「大魔獣激闘 鋼の鬼」~アニメで見る怪獣の激闘~

 「ゴジラ」や「ガメラ」、そして先ごろより話題になっているカラー化された「ウルトラQ」など、怪獣が登場する作品には一定の規則性を持ってドラマが形成されている。その最たるものはヒーローが不在であるがゆえに、対決する怪獣を善悪という二元論では推し量れないことである。つまり怪獣同士は常に弱肉強食の原理をもって、互いの存在を見たが最後、互いを滅するまで戦うことになる。実のところ、このテーゼを押さえていれば、あとはそのヴァリエーションであるとも言える。逆にゴジラやガメラが人間の味方を標榜したが最後、怪獣としてのアイデンティティと喪失する。だが怪獣としてのアイデンティティを喪失しても、「ヒーロー」という道が示されれば、ゴジラもガメラも延命できたわけだ。それが一方で怪獣ファンからの批判を受けようとも、ウルトラなどと同列となれば受け入れられることになる。「流星人間ゾーン」なんてその顕著な例ではないか。それが60年代末から70年代の怪獣映画の歩んできた道筋といえる。
 一方でアニメの方ではロボットアニメにその傾向が見られることはあっても、けっして主流ではなく、善悪二元論が主流である。ロボットアニメの敵ロボットは意外なほど背景が薄いため、ゴジラの対決怪獣ほどの魅力はなく、善悪二元論の前にやられメカとなるしかない。だからこそ背景が深く刻まれている敵メカに、うっかり心打たれる瞬間もあることもある。
 さて今回取り上げる作品はアニメでありながら巨大怪獣もののような雰囲気漂うOVA作品、「大魔獣激闘 鋼の鬼」をご紹介したい。

<概要と物語>
 「大魔獣激闘 鋼の鬼」はオリジナルビデオアニメとして製作され、1987年に発売された。監督に平野俊弘(現 俊貴)、キャラクターデザインに恩田尚之、メカデザインに大畑晃一、原案・脚本に会川(現 會川)昇というスタッフで制作されている。このスタッフの陣容は、すでに発売されアニメファンの人気を博したOVAを製作していた人材であるから、アニメファンの期待はいやが上にも高まることになる。事実、発売直後には多くの年長者のアニメファンには受け入れられたことにより、80年代の傑作OVAとして知られる作品となっている。とはいえ、OVAというアニメのジャンルの衰退や、ビデオ→LD→DVDといった媒体の変遷と多作品化する深夜アニメの中で、いつしか忘れられていったジャンルの中で作られた作品である。

 1999年、絶海の孤島に作られた軍事研究施設サンサーラ。そこでは島で発見された粒子・マルーダクォークを利用した、衛星ビーム砲マルーダビームの実験が行われた。だがビーム砲の実用が確認されたとき、暗黒の虚空から巨大な物体が現れて海中に没した。海中でこの実験のデータを取っていたハルカとタクヤは、実験の主導権を握るガルンの指示により、巨大な物体が落下した危険な海域において、物体のサンプル採取を命ぜられる。二人はなんとかサンプルを採取して一命を取り留めたものの、あまりにも非道な命令を下すガルンに反意を示したタクヤは、恋人を置いて島を出る。
 その3年後、タクヤはハルカから1通の手紙を受け取る。手紙には自分を救いだして殺してほしいという内容が書かれていた。急ぎ島に戻るタクヤは、そこでかつての恋人リーズやハルカに再会する。そしてガルンが施設の所長に収まっている事実を知る。島に滞在中のタクヤは、島で奇怪な事件に遭遇したり、地震を感じていた。そしてリーズやハルカの恋人ルイの口から、ハルカが以前と変わってしまったことを聞く。しかもハルカはタクヤ宛に送られた手紙を知らないという。疑念を抱きつつタクヤは調査を開始するが、島で多発する事件に業を煮やした駐留軍によって、サンサーラが占拠されてしまった。その中でハルカの事情をガルンの口から聞くタクヤ。その秘密と引き換えに、タクヤは施設からの強制退去を命じられる。その秘密とは、ハルカはマルーダビームによって次元の扉が開くことを突き止め、その研究に没頭していたという。ガルンは別次元から物質やエネルギーを取り出すことを夢想し、この研究をだまって見ていたのだという。だがハルカが実験の果てに手に入れたものは、破壊をもたらす巨大な悪意、「怒鬼」であったのだ。怒鬼に取り込まれたハルカは、施設の破壊を手始めに暴れ始め、貪欲にそこらじゅうの物質を吸収していく。ガルンの指揮のもと、マルーダビームによる攻撃を受ける怒鬼。だがそのビームのエネルギーまで吸収した怒鬼は、その力で海上の軍隊を蹴散らし、ガルンはその中で絶命する。怒鬼に取り込まれたハルカを取り戻すため、タクヤは3年前のビーム実験で出現した巨大な物体と融合する。その物体「鋼」に乗り込んで怒鬼と戦うタクヤ。鋼のキーとなっていたのは、3年前に彼らが採取したサンプルであり、それをタクヤに託したのは正気のハルカだったのだ。別次元からもたらされた巨大な2体のロボットが、洋上の孤島を舞台にぶつかり合う! タクヤはハルカを救うことができるのか?

