「装甲騎兵ボトムズ」~その1・食わず嫌いのあなたへ~

 アニメでも特撮でも、ドラマでも時代劇でもなんでもいいのだが、それぞれのジャンルのファンであればどんな作品でも好んで見るわけではないだろう。アニメで言えば、自分の好きなジャンルではないとか、自分の趣味にあわないとか、さまざまな理由をつけてまったく見ずにおいている作品は、誰にでもあるものだ。逆に特定の作品については、なんとなくハードルが高いような気がするため、見る側がつい気後れしてしまうということもあるだろう。後者の例でいえば、ガンダムシリーズ以外の富野由悠季監督作品がそうだろうし、全話数が圧倒的に多い「銀河英雄伝説」シリーズなんていうのはまったくこの例に当てはまるのではないだろうか?

 この手の作品は、一度口にしてしまえば意外と楽しめるものだったりする。スルメのように噛めば噛むほど味わい深くなるタイプの作品は、多かれ少なかれこのような扱いになる。しかしこの手の作品は、それなりに話数を進めて見てみないとその面白さは伝わりにくいことも一面の事実である。したがってこうした作品こそ、ガイドが必要になることも道理だ。作品のあらすじだけではなく、何が面白くて、どんな見方をすればいいのか。そこで今回はこうしたとっつきにくそうな「装甲騎兵ボトムズ」をご紹介してみようと思う。本作がお好きな方にはまったく釈迦に説法な内容だとは思うのだが、ここは「ボトムズ」に興味はあるが手が出しづらいとおっしゃる方々に向けて解説してみたい。もしもこの記事で「ボトムズ」の興味を持ったのなら、ぜひともテレビ本編(あるいはその総集編)をご覧いただき、OVAとして製作された作品群については、あらためてご自身の意志で手にとっていただければ幸いである。

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(2010/02/23)
郷田ほづみ、富田耕生 他

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<作品概要>
 「装甲騎兵ボトムズ」は1983年から翌84年にかけて放送された、日本サンライズ(現 サンライズ)製作のロボットアニメ。総集編3話を含む全52話。前年に約1年半の放送を渡りきった「太陽の牙ダグラム」の後を受けて放送された。「ウド」「クメン」「サンサ」「クエント」という断続的な各1クールずつ4つの物語で構成されている。1年の放送を終えた後、本作はそれぞれのクールの総集編が作られ、その上で物語の隙間を埋めたり、テレビ本編以前や以降の物語を作品化する方向でOVAが製作されている。本作がややとっつきにくい事情は、テレビ本編のわかりにくさもさることながら、ややボリュームのある外伝的なOVA群があるため、何から見ていいのかという悩みが付きまとうからだ。そして本編の主人公キリコの物語はまったく終局せずに、いまだにOVAが製作されていることから、ファンには非常に人気が高い一方で、見たことがない人にとっては手を出しにくい作品になっているのではないだろうか。

 本作の物語は、主人公キリコ・キューピィが、アストラギウス銀河を二分する百年戦争末期に直面した謎の作戦に関わったことからスタートする。青く光るカプセルに寝そべった裸の美しい女性。それはPS(パーフェクトソルジャー)という戦闘に特化した人間を作る機密だったのである。機密を知ったと誤解されたキリコは、突如として様々な勢力からつけ狙われる。そしてアストラギウス世界を転々とする。時にウドの街、時には惑星クメンの内乱の中に身を投じながら、キリコはPSとして育てられたイプシロンの攻撃を退け、謎の女性・フィアナとの愛を確かめあう。その後キリコは、ギルガメス群の殺人部隊「レッドショルダー」としての過去にさいなまれる日々を送るが、それ以前の過去の記憶がない。やがてキリコは自分の出自を確認するために惑星クエントへと向かう。そこでキリコを待ち受けていたのは、自分の出生とアストラギウス銀河の命運を握る謎の人物「ワイズマン」のささやきであった。ワイズマンはその持てる知識と力のすべてを、キリコにゆだねるという。この世界の神との呼べるワイズマンのささやきを前に、キリコはある決心をする。そしてワイズマンの前に立つキリコの真意とは・・・? しかしキリコが決断してもアストラギウス銀河は再び戦乱の世界となった。キリコはフィアナとともにコールドスリープに入り、愛する仲間たちと別れて宇宙をさすらうのであった。

