「ウルトラマンゼロvsダークロプスゼロ」~キャラクターの消費構造~

 ここ数年、「円谷プロ」作品は「ウルトラ」以外の作品をほとんど作っていない。それは円谷の上部組織が「ウルトラシリーズ」以外の作品を作らせないからだとの話も伝え聞く。「ウルトラマンゼロTHE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」ではリニューアルされた「ミラーマン」「ファイヤーマン」「ジャンボーグA」が登場したが、物語のラストでウルトラマンゼロを中心とする「ウルティメイトフォースゼロ」を結成し、あらゆる銀河の守りにつくことになる。だがいまのところ「ウルティメイトフォースゼロ」を飛び出して、それぞれのヒーローが単独で物語が作られることはなさそうだ。映画のパンフレットにも残されているので知っている人も多いかと思うのだが、劇中黄色にペイントされた「マイティ号」が登場しているが、同じように「マイティジャック」が作品化されることもないだろう。現在のところこうしたチラ見せ程度でキャラクターを消費するのが、円谷作品の限界ように思われる。
 さて今回のお題である「ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ」はオリジナルDVDとして全2巻で発売されたが、本作は「超決戦!ベリアル銀河帝国」の前日談となっている作品である。映画では悪のウルトラマンゼロとして序盤から大活躍したダークロプスゼロだが、その出自が明らかになる作品なのが本作だ。しかも映画前作である「ウルトラ銀河伝説」の延長線上にある作品という盛り込み方を見ても、本作は「ウルトラ銀河伝説」と「超決戦!ベリアル銀河帝国」を結ぶ結節点に相当する、重要な位置を占める作品なのであるのだが・・・・

ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGE I 衝突する宇宙 [DVD]ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGE I 衝突する宇宙 [DVD]
(2010/11/26)
南 翔太、小西博之 他

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<概要と物語>
 「ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ」は、2010年の11月と12月に発売されたオリジナルDVDである。2010年12月末に公開された「ウルトラマンゼロTHE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」の前日談として制作されている。

 救難信号をキャッチしたZAP SPACYのスペースペンドラゴン。輸送の途中で救助活動に入ったヒュウガとレイは、救難信号の発信場所で宇宙のひずみを発見する。急激なひずみの活動により、ひずみに吸い込まれたスペースペンドラゴン。レイたちが目にしたものは、多数のひずみが集中する宇宙空間だった。しかもその救難信号は、スペースペンドラゴンからであった。レイたちが目にした赤い地表の惑星チェイニィに急行するペンドラゴン。そこでレイたちは激しく空中戦を演じるウルトラマンゼロとウルトラ4兄弟を目撃する。しかも謎の飛行物体につけ狙われて、ペンドラゴンは墜落してしまう。

 救難信号の発信源を求めて、レイとヒュウガは捜索を開始。そこで彼らは破壊されたペンドラゴンと外で倒れているクマノを発見。だがクマノの体は彼らの前で発光し消滅する。そしてそこに現れたのは怪我をして満身創痍のヒュウガであった。そこで明かされる秘密、それは惑星チェイニィにおいてサロメ星人が行った実験により、多次元宇宙の扉が開かれた結果、チェイニィ付近に宇宙のひずみが集中してしまったという。満身創痍のヒュウガと消滅してしまったクマノは、別の宇宙から来たクルーだったのだ。そしてゼロが戦いあぐねているウルトラ4兄弟も、サロメ星人の作ったにせのロボットだったのだ。宇宙の消滅を予言して消えゆくヒュウガ。そこに現れたのはメカゴモラである。レイはゴモラを使って対抗するが、そのパワーに次第に圧倒され始める。メカゴモラは別次元のレイが奪われたバトルナイザーのデータから作られたサロメ星人のロボットだったのである。だがゴモラのピンチを救ったのは、4兄弟ロボと戦っていたゼロである。レイとゼロの共同戦線! リトラの攻撃でひるんだメカゴモラに圧倒するゼロ。だがそこに現れたのは、かつての自分を思い出させるテクターギアをつけた謎の戦士。サロメ星人に操られた謎の戦士は、ゼロとの戦闘に入る。一方レイはリトラとともにサロメ星人の実験プラントに攻撃を仕掛けるが、バリアに阻まれた上、メカゴモラの攻撃を受けて攻撃は失敗してしまう。そしてゼロの前でテクターギアを自らの力で破壊した戦士は、ゼロに酷似した一つ目の巨人「ダークロプスゼロ」であった。ダークロプスゼロは徐々にゼロを圧倒する。ウルトラ兄妹ロボにも囲まれても戦意を失わないゼロ。だがそこに放ったダークロプスの一撃は、ゼロを別次元に葬ってしまった。サロメ星人の実験は何のために行われていたのか? ダークロプスゼロとは何者なのか? 異次元に放り込まれた絶体絶命のゼロの運命は? いくつもの謎を残して物語は次のステージへと移行する。

<ゼロ、「メビウス」と「大怪獣バトル」を越えて>
 「ウルトラ銀河伝説」と「超決戦!ベリアル銀河帝国」の2本の映画は、映像作品としては「ウルトラマンゼロ」というキャラクターを作り上げていく作品だった。だがそこで作られているものはなにも目新しい技術や映像ではなく、それまでのシリーズで培ってきたものがちゃんと基礎にある映像となっている。

