「超時空世紀オーガス02」~アニメの「日常描写」とは何か?~

 アニメにおいて「日常系」という言葉があるのだそうな。例として「けいおん!」「あずまんが大王」「げんしけん」「宙のまにまに」などがあるそうで、詳しくは飛翔掘削さんのブログ「怪獣の溜息」(http://mogera594.blog9.fc2.com/blog-entry-797.html)の2011年4月28日のエントリーやこちらのブログ(http://www.aniani.earth-words.net/music/ct-dailiy.html)を参照していただきたい。そもそも「日常系」という言葉の定義がはっきりしないので、いわく否定しようもない。飛翔掘削さんのブログに関しては、こうした言葉の定義の二次使用による思考停止の問題点だけは指摘したが、それ以来ずっと引っ掛かっている言葉なのである。

 もし筆者が「日常系」を定義するなら、以下のように分類するだろう。

1)複数の主要キャラクターの日常を描写し、大きな事件は起きないかわりに、日常にあるユーモアやペーソスを表現するアニメ(ex.)「サザエさん」「あたしんち」「けいおん!」「Aちゃんねる」など)

2)複数のキャラクターの日常を描写する中で、大きな事件は起こらないものの、事件の発生から解決までの流れに大きな落差を作ってギャグとするアニメ(ex.)「日常」「あずまんが大王」「天才バカボン」)

3)主要キャラクターが日常の中で、日常に潜む事件に巻き込まれ、解決する過程を丹念に描くアニメ(ex.)「彼氏彼女の事情」「リストランテ・パラディーゾ」「青い花」「放浪息子」など)

4)何気ない日常を暮らしている主人公が、日常とはかけ離れた出来事に巻き込まれていくアニメ(ex.)「円盤皇女わるきゅーれ」「天地無用」シリーズ「うる星やつら」「かみちゅ」)

5)日常の中に、異性への恋愛感情にまつわる些細なエピソードを積み重ねるアニメ(ex.)「みゆき」「キミキス」「アマガミ」「ヨスガノソラ」「Theかぼちゃワイン」「めぞん一刻」など)

 1)~4)までは作品内で発生する事件の規模の大きさの差と解決の表現、そして5)は「恋愛もの」という括りで分類してみた。少なくても思いつく限りのアニメの「日常系」はカバー範囲が広く、異世界や宇宙を舞台にする物語や、ロボットが登場したり魔法が使えたりする世界観、果ては図書の検閲で戦争が始まるような(笑)突飛な物語でもない限り、ほとんどのアニメがこの範疇に収まってしまうため、分類することにあまり意義を感じられない。ところでアニメで「日常を描写」することに、どんな意味があるのだろうか?
 ここにアニメの日常描写演出に定評のある監督がいる。その名を「高山文彦」。今回は彼の手がけたOVA作品である「超時空世紀オーガス02」をテキストとして、アニメの日常描写について考えてみたい。

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<概要と物語>
 「超時空世紀オーガス02」は1993年に全6話として発売されたOVA作品。まだOVA作品がビデオやLDを主体として販売されていたころの作品であり、テレビ版「超時空世紀オーガス」の後日談であり、スピンオフ作品という位置づけの作品となる。

 物語世界は200年前に突然発見された人型ロボット「アーマー」を兵器として利用して戦争をし、その戦乱の果てに2つの王国「リヴリア」と「ザーフレン」に分割された世界である。主人公リーンはリヴリアの機械工の少年。ある日育ての親である親方とともに海に沈んだアーマーのサルベージを行っていたところ、その作業を邪魔するザーフレンの攻撃を受けたことで、親方が無くなってしまう。リーンは親方の夫人とその娘トリアの借金を返すため、先の事件で知り合ったリヴリア近衛騎兵隊のマニング中尉を頼って軍に入隊する。リーンの最初のミッションは、マニングとともに敵国ザーフレンに潜入し、敵の内情を知ることであった。その潜入行の中でリーンは、ザーフレン軍を脱走した少女ナタルマと出会う。リーンと行動を共にしているうち、頑なだったナタルマの心は打ち解けていき、二人は必死の逃亡の末にリヴリアにたどり着く。
 ザーフレンは巨大なアーマー「ベリファ」を使ってリヴリアに侵略しようとする。だがベリファの操縦は登場する能力者に過剰な負担を強いるアーマーであり、ナタルマが追われていたのは、彼女が高い能力を持つベリファの搭乗者であったからだ。だがザーフレンはナタルマを欠いた状態でリヴリ侵攻を開始する。他方のリヴリアでは、ザーフレンとの戦端を開くかどうかで王国の勢力が2分しており、それを契機に王位継承権争いの派閥闘争がおこなわれていた。王が毒殺され、王妃と左大臣が結託した派閥が第二王子シプレーを擁立すると、白痴を装っていた第一王子ペリオンが本性を現し、マニングの協力を得てシプレー一派を一掃し政権を握る。そしてペリオンの野望はそれだけにとどまらず、巨大アーマー「リボー」を直接操縦することで、ベリファを完全破壊し、勢いかってザーフレンに侵攻を始める。
 だがそこに立ちはだかったのは「オーガス02」。戦火に巻き込まれたリーンとナタルマを救ったのは「大尉」と呼ばれる老人であった。その正体は機械生命体世界ムーからこの世界に飛ばされたロボットであった。TV版「オーガス」において主人公・桂木桂とオルソンが行った時空振動弾による時空修正作業は失敗に終わっており、その影響でアーマーの出現やザーフレンとリヴリアの戦争などの引き金となっていた。大尉はさらなる時空の修正を目論んで、オーガス02と時空振動弾を製造したのだという。そしてナタルマというエマーン人の末裔がいることで、彼女を時空修正のためのナビゲーターとするという大尉。リーンとナタルマは、本来いるはずのない巨大アーマーを打倒し、時空の修正を願ってオーガス02を駆る。あまりに巨大なリボーを敵にまわして、リーンとナタルマは、その願いを成就できるのだろうか?

