「海賊戦隊ゴーカイジャー」~その2・マーベラスのリーダーシップ~

 2012年2月19日の放送をもって、「海賊戦隊ゴーカイジャー」はその1年の役割を終えて終結した。なんと気持ちのいい最終回だったろう。都会の青空に飛び立っていくゴーカイガレオンを駆って宇宙にこぎ出す6人の晴れやかな笑顔が、この物語の終幕を高らかに告げている。だれが見ても腑に落ちるきれいな終幕ではないだろうか。
 個人的な印象で申し訳ないが、「~その1~」を記した放送開始時の印象から1mmもずれることなく最終回までこぎつけたという印象がある。普通主役5~6人とそれを演じる役者の成長がシンクロし、初回と最終回では異なる印象となり、彼らの役柄と演者としての成長を喜ぶのが例年のスーパー戦隊シリーズだ。だがこのブレなさ加減はどうだ。こんな感慨を持ったのは「轟轟戦隊ボウケンジャー」以来じゃないだろうか。前作「天装戦隊ゴセイジャー」の天使たちは見習い天使であったが、彼らの成長よりも敵組織の入れ替えにより状況が変わっていく。さらにその前の「侍戦隊シンケンジャー」にいたっては、シンケンレッド自身の出自の問題が終盤を牽引する事情になるため、やはり初回とは異なる感慨を持つ。こうした設定に引っ張られる最初と最後の印象の違いは、決して否定要素ではないが、本作のような骨太な物語展開にはならないだろう。こうしたブレの少ない骨太な物語を牽引したのは、ゴーカイレッドことキャプテン・マーベラスをはじめとする6人の海賊たちである。

<海賊たちの残照>
 つまりブレずに最終回までいられたのは、海賊たち6人の性格設定がきっちり固定化していたからであり、今一つの理由を探すならばレジェンド戦隊の皆さんに注目が集まってしまったがゆえだということもいえる。だがここはすばらしき海賊たちに焦点を合わせてみたい。

 本来ならリーダーであるマーベラスから語っていくのが真っ当だろうが、ここはあえてハカセから語ってみたい。ゴーカイグリーン・ハカセ。本名はドン・ドッゴイヤー。ザンギャックに母星を滅ぼされた後、荒野となった惑星で修理屋を営み、その手先の器用さを生かしてゴーカイガレオンの修繕を行ったところから海賊となった。料理や掃除、買い出しやガレオンの修理、はては新装備の開発までこなすものの、持って生まれた臆病さや誰もが持つ嫉妬心などが彼のエピソードの中心を担う。「キャラクターの成長」という戦隊シリーズのテーゼの半分は、本作では彼が担っていた。3話においてマジレンジャー大いなる力を手に入れるきっかけを作ったのも彼ならば、終盤の43話でダマラスに拿捕された他のメンバーを助けるのも、勇気を出して挑み続けたハカセの役回りだった。彼は初期メンバーの中ではもっともブレのあるキャラでありながら、人が誰しも持っている臆病さゆえに、彼が中心となるエピソードは教条的になる傾向があったが、彼自身や仲間の言葉によって成長を繰り返した。かつての戦隊シリーズに彼ほどの戦うことに消極的な人材はいなかっただろう。彼はシリーズに新風を吹き込むキャラクターだったのかもしれない。

 そして「キャラの成長」のもう半分を担当したのは、6人目の追加戦士であるゴーカイシルバー・伊狩鎧である。彼はメンバー中唯一の地球人であり、34の戦隊を熟知している存在である。毎度繰り返されるレジェンドたちとゴーカイジャーのぶつかり合いと和解の展開は、ややもすれば不安要素になりかねないが、彼の出自はそれを緩和させることに成功する。鎧がうれしそうにレジェンドの皆さんにすり寄っていく姿は、ある意味で長年戦隊と歩み続けてきた我々と同じ立場であり、代弁者である。彼はこれまでの追加戦士の能力を継いだ強力な戦士として登場し、ゴールドモードでは追加戦士のマスクをあしらった鎧をまとって、彼らの能力を使って戦うのであるが、彼の最大の強さの秘密は、戦隊の知識に裏打ちされた想像力の部分にある。ゴーカイチェンジで登場したゴーオンシルバーとゴールドの合体戦士や、クリスマス限定で登場したゴーカイレッド&グリーンのでたらめさと言ったらない。そんな強力な力を持った鎧だからこそ、20話や33話における変身アイテムやゴーカイジャーとしての能力に由来するエピソードはわかりやすい。そしてまたそんな彼を戦いの場に引き戻し、戦う意志こそがヒーローとしての唯一の資格であることを諭すダイレンジャーのリュウレンジャー・亮や黒騎士ヒュウガの言葉が重い。亮がかつての戦いで変身アイテムを奪われても生身でゴーマと戦ったように、彼は自分の体で後輩を教え諭したのである。追加戦士はその存在意義に疑問を感じる場面が時折あるのだが、このエピソードだけでも鎧の存在意義は大きいだろう。

