び寄せるから、最後の土壇場でお金に手が届かなかったり、警察に押収されてしまい、結局ただ働きとなってしまうのである。そして事件のすべてが終わった後、あきらめたように彼らは言うのである。「俺たちは、天使だ!」と(笑)。
 
 劇中、メンバーは何度となく衝突する。その原因はおおむね「金」がらみであるが、そのやり取りの軽妙さは本作の楽しみの一つである。実にテンポよく楽しげに繰り広げられる短い台詞のやり取りは、本当に楽しそうである。また、悩まない、悔やまない、重くならないの「3ない」要素で出来ている。会話のテンポやタイミングの面白さは「大追跡」などからの延長線上のものであり、まるで出来上がった話芸を見ている感じ。そうした話芸は芸達者な演者でなければ演じることができない。ということはこの軽妙洒脱な会話のやり取りは、台本が芸達者な人々に演じられることが前提に作られており、脚本家は演者を信じて台詞を書いているということだ。そしてもちろんそれに対応する役者の力量(アドリブの力?)があってのことなのである。
 ダーツがナビに向かって「ニクニマ」(“肉体労働者二枚目”の略)といったり、その逆に「イナニマ」(“田舎の二枚目”の略)といったやり取りもそうだが、キャプテンのアイデアに合わせて他の3人が声を合わせるシーンや、毎回のオチとなるヤクザな人たちとの派手なアクションシーンも、どのシーンを見ても楽しそうなのだ。そしてより細かいシーンではもっと楽しげだ。キャプテンの愛車カマロに出入りするときに、低い車体の屋根に毎回頭をぶつけるキャプテンや、お金のない彼らの常備食である黒こげのアジサンド(食パンの耳に焼いたアジの開きを挟んだもの)や出がらしのアメリカンコーヒー(豆を買う金がないので何度も使ったコーヒー粉を袋に入れて煮だしたコーヒー)も、うまそうに見えないのにやけに食べてみたいと思わせる。新妻警察署では、カマロの駐車の際にはかならずパトカーにぶつけたりするお茶目なキャプテンが見られるし、ゴリラとあだ名される神保刑事とキャプテンたちの毎回のやり取りも楽しい。その視点から見れば、ダーツが放つダーツの矢にしても、キャプテンのブーメラン(後半になる程改良されて大型化したりパワーアップする)なども、なんだかおもちゃじみて見えてくる。これすらもギャグなんだろう。
 こうして見ると、楽しいと感じている部分は毎回のお約束で出来ている部分ではある。そうお約束で笑いを取るというのは、言ったら「吉本新喜劇」と一緒であると思える。しかもたとえシチュエーションが異なっても、必ずお約束のシーンで笑いがとれるとすれば、それは真の意味で喜劇だと思える。

<そんなに金がほしいのか?>
 このドラマ、キャプテンたちが毎度お金を手に入れられないというオチがつくわけであるが、彼らがお金を手に入れようとする算段が、毎度バカバカしいことこの上ない。政治スキャンダルをネタに当の政治家をゆすろうとしたり、覚せい剤の取引に乗じて金だけを横取りしようとしたり、さらには覚せい剤を取引した金を拾って、そのお金を拾った手数料を受け取ろうだなんていう、実に切ない方法を取ろうとしている。実にその努力たるや涙ぐましい。
 彼らが必死にお金を追う事情は、それぞれである。特にナビは自分で作った車でラリーに出場することが夢であるという。ダーツやジュンにしたところで若者らしく金を持て余して享楽にふけることを夢見ている。だが20話冒頭で、麻生探偵事務所は解散および閉鎖の憂き目にあってしまう。キャプテンは愛車カマロすら手放して、自転車で移動するはめになってしまうのである。いくら気のいい彼らだろうが、身入りがなくてはどうにもならない。キャプテンを愛するユーコですら、次の就職のために面接を受けていた。だがキャプテンが事務所最後の依頼を受けたことで、事態は一変する。依頼自体はちょっぴり複雑な人探しであったが、その依頼人は本当の大富豪。本来の依頼と人質事件を解決した結果、彼らには正当報酬として5億円が支払われることになる。彼らが20話かけてしてきた苦労やタダ働きは、こうやって報われたというわけだ。