<OVAという媒体、その青臭さ(笑)>
 本作は1話60分という短い短編ではあるものの、作画的に大変充実した1本となっている。DVDに添付している解説書によれば、平野・会川を中心に、「マジンガーZ」をリスペクトした「大魔神我」という企画が立ち上がったものの、お蔵入りしたという。その時の企画を練り直して出来たのが本作と「破邪大星ダンガイオー」とのこと。「ダンガイオー」が娯楽色の強い正統的な巨大ロボットヒーロー作品とすれば、本作は意識的に差別化されて、やや暗く重い物語を主軸とする作品となった。同解説書には会川昇氏も寄稿しており、それによれば企画の成立から製作、発売までの期間が、わずか半年ほどと非常に短い。しかも同じ徳間書店から発売されたOVAと同じタイミングで発売することを前提として製作されていたという。このあたりの事情といい、内容といい、会川氏の記事にも当時のスタッフの若さや野心の発露を指摘する文面も見える。
OVAという媒体に関しては、一度本ブログでも扱ったことがある(http://naminomanima2.blog78.fc2.com/blog-entry-12.html)。本作が製作・発売された1987年という年は、1983年の「ダロス」発売からまた4年しかたっておらず、当時においてもまだ若いメディアであったはず。映像媒体の中でいわゆる規制やコードの対象を逃れられるOVAという媒体は、平野氏や会川氏などの若手が野心を抱いて登壇するにはうってつけの舞台といえる。

 かつて本ブログで取り上げた「冥王計画ゼオライマー」(http://naminomanima2.blog78.fc2.com/blog-entry-78.html)や「戦え!イクサー1」(http://naminomanima2.blog78.fc2.com/blog-entry-80.html)などでも触れたが、とかくこの時期のOVAというのはどこまでも熱く、そして青臭い。その発露はどこか大人の鑑賞にも耐えうるという名目で、やや行き過ぎとも思える物語や表現に現れていると思える。それは「メガゾーン23」に見られたセックスシーンなどがそうだろう。本作では「親友同士の命をかけた戦い」という重いテーマにも現れているし、タクヤ、ハルカ、リーズ、ルイの4人のややウェットな関係性、そしてタクヤとルイのちょっとしたやり取りなどにセックスを匂わせるあたりにも見られる。こうしたシーンも発売当初の感性なら別だろうが、年を経た今の目で見ると、なんとも陳腐で青臭い。それは筆者が指摘する以上に、作った本人たちが一番理解していることだろう。だがこの青臭さこそが、本作を1987年のOVA作品として時代に固定し、傑作として名を残すだけの価値ある作品として輝きを放つのだろう。DVDで本作を見直しても、本作のもつ魅力はいささかも失ってはいないことがわかる。

<アニメで見る怪獣特撮>
 そうした物語の魅力もさることながら、本作の最大の見どころはなんといっても巨大な生物とみまごうかという2体の異次元ロボット、「怒鬼」と「鋼」のラストバトルだろう。劇中ではこの2体のロボットの出自についてはまったく触れられていないのだが、DVDの解説書によれば、2体は究極の破壊兵器として生まれたという。中枢には操縦者を必要とするが、起動すれば互いに破壊するまで戦いあうという設定だそうだ。
まずもって2体の登場シーンには目を奪われる。序盤に登場する「鋼」は、その真の姿を現わさぬまま海中へと没する。しかも虚空の闇である異次元の扉を通って落下するのである。一方の「怒鬼」は研究所の奥深くにいて、施設を破壊しながらハルカを取り込んで起動する。その絶対的な迫力は、巨大さも相まって見る者を圧倒する。しかも鋼との戦闘が進むにつれてその姿を変えてくる怒鬼は、異次元で生まれた無限の強さを秘めた巨人であることをうかがわせるに十分な存在感である。
 舞台を絶海の孤島となっているだけに、海を舞台に巨大な2体の怪物が戦いあう姿は、昭和のゴジラシリーズに見られる南海で行われた怪獣バトルによく似ている。しかも俯瞰で見せたり、遠方からのカメラで画面の両端に2体を配置するカメラワークは、まさに2体の怪獣が戦いあうプールでの撮影を想起させる。これは間違いなく怪獣映画の手法なのである。そもそも本作の企画コンセプトは「怪獣映画の世界をアニメで表現する」ということだったらしく、怒鬼や鋼を正面に捕らえる正統派なカメラワークも、あおりでそれぞれの巨体をとらえて陰影で表現される体躯は、巨大さと力強さを印象付ける。惜しむらくは背景が暗い夜の海であっただけに、背景との対比する映像がないがために、物足りない部分も少なからずある。だがそれとて青空のホリゾントの前で繰り広げる怪獣バトルの撮影を思えば、それは決して否定語にはならないだろう。本作で繰り広げられる2大ロボットのバトルシーンは、企画意図がきっちりと反映された名シーンであると言っていい。

