「特攻野郎AチームTHE MOVIE」~アメリカ向けエンターテイメントの真実~


「ベトナムでならした俺たち特攻部隊は、濡れ衣を着せられ当局に逮捕されたが、刑務所を脱走し地下に潜った。しかし、地下でくすぶっている俺たちじゃあない。筋さえ通りゃ金次第で何でもやってのける命知らず。不可能を可能にし、巨大な悪を粉砕する、俺たち特攻野郎Aチーム!

 俺たちは道理の通らぬ世の中にあえて挑戦する、頼りになる神出鬼没の特攻野郎Aチーム! 助けを借りたい時はいつでも言ってくれ。」


 1985~88年、突如として土曜日の夕方に現れたアメリカンアクションドラマは、ド派手に登場した。いや、それは語弊があるかもしれない。放送時間(午後3時)を考えればむしろ“ひっそりと”という方が正しいだろう。だがその中身はものの見事にド派手なアクションとガンアクション、圧倒的な迫力を持って4人の男たちが胸のすくようなドラマを引っ提げて登場し、当時の少年から青年の心をわしづかみにしたのである。そのタイトルこそ「特攻野郎Aチーム」だ。
「超音速攻撃ヘリ エアーウルフ」(1986~1987)や「ナイトライダー」(1982~86)、「冒険野郎マクガイバー」(1988)、「新スパイ大作戦」(1991)など、80年代後半から90年代初頭にかけて、このようなアメリカのアクションドラマが多く放送されている。日本のホームドラマや時代劇に飽き飽きしていた人々は、こうしたド派手なアクションドラマにハマったのである。現在でも「アグリー・ベティ」や「ER」、「24」などのNHKやフジテレビなどで放送されているアメリカンドラマはこの流れに沿ったものだし、「冬のソナタ」に端を発する韓流ドラマも同じようなものかもしれない(違うか)。
 さて今回取り上げる本作は、かつての人気作品を現代風にリメイクされた、新時代の「Aチーム」として劇場公開された作品である。私は残念ながら劇場ではなくDVDでの視聴となったが、ド派手なアクションと二転三転するストーリーで、ハリウッドらしい一流のエンターテイメント作品となっている。

<概要と物語>
 本作は2010年夏に公開された作品。Aチームを率いるリーダー、ハンニバル・スミス役にリーアム・ニーソンを配役している。リーアム・ニーソンといえば「スターウォーズI ファントム・メナス」でオビ・ワンの師であるクワイ・ガン・ジンを演じ、「バットマン・ビゴンズ」では悪役ラーズ・アル・グールを演じた人。アクションはできるがやや優男のイメージのある彼だから、がっしりとした体格のハンニバルのイメージにはどうかと懸念していたが、作品を見る限り無鉄砲な荒くれどもを見事にまとめる戦略家の側面を持つハンニバルを見事に演じていた。
 前述の通り、TV版のAチームとはベトナム戦争をきっかけにして地下に潜った軍人で組織されているが、本作では彼らの出会いから描かれているところがミソ。
メキシコで結成されたAチームは、幾多の事件を解決してきた名チーム。だがイラク諸国の戦乱に乗じた事件に巻き込まれて、ハンニバルらアルファチームが無実の罪を着せられてしまう。それはアメリカドル紙幣の原版を使った事件であった。ハンニバルらは極秘任務としてこの事件に関わっていたが、命令を下したモリソン将軍が事件の際に死亡してしまったため、上官殺害容疑を含めて嫌疑をかけられた彼らを弁護するものがいなくなってしまう。本国にて軍事裁判にかけられた結果、階級も名誉も奪われて、刑務所に収監されてしまう。その6ヶ月後、ハンニバルらはCIAのリッチと名乗る男にそそのかされるように脱獄し、自分たちの名誉を回復するために行動を開始する。何度かに分けられたドル紙幣の原版の受け渡しを強襲し、原版を取り返したハンニバルたち。だがそこに姿を現したアラブ人の正体は実に意外な人物であった。だがその真犯人はリンチの策略によって殺害されてしまう。またも自分たちの失地回復の手立てを失ったハンニバルは、事件を背後で操っていたリンチを表舞台に引きずり出すことを画策する。港湾で行われるAチームとCIA特殊部隊の激突。ハンニバルたちはリンチの罪を暴きだせるか、そして失われた彼らの名誉は取り戻せるのか?

