「仮面ライダーアクセル」~風都という名のゴッサムシティ?~

 現在放映中の「仮面ライダーオーズ」もほぼオーラスを迎えようとし、多くの雑誌媒体では次回作「仮面ライダーフォーゼ」の登場し、そのあまりにもな姿が話題を呼んでいる。さてそうはいいつつも、前々作「仮面ライダーW」については劇場版「A to Z運命のガイアメモリ」で登場した「仮面ライダーエターナル」と、本作の主役の一人である亜樹子と結ばれた照井こと「仮面ライダーアクセル」を主役に据えて2本のVシネマが製作された。今回はその1本である「仮面ライダーWリターンズ・仮面ライダーアクセル」を取り上げる。
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(2011/04/21)
木ノ本嶺浩、山本ひかる 他

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<概要と物語>
 「仮面ライダーW リターンズ・仮面ライダーアクセル」は2011年4月にレンタルおよび販売を開始した作品であり、テレビシリーズの後日談として制作されたオリジナルビデオ作品。ビデオ作品として制作・販売された作品は、「真仮面ライダー序章」(1992年)以来である。戦隊シリーズでは「VSシリーズ」が好調であり、テレビシリーズの後日談としてVシネマから劇場版へとスケールを拡大させて好評を博している。本作はこれと同様の流れであり、テレビシリーズの後を受けて製作されたスピンオフ作品は、ライダーシリーズとしては初めてとなる。
 平成ライダーの特徴として、平成第1作「仮面ライダークウガ」を除けば、複数の仮面ライダーが登場することがあげられる。そしてその多くのライダーが、主役級の扱いを受けていることを考えれば、彼ら一人一人を取り上げてフューチャーリングされた作品が登場したっていいだろう。「仮面ライダー555」に登場した「仮面ライダーカイザ」なんて、も少し取り上げられてもいいだろうし、「オーズ」に登場する「仮面ライダーバース」なんて、独立して話があってもよさそうだ。この作品を支えているのはそんな期待感だとも言える。

 亜樹子との新婚生活を始めた照井。だがある日、スリ常習犯を追っている時に、スリたちを殺害する謎のドーパントの姿を目撃する。合同調査を開始する照井と相模、大野両刑事。照井と大野はスリの仲間である女性・葵と接触する。彼女を確保する過程で照井は、謎のドーパントの親玉・コマンダードーパントの卑劣な罠にはまり、葵は爆弾を取りつけられ、照井は刃野刑事殺害の容疑を掛けられて逃亡者となってしまう。照井は葵を助けるために奔走し、葵が盗んだガイアメモリ強化アダプターを探し出すことに成功する。だがコマンダードーパントは執拗に葵の命を狙い、しかも照井の悲しい過去の出来事を持ち出して、この街のゴミである犯罪者を共に一掃しようと誘うのである。一方、亜樹子は自分をよそよそしく「所長」と呼び続ける夫・照井に対し不信感を募られていたが、テレビに映った夫と葵の姿を見て、離婚を決意して照井を追いかけ始める。アクセルメモリを盗まれて、変身できないままコマンダードーパントと戦い続ける照井。コマンダードーパントは亜樹子を人質に照井を責め立てる。コマンダードーパントの正体とは? その目的とは? 照井と亜樹子の離婚は成立するのか?

<見どころ十分!>
 さて本作はVシネマという低予算作品であることは言うまでもない。とはいいながら、「仮面ライダー」というビッグタイトルであるがゆえに、採算性を考慮されて十分に予算が割かれている。その予算は結果的に出演者に割かれていると考えるのはうがち過ぎだろうか。だが「ウルトラマンネクサス」や「大怪獣バトル」に出演した俊藤光利、そして「ウルトラマンメビウス」のサコミズ役であった故・田中実の出演は、それを十分に証明しているといっていいだろう。大野刑事が物語開始当初より犯人役のような憎まれ役を演じていたことも、穏やかな微笑みと柔らかな物腰の奥に揺らめく激しく暗い情熱をちらつかせていた相模刑事の演技の質も。こうしてかつての特撮作品に出演した俳優さんが、別の特撮作品に出演すること、それは私たち特撮ファンにとっては幸せでもあり不幸でもある。ことに先ごろ自ら命を絶ったと思われる田中実氏に関しては、本作での重要な役回りでの出演を見ているだけに残念でしかたがない。

 本作の物語は前述のように意外なほど単純であるから、相模刑事の秘密に関わるエピソードが牽引する後半を除くと、本作はアクション満載の作品となっている。しかも主役である照井竜に関しては、アクセルメモリを盗まれていたために、照井本人のアクションが心行くまで味わえる。タイミングも力の乗り方も実に小気味良い。撮影はずいぶん苦労したことだろと思いながら見ていると、エンディングにおいてNG集が見られるというオマケがついてくる。なんだろうこの懐かしいノリ。これって、ジャッキー・チェンの映画のノリに似ているんだよな。TV版ではあまり活躍が望めなかった刃野刑事の、コミカルなアクションシーンもまたこの理由を補足する。見終わってもなお楽しい遊び心、「プロジェクトA」や「スパルタンX」などのジャッキー映画の徹底したエンターテイメントは、形を変えて見せつけられたわけだ。「」に掲載されている監督インタビューや刃野役・なだぎ武氏のインタビューでも、本作にジャッキー映画のイメージが投影されていることが示されている。しかもただアクション映画の体裁をまねたのではなく、エンターテイメントとして再生産されている。となれば、この映画を見てピンとくるのはある一定の年齢層だと思える。それは「ライダー」の視聴者層とはちょっと違うんじゃないかと思うのだけど・・・。

