「仮面ライダーオーズ」~その2・メダルとコンボとオーズの魅力~

<善と悪の相対的な変遷>

承前
 平成に入ってからの仮面ライダーシリーズにおいては、明確な「悪の組織」というものがそもそも存在しない。平成第1作「仮面ライダークウガ」のグロンギの皆さんなんていうのはかなり組織化された方であり、次作「仮面ライダーアギト」に登場するアンノウンなんていうのは、上位怪人やさらにその上の謎の青年がいるにも関わらず、組織だって行動したり確固とした命令系統があるわけではない。「仮面ライダーブレイド」に登場するアンデッドには、序列はあるようだが基本的にはパラレルな関係にあるようだ。「仮面ライダー555」に登場するオルフェノクに至っては、ライダーになるものもオルフェノクになるものも、元は同じ人間である。仮面ライダーさえ怪人と同列(ライダーがショッカーに改造されたことを考えれば同列なのは当たり前か)なのだ。オルフェノクもまた上位怪人がいるものの、その昭和のライダーのような「悪の組織」然とした雰囲気はない。
 ところが一方のライダー側であるが、複数人のライダーが登場するという昭和との最大の差異のためか、かえってライダーの側が組織化することがある(「少年仮面ライダー隊」は違うよねえw)。もっとも顕著なのは「仮面ライダー響鬼」のみなさんや、先述の「ブレイド」の上位組織「ボード」、「仮面ライダーキバ」に登場した「イクサ」が所属する「素晴らしき青空の会」なんていうのもそうだろう。こうして相対的に比較すると、昭和から平成に至る過程で、ライダー側は個人から組織へ、悪の組織は解体されてパラレルな個人へと変貌を遂げたのである。

 これを考えてみるに、昭和の時代に起こった大きな事件の多くは、「よど号ハイジャック事件」や「あさま山荘事件」、自然破壊や公害を引き起こした企業団体、社会的に話題となった政治団体、そして古くはナチスなど、犯罪を引き起こしたり一般人にとっての見えざる恐怖の共通認識として、「団体」や「組織」というイメージがあったのではないだろうか。そして被害を受ける者はあくまでも個人であり、「社会対個人」という対立図式が明確に人々の共通認識としてあったのではないか。昭和ライダーが活躍していた時代背景とはそういう時代だった気がする。
 ところが平成となる現在では、個人の自由を侵すものは個人であるという認識が、人々の中にあるのではないか? それは日常でクローズアップされる犯罪が、理由も解らない無差別殺人であったり、人体を切り刻むような猟奇殺人であったり、色恋沙汰のはての悲劇であったりと、原因を個人に求められる犯罪が目立ってきている気がする。いや、こうした事件は過去にもたくさんあっただろうが、人々の認識に社会的背景を持つ団体や組織よりも、個人に対して見えざる恐怖を感じているのではないか。かつて組織的に悪事を働いていた団体は、個人へと解体されていった。その結果相対的に悪から身を護るヒーローが組織化するしかない。長い年月を経て「戦隊シリーズ」が愛されている事情は、こんなところにもあるのかもしれない。また「怪奇大作戦」で扱われた個人的で身勝手な犯罪が、現在の猟奇的で責任を個人に帰する犯罪と同じに見えてくるのは、あまりにも先読みであった気がする。

<オーズ、その「おもちゃ的」魅力>
 さて、前フリがずいぶんと長くなってしまったが、あらためて「仮面ライダーオーズ」自身の魅力について語ってみたい。
 「オーズ」とは「王’S」という意味らしく、5人のグリードとそれを封印した800年前の封印の主であった「王」を含めて「オーズ」という事らしい。腰のオーズドライバーに3種のメダルを入れ込んでスキャンさせると、それぞれのメダルが頭部、胸部+腕部、腰+脚部のそれぞれに反映してオーズが出来上がる。基本の形態はタカ・トラ・バッタの「タトバコンボ」であるが、それぞれのメダルを別のメダルに交換することでオーズは多様な変化を見せる。さらにグリードたちが本来持ってしかるべきであるコアメダル同系統3種を使ってコンボを発動させると、本来のグリードたちをも凌駕するほどの力を発揮する。
 「オーズ」の魅力、その一つはおもちゃ的な魅力だろう。前作「W」がメモリの入れ替えによって半身単位での体色変化で能力の違いを見せ、左右3本ずつの計9タイプにチェンジする。これが体を3分割する事によって、体色変化と能力変化をヴィジュアルで魅せるのだ。ここで興味深いのはこの3分割がソフビ人形の可動部分に準じていることだ。男の子ならだれしも子供のころ、ライダーやウルトラマンのソフビ人形を使ってごっこ遊びに興じたことがあるだろう。そして人形遊びのはてに人形の分解を始める。ソフビはその可動部分でパーツが分割できるし、お風呂のお湯程度の温度でやわらかくすれば、すぐに元に戻せる。そして分解・戻しの過程で、同種の人形を使って「入れ替え」なんてこともやりはしなかったろうか。このソフビ人形の分解と戻し、あるいは入れ替えというのは、オーズのコンボチェンジに等しいのである。つまりオーズのおもちゃ的魅力とは、このソフビの分解・戻し・入れ替えの手遊びに近いのである。

