「仮面ライダーオーズ」~その1・メダルとグリードと暴走のトリガー~

 この8月末に「仮面ライダーオーズ」はその人気を維持したまま終了し、現在新番組「仮面ライダーフォーゼ」がスタートした。あまりにもなフォーゼの容姿ではあったが、結果的に受け入れられたようで、学園物としての背景もあいまって順調な滑り出しを見せている。夏の映画「仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のメダル」のラストでは、2011年末にはオーズとフォーゼによる映画も準備されていることが告知され、いよいよ「仮面ライダーオーズ」の物語も終盤を迎えようとしている。「~W」のVシネマのように展開する可能性もあるけれどね。そこで今回は「仮面ライダーオーズ」の1年を振り返ってみたいと思う。

<概要と物語>
 「仮面ライダーOOO(オーズ)」は、2010年9月から翌2011年8月まで放送された、平成に入ってから12作目となる作品。前作「~W」の後を受けて放送された作品であり、映画での先行お目見えを済ませての登場となった。
 物語は800年前の錬金術師たちが作り上げたオーメダルを巡って、コアメダルとセルメダルで構成されるメダルの怪人「グリード」と、かつてグリードたちを封印したという伝説の王・オーズが現代によみがえり、再び戦い始める。グリードたちはそれぞれのコアメダルを取り戻して完全体となることを望んでおり、その欲望のために人間たちの欲望に目をつけて、ヤミーと呼ばれる怪人を作りだし、ヤミーによって蓄積されるセルメダルを集めて自分の体を維持しようとする。グリードの一人アンクは火野映司という青年に変身ベルトを渡し、仮面ライダーオーズとして復活させ、彼をコアメダル収集のために使役する。もっとも映司にしたところでアンクの言うがままにならず、目の前の人々を護りたいという映司の願いのもと、オーズとしてグリードやヤミーと戦うことになる。
 ところがそれらの戦いを見つめる目があった。それは鴻上ファウンデーションの会長である鴻上である。彼は人の欲望とそれによる進化を賛美し、オーズとグリードたちの戦いを裏側からコントロールするつもりであった。グリード復活以前よりメダルの性能に着目してきた鴻上は、自らの研究機関に命じてセルメダルの活用を目指す。オーズの使用するライドベンダーやメダジャリバーなどの装備はその成果である。そしてセルメダルを集めることを命じて一人の男が仮面ライダーバースとなって戦いに参戦する。1億円の報酬を目標とする伊達である。こうして二人の仮面ライダー、それをサポートするアンクや後藤などを交えて、グリードとの戦いは激化していく。

 セルメダルによる装備を開発した真木博士は、物語の進行に従って徐々にその野望を明らかにしていく。真木はコアメダルをグリードの一人に集めて暴走を促し、この世界の完全なる週末を願っているという。手段を選ばない真木の行動は、やがてグリードたちと結託する。また自ら封印されていた恐竜をかたどった紫のメダルの一部を体に取り込み、グリード化する道を選ぶ。だが残りの紫のメダルはオーズの器としての映司に取り込まれる。真木同様にグリード化していく映司。自身のグリード化と暴走におびえながらも、映司は真木の野望を打ち砕くことができるのか? そしてアンクの本当の欲望とは何なのか?

 本作は「欲望」をテーマとしていることは明らかであり、物語の中でグリードたちの欲望や彼らが利用する人間の欲望が大きくクローズアップされているが、レギュラーキャラクターの欲望もまた、物語の縦糸となる重要な要素として機能する。映司やアンク、比奈や伊達は言うに及ばず、後藤にしたところでその欲望が時として物語を動かすのである。
 特に重要な欲望は主人公・映司の欲望である。本作の脚本は小林靖子であるが、彼女の手がけたライダーシリーズの主人公を思い出してみてほしい。「龍騎」の真司、「電王」の良太郎、そして本作の映司。この3人に共通するのは「無私」ではないか。自ら戦いを望むことなく消極的に平和を望んでいるが、いざとなれば戦うことも辞さないという部分、それも戦いとなれば「私(わたくし)」を捨てる覚悟で戦いに臨むその「無私」の姿勢こそ、彼らの骨格をなしていると思える。そしてその意味では「映司」という人間は、決して多くを望まない人間でありながら、他人の欲望には寛容さを見せる人間であり、小林ライダーの主人公としては一つの完成された形になっているのではないだろうか。