<イラク戦争の暗い陰>
 本作が果たして「特攻野郎Aチーム」であるかどうか? それは見た人の感想にお任せしたほうがいいだろう。なによりベトナム戦争を背景に、その憂さを晴らすように作られた本作の底抜けの明るさというのは、湾岸戦争やイラク戦争を前にしても失われていない。あくまでエンターテイメントとして見れば、それは間違いなくアメリカ国内に向けて作られていることは理解してほしい。ベトナム戦争が70年代以降のアメリカ人に暗い陰を落とした歴史観は、80年代に至り吹き飛ばしていこうとする明るく前向きな観念から作られたであろう「Aチーム」という物語は、湾岸戦争やイラク戦争を背景にした物語にはそぐわないのではないか。その疑問は本作における「真実のあり方」という物語に現れている気がするのだ。ジュニア・ブッシュ政権下のアメリカが何をしてきたかを考慮すれば、物語の都合という側面よりも、真実を捻じ曲げてでも大国の正義を貫こうとしていた当時のアメリカの批判なのではないか。テレビシリーズとの比較は、ついそんなうがった見方をさせてしまう。
 思い出してほしい。テレビのナレーションでは「俺たちは道理の通らぬ世の中にあえて挑戦する」と言っている。道理も正義も揺らいだアメリカに、彼らは彼らの真実と正義で挑戦するというのである。しかも9.11でテロリズムの標的となったアメリカにとっては、自らの暴力がどのように行使されているかを知る機会を得たはず。本当はそうやって歴史的事件から反省することの多い近年のアメリカの歴史観は、Aチームのような公的な悪に挑戦し続ける存在なんて、ちゃんちゃらおかしいに違いない。アメコミのヒーローたちですら、自己や内面の問題と公的な問題との関連を疑いはじめ、どこまでも解決できない矛盾を抱えたまま内側に閉じこもっていくしかなかったのである。揺らいでしまった個人の信念すら当時の政治に捻じ曲げられたアメリカ人には、個人の名誉を回復するという信念にすがるしかなかったのではないか。Aチームが劇場版として登場したことは、現代アメリカの問題にまったく無関係ではないと思える。

 一方でB.A.(日本版ではコング)が刑務所に収監されたときに、ガンジーの言葉に感化され、非暴力を自らに課すエピソードが挿入される。結局自分たちの失地を回復するために、ハンニバルに背中を押されて再びモヒカンにして封印を解きはなつことになるのだが、エンターテイメントとして結局暴力行為を表現してしまうことの是非をここで問いただしているわけではなさそうなのだ。9.11の前後でドラスティックに変化した「暴力」の意味に対して、免罪符のようにこのエピソードを出しておいて、「暴力」を描くことに対する後ろめたさに言い訳しているようにしか見えないのである。本来ならぶっとい葉巻をくゆらせて、豪快に笑い飛ばすハンニバルの笑顔こそが、この映画で暴力を肯定する免罪符だと思えるのだが。

<小ネタ満載!>
 小難しい話は置いておくとして、エンターテイメントしてはまさに一級品の映画である。その映像がCGにまみれているとしても、作り手が見せた絵を見せるという喜びにあふれている映画ではあることは、本作を見ていただければすぐにわかる。そして映像としての無茶や無謀とも思える表現のすべてが、Aチームのメンバーの破天荒さを表現するために作られている。非常識な映像とその驚きは、Aチームという素材にピッタリマッチしているといっていい。序盤のヘリチェイスの旋回や宙返りの絵的な馬鹿さ加減と迫力、中盤で破壊された大型輸送機から戦車で脱出するシーンなどは、腹をかかえて笑っちゃうほどの説得力ないくせに迫力ある映像が登場する。予告編映像でも流れたシーンなので見た人もいるだろうが、本編にはこれよりも冗談としか思えない映像がたくさん出てくる。序盤のAチームによる豪快すぎるドル紙幣原版の強奪シーンは昔のAチームっぽさがよく出ているし、高層ビルを舞台にしたドル紙幣の原版の派手な争奪戦や、終盤の港湾区画におけるAチームとCIAの大激突における大仕掛けなどは、なんともぜひともその目で確認して驚いてほしい。