 オーズのデザインやおもちゃを直接見てもらえばすぐにわかるのであるが、オーズの背面はほぼ黒一色で実にシンプルだ。だがこの背中の中央にある大きな円形上のものがある。おもちゃではこれがボタンになっており、これを押すことで頭部、胸部+腕部、腰+脚部の3パーツに分割できるものがある。そしてジョイント部分はすべて共通しているから、実際のおもちゃにおけるプレイバリューもよく考えられている。発売されている同系統コンボのフィギュアを購入すれば、テレビ本編に登場しないコンボだって作成可能となるのである。こうしたコンボの面白さ、順列組み合わせの面白さこそ、オーズのおもちゃ的な魅力の神髄という気がする。

 中途で登場するセルメダルの戦士「仮面ライダーバース」は、オーズとは正反対のおもちゃ的な魅力があり、オプションパーツを付加する魅力である。しかもそれぞれのオプションパーツはデザイン的にはむしろ無骨で機械然としており、メカニカルな魅力に満ちあふれている。そのオプションパーツがすべて合体するとサソリ状になることで、ライダー本人以外のプレイバリューもあったりして、その意味では実におもちゃが楽しい年であった。ちなみにバイクが共通のライドベンターであり、カンドロイドによる合体が可能なことでバリエーションを出そうとしていたようであるが、劇中ではラトラータコンボ時のものだけだったのが、残念と言えば残念か。ライドベンターの変形は、おじさんには難しすぎだった事を追記しておきます(なお、筆者はまったく購入しいてませんけど)。

<オーズ、その「能力的」魅力>
 オーズはまた能力的にも実に面白い。コンボによってその能力がわかりやすく見えるという魅力は、同時に敵にとってはその能力の弱点まで一目でわかってしまう可能性も秘めているということだ。しかしそこはそれ、別系統2~3種コンボはそれぞれの能力のいいとこ取りができるかと思えば、同系統コンボによって圧倒的な能力を発揮することもできる。かつてこれほどまでに千両役者なライダーがいただろうか。筆者にとっては「仮面ライダースーパー1」のファイブハンド以来の衝撃である。
 前述の通り、別系統コンボはそれぞれのメダルの能力のいい点を利用でき、その組み合わせによっては実に面白い戦いが期待できる。鳥系ヤミーによる強風攻撃には、重量系を加えた別系統コンボによって、風の影響を最小限にして攻撃が可能となるし、チーターの足を使った別系統コンボは、スピード重視の移動でヤミーに攻撃を加える事が出来る。また相手を絡め取って自由を奪うには、電気ウナギの腕が非常に都合がよい。意外なほど出番は少ないが、その絵ヅラと能力は一目で判別できる。

 そして同系統コンボは、それぞれのグリードの最大能力が発揮できる一方、能力が限定的であるゆえに万能ではない。千両役者の側面を持ちながら、こうした弱点も併せ持つくせに、その戦闘能力は極めて高いと思わせる。重量系の「サゴーゾ」はわかりやすいパワータイプであり、当然のことながらスピードを犠牲にしている。昆虫種である「ガタキリバ」の最大の魅力はなんといっても分身能力だ。先の劇場版でもガタキリバによる分身をベースに、各同系統コンボのそろい踏みという夢の映像を見せてくれるのだ。オーズ最強形態として後半に登場する「プトティラ」は動物種の頂点として恐竜をモチーフとしているが、その能力はコアメダルの破壊が可能であるという点にある。しかも大地を割って手に入れるメダガブリューが斧から銃器に変形するあたりの万能さを見せるのであるが、それ以前に登場した鳥系コンボ「タジャドル」に比べると、あくまで「暴走」する映司という状況があるゆえに、「プトティラ」の強さよりも「タジャドル」のかっこよさのほうが印象に残るかもしれない。最終回で真木の変身した恐竜グリードを倒すのが、アンクの魂を宿したタカメダルを使ったタジャドルであったこと、そしてアンクとオーズが一緒に戦っているというシーンもあいまって、最高に素晴らしい演出だったと思う。強さと弱点、そして使いどころの演出と妙こそが、オーズの魅力の一つだと感じる。