<グリードの欲望とは>
 映司や比奈、アンクの欲望については、その問題解決という命題がまた物語に彩りを添えるから次回以降に回すこととし、今回は欲望の怪人「グリード」に焦点を絞って話を進めようと思う。
 グリードとはそもそも800年前に錬金術師たちが生み出したコアメダルを中心に、大量のセルメダルで構成された疑似生命体。そもそも3種3枚+1枚(内1種だけは4枚存在するため)の10枚のコアメダルが作られていたが、それぞれ抜き取られた1枚により「足りないが故に満たしたい」という願いがグリードの欲望の元になっているという。劇中にはアンク(タカ・クジャク・コンドル、鳥系)、ウヴァ(クワガタ・カマキリ・バッタ、昆虫系)、ガザリ(ライオン・トラ・チーター、ネコ科猛獣系)、ガメル(サイ・ゴリラ・ゾウ、重量系哺乳類)、メズール(シャチ・電気ウナギ・タコ、水棲系)の5人が登場している。なおメダルは鴻上によって発掘された10枚一そろえで見つかった恐竜系メダル(プテラノドン・トリケラトプス・ティラノサウルス)や劇場版で登場した爬虫類・両生類系のメダル(コブラ・カメ・ワニ)、またショッカーメダルやらモモタロスのメダル、おもちゃとして発売されたものの中にはカンガルーやパンダなんてのもあった。

 前述の通り「足りないが故に満たしたい」という願いが元になっている割には、彼らグリードの持つ欲望とは、なにかこういびつで偏っている。しかもグリードは人間に備わっている機能が欠けており、視覚や味覚が麻痺しているようだ。アンクが当初よりアイスキャンディーを含む安めのアイスを食べている事情や、グリード化した映司が経験しているとおりである。

アンク→自分の体を取り戻したい
ウヴァ→自分自身の確立→昆虫ゆえにより強くなりたい
カザリ→自己進化への欲求
ガメル→純粋無垢な欲望、食欲さ
メズール→庇護欲、愛情への欲求

それぞれの欲望が上記の通りだとすれば、そもグリードの欲望はそれぞれの種が持っているジレンマが欲求になっているとも言える。アンクを別とすれば、昆虫種であるウヴァがより直情的で単純な思考をもとに、より種として強くなりたい欲求がそのまま自身の欲望となっているように見える。メズールなどは典型的であり、子育てをしない海生生物が子育てをしたい、子供に愛情を注ぎたいという思いが転じており、愛されたいという願いの根本原因になっていると思われる。だが海生生物は果たして子育てをしたいのか?と問われれば、それは筆者にもわかりかねる。だかここに、グリードの容姿が人間に由来することに気がつくのだ。つまりそれぞれ欠けたものを満たしたいという願いの根っこにあるものは、あくまで「人間になりたい」という願いだったのではないか。ヤミーが人間の欲望を満たす形で願いをかなえ(まるで「化物語」の「するがモンキー」に登場するレイニーデビルのように偽悪的な意味で)、その行為がセルメダルを生成させるのも、人間の欲望を叶えることで代償を得て、なおかつその欲望をセルメダルとして自身に蓄積していくことで、彼らは人間に近づきたいと願っているのではないか。

 ところが、である。
 グリードがあこがれる「人間」はまた、これほどまでに完璧さには程遠い不完全な生物である。互いを信じず利益のために戦争を起こし、あるいは人間自身もコントロールしきれない力を持って、人間という種自身を滅亡に追いやるほど、自己保身すらままならない生命体なのである。このある種救い難い生物種を、果たしてグリードは本当に目指しているのだろうか? この疑問に答えを見つけるすべはない。ここからはあくまで想像となるのだが、二つの理由が想像できる。