 ゴーカイブルーことジョー・ギブケン。寡黙な彼が実質的なチームのナンバー2なのは言うまでもない。実力や信頼度から彼がその任をだまって引き受けているのが、画面からもよくわかる。チームが迷う時、正論を吐きながらもマーベラスの考え方に沿った言葉でチームを牽引し、マーベラスの一言で行動を決めるというシーンは、本編中に散見される。マーベラスの最初の仲間であるだけでなく、背中を守らせて信頼に足る男、それがジョーだ。このチームのNo.2という存在は、戦隊シリーズでは結構忘れられがちなキャラ配置であり、実ははっきりとNo.2を標榜しているキャラクターは少ない。だがこのNo.2という存在は初代「秘密戦隊ゴレンジャー」のアカレンジャーとアオレンジャーという、シリーズの原初に見られる形の相似形だ。
一方彼は同じザンギャックの特殊部隊の先輩であったシドの行方を案じていたが、最愛の先輩がバリゾーグとして改造されて彼の目の前に登場することで、彼は迷い始める。だが30話にてライブマン・ライブイエロー大原丈によって、やがてシドを元の体に戻す方法がないことを知り、彼の魂だけでも救い出すことを誓い、ついに38話にてバリゾーグを倒すことでシドの魂を解放することに成功する。ジョーの視線で物語を俯瞰すれば、シドがらみの物語で始終してしまいがちであるが、マーベラスとジョーの信頼関係が垣間見える4話や38話で亡きシドに示された光の道がマーベラスに続いているという件、45話で真剣に正月料理に挑むジョーなどのシーンを見れば、冷たい態度とは裏腹な生真面目な彼が透けて見える。そしてその生真面目さはチームのナンバー2としての信頼につながっているのだろう。

 ゴーカイピンクことアイム・ド・ファミーユは、ファミーユ星の元王女。やはり母星をザンギャックに滅ぼされており、彼女は母星の復興を夢見ている。だが彼女だけを見ていれば、彼女がはたして宇宙海賊を名乗るのにふさわしいかは、鎧でなくても不思議に思うだろう。なによりチームの「和」を重んじるアイム。4話以降で頻出する彼女の心配顔と、全体を見通す立ち位置。彼女の行動を規定しているのはあくまでの王宮での生活だったろうが、我々が知る日常生活とは逸脱している部分が海賊と相性が良かったらしい。13話で人を導いたり、29話の七変化ものは、まさにそんな彼女のキャラクターがよく出た話だろう。その意味では自分自身にも縛られない自由度を誇るアイムこそ、もっとも海賊らしいのではないだろうか。だが一度ザンギャックを前にすれば、母星を滅ぼされた怨嗟は彼女の体からほとばしり始める。その恨みは誰よりも深い。だがザンギャックへの怨嗟よりも、より大事なものがそこにある。それにアイムに気付かせたのは、他のゴーカイメンバーなのである。この時アイムは本当に海賊となったのだ。

 ゴーカイイエローことルカ・ミルフィは金銭や宝物にこだわるという意味では、まことに海賊なのであるが、その理由はただ悲しい。金銭にこだわる理由を描いた6話や34話などは彼女の代表的なエピソードだが、それ以上に彼女の優しさを描くエピソードがより重要だろう。23話や27話など、彼女の視線でメンバーたちが互いを思いやっているエピソードが散見されるあたり、金銭にこだわる性格のその一方で、誰よりも他人にやさしい彼女の側面、それでいてはっきりと姉御肌の面倒見の良さが、アイムとは異なる立ち位置でメンバーの和を保っていることを気付かせる。筆者にとって印象深いのは、34話で幼馴染のカインと再会し、ザンギャックの陰謀を打ち破った後でカインを別れるシーンだ。一たび笑顔で別れたルカが、カインの乗る宇宙船が旅立ったあとでやけに険しい表情になるのである。一見すれば宇宙最大のお宝への挑戦に挑む新たな気持ちを表現したものかとも思うのだが、どうも違う解釈も成り立つような気がしてくるのである。自分の過去に再会して、それをうとましく思っているとか、どうしてもっと早く迎えに来なかったのかとか。そう考えると、ルカが金銭面では不自由せず、夢をもって生活している今の自分の境遇を、思いのほか気に入っていることがわかるだろう。カインはルカと別れてからの数年で大きく様変わりしたが、カインはルカだって様変わりしたことまでは気付かなかったのだろう。彼女のハートをつかむにはカインでは役不足なのだ。

