「科学戦隊ダイナマン」~その1・17分の激闘史~

 30分の番組だとCMやOP,EDなどを除けば、実質的な本編は20分程度となる。2時間ドラマなどを見ていると、EDのキャスト・スタッフロールが流れ、主題歌が流れる中で、最後のシーンが継続していることが多い。まるで2時間もあるくせに、本編の時間の少なさに悪あがきしているように感じるのである。 そう考えると30分番組のほうが短い時間の中に起承転結を盛り込んで、すっきり終わる潔さがある。筆者が30分番組を愛する所以である。
 子供番組と呼ばれる特撮作品はだいたい前述の30分番組の構成となっている。ヒーロー番組の場合にはさらに毎回お約束として挿入される変身シーンやロボットの合体登場のシーン、必殺技のシーンなどいれこまなくてはいけないシーンもてんこ盛りである。とても20分の本編におさまってなおドラマが展開できるはずがない、と、だれもが思うはずである。放送スケジュールの差もあるだろうから、一概に比較できるわけではないだろうが、この手の非難は今に始まった話ではない。
かつてのスーパー戦隊シリーズの中には、放送時間がさらに5分少ない25分番組だった時代がある。その最初の作品が、今回ご紹介する「科学戦隊ダイナマン」である。そんな短い時間でも、面白いドラマが見られるということを如実に証明してみせた作品である。

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<概要と物語>
 「科学戦隊ダイナマン」は1983年2月から翌84年1月末まで放送された、スーパー戦隊シリーズの第7作目。全51話。本作を一度でも見た方にとっては、OPにて派手に爆発するシーンが印象に残っているのではないだろうか。本作の鈴木武幸プロデューサーの弁によれば、過去最高の火薬の使用量を使った作品だったらしく、劇中で毎回行われる名乗りのシーンでの大爆発や、必殺技「スーパーダイナマイト」による大爆発など、本作では要所要所で印象的な大爆発を見ることができる。
 物語は、地下で暮らしていたジャシンカ帝国が地上に現れ、帝王アトンが地上世界への侵攻を宣言したところから始まる。地上侵攻の過程で5人の若者がジャシンカのシッポ兵の軍団に襲われる。5人は持てる力を尽くして危機を逃れ、科学者・夢野久太郎が主宰する夢野発明センターにたどりつく。そして5人の若者はジャシンカ帝国の野望を砕くため、夢野博士の開発したスーツや数々のメカニックを駆使し、科学戦隊ダイナマンとしてジャシンカ帝国と戦うことを誓う。

<ダイナマンの魅力>
 「科学戦隊ダイナマン」という作品は、それまでのスーパー戦隊シリーズの変換点に相当する作品である。表面上のわかりやすい点を挙げれば、ダイナマンのスーツにはマフラーがないことだ。そもそもヒーローにマフラーが付いているのは、それこそ「月光仮面」以降のヒーローのお約束といっていい。「仮面ライダー」ではライダーのマスクとスーツの間の首のあたりは、スーツアクターの素肌がどうしても見えてしまっていた。それを隠す意味もありマフラーは必須となっていた。だがダイナマンのころの戦隊シリーズでは、スーツの首から顎のあたりまで覆っているため、マフラーの必要性がなくなっていた。結果としてダイナマンではマフラーが廃止となっている。
 またダイナマン側のデザインはスポンサーであるおもちゃ会社によるものであるが、ジャシンカ帝国側はアニメ畑出身の出淵裕氏の手による統一されたデザインとなっている。それまで上半身にボリュームを置いた平面的なデザインだった怪人のデザインも、出淵氏によるより立体的なデザインにより、より実写で映える鋭角的で魅力的なデザインの怪人が続出する。一方ダイナマン側では、巨大ロボの合体は前作「ゴーグルV」同様の3体合体ではあるが、5人が3台に分乗している点は注目しておきたい。これにどれほど意味があるかということについては、現在ではまったく普通のことであるのだが、巨大戦と等身大戦がパラレルで行われていた「バトルフィーバーJ」やロボに登場しているのは3人で、残り二人は戦艦でフォローに回っている「ゴーグルV」を考えれば、これ以降5人がロボ戦に参加することが固定化された意味は大きいと思う。