 さて先述の通り、本作にはテレビ版のほかに外伝や前日談、後日談となる物語がOVAとして発表されている。現時点(2011.06.05)で発表されている作品を、時間軸を追って以下に示しておこうと思う。

「レッドショルダードキュメント 野望のルーツ」(OVA)
「ペールゼン・ファイルズ」(OVA、映画)
「ウド編」(TV第1クール)
「ザ・ラストレッドショルダー」(OVA)
「クメン編」(TV第2クール)
「サンサ編」(TV第3クール)
「クエント編」(TV第4クール)
「ビッグバトル」(OVA)
←「クエント編」ラストのコールドスリープのエピソードはここに入ります
「赫奕たる異端」(OVA)
「孤影再び」(OVA)
「幻影編」)OVA)



 う~ん、作りすぎかなあ(笑)。なお上記のシリーズはあくまで主役をキリコに限定した物語のみ。ご存知の方は多いかと思うのだが、同じ世界観で作られた「機甲猟兵メロウリンク」や全く平行世界として作られた「ボトムズファインダー」などの作品もある。また小説やゲームなどに展開した作品を含めると、その裾野はもう収拾のつかないほど広がっていると見ていい。まあこの広がり方が本作を余人から遠ざけている原因だともいえるのだが・・・(笑)

<4つの物語と見どころ>
 本記事はあくまでTV版の物語を取り扱うこととする。「ドキュメント・ボトムズ-高橋良輔アニメの世界-」(三一書房)における冒頭の高橋良輔インタビューによれば、本作は前作「太陽の牙ダグラム」における背景美術の魅力のなさという反省点から出発し、1クールごとに舞台を変えて、魅力あるSF的な舞台を設定し物語にメリハリをつけることを念頭に置いて、4つの物語として作られている。まずは4つの舞台を背景としたそれぞれの物語を紹介してみよう。

○ウド編
 まずTV版最初のエピソードとなる「ウド編」。その特徴を上げるとするならば、「退廃的な享楽の街」「裏切りの街」そして「バトリング」の3つだろう。
 1話冒頭で、キリコの物語の契機となる、機密に関する作戦行動とカプセルに入った謎の女性との出会いが描かれる。このシーンがこれ以降のすべての物語の起点となるので、見逃してほしくない。一見すると何が起こっているのかわかりにくいシーンではあるが、このシーンの意味がわかるようになるのは、これ以降の物語を見続けたあなただけの特典なのだと思ってほしい。そして機密を知ったことを疑われて、キリコは自分が所属していたギルガメス連合の首座であるメルキア軍から拷問を受ける。からくもキリコは軍を脱走し、流れ着いたのが「ウド」という街なのである。

 まずはこの「ウド」という都市を注視してほしい。設定によればかつては工業地帯であったために、敵バララント同盟側から激しく攻撃を受けて出来たクレーターの中に出来た階層構造の街なのである。破壊された宇宙戦が斜めに街に突き刺さっているビジュアルは、「ウド」のキービジュアルである。しかしこの街は、逃げ出した軍人やならず者などの吹きだまり。そうした人間相手には歓楽街が必要となる。そしてこの街では「チヂリウム」という鉱石が採掘される。その利権をあさる暴走族や治安警察が跋扈し、互いの利権を守るために衝突が絶えない。それが「ウド」の街である。キリコは流れ着いたこの街で、暴走族と戦ったり治安警察に追い詰められたりする。
そして出会ったゴウトという恰幅のいいおじさんが登場し、キリコの素性を見抜いてバトリングの選手に仕立て上げる。「バトリング」とはAT(アーマード・トルーパー)と呼ばれる軍事ロボットを使ってのバトルショーである。ATに乗るのはかつての軍人のなれの果て。みな一癖も二癖もある軍人崩れであり、荒くれものである。中にはキリコのように軍から追われる身となっているものもおり、こうした人間たちを「最低野郎ども」といわれ、本作のタイトル「ボトムズ」の元ネタになっている。