 一つはグリード自身の勘違いである。だがグリード自身が地球上の特定の生物の頂点であるとすれば、万物の頂点を地球上で極めた人類を、グリードが目指すのは言い得て妙だという気がするのだ。また同時に自分たちの種を追い詰めた人類への意趣返しという可能性もあるかもしれない。

 またもう一つは、最初にコアメダルを生成した錬金術師の願いが込められているという可能性だ。夏の劇場版においては、錬金術師「ガラ」は人間の欲望によって世界を破滅に導こうとしたが、この物語でガラ自身は人間の欲望を過小評価していた。逆説で言えば、人間は欲望を制御できるという観念が、ガラをはじめとする錬金術師の中に存在していた可能性がある。つまりコアメダルを生み出した錬金術師は、人間の代表としてコアメダルの力を制御して、他の生物種を支配しようとしていたのだろう。事実オーズとなろうとした800年前の王は、神にも等しい存在になろうとしたのだから。だとすればそこに込められている思いは万物の霊長たる「人類礼賛」ではなかったか。それゆえに王や錬金術師たちの人間至上主義の思いが、グリードの「欠けたものを満たしたい」という思いを「人間になりたい」という願いにすり替わったとは考えられないだろうか。

 ただし、この考え方の最大の矛盾点は、解放した恐竜系メダルが独自に恐竜グリードとはならず、恐竜系コアメダルをとりこんだ映司と真木博士が、なぜにグリード化するのかということだ。グリードにとってはすべての能力を失ってでも人間となることに至上の価値を見出すとすれば。人間には持ちえない力を持つことになる一方で五感の一部が欠けていく「人間のグリード化」は、まったく逆の発想となる。それをして「鋼の錬金術師」的に「等価交換」と言えなくもないのだけど。

<グリード暴走のトリガー>
 閑話休題であるが、グリードのベルトがかつての仮面ライダーの変身ベルトに似ていることはご存じだろうか。武部プロデューサーのインタビューによれば、「グリードはそれぞれの種の頂点であり、ライダーと同等の怪人である」という説明がなされている。筆者はなんかわかったような、わからないような感慨を持ったのだが、これを筆者なりに解説を加えてみたい。
 まず逆にオーズのベルトと比較してみたい。オーズのベルトは3枚のコアメダルの能力を最大限引き出す役割を果たすツールである。仮面ライダー的な意匠とは異なるコンセプトでデザインされているベルトであり、なおかつ1話で見られるように、本質的にはグリードを封印する能力を秘めたベルトなのである。この時点でかつてのようなライダーベルトの意匠が必要のないものであることはすぐにわかるだろう。

 「グリードはそれぞれの種の頂点であり、ライダーと同等の怪人である」という言葉をもう少し解読してみると、グリードはライダーと同等であるから、かつての幹部怪人のような扱いと受け取れる。ライダーと同等の幹部怪人でベルトの意匠が使われている存在と言えば「仮面ライダーBLACK」に登場したもう一人の世紀王である「シャドームーン」だろうか。ここで「仮面ライダー」の発生をまた思い起こしてほしい。仮面ライダーとは悪の組織によって改造を施された存在であり、もう二度と人間に戻ることはできない改造人間なのだ。グリードが欠けたものを満たすという存在だとすれば、仮面ライダーもまた、人間に戻れるはずもない改造人間が人間に戻りたいと願いながら、自分が帰れる場所としての人類を護るために戦うという存在だと考えれば、グリードと仮面ライダーの奇妙な一致に気づく。しかも仮面ライダーが戻りたいと願うのは「人間」なのであるから、先のグリードに対する考察を考慮すれば、ダブルの意味でグリードのライダーベルトの意味が理解できるだろう。あのライダーベルトは、人間になりたいと願うものの象徴なのかもしれない。

