昭和と平成のはざまで・・・~仮面ライダーZO~

 「仮面ライダークウガ」から数えて10作品目である、「仮面ライダーディケイド」が現在好評放送中である。昭和のライダーだって、1号~ストロンガーまでで連続5年であるから、記録更新中である。その連続の合間には、スカイライダー~ZXやブラックなどが登場しているのだから、長時間にわたる試練に耐えたコンテンツとして、仮面ライダーという看板が優秀なのは、どなたも納得いただけるだろう。もっとも「仮面ライダー響鬼」が、ライダーとして映像化されていなかったら、それはそれで面白いことになっていたかも知れない(中盤で変身忍者嵐もどきが出てきた時は、驚喜したものだ)。と、それはともかく。長きにわたる「戦隊」と「メタルヒーロー」に2大看板に支えられてきた東映が、満を持して送り出したライダーが、今回取り上げる「仮面ライダーZO」である。

 本作の公開年度は1993年の春である。戦隊は後に「パワーレンジャー」としてアメリカで再生されることになる「恐竜戦隊ジュウレンジャー」から、中国武術と伝説の獣をモチーフとした「五星戦隊ダイレンジャー」に移行した。またメタルヒーローは、レスキューポリスシリーズ3部作の最終作「特捜エクシードラフト」が終了し、あらたな作品を模索しつつ「特捜ロボ ジャンパーソン」が放送開始となる。
 余談であるが、前年に放送された「ジュウレンジャー」と「エクシードラフト」は、奇妙なことに、両方とも「闇と光の戦い」を主題とした最終回を描いている共通点が見いだされる。どちらもノストラダムスの大予言による、1999年の世界の終末をモチーフにしており、どことなく時代のきな臭さを感じさせるラストであった。そんな作品が終了し、新年度の作品が世間に知れ渡ると同時に、本作はスクリーンデビューを果たすことになる。「'93東映スーパーヒーローフェア」として公開された本作は、ダイレンジャーとジャンパーソンの新作と併映という興業形態で公開された。

 本作の監督は、創作集団「クラウド」を率いる雨宮慶太氏。すでに「未来忍者」や「ゼイラム」などの監督として知られており、この時点では「鳥人戦隊ジェットマン」でもテレビシリーズを監督していた。後に「ミカヅキ」や「牙狼」などの監督をし、自身がデザインしたキャラクターを、本当にかっこよく撮る人である。ドラマ部分よりも特撮パートに力を入れており、そのため戦闘シーンを圧倒的な美しさと迫力で見せる手腕は、本作でも健在である。少しうがった見方をするならば、自身がデザインしたキャラクターが、3Dで造形されてくると、その時点でやや対象に愛着が失われるタイプのようで、やけにあっさりした演出となる場合もある、ややむらっ気のある監督であるが、本作ではキャラクターへの愛情たっぷりに、48分の本編を見せきっている。

 だれもいない夜の森の中で、オルゴールの音で目を覚ます全裸の男。何者かに導かれるように目を覚ました男は、不意に望月ひろし少年を、ネオ生命体から守ることを命じられる。起き上がった男は、その姿を異形の者へと変えていく。その姿はまごうことなき仮面ライダーの姿であった。その一方で、ゴミ捨て場の鉄くずから誕生したネオ生命体・ドラスも、時を同じくして活動を開始する。

 物語冒頭、実に短い時間で、謎を秘めたままにライダーとドラスの誕生を見せている。森の中で立ち上がったZO。その姿にかぶる「仮面ライダー」の文字を、一歩前に出てすり抜ける映像に、まず驚かされる。タイトルを見せれば終了するはずのオープニングで、まず度肝を抜かれるわけだ。この映像にまず釘付けになる。
 そしてライダーのデザインがまた秀逸だ。顔はどちらかというと「仮面ライダーV3」を想起させる。だがしかしその体は深く濃い緑に黄色の筋が入り、ライダーのアイデンティティであるベルトがない。変わりに「赤い球体」が腹部に収まっており、「仮面ライダーブラック」のベルトに納められている「キングストーン」を思い出させる。比較的むっちりしている感じのスーツであるが、これがスマートに見えるのは、演じている岡元次郎氏の、抜群のプロポーション故だろう。