<キャプテン・マーベラス、そのリーダーシップ>
 そして真打の登場である。キャプテン・マーベラス。赤き海賊団の生き残りであり、ゴーカイガレオンの船長、そして海賊戦隊ゴーカイジャーを率いるゴーカイレッドである。ザンギャックと敵対し宇宙を放浪していた時にアカレッドによって赤き海賊団に招きいれられる。そしてバスコの裏切りとザンギャックの侵攻によって、一度は赤き海賊団は壊滅する。その生き残りとしてマーベラスは新に仲間を集め、アカレッドが残したレンジャーキーと宇宙最大の宝の謎を受け継いで宇宙を旅していたのである。5人の仲間がそろい、ザンギャックに反旗を翻した後、ザンギャックの2度目の地球侵攻と歩みを合わせるかのようにガレオンで地球に到達。これが物語の始まりでもあった。
 ゴーカイジャーの剣術や戦い方は一見して個性的だ。誰が見ても我流なのだ。その中でマーベラスはもっとも我流で腕を磨いた感じが強い印象を受ける。常に敵に対して胸を張り、ひるむことなく切りつけていくその姿、ゴーカイスクランブルの勢いのついた斬撃、常に気持ちで相手を圧倒する戦い方など、その戦い方は実践の中で鍛え抜かれた技の数々であり、その姿で持って仲間を鼓舞する。そう、マーベラスは自分の姿勢や態度が仲間の後押しをしていることを知っているのだ。

 そう思わせるのは、きっとマーベラスが仲間たちと親密な関係を築きながらも、表面上ベタベタとしない、適度な距離感を保つことを自然としているからではないだろうか。鎧を除く他の4人に対しての信頼は厚く、それぞれが思うところをそれとなく感じ取っては、決して過保護に接しない。あくまでの5人はチームであり、パラレルな存在であることを態度で示している。その姿は仲間との絆を押し出して見せるシリーズには、まことに稀なリーダーシップの形ではある。だがマーベラスは言葉をかけあうだけが思いやりではない事を知っている。その距離感の測り方や縮め方も突き放し方も理にかなっている。そして鎧に関しては人がいい程の面倒見を見せるのもマーベラスの一面だ。最終回で言い放った「ウチの若いのが世話になった」云々などの言い草が、若くしてずいぶんと懐の深いマーベラスの人となりの片鱗を見せている。面白いのはジョーには語らずに突き放しながら見守る一方で、アイムには体を張って守りながら傷ついた体で語りかけ、諭している。先輩を改造されて敵としたジョーと、母国の仇を討ちたいと願うアイムはほとんど立ち位置が同じなのに、TPOに応じて対応を分けている。あれこれ考えずにそれを自然とこなしているマーベラスは、リーダーとしての器の大きさが感じられるではないか。

 だがそんなマーベラスの最大の弱点もこのリーダーシップにある。それがアカレッドから譲り受けた責務だとでも言わんばかりに、時として体を張って仲間を必死に守ろうとする姿は、自分の命までも落としかねない。37話で見せた「守る」という言葉に対する鎧とのやりとりや、その後の顛末についてはマーベラスのリーダーシップの総決算だと言えるし、「信頼」や「裏切り」という話についてはバスコとの決戦となる47,48話で存分に語られている。裏切られた側の痛みがわかるから裏切らない。意外と単純でわかりやすい信頼への道筋は、自分がなぜ人を信じるのかという当たり前のことの理由に気付かせてくれる。そして信頼に対しては絶対の信頼をもってかえす。マーベラスは仲間の信頼に応えることで、メンバー5人との信頼を勝ち取っているのだ。これに勝るリーダーシップはないだろう。若くしてリーダーシップのなんたるかを身につけている男、それがマーベラスという男なのではないだろうか。

こうしてゴーカイジャー6人を俯瞰すると、戦隊シリーズのテーゼについては、完全にキャラクターの中に埋め込まれていることがわかる。地球人以外の戦隊として、地球を守ることを第一義としないはずの彼らが、戦うことに理由を見つけていくその過程は、メンバーのキャラや考え方の成り立ちを考えれば、それぞれのキャラクターに根付いて結実していることに気づかされる。34の戦隊の魂は、きちんと各人のキャラクターに込められていたということだ。外見だけではなく魂までも引き継いでいる。前回の「ゴーカイジャーVSギャバン」の回での問いかけは、ギャバンの正しさをもって証明されたのである。

次回は物語を追いながら、戦隊の大いなる力と宇宙最大のお宝について触れてみたい。
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まとめteみた【「海賊戦隊ゴーカイジャー」~その2・マーベラスのリーダーシップ~】

 2012年2月19日の放送をもって、「海賊戦隊ゴーカイジャー」はその1年の役割を終えて終結した。なんと気持ちのいい最終回だったろう。都会の青空に飛び立っていくゴーカイ

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波のまにまに☆

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