 現在ではOVAといえば、テレビで放映された作品の後日談やスピンオフなどが主流となっており、オリジナル企画の作品はとんと姿を消している。その最大の理由は、ビデオやDVDなどのソフトの売り上げだけでは、こうした作品の製作費が賄えないという事情がある。どこまでいっても我々ファンには、制作者たちが作り売り出す作品を享受する以外、アニメ界を支える方法論を持たない。80年代にまったく新しいメディアであったOVAも、今はその役目の半分を終えているのかというと、そうではないのではないか。商売原理から言えば、現在どのようなOVAの企画も儲けにはつながらないだろう。だがよしんばOVAが成立する余地があるとするならば、作り手の心意気だけなのではないだろうか。それこそ本作に秘められた野心や青臭さこそが、作品やOVAという媒体に必要不可欠なのかもしれない。さらにはその熱量や青臭さを享受する懐深さも、ファンの側にも必要だろう。作りのこまやかさや見栄えのいい作品ばかりが跋扈する世の中なら、粗雑で荒々しさがあっても見る者を強烈に引き付ける何かをもった作品が見てみたいと思うのは、無理な話なのだろうか。「大魔獣激闘 鋼の鬼」という作品は、そんな見る側の熱量を思い出させてくれる作品かもしれない。

大魔獣激闘 鋼の鬼 [DVD]大魔獣激闘 鋼の鬼 [DVD]
(2002/02/22)
古川登志夫、井上和彦 他

商品詳細を見る
スポンサーサイト

テーマ : アニメ
ジャンル : アニメ・コミック

コメント

非公開コメント

No title

『鋼の鬼』も、先のゴールデンウィーク中に観たOVA作品の一つでした。よく入荷してくれた!と(笑)。

怪獣的デザインのロボットや特撮怪獣の韻を踏んだバトル描写等で「おおッ!」となったりもしましたが、何となくロボットアニメと怪獣映画との間で中途半端になってしまった、という印象を私は持ちました。また、説明不足に感じてしまった点もあり、もう少し尺が長くても良かったような気もします。
全体的に落ち着いた作風でしたが、そのあたりが『ダンガイオー』や『イクサー1』等と対比になっていたりで、興味深いように思います。

しかしながら、こういった「制作者のやりたいようにやった作品」というのは観ていて面白いですし、好感が持てますね。
OVA斜陽期の今だからこそ、80年代~90年代にかけてのOVAというものが光るのではないかとも思います(だからDVDになっていない作品のDVD化を進めて欲しい!と願っている訳ですけど、やはり難しいんでしょうね)。OVAという媒体は、制作者のチャレンジ精神で成り立つように思うんですよね。
あのころの輝きをもう一度…というのは難しいでしょうが、また隆盛してくれないかなぁ、とも思ったりする今日この頃です。

No title

飛翔掘削さま
 コメントありがとうございます。
 きっとご覧になられるだろうと予想しておりました(わーいわーい!)。

 おっしゃるとおり、尺不足なんですよね。気がつくと終わっていたという印象があり、もうちょっと見ていたかった気がします。しかも怪物同士のアクションも、もう1回ぐらいはみたかった。

 OVAって、今後ももうちょっとなんとかなってほしいジャンルですよね。できれば意欲的で野心的な作品が見たいと思うのですが、どうやら映画のほうに偏っているようで。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
namima2のつぶやき
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
リンク(リンクフリーです)
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
FC2 Blog Ranking
フリーエリア
blogram投票ボタン
ブロとも一覧

あにめにゅ~す の あににゅ

分水嶺☆小澤征爾

素足のアイドル達

有名人の珍言・名言集

宮廷アリス

TOY BOX
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

[FC2 Analyzer] http://analyzer.fc2.com/ -->