 主人公も主役メカもオリジナルのテレビ版とはことなるデザインであるため、一見するとこの物語がテレビ版「オーガス」との関連を疑いたくなるような作品なのだが、物語が進むにつれて、意外な点で意外なほど腑に落ちる瞬間が急にやってくる。前作「オーガス」における時空修正の結果として生まれた世界、平行世界がパッチワーク上に地球上に出現した世界が戦乱にまきこまれ、その結果として2つの世界に統合された世界。その世界を再び時空修正しようとするなぞの老人の正体、そしてナタルマの正体など、見た人は「ああ、確かにオーガスの後日談だ」とわかる仕組みになっている。つまり本作の本質がわかるまでには、しばらく本作をだまってじっくり見ているしかない。ロボットアニメのOVA作品であるから、テレビ版では追求できない派手なロボットアクションが見られるかと思いきや、むしろその後の世界のありようを徹底的に描写していることを特徴とする作品となっている。

<徹底した日常描写とその力>
 監督・高山文彦は主にアニメの監督や脚本、演出を手掛ける作家であり、基本的にあまり露出を好まない性格の方であるため、アニメファンの中でもなかなかその姿を見た人はいないと思われる。だが彼の手がけた作品を知れば、その作品の傾向はおのずと知ることができるだろう。「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」、「WXIII 機動警察パトレイバー」など。そして脚本家としては「ラーゼフォン」、「鉄腕バーディDECODE」シリーズ、「青い花」など。
 一般に高山文彦作品の特徴は、日常描写が丹念に書き込まれており、事件そのものよりも事件の裏側や事件の契機に相当するような「背景」を細かく描写し、登場人物の表情やその後ろ側にある背景から、人物の心理や物語の起伏を描写にある。そのこと自体はむしろアニメよりも実写映画を基礎としており、実際に洋の東西を問わず映画への興味が強い。いずれの作品のインタビューでも、それぞれの作品のモチーフについて、過去の映画作品をイメージしていたらしい発現を残していることからも、氏の映画好きが偲ばれる。

 「0080ポケットの中の戦争」では、終盤のクリスとバーニィのモビルスーツ戦をもってくるにあたり、それ以前のアルとクリス、アルとバーニィとの交流や、アルの日常があって初めてその無残さが、見ているこちらの心に染みいるように演出されている。氏はそれまで「ガンダム」シリーズをほとんど見ていなかったとのことだが、本来原作である富野監督がこそやりたかった視線を、見事にフォローしている作品という側面もあるのではないか?
 「WXIII」では、主人公は特車二課の面々ではなく、あくまでWXIIIを復讐のために解き放った岬冴子と、その犯罪動機を探ろうと奮闘する久住と秦の両刑事の3人である。終盤の怪物とパトレイバーの格闘を除けば、その描写は2時間ドラマ以上に濃密な刑事と犯罪者の、そして男と女のドラマであり、そこに刻まれた人間としての時間という皺は、ドラマの深い陰影を作る。圧巻なのは冴子の自室に久住が入り込むシーンにおける、冴子の部屋の描写だろう。その生活感のなさと今は無き子供への憐憫の情が、部屋という背景の中に必要十分に押し込められている。

 以上の2作品を見てもわかるように、高山監督の日常描写には、きちんとその目的が明確に描きこまれていることがわかる。これは日常を日常として表現する、先の「日常系」と呼ばれる作品群とは一線を画す存在である。きちんと日常描写がなされているからこそ、そこから生み出される空気感に我々観客は気持ちよくなじむことができるし、ドラマに身をゆだねることも可能になる。しかも監督自身の目的どおりに気持ちを揺り動かされ、ドラマのラストシーンにおける余韻をきちんと味わえる作品として仕上がっていると言える。