 ジャシンカ帝国の魅力については次回あらためて触れることとして、今回はダイナマン側の魅力についてたっぷり触れてみたい。
 そもそもダイナマンは「野球戦隊」として準備された経緯がある。そのためスーツが野球のユニフォームのようになっているのは、その名残である。戦隊ものの本を紐解けば、さまざまな本で野球戦隊としてのダイナマンの写真が残されており、決定直前まで野球戦隊で話が進んでいたことが伺える。とはいえ「ゴーグルV」におけるゴーグルシーザーの発進シーンが、今は亡き後楽園球場の下にあった格納庫からは、試合中に発進する毎回のお約束シーンがある。野球戦隊である以上、こうした作品のパブリックイメージを踏襲することは好ましいとは思えない。スーツは最小限の変更を持って、本編通りのスーツとなったわけだ。
 ダイナマンの魅力といえば、変身前の素顔の5人の魅力ではないだろうか。あざやかな剣の腕前を持ち、健やかでたくましく実直なリーダーであるレッド・弾北斗(演 沖田さとし)、忍者の末裔であり、だれよりも人の和を尊ぶブラック・星川竜(演 春田純一)、引きしまった体躯、俊敏な動き、こよなく海を愛する男ブルー・島洋介(演 卯木浩二)、コメディリリーフでありながら人一倍心熱く、子供と植物を愛する男イエロー・南郷耕作(演 時田優)、紅一点でありながらそれまでの可憐さを売りにする女性戦士とは一線を画す凛々しさを秘めたピンク・立花レイ(演 萩原佐代子)。そして5人を束ねる夢野博士(演 島田順二)は、愉快な発明おじさんと明晰な科学戦隊の責任者としての二つの顔を持つ。そのコメディアンぶりも真剣な演技もそれぞれの場面を引き締める。本作はまたブラック、ブルーを演じた二人がJAC出身者であり、変身前後を同一人物が演じきっている点にも注目したい。Wikiによればイエローもスーツアクターの番組移動によって、南郷役の時田優氏が終盤スーツに入って演じているという。その理由も、イエローの役は元のスーツアクターと二人で作り上げたものだからという理由だという。実に泣かせる話ではないか。その結果、変身後と変身前の一致率がもっとも高い作品となっている。
ダイナマンという作品自体は全体的に「陽性」に属する作品だ。もっとも後の「カーレンジャー」のようにコメディベースの作品ではない。だがどちらかといえばコメディ寄りに作られていたのは、星川役の春田純一氏や明らかにコメディリリーフとして配役されている南郷役の時田優氏、そしてなにより夢野博士役の島田順二氏などの芸達者な役者陣により、陽性のドラマが形成されているからだ。子供心にこうしたコメディっぷりは、子供向きのおふざけに見えてしまうので、メインターゲットを越えた年齢の少年にとっては好ましいものとは思えなかったのだが、大人なった今の目で見ればこれは大人の余裕だとわかる。そう、こうした笑いの要素というのは、大人である彼らの強さや団結力ゆえの余裕の裏返しなのだ。
 
<17分の制約が生み出したもの>
 さて前書きにも書いたとおり、本作は30分だった放送時間が諸事情で25分に短縮された最初の戦隊シリーズである。その事情は夜7時少し前に帯番組として放送されていた「藤子不二雄劇場」の「忍者ハットリくん」の放送による。大人気作「ドラえもん」の後番組として放送された「ハットリくん」の放送時間を確保するため、かつては戦隊作品の後の時間にはいるニュース番組の時間枠を短縮させたが、その余波が戦隊シリーズにまでおよんだのである(と、筆者が勝手に思っている)。25分に短縮されたのは9話からで、8話までは30分番組として作られた。10分や15分の作品としてそもそも作られている作品なら他にもあるだろうが、放送中に時間が短縮される場合なんて稀だろう(予定されていたとはいえ)。25分番組の場合、本編部分は約17分。その17分の中に、OP,ED,次回予告を含め、ヒーローは変身し、ロボットは合体し、必殺技を決めるのである。ドラマを展開させる時間はみごとなほど少ない。かつて東映が製作した「スパイダーマン」は、特撮部分を撮影することができなかったことを逆手にとり、ドラマ部分を徹底して増やす方法でこれを乗り切った。今度はまったくの逆の発想を強いられることとなる。当時のスタッフは困惑したことだろう。