 子供心に、どうして「ウルトラマンA」のときに、「帰ってきたウルトラマン」のMATはどうしているのだろう? どうしてTACと一緒に共同戦線をはらないのだろうか?とか考えたことはないだろうか? 当時見ていた子供としては、「ウルトラ兄弟」という設定により、ウルトラシリーズという物語が織り上げられた巨大なタペストリーとして、すべてが地続きであるという感覚がどこかにあり、作り手が思うようにそれぞれのシリーズが「別作品」である認識も理解しながら、どこかそれぞれの心の中で折り合いをつけていた。それをすべてではないにしろ出来うる限り整合させようとしたのが「ウルトラマンメビウス」という作品であった。そしてそのメビウスから続く一連のシリーズの中で、ウルトラマンが直接的に活躍しない「ウルトラギャラクシィー大怪獣バトル」というシリーズが誕生する。その出自はゲーム先行であったとしても、あらためてシリーズを包括するメビウスとともに活躍するZAPの面々とレイおよびレイブラッド星人の設定が残るセカイ、それが本作の基本にある。だからこそ映像に残された細かい演出が、すべて意図的になされていることを、見ているこちらは心地よく思えるのである。

 たとえば、ダークロプスゼロがゼロを別次元に放り込むシーンでは、「ウルトラマンA」の異次元人ヤプール同様に、空中がいきなりガラスのように割れる演出がなされている。すでにメビウスでもなされている演出でもある。ウルトラ4兄弟ロボットに関しても、ロボットとはいえウルトラ兄弟を模している以上、その性能は十分に反映されていしかるべきであるから、エースはバーチカルギロチンなどの切断技を出してくるし、兄弟一の力自慢であるエースだからこそ、あまりにも巨大な岩塊を押さえこんでも見せる。ジャックはランス状のウルトラブレスレットを使うし、ウルトラマンの飛び方は、両手をまっすぐに正面に伸ばして飛んでいる。しかもロボット化した兄弟のデザインは、偽ウルトラセブンのようでもあり、エースロボットのようでもある。

 レイブラッドの血を受け継ぐレイは、仲間の絆とウルトラセブンによって胸に傷をつけられた。このエピソードが別次元のレイとの明確な格差を生んでおり、別次元のレイの成長まで促すという物語運びを見るにつけ、長々とシリーズを見続けて良かったと本当に思うことになる。ましてやサロメ星人の女性科学者役に、「ウルトラマンネクサス」に登場した宮下ともみが、あの可憐な瑞生役とはまったく異なる役に挑戦している。最後にダークロプスゼロの暴走をあきらめるシーンの絶望の表情は、役者としての力量を十分に感じるシーンとなっている。そしてまったくもっておいしいところに現れるウルトラマンレオ! 羽織っていたマントを変形させて二の腕にはめるシーンのカッコイイこと! 映画でもゼロを鍛えていた師匠であるから、このセブン→レオ→ゼロという3世代の修行物語がさらに広がりを見せつける。

<物語のゆくえ>
 ダークロプスゼロのディメンジョンコアにより異次元に放り込まれたゼロ。そこでにせ兄弟ロボットの追撃にあう。だがそこへ駆けつけてゼロを救ったのは、彼の師匠・ウルトラマンレオであった。レオとの共闘により兄弟ロボットを破ったゼロは、レオの協力で異次元を脱出することに成功する。一方サロメ星人の実験プラントに拿捕されていたレイは、別次元のレイとともに脱出を図る。その時、サロメ星人はダークロプスゼロのディメンジョンコアを利用して、量産したウルトラ兄弟ロボをあらゆる多次元宇宙へ送り込んで侵略する作戦を実行しようとしていた。その時レイたちは、ヒュウガによってもたらされたバトルナイザーを使い、ゴモラを召喚して計画を阻止することに成功する。だがダークロプスゼロは失われた自我を取り戻し、自らの意思でサロメ星人に反逆する。サロメ星人はひん死の状態の中で、ダークロプスゼロがサロメ星人の作ったものではなく、別次元の宇宙からもたらされたものであることをヒュウガに吐露する。メカゴモラとダークロプスの共闘で、ゴモラを窮地に陥れるダークロプスゼロ。だがそこに現れたのは異次元を脱出したゼロであった。メカゴモラ、ダークロプスゼロとの最後の死闘が、いま始まる!