<オーズ、その「物語的」魅力>
 欲望の形「オーメダル」。このメダルという設定も実に面白いと思う。メダルとは「価値のあるもの」、そして欲するものを手に入れるための「対価」を示している。グリードにセルメダルを入れ込まれた人間(ヤミーの親)は、その欲望を叶えるための「対価」としてセルメダルを作りだし、グリードに与える。そして対価として得たセルメダルは、グリードの体を構成したり、次の行動のきっかけとなる。グリードにとっては「価値あるもの」なのだ。メダルのこのダブルミーニングには本当に唸らされる。
 そしてこのメダルの「価値」はそのままオーズにも当てはまる。

 「カウント・ザ・メダルズ! 現在、オーズの使えるメダルは?」

 中田譲治さんのシッブい声で毎回物語冒頭に挿入されるメダルのカウント。それは毎回の戦いの中で、オーズとグリードによるメダルの争奪戦の結果を示しているにすぎないのだが、このメダルの増減は同時にオーズの変身とそのコンボを大きく制限する。
各話中盤の戦闘で、映司がダメージを追っている場合には、次の戦闘でおいそれと同系統メダルによるコンボは使えない。またラトラータコンボを使いたい時に、そのメダルの一部が欠ければコンボは使えない。戦況に応じてアンクは映司にメダルを渡すのであるが、そのメダルの受け渡しは映司とアンクの前線部隊と参謀という役割を示すと同時に、そのままアンクと映司の絆を表している。
つまりメダルの争奪戦はそのままオーズの能力に起因し、その争奪戦が物語の中核にある。つまりオーズのキャラクターや設定が、物語の根幹にきちんと根付いて展開させているのだ。設定が物語を司る好例とも言えるが、その一方でオーメダルは本質的に人間の欲望を暴いていく。人間の心の奥底にある願いや欲望は、メダルによってあらわになっていくが、「罪を憎んで人を憎まず」という言葉通り、原因がセルメダルにある場合にはその罪を本人に帰すことはない。映司にとってはそうした根源的な人間の欲望は取るに足らないことであり、そのおおらかさをクローズアップして映司をヒーローに仕立て上げることで、単に教条的な物言いで終わることなく、作品本来の視聴者である年少者へのアピールも忘れてはいない。
この差は前作「W」のガイアメモリと比較するとわかりやすい。ガイアメモリは購入者自身の欲望を叶えるが、そこには高額の金銭が必要となる。そしてまたどのような形で人間の欲望を叶えるかは使ってみないとわからない。ヤミーは「化物語」のレイニーデビルのように欲望を叶える手段は問わないが、メモリは使い方次第なのである。だがメモリはむしろ麻薬や覚せい剤などの「ドラック」に近く、メモリブレイク後のメモリ使用者は、場合によって廃人同然となってしまう場合がある。それはつまりガイアメモリ使用の対価は、使用者自身の命であるということだ。ヤミーが親の欲望を叶えるための行動の結果として人間を襲うのに対し、ガイアメモリは使用者に犯罪の意志が介在する。ヤミーでは犯罪に問えないが、ガイアメモリの使用は犯罪とする。同じ人間の欲望を叶えるアイテムでも、ガイアメモリがメダルとは決定的に異なる点だ。メダルの設定にはこうした他人を許容する人間のおおらかさが根底にある。筆者が「オーズ」が大好きな理由の一つでもある。

さて今回は趣味全開でオーズの魅力を考察してみたのであるが、次回は映司や比奈、そしてアンクたちの経てきた時間に思いをはせながら、彼らが物語でおこなったさまざまな問題解決について考察してみたい。作品の魅力を伝えるにはあまりにも魅力のない内容かもしれませんが。まぁ、あくまでそんな作品の見方もあるっていうことで、ご容赦!

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