 ところが東映の優秀なスタッフの皆さんは、これを脚本の簡略化と演出で乗り切ってしまうのである。それは一見すると「何かが足りない」と思わせる作りでありながら、総じて見ていると物語の展開をスピーディーにし、急激な物語の展開は「活劇」としての魅力を思い出させる面白さを見せてくれるのである。
 第1話「有尾人一族の挑戦」の物語は先述の通りであるが、その展開は実にスピーディだ。5人がシッポ兵に襲われる中で、それぞれが得意とする戦い方を見せており、台詞での解説なしに5人の差異を際立たせている。また夢野発明センターの大きな時計からダイナステーションに移動するのにも、ほとんど台詞がない。一芝居あってもよさそうなものであるが、ここではきっぱりと芝居を捨てている上、展開上ダイナステーションへの移動をスムーズに見せている。そのスムーズさはそのあとの夢野博士の登場と有尾人一族の説明、そしてダイナマンの誕生までをじっくり時間を割いて描いている。この緩急、そしてドラマの展開上の力点を踏まえた演出が、見事だと言える。
 8話「悪の花王女キメラ」ではダイナブラックのバトルテクターが初登場する。現状の戦隊シリーズでは、こうした追加装備などは、開発経緯などをきっちり描いた上で、たっぷりタメを作って登場させそうなものであるが、バトルテクターについては、なんの前フリもない。まあブラックだけの追加装備であり、それほど目立った装備でもないため、あまり振り返られないのであるが、いきなりの登場には度肝を抜かされる。逆説的に言えば、あえて前フリなしで登場させて、視聴者を驚かす演出にもとれる。
 29話「キメラ呪いの服」はキメラの赤い甲冑をつけた立花レイが、キメラの呪いを受けてしまう物語。ことの発端はキメラが海で水浴びをしていたところに偶然通りかかった星川が、キメラの甲冑を持って帰ったことにある。それをダイナステーションで、いたずら目的でレイに着せて夢野博士を驚かすためだけに着用したのである。驚くべきは何の脈絡もなしにキメラが海水浴をしているシーンから物語が始まることだ。しかもそれをなんの脈絡もなく星川が目撃する。あまりにも偶然、あまりにもご都合。だがしかし、そんなお気楽な物語のスタートが、その後のキメラの呪いで、街の人々は大混乱に陥るし、ダイナマン自身も5人で戦うことすらできない。キメラの女性特有の恨みの深さ、それを作戦に使用する大胆さ、さらに自らのいたずらが招いた悲劇に悩む星川、呪いを受けた状態で戦いに挑もうとするレイの戦士としての自覚など、主観が次々と入れ替わりながらドラマは二転三転するのである。
 46話「愛を貫くサーベル」では「メドウサの首」を使って人々を石に変えようとするジェットムササビを倒すため、おとり作戦を実行するレイの物語である。だがCM前には事件に関与する少年が石に変えられ、落ち込むレイがうなだれるシーンで終わるものの、CM明けにはすでにおとり作戦に入っており、作戦自体の説明もない。レイはテニスルックに着替えてジェットムササビを待ち受けるのだが、他の4人もテニスルックに着替えている呑気な状態だ。しかもまんまとおびき出されたジェットムササビは、ペルセウスの神話同様の手口でメドウサの首を破壊される始末。だがこれを持ってお粗末というのは早計だ。むしろこのテンポの良さ、展開の速さを賞賛すべきだろう。

 しかもテンポの良さはなにもドラマだけではない。戦闘シーンもテンポがよく、必殺技「スーパーダイナマイト」の炎の迫力も手伝って、大胆かつ魅力ある戦闘シーンで作り上げられている。現在の必殺技の多くは個人武器の合体による大型武器というのが定番であるが、次作「バイオマン」までは5人の心技体が一つとなって敵を滅する方法が採択されている。その技は、演じるスーツアクターの演技、躁演の技術、特殊効果など撮影技術の粋が凝らされた映像美を見せてくれるのである。その集大成こそ必殺技「スーパーダイナマイト」のシーンだろう。
 また巨大戦に突入しても同様であるが、見どころは毎回の2つのシーンである。敵シンカ獣(あるいはメカシンカ獣)が巨大化すると、その肩越しにダイナマン5人が右往左往する姿が見られる。また巨大戦終盤では、天高く飛び上がったダイナロボが必殺の「科学剣稲妻重力落とし」を敵に見舞うのだが、敵の頭上高く飛び上がった時のダイナロボの肩越しに、敵の姿を見ることができるだろう。最終回では、グランギズモに搭乗したメギドとキメラがダイナロボを見上げており、キメラは「ダイナロボがあんなに高く!」といっている。その高さもさることながら、それまでシンカ獣を最前線に立たせておいて、自らダイナロボの技を受けることなく後方で逃げ回っていたキメラやメギドの驚きを、見事に表現した台詞である。この二つのシーンは、落差のある崖を挟んでの撮影であることは、誰の目にも明らかだろう。だがまったく同じ撮影手法で撮影されながら、一方は巨大化による威圧、もう一方は必殺技前の迫力というまったく別のシーンに使用されている。同じ撮影方法でも物語やシーンの流れで、まったく別の意味を持つという好例である。

 こうして17分という制約は、短縮されたドラマの中に圧縮された情報と魅力を詰め込んで、戦隊シリーズやヒーロー番組を、さらに上のステージに押し上げたのである。
 次回は魅力ある敵・ジャシンカ帝国を取り上げて、ラストシークエンスにおける錯綜するドラマに注目してみたい。お付き合い願えれば幸いです。

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テーマ : 特撮・SF・ファンタジー映画
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No title

あの、「愛を貫くサーベル」は47話ではなく、46話ですが。

No title

なお様

 ご指摘ありがとうございます。DVDにて話数を確認しました。
 修正いたしました。毎度お手を煩わせて、申し訳ありませんです。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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