 そんな映画の大枠となる見せ場が派手なアクションシーンだとすれば、それ以外の小ネタが満載なことも本作の特徴である。
 序盤にメキシコでのミッションで、ハンニバル、B.A.(コング)、フェイス、マードック(モンキー)の4人が徐々に登場して結集するAチームであるが、止め絵に名前が入るシーンはテレビ版のOPになぞらえている。日本版におけるそれぞれの止め絵にナレーションを付けたのは、日本版のスタッフだそうだ(後述)。そうした個人紹介の止め絵にそれぞれのエピソードが入るのは、この日本版のナレーションを踏襲したようにも見えて、なんだか鼻が高い。Aチーム一人ひとりのキャラクターはテレビ版を踏襲しながら、ずいぶんと手が入っているようだ。ハンニバルは豪快な笑顔がチャームポイントだったが、リーアム・ニーソンにはそれは無理だろう。とはいえ「シンドラーのリスト」で重厚な演技を見せた彼がスターウォーズやバットマンの映画でアクションを見せるだなんて、Aチームを見た今でも不思議な感じがする。B.A.が飛行機嫌いになるエピソードが本作に登場するが、それがマードックとの因縁になっているあたりのオチの付け方は、実にうまいと言わざるを得ない。そのマードックの変人さ加減は、テレビ版の奇天烈さに比べればややおとなしいイメージではあるが、精神異常の人間が収容されている病院にて、3D映画(赤青の懐かしいタイプ)のテレビ版Aチームを見ていると、本物のジープがスクリーンに突っ込んでくるシーンなどを見ていると、マードックの奇天烈さはこんなものじゃない気がする。税関を通過するときに披露するスワヒリ語なんて、彼の冗談の一部なんだろう。今回の映画で一番変わった印象を持つのはフェイスではないだろうか。かつての彼は色男で女性をたぶらかしたり、口八丁手八丁で相手を煙に巻くことを得意とするキャラであったが、今回はそれに加え大型銃器マニアという側面が加わったり、ハンニバルのお株を奪うほどの作戦立案能力を見せている。特に後半はAチームを追う女性軍人との過去のラブロマンスが注視される中で、フェイスは彼女すらも利用しようとして悩むシーンまで登場する。今回のフェイスは徹底したスケコマシではなく、その能力をややうとましく思っている節がある。B.A.の両拳に書かれているイレズミや、落下する戦車に書かれている注意事項をカメラがアップでとらえたりする、演出的に笑いを取りに行くシーンも散見されるから、細かいネタが満載の映画である。テレビ版のAチームが好きだった貴兄には、ぜひとも様々な小ネタを探し出してほしい。

<生きた声優史、羽佐間道夫>
 本作にはAチームの上司となるモリソン将軍が登場する。このモリソンの日本語版吹き替えを担当しているのが、テレビ版でハンニバル役を演じた羽佐間道夫氏である。まあ皮肉の利いたお遊びであるとはいえ、劇中彼の氏がハンニバルを追い詰めるという役所であるだけに、トム・クルーズ主演の「ミッション・インポシブル」で主人公役のトムを追い詰めるのは、かつての「スパイ大作戦」のチームリーダーであるジム・フェルブスであったというどんでん返しに近しい。世代交代を歌いたいのはわかるのであるが、かつてのヒーローを地に落としてまでやることかと思うのであるが、それはまあ置いといて。