 だが、どうして麻生探偵事務所の人間はこうもお金に執着したのだろうか? 先述の通り麻生さんは元刑事であり、政界のフィクサーに無理やり手錠をはめて警察を首になった人である。推理力、洞察力、行動力は言うに及ばず、危ない橋を渡る度胸と女性に対するフェミニスト的な優しさも兼ね備えている好人物。他のメンバーにしたところで、キャプテンの足元にも及ばないものの、義理人情に厚く、そして心やさしき人々であることは間違いない。探偵として未熟ではあるものの、ダーツにしたところで依頼人の秘密を漏らすことなく、自分が窮地に立たされることすらあったほどだ。そんな好人物たちがそろいもそろってお金に血道を上げている理由が、不思議な感じがしないだろうか?
 これと対比する人材を上げるとしたら、新妻署の刑事さんたちに他ならない。しかもその刑事の一人は、七曲署で同僚であったテキサス(演 勝野洋)である。彼らは確かに麻生さんの情報源になっているばかりでなく、時として対立しその情報を逆手にとって、犯人逮捕を成し遂げてきたのである。麻生探偵事務所としては、それこそ感謝してもらいたいぐらいだろう。指定暴力団壊滅の折には、新妻署から感謝状と礼金が送られているが、それこそ雀の涙ほどの金額でしかない。公的正義を順守するつもりで、警察とは別に金銭的な価値観を追い求めるところに、麻生探偵事務所の面々の人間性があるとしたら、その理由はたった一つしかない。つまり麻生探偵事務所とそれにまつわるドラマは、それまでの刑事ドラマや警察機構に対するアンチテーゼであり、それをネタにして笑い飛ばそうという狙いだということだ。だが公に刑事ドラマを否定しても意味がない。だからこそ麻生さんたちは金を手に入れることができずに、いつも「天使」の役割を引き受けざるを得なくなる。「俺たちは天使だ!」というドラマは、「刑事ドラマ」という枠組みの中で、本質的なそのテーゼを否定しながらも同じ枠の中でお遊び演じてみせたドラマなのではないか。徹底的に軽めのドラマにしても、過去のいきさつもはっきりしないキャラクターも、すべてはそこにある枠組みの中で遊ぶための設定なのである。だからといってこのドラマにそれほどの空虚感は感じない。それはこの1時間のドラマのなかで、探偵事務所の面々の立場や事件が二転三転する、充実したディテクティブドラマが展開しており、ドラマの作りはまったくそれまでの刑事ドラマのスタイルを保っているからだ。

 もし刑事ドラマとしての体裁がなくなり、これに圧縮された流行の情報を埋め込めば、立派なトレンディドラマになるだろう。両方を併存させれば「踊る大捜査線」やミステリー色を加えれば「ケイゾク」などになるだろうか。いや単純な足し引きだけでドラマができているわけではないけれど。
 麻生勝人を演じた俳優・沖雅也は、本作の麻生役を大変気に入っていたそうだ。ご存知の方もいるかと思うが、氏は1983年6月末に飛び降り自殺をはかり、帰らぬ人となった。彼のご霊前には、本作に出演した時のほがらかな笑顔の写真が遺影として使われており、それが生前からの本人の願いだったという。かねてより二枚目で売っていた彼が、それまで以上に愉快な人柄で、愉快な仲間と繰り広げたこのドラマに持っていた愛着も人一倍だったろう。筆者は必殺シリーズに出演していた氏を知っているが、これほどにこやかに笑っている役は、必殺シリーズではお目にかかれない。それだけにドラマのファンである筆者としても、この作品はお宝のように大切な作品である。

 最近になって知ったのだが、かねてよりDVDが発売されているこの作品、なんとブルーレイで発売されているとのこと。ブルーレイの特性を生かして、全話を3枚のディスクに収録されているとのこと。大容量ディスクの正しい使い方ともいえる。全20話を改めてブルーレイで堪能するのも、また楽しからずや。


俺たちは天使だ! Vol.1 [Blu-ray]俺たちは天使だ! Vol.1 [Blu-ray]
(2009/12/23)
沖雅也、多岐川裕美 他

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上記でご紹介したBDです。全3巻。
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No title

> 当ブログへのコメントありがとうございました。
>
> また、リンクの方もありがとうございます。
>
> ブログ立ち上げを機に、色々な方のブログを見て、勉強している次第です。
>
> 相互リンクさせていただきました。
>
> これからも宜しくお願いいたします。

新作があったらしいですね

「俺たちは天使だ」って去年くらいに新作がやってたみたいですね
といっても前作から出ているのは小野寺明だけで他は若手の俳優さんで
麻生探偵にあこがれた若者が新たに麻生探偵事務所を立ち上げてって話らしかったですが。

まあ私も見てないのであまり詳しくは知りませんが
あまり話題になっていなかったところを見ると、出来が悪かったのかなあ。
あの時代だからこそ面白かったって部分も多分にあるせいでしょうが。

No title

ニコヨーンさま
 相互リンク、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
 こちらも興味を持っていただけるような特撮記事を書きたいと思います。もっとも当ブログはなんの参考にもならないとは思いますが。

mineさま
 今回の記事を書くにあたり、どうしようかと迷った挙句、見ないことに決めました。名前だけの2作目ってのはどうにも。もっとも新作のほうは、全話通じての物語があるようで、このあたりもイマドキだなあとは思いますが、特撮俳優を多数起用してのキャスティングにはあまり興味をひかれません。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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