 まあ、結局ダークロプスが必殺のディメンジョンコアを発動させたにも関わらず、ゼロの一撃に負けて、ダークロプスは自らを破壊した。その余波で惑星ごと破壊されたが、宇宙のさけめが無くなった元の空間で、ヒュウガは別次元のスペースペンドラゴンのクルーが全員無事であったことを確認し、地球への帰途へ着く。サロメ星人による別次元の侵略と時空間の消滅は免れたのである。

<ダークロプスゼロの扱い>
 私は「ウルトラ銀河伝説」で初登場したゼロを、あまり格好のいいデザインだとは思っていなかった。だが今回、ダークロプスゼロという存在感が、ゼロというキャラクターを必要以上に押し上げた印象が強い。それほどまでに本作ではゼロもだが、それ以上にダークロプスゼロというキャラクターの存在感が大きい。

 ダークロプスは物語当初、ゼロのライバルキャラクターなのかな?程度の認識しかなかったが、この物語では非常に謎の多い存在として登場する。大体にしてサロメ星人にしてもダークロプスのディメンジョンコアはまったくのブラックボックスであり、宇宙で拾ったものを再利用しているだけ。しかも利用するに当たってはテクターギアをつけて、その力を制御しようとしているにもかかわらず、ダークロプスはテクターギアを破壊して、ついには暴走してしまうのである。こうしたダークロプスゼロの動きや台詞をみていると、どうにもダークロプスには自我があるのではないかという疑念がわいてくる。本作のみではダークロプスの出自はまったくわからない。だがゼロの正当なライバルキャラクターとして登場し、惑星チェイニィの夕焼けの中で、ゼロに一刀のもとに切りたおされる、実においしいシーンも演じている。この作品の真の主役は間違いなくダークロプスであり、ダークロプスの一挙手一投足が、この物語を支えている。

 ところが、である。

 この物語の後日談となる「超決戦!ベリアル銀河帝国」において、ダークロプスの活躍はほぼ序盤で終了。確かにゼロと父セブンとの共闘により3対2の戦いは見る者を圧倒する出色の出来ではあったが、物語の根幹をなすとは言い難い。たしかにディメンジョンコアの代わりに別のシステムを埋め込まれて、それがゼロの旅立ちのきっかけになっている。とは言っても、これはどう見ても噛ませ犬状態である。しかもその出自はゼロに似せてベリアルが作ったにせものロボットという以上の価値を持たず、そもそも自我を持っていたのかすら怪しい。映画を見ているだけなら、ダークロプスはゼロのライバルキャラでも何でもなく、ただのゼロの粗悪品ロボットでしかない。本作のような設定は忘れられているような雰囲気すらある。だとしたら、本作でのダークロプスの描き方も掘り下げも足りないだろう。もう少しベリアルとの関連性をほのめかしたっていいし、ベリアルの手からも離れて、独自にゼロとの対立軸を明確にした闘争劇があってもいいのではないか? せっかくこれほどのライバルキャラとして設定し、映像そのものはまことに格好のいい、素晴らしい出来であったのであるから、それに見合ったダークロプスの背景に触れたドラマがあってもよかったと思うのである。

 こうなると結局ダークロプスゼロという存在は、ベリアルの単なる手駒でしかなく、自我意識を持っているようでいて、実は何にもなかったりするという、明らかに肩透かしな存在となってしまう。これがもし以下のような内容なら、話はだいぶ違ってきたはずだ。ベリアルが初期型として開発したダークロプスは自我意識を持ってしまったゆえにベリアルに反逆する。ダークロプスはベリアルの魔の手から別宇宙に逃れようとするが、ベリアルの追手により機能を一部破壊されたまま漂流。そこをサロメ星人に捕らえられて利用される。これをきっかけにして、ベリアルは改良を施して自我意識を抜き去り、完全に操り人形としてダークロプスを改良したものが、ウルトラの国を侵略に来る、というようなドラマでもあれば、本作の味わいはまた異なるドラマを生んだのではないだろうか? とすればダークロプスは生まれながらにしてゼロのライバルでありながら、時としてベリアルに反逆するためにゼロと共闘するというダークヒーローになり得たかもしれない。ああ、自分で妄想していてふるえが来てしまった(笑)。

 こんな妄想をしてしまうと、どうしても本作でダークロプスの扱い方と、後日談である「超決戦!~」でもダークロプスの扱い方に温度差を感じるし、せっかくのダークロプスという存在を、上手く活かしきれていないような気がするのだ。監督や脚本家が異なるというのは、承知の上だ。だが「ウルトラセブン」一つとっても、あれだけの作品展開を見せた円谷プロが、ダークロプス一つにこの扱いの温度差は、ずいぶんだなあと思うのだ。雑誌では「ウルティメイトフォースゼロ」の面々が活躍しているのかもしれないが、この分だと彼らもキャラクターとして見殺しにされる可能性も高い。こうしたキャラクターを生み出す端から消費し続けるようでは、「ウルトラシリーズ」というブランドの力に頼りきった商売には、いずれ限界がくるのではないかと心配になる。一方で多数のキャラクター版権を抱える円谷プロの本気は、こんなものではないという期待も混ざっている。せっかくなので「マイティジャック」をリメイクするアイデアなんて、今ならアリかも知れない。そんな淡い期待があるから、特撮ファンはこれからもウルトラや円谷を応援する。期待を裏切られない限り・・・。

ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGE II<最終巻>ゼロの決死圏 [DVD]ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGE II<最終巻>ゼロの決死圏 [DVD]
(2010/12/22)
南 翔太、小西博之 他

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テーマ : 特撮・SF・ファンタジー映画
ジャンル : 映画

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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
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