<物語をころがすために・・・>
 では本作における「日常描写」はどうのようになされているのだろうか?
 まず本作の主な舞台を上げてみると以下の通りとなる。

・リヴリアのゲラン市街
・リヴリア王宮ゲラン城
・ザーフレンの王宮
・ザーフレンのコスマー
・ザーフレンのアルナスル市街
・ゾーン(時空エレベーター)

つまり全6話の物語でありながら、基本的な舞台はたった6種類しかない。そして劇中より丹念に描写されていた舞台を上げるとすれば、ゲラン市街とアルナスルとなる。リヴリアの王宮の描写は、戦時中であることを除いても、人がきらびやかに着飾っている一方で、舞台としては質素にすぎず、豪奢な王宮という印象はほとんどない。だが一方でゲラン市街におけるリーンやトリアの暮らす町並みや、家の中の生活感などは、実に丁寧に描写されている。その描写は貧困と戦争による疲弊の状況であり、すでに長期間にわたって戦乱の続いている世界で、戦争を主導している人間たちの舞台と、戦争に疲れている一般市民との格差が如実に見て取れる。しかも戦争を主導している側は、一般市民の生活をかえりみることなく、自分たちの権力を守るために派閥闘争に明け暮れている。終盤でその正体を現すペリオン王子にしたところで、王妃による毒殺を逃れるために白痴を装っていたが、王妃一党の失脚をしり目に、本心をあらわにして巨大アーマーを持ち出して権勢を誇示することに固執する。そして戦争の中で被害者を明らかに一般市民であり、巨大アーマーの力をひけらかすために、街ごと焼き払われて無残に死んでいくのである。

 劇中「大尉」の言葉を借りるならば、リボーやベリファなどの巨大アーマーも、その他の軍事利用されているアーマーも、本来はこの世界にあるべきものではないオーパーツである。しかも時空混乱の結果としてもたらされたアーマーは、その利用を軍事に限定され、戦争を引き起こす契機となっている。しかもこの世界の一般市民は戦争によって疲弊し、戦争を主導するものはそれを見て見ぬふりをする。巨大アーマー2体は、この世界から拒否されたように最終的に破壊されてしまうのだが、これ以降の世界で巨大アーマーが再び修復されて利用されないとは限らない。しかもこれらを動かすために、ナタルマを含めた能力者の命を無駄にもてあそぶのである。この世界の戦争を幾重にも否定する言葉。それこそ高山監督がこの世界の背景描写や日常描写に込めたものであり、同時にそれはリーンとナタルマが最後の最後に戦う動機づけになっている。とってつけたような印象で登場するオーガス02や時空振動弾ではあるが、ナタルマを得ての時空振動弾でも、この世界が正しく修正される可能性など、わかったものではない。だがそれでも現在の世界ではない、戦乱のない世界を望む心、それがリーンとナタルマに芽生えたのは、ナタルマが受けた仕打ちと、日常描写に見られる戦乱に疲弊した世界ゆえだったのである。本作では戦争の否定を暗に示しながら、それ以上に展開するドラマを強固なものとするためになされた日常描写であったことが伺える。

 先述の通り、終盤まで見ないとわかりづらい作品な上、主題歌などのハードルも高い本作は、前作「超時空世紀オーガス」がマクロスほどに人気のない作品であったため、OVAとしても難しい位置にいる作品ではないかと思っていた。だが前作をあえて見なくても、wikiなどで情報を仕入れてからであれば、決して見られない作品ではない。だがむしろ高山文彦監督作品としては、先の「WXIII」や「ポケットの中の戦争」などを見ておくと、本作に対する理解度はさらに高くなるのではないか。「オーガス」という文脈よりも、「高山文彦」という文脈で見たほうが、本作の面白さはわかりやすいと思う。だがこうした見方はあまりお勧めできないかもしれない。けれど「オーガス」から見てほしいというのも、やや難があると思える(テレビシリーズだしね)。なお前作「超時空世紀オーガス」については、後日あらためて本ブログでとりあげる予定です。

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前作です・・・・こっちも絵がねえ!
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Re: No title

超時空震動弾さま

波のまにまに☆です。このたびはコメントいただき、ありがとうございました。

> OVA本編はいまだに見ていないのですが当時発売されてた小説版は読みましたね。
> 小説版だとより内容が濃くなってましてほんとラストに至るまで初代作品と繋がるとは思わない作品ですね。

ありましたよね、小説版。私も当時ビデオには手が出せず、小説を手に取るところまではしたのですが、読まずじまいでした。だって、最初の数ページを立ち読みして、これのどこがオーガスの世界なのか、理解できんかったからなんですよ。読むべきでした。

> オーガスは初代も02ももう少し評価されてもいいですね。

いや本当にそう思います。なんというかマクロスシリーズの陰にかくれている感じですが、
TV版含めて、再評価したいところですよね。TV版も最初に発売されたばら売りDVDを持ってはいるのですが、
なかなか最後までたどり着かなくて放り投げてまして、ブログで取り上げるべき作品リストに載せておきますので、もし記事が完成したら、お読みいただければ幸いです。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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