 そしてタイトルが暗転すると、ドラスの誕生シーンであり、CGとミニチュアによる映像の合成という、日本特撮のお家芸を披露する。ドラスの、機械的でありながら、どこか有機物くさい表現など、細部にまでこだわった演出が、見る者を魅了する。特にモーフィングで変形し、地上に降り立ったドラスは、重さを感じさせない感じで、ふわりと降り立つのに、金属の階段を上るときに、階段がへこむという重さを表現した演出は、ドラスの得体の知れない能力を想像させ、気味が悪い。人形の頭をつぶすあたりも、不気味さを助長する。

 そしてZOである麻生勝が望月家に移動し、ひろし少年の紹介が終わると、いきなりドラスの猛攻が始まる。まだ物語開始6分少々で、いきなり町を破壊し始めるドラス。逃げるひろし少年は、廃墟に入り込むが、すぐにドラスに発見される。それを助けたのは、Zブリンガーで登場した仮面ライダーZOだ。ドラスの記憶がZOの正体を知らせる。ドラスはZOよりも後に作られており、人間を素体として用いたZOよりも、ドラスのほうが優秀であると告げるのだ。ビーム一閃でいきなり劣勢になるZO。だが一瞬の隙をつき、Zブリンガーに乗ったZOが、屋上からドラスを突き落とした! 行動不能に陥るドラスを尻目に、自宅に逃げ込んだひろしを追うZOであった。

 初戦はお互い様子見の戦いであるが、どうにもZOには分が悪いように見える。やはり後続として作られたからか、内蔵武器や再生能力でZOを追い立てるドラス。一瞬の隙を突いての勝利は、やはり見所が満載だ。新たな金属を取り込み、より凶悪な形を見せる腕は、自信満々でZOに迫り、もはや憎たらしい。追い詰められながらも逆転するZO、それもバイクで突撃だ。勢い余って屋上からバイクごとドラスと一緒に飛び降りるとは、いやもうただひたすら驚愕の映像であった。

 祖父に事件の状況を話すが信じてもらえないひろし。ひろしはZOも、自分を襲ってきた怪物だと信じている。追い詰められたひろし少年は、通っている道場のお兄さん達に助けを求める。このお兄さん達、特撮ファンなら、一度は目にしたことがある方々(ギャバンにアニーに、ファイヤーにドラフトキーズだ)ばかりである。ある意味で心憎い演出ではあるが、ここは置いておこう。ひろしをはさんで対立する麻生勝とお兄さん達。
 ここですごいと思うのは、このZO役の土門廣さんが、この歴戦の強者であるお兄さん方と、なんら遜色のない存在感を持っていることだ。無名塾出身である彼は、大人の男の雰囲気といおうか、スタイリッシュではないが粗野にあらず、精悍であり理知的でもある。研究室でひろしの父の助手をしていた人だから、頭脳も優秀なイメージなのだろう。ある意味で「本郷猛」を彷彿とさせる人である。

 土門さんはこのあと、いくつかの特撮作品にゲスト出演し、「ブルースワット」で「シグ」役を演じる。エイリアンであり一児のパパ。それもその子が敵の幹部に乗り移られているという難しい役どころを演じた。その後、NHKの「中学生日記」に先生役でレギュラーとなっているのを見たが、それ以降お見かけしていない。なんでも役者を廃業されたそうで、なんとももったいないことだと思う。

 その後、一時的に行動不能になっているドラスが錬成した怪物に襲われるひろしを、ZOは助けに入る。早速の第2戦目は「コウモリ男」だ。このデザインがすばらしい。両目を手のひらにおき、耳についた羽が顔を覆い隠している。この羽がひらくと、醜悪な顔が現れる。登場時の動きが、まさにデザインとなって結実しているといってもいい。