 とにかくこの「バトリング」のシーンの迫力が、ウド編の前半の見どころだ。わずか全高4m程度のロボットの中に、満載されている様々なギミックを使い、相手との間合いを詰め、そして種々の兵装を駆使して互いの機体をつぶすために戦いあうのである。ATにも基本となるスコープ・ドッグやパープル・ベアなどの機体のほか、これらの機体を自分用にカスタムした機体で勝利を競い合う。しかもその勝負は賭けの対象となり、ゴウトや他のバイヤーたちの私腹を肥やすことになる。ゴウトにしたところでキリコのAT操縦の腕を見抜いて利用しているだけなのだが、キリコがウドの街で出会ったゴウト、バニラ、ココナの3人との友誼、そして再会したカプセルの中の美女。ファンタム・レディとの奇妙な関係が、戦争の硝煙の中で育った非人間的なキリコに人間的な感情を取り戻させていく。ウド編の後半は徐々に対立を深めるキリコ一党と治安警察、そしてファンタム・レディが行動を共にする謎の組織が様々に絡み合い、ウドの街を崩壊に導く。

○クメン編
 濃密なる緑の大地、亜熱帯の地域。そんな星に流れ着いたキリコは、すべてを忘れたいと言って外人部隊に入隊する。その星、クメンは長らく神聖クメン王国を支持するビーラーゲリラとクメンの政府軍との内乱が続いており、キリコは政府軍が雇った外人部隊の基地「アッセンブルEX-10」に配属となる。ここですべてを忘れるために内乱に身を投じたキリコは、ゴウトたちと再会する。だが戦場では敵としてフィアナことファンタム・レディと再会を果たす。誕生したパーフェクト・ソルジャー(PS)イプシロンの教育係となったフィアナは、謎の組織とともに神聖クメン王国と手を組み、戦場での最終調整を行っていたのである。

 クメン編の見どころは2つ。1つはATに乗っては無敵を誇っていたキリコが、PSであるイプシロンに一敗地にまみれるものの、徐々にキリコがイプシロンを圧倒するまでのAT戦。そしてもう一つはクメンを舞台に繰り広げられる内乱のゆくえ、特に神聖クメン王国のカンジェルマンの選んだ滅びの美学とでもいうべき内乱の真意は、見る者を圧倒するだろう。

 キャラクターが交錯し、複雑であったウド編に比べて、クメン編はキャラクタードラマとして非常に面白く、EX-10の指令ゴン・ヌーやキリコの上司に当たるカン・ユー、カンジェルマンといった魅力的なキャラクターが登場し、クメンでの内乱を追った充実した物語が展開する。それゆえキリコのキャラクターが霞むかと思いきや、フィアナをはさんでの愛憎劇を展開するキリコとイプシロン。イプシロンたちの背後にいる組織はその愛憎すらも利用する。本来戦闘ではPSにかなうはずもない一般人のキリコが、PSすらも凌駕してしまう特殊な戦闘力を見せるなど、キリコのキャラクターの深化を語る上で重要なシークエンスに満ちている。

 ATについても水上での活動に主軸をおいた数々の新ATや、PS用にカスタマイズされたイプシロン用のATなど、メカニックの点でも見どころが多い。特にイプシロンの駆るブルーAT「スナッピングタートル」や「ストライク・ドッグ」の強さかっこよさは見事であり、キリコに敵対するATでありながら、ロボットアニメファンとしては見過ごせない。こうした様々なATが登場しても、キリコはこだわりとしてAT「スコープドック」を駆って戦場を巡り、新型ATすらも圧倒する。だからこそキリコのこだわりやストイックさが輝いて見えるのである。

 今回は第1,2クールまでとし、次回は残りの第3,4クールを解説したい。そして主人公キリコではない視点で物語を眺める別の視線を提案してみたい。次回もお付き合いいただければ幸いです。

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