<箱庭という枷の中で・・・>
 仮面ライダーアクセル、あるいは刑事・照井竜という存在は、「仮面ライダーW」の中では「復讐者」として登場する。この「復讐者」というタームは「仮面ライダー」という作品群には非常に重要であり、かつての仮面ライダーの多くは、仮面ライダーとしての歴史を「復讐者」でスタートしている人間が多い。その復讐者がどのように「正義の使者」に変貌するのか? これがシリーズの初期段階でさらっと解決してしまうために、あまり気にならないのかもしれないが、「仮面ライダーV3」に登場する「ライダーマン」や「仮面ライダーアマゾン」などはその代表例といっていい。本編を見てもらえばわかるとおり、照井はドーパントに殺された家族の復讐のためにアクセルとなり、ドーパント事件を扱うために風都にやってきた。彼の性格も災いしてか、当初は翔太郎との折り合いも悪かった照井も、ウェザードーパント・井坂を倒したことで自らの復讐にピリオドを打ち、その後は風都のはびこるガイアメモリ犯罪に対応していくことになる。その照井の本質である復讐者としての苛烈な側面を思い出させるのが、今回の物語の大きな主題である。本質的に照井は「復讐者」なのだ。

 今回の物語、「復讐者」というキーワードを再び照井にもたらすのが、本作の犯人であるコマンダードーパント・相模刑事である。さて彼の悲しい想い出は、何かを想起させないだろうか? 彼がドーパントになった理由は、まるでこうもりの姿で街に潜む悪を倒し続ける決意をしたあの街の一人の男を思い出す。そう「バットマン」ことブルース・ウェインに酷似している。そう考えれば風都という箱庭的舞台が、バットマンにおけるゴッサムシティと同義であることもすぐに納得いただけるだろう。本作の物語は家族をドーパントに殺された者同士が出会い、一方は光の道を歩み、もう一方は悪の道に走るという二項対立を見せている。そしてまた照井も相模刑事と同じ道をたどる可能性を考えれば、バットマン=ブルースが常に抱える悩みである善と悪とのパラドックスを照井と相模刑事に分離した形で競わせた内容ともとれるのだ。光の道を是とした「アクセル」の物語ではあるが、照井が相模刑事と同じ立場となる可能性を示唆する物語、特にラストバトルに至る相模刑事による照井の挑発シーンにおいて、照井が一言も言い返さない事情は、そのことを一番身にしみて理解しているはずの照井自身の中でも、間違いなく相模刑事の想いに揺り動かされている自分を自覚してのことだろう。それは対立軸として存在しながら、バットマンと背中合わせの位置にいることを常に吹聴するジョーカーの存在とよく似ていると思える。

 同時に、物語の舞台を風都として限定している事情は、あくまで風都署の所轄が限られていることを示しているが、バットマンがゴッサムシティという限定された場所で活躍していることと違うのだろうか? そこにあるのはゴッサムや風都に対する「愛着」というい気持ちに違いはないのだが、照井が風都を出るのに警察側の理由があれば、事情はどうでもいいはずだ。しかもすでに井坂への復讐を遂げた照井にとっては、風都を出ていくことにためらいはない。一方バットマンにとっては生まれ育った町であるゴッサムは、自分が活躍するための基地がある以上に愛着があるだろう。そしてなお殺された両親をきっかけにして立ち上がったバットマン=ブルースにとっては、ゴッサム以外の土地を護る理由などないはずで、「ジャスティスリーグ」などを見ていると、どうにもおさまりが悪い気がしてくるのは筆者だけだろうか。ところがここで照井を風都に結び付けるたった一つの事情が存在する。それが愛妻(ってか愚妻?)である亜樹子の存在である。愛する彼女を護る。その1点だけはきっと抗いがたい事情となっているだろう。照井にとって復讐を成し遂げた風都で出会った翔太郎・フィリップそして亜樹子の3人との絆こそが、彼を風都に結び付けるための重要なキーワードとなる。街自体に思い入れの深いバットマンとの最大の差異は、あの3人と出会って深めた絆だった。それが画面としてではなくにじみ出てくる作品となっているからこそ、本作は「仮面ライダーW」のスピンオフ作品たりえるのではないだろうか。

 本編に登場した魔術師リリー親子やバーで飲んだくれている本作の脚本家・長谷川圭一氏の存在など、ファンなら楽しめるシーンもいくつもある。先述の相模・大野両刑事の存在は、際立って作品を引きしめているし、女スリ・葛木葵が照井と打ち解けていく過程や、それにより亜樹子が離婚を言い立てるシーンなど、照井がTV本編で引き受けていたコミカルな場面も集大成といっていい出来栄えに仕上がっている。亜樹子役の山本ひかるの演技については本作の監督や照井役の木ノ本嶺浩氏のインタビューが残されているが、あれだけはじけた演技の計算をした上で、さらに計算を越えてくる演技を乗せてくる引き出しを賞賛していた。ある意味で「私、聞いてない」というキメ台詞とともに、「W」という物語には欠かせない重要人物なだけに、ただ可愛いだけではない山本ひかるの演技には、素直に賞賛の拍手を送りたい。「W」の物語としては最終エピソードとなっているが、今後どのように展開するかは、電王の例もあることだし、楽しみにしておきたい。その時にはまた元気に戦っている鳴海探偵事務所と風都署のみなさんにお会いしたいと願うばかりだ。

仮面ライダーW(ダブル) RETURNS 仮面ライダーエターナル【DVD】仮面ライダーW(ダブル) RETURNS 仮面ライダーエターナル【DVD】
(2011/07/21)
松岡充、須藤元気 他

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この作品もいずれ折を見て取り上げます!
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波のまにまに☆

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