 今回本作の視聴に当たっては、長年の友人からDVD(BD付き)を借りて視聴したのであるが、このDVDが実に面白い特典が付いていた。本作の音声メニューに、羽佐間道夫氏による副音声が収録されているのである。これが羽佐間氏とテレビ版Aチームの音響担当との対談形式になっているのだが、これが実に興味深い。当然のことながら、自分にハンニバル役が来なかったことへの恨みつらみ(笑)も語られてはいたが、テレビ版ハンニバルが敵に捕まる時に必ず手を前にして手錠をかけられ、お約束のように手錠を外して脱出するシーンが、序盤に再現されているのを見て上記のエピソードを披露したり、当時の吹き替えの現場での面白い話が聞ける、お宝ものの副音声となっている。ま、一部には現在の声優業界への苦言ともとれる発言も多く、古典芸能としてのしゃべりの神髄が「落語」にあるので、声優の育成には落語を取り入れろとか、今後は3D映画の普及により吹き替え映画の重要性が高まってくる可能性を指摘し、今後声優の仕事の幅が広がることを予見してみせたりしている。特に楽しいのは亡くなった声優さんたちのお話が聞けるあたりや、彼らベテランといわれる声優さんの師匠筋の話など、あまりこれまでに触れられてこなった古い話が聞ける。こうなるともう生きた声優業界史といっても過言ではない。しかも山田康雄さんや野沢那智さんなど古参の声優さんが亡くなっている現状で、彼らの思い出話に触れるあたり、この副音声は実に興味深いものとなっている。声優業界に興味がある方なら、きっと楽しめる副音声になっている。ぜひともこういう仕様も楽しんでいただきたい。

 さて、こうしたかつての人気テレビ番組のリメイク映画の企画は、現在でも後を絶たないようだ。今年の「グリーンホーネット」にしても2005年の「奥さまは魔女」にしてもそうだし、「ミッション・インポシブル」や「チャーリーズ・エンジェルル」もそう。現在知られているだけでも「謎の円盤UFO」が現在企画進行中であるとのこと。かつての作品のファンにとっては、こういう作品は再会の喜びと微妙な感情とがないまぜになっているのではないだろうか。そうした持て余してしまうような感情とともに見るのがこうしたリメイク映画だとすれば、それは過去の自分と対面するひとときなのかもしれない。こうした映画はエンターテイメントだとしても、ファミリー映画にはなりえない。どうか家族の寝静まった時間に、ひっそりとお楽しみください。


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No title

私のAチーム初体験は日曜洋画劇場でした。あの頃の日曜洋画劇場は面白い作品が結構放送されており、その中でもナイトライーダーやトランザム7000等のテレビドラマのスペシャル版?が放送されておりビデオに録画して何度も見ていました(作品を選んでいた淀川長治氏でしょうかね)。またやってくれませんかね。

コングがガンジーの言葉に影響をということで以下のガンジーの言葉を思い出したのですが、

殺さないというだけの意味でしかない非暴力は、私には何ら訴えるものがありません。
もし心に暴力があるなら、暴力を振るう方が、無力を隠すために非暴力の外套をまとうよりもましです。いかなる時でも、無力を嘆くくらいなら暴力を振るう方が好ましいです。暴力的な人が非暴力的になる希望はありますが、無力なままでいる人にはその希望もありません。
真実とアヒンサー(不殺生)をただ機械的に支持するだけでは、危機的な瞬間がくると挫けてしまう可能性が高いです。果実を期待して断食をする者は、概して失敗します。

糸車を廻している写真が有名ですが、唯の無抵抗主義者では無いようです。すごいぞガンジー。まあ映画関係者はここまで深く考えていたわけではないと思います。

あと、アメリカが湾岸戦争やイラン戦争、アフガン戦争に積極的に介入するのは自国の利益(石油メジャーとか)を守るためであると思いますのでとても賛成はできませんが、日本の他国の利益や意見を通すために自国の利益を差し出す政治業者の人間には少しは見習ってほしいです。

No title

てんぷるさん
 コメントありがとうございます。

 ガンジーの言葉については、劇中でも非暴力の本質的な意味を、B.A.にハンニバルが説くシーンがあります。内容はまったくてんぷるさんのおっしゃる内容と同義です。ただし、アメリカが軍事介入している近年の戦争には、この精神はまったく生かされていない。その意味ではこの描写自体がアメリカの現実を痛烈に批判している内容だと思えるのですが、アメリカ人にとってはそうは受け取れないようで。鈍いんですかね、あの人たち?

 ガンジーの尊い教えに関しては、そのお題目だけが伝わっていますが、その詳細まで突っ込んで解説してくれる教師などほぼいません。社会科教育の弊害だと思いますが、学ぶ人は自分で学びますよね。

 てんぷるさんも、日曜洋画劇場などを楽しんでいらしたのですね。トランザム7000、懐かしいですね。「キャノンボール」とかああいう呑気な映画は、最近では流行らないんですかね。楽しいのに。

 またコメントいただけると嬉しいです。ありがとうございました!
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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