 さてここでグリードの最終形を見ていきたい。グリードの目的はメダルを9枚集めることではなく、9枚得た状態で自分の欲望を具体的にするために行動を起こすことにある。グリードは欠けた欲望を味わうために、最終的には直接人間を食らうことになる。
 16話ではメダルを奪われて弱体化したメズールの要請に従って、ガメルは自身に蓄えられていたメダルとともにメズールに吸収合体され、これをきっかけにして暴走する。結果的にオーズによって打倒されてしまうのだが、グリードたちは自分以外のコアメダルを体内に入れ込むことで暴走する可能性が高くなることが判明する。真木博士が目指した世界の終りも、このグリードの暴走を前提としたものである。そのためにカザリと手を組んで、カザリにコアメダルを集中させて暴走を目論んだのである。カザリはその意に反して慎重に動いていたために暴走せずに済んだのであるが、結局はオーズにコアメダルを破壊されたタイミングで、グリード化した真木に殺されている。一方最終回では真木に器としてメダルを入れ込まれたウヴァは暴走体となってしまう。暴走は完全復活したウヴァ+他のコアメダルで暴走し、16話の暴走体よりも巨大で、その姿はなんらかの生物を思わせる形状ではなく、むしろ無機質な立体の形状をなしていた。真木の狙い通りに世界のすべてをセルメダルに変えて、世界を飲み込もうとした。

 暴走のトリガーはあくまで他系統のコアメダルをグリードが取り込んだことによるのだが、この暴走というシステム、なんだか不思議な気がしないだろうか? グリードは自身のメダルを欲しがって争った。だがその目的は自身の完全復活が目的であって、暴走が目的でも世界の崩壊でもない。グリードたちが真木と共闘関係にあったのは、あくまで真木との関係の過程で、自身のメダルを取りかえすためでしかない。ではグリードたちの完全体の先には、いったい何があったのだろうか? 

 わかりやすいのはまたもメズールである。真木に指摘されたようにメズールがガメルの面倒を見ていたのは、あくまで欠けている愛情を、ガメルとの「親子遊び」の中で感じようとしていたからに過ぎない。アンクからもたらされた残りのメダルで完全体になったメズールは、母親と子供の組み合わせをつけ狙い、卵のような形で親子を閉じ込める。メズールはこれをして「人間を食らう」といっていた。どうもグリードは完全体になることで自身の欲望が満たせる力がそなわると考えていたらしい。だが暴走体は直接的にグリード自身の欲望を満たすことはない。最終回でのウヴァの暴走体でもそうだが、無生物をメダルに変えて、すべてを平らげて世界を崩壊させようとした。どうしてもこの行動とグリードに一致点を見いだせないのだ。錬金術師たちははたしてそれを望んだのか?

 興味深いのは、最終回に登場したウヴァ暴走体はすでに生物の形状を捨ててしまっていることだ。生物学的に2種類の動物の形質を持って存在する生物はいない。特撮作品の世界では「キメラ」等の言葉で2種類以上の生物種の合成生物を誕生させてはいるが、こうした特撮世界的な技術が現実にはほぼありえないことはわかるってもらえると思う(ここで「植物」が出てくるとややこしいのだが、グリードには植物種がいないので今回は無視。なお「キメラ」の詳細はこちら)。現実にはこうした種以上の生物の組み合わせた生物は「何ものでもない」というべきかもしれない。その「何ものでもない」という状態こそが、このグリードの暴走のトリガーなのではないだろうか。つまり一人のグリードにコアメダルを複数種入れ込んだ状態で暴走した姿は、まさしく「何ものでもない」である。そしてまた「何ものでもない」という状態は、人間を目指して欲望をあらわにするグリードにとっては、自己の確立すらままならない何ものにも耐えがたい屈辱だったのではないか。暴走とはグリードが自分自身のあり方を否定された形状となった屈辱への反動だったのではないだろうか?

 さて今回はグリードについて考察してみたのであるが、次回はオーズの魅力に迫ってみたい。前作「W」も大好きであった筆者だが、「オーズ」は仮面ライダーとして非常に深い魅力のあるライダーであるため、現在は筆者のイチオシヒーローとなっている。その戦力のバラエティさといい、強さと弱点のバランスといい、妄想すら膨らんでもはや飽きが来ないほどだ。次回はそんな筆者の考えうるオーズの魅力を、趣味全開で書いてみたい。
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テーマ : 仮面ライダー
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