 逃げるひろしとおねえさん(演:森永奈緒美)は、もう1匹の怪物である「クモ女」により、不思議な空間に囚われてしまう。そこはクモ女が支配する異空間だ。このクモ女の造形も、雨宮特撮ならではのセンスで構築されている。アップ撮影用の等身大のパーツは、人間と絡ませ、ライダーとの異形の戦いでは、パペットを用いて全身を撮影する。この2種の使い分けにより、単なる等身大での戦いとは少し異なる、奇妙な戦闘シーンが出来上がる。アップ用のクモ女の表情は、いかにも甲高い奇声を発しそうだし、下あごが割れるシーンなんか、いかにも自分より大きいものを食べているような想像をかき立てる。特にパペットの動きが、気持ち悪さ倍増である。このあたり、レイ・ハリーハウゼンのパペット特撮と何ら変わらない気持ち悪さだ。「タイタンの戦い」で登場する「メデューサ」という怪物の。頭の頭髪として動く蛇の、気持ち悪い動きを思い起こさせる。ZOにより爪を折られ、折れた爪を胸に突き立てられたクモ女は絶命し、ZOはからくもひろしたちを救出することに成功する。だがほっとするのもつかの間、コウモリ男の強襲を受け、ひろしが連れ去られてしまう。Zブリンガーで追いかけるZOは、これもなんとかひろしを助けることに成功するのだ。

 コウモリ男がひろしをつれて逃げるシーンでは、「操演」が多用される。この「操演」は、言ってみればワイヤーで人や物をつることで浮かすことであり、日本の特撮ではミニチュアの飛行機を飛ばしたりするときによく利用される技術だ。そういう意味においては、「マトリックス」シリーズなどで注目された「ワイヤーアクション」とは異なる。本作ではあくまで「操演」であり、クレーン車でワイヤーに繋がれた人や物をつり上げる。ここではワイヤーにつられたまま、横方向に移動し、ひろしをつれて低空を飛んで逃げるコウモリ男を、ZOが追うシーンで使われており、その2つを俯瞰で撮影することで、画面の迫力を増すことに成功している。こういった操演は、次作「仮面ライダーJ」において、ヘリコプターによる空撮と組み合わせることで、さらなる進化を遂げることになる。

 ひろしが助かったことで、アクションシーンは一段落するが、物語は加速する。麻生勝はひろしの父である望月博士により、バッタの遺伝子を組み込まれて改造された改造人間であることがわかる。同時に「感情などに支配されない完全な生物」を作ることが、博士の目的であったのだ。改造され裸でさまよう麻生勝。その顔には改造手術の痕跡が浮かび、ZOの顔に変化する。この時の顔の傷は、原作・石の森章太郎の漫画「仮面ライダー」における、「本郷猛」の顔に浮かぶ改造手術のあとと同じ意匠である。
 
 この時点では、なぜ望月博士がネオ生命体であるドラスを使ってひろしを襲うのか、その理由までは描かれていない。そのため父親がこどもを殺そうとしている話となってしまい、ひろしが混乱してしまう。父親との思い出の品である懐中時計を、超能力で修理する麻生。ここで突然、父親と子の物語になってしまう。そして「ネオ生命体からこの世を守る」ことが提示され、いきなり物語の核を説明されてしまう。あまりに突然であり、あまりに無理やりである。父親や肉親との親愛が、なぜネオ生命体からの日常の防衛が紡ぎ出されるのか、正直言って理解に苦しむ展開ではある。だがそんな本作のテーマなどにかまっている余裕はない。なぜならその直後に、再びコウモリ男がひろしをさらいにやってきたからだ。しかも望月博士に化けてきた。

 ドラスの意外なロケットパンチにより、一敗地にまみれる麻生は、どこかしらやってきた大きなバッタにより、ひろしの行方を知る。もうこのあたりは問答無用であり、理も非もない。だが富士山をバックにバイクをとばす麻生が、合成技術により淡く光る炎に包まれてZOに変身し、ひろしを追う様は、これまた問答無用にかっこいいシーンである。
 コウモリ男を一撃で倒し、廃棄されたプラントにこもるドラスとの一騎打ちが始まる。そこで判明する衝撃の事実、それはコントロール不能に陥ったドラスが、無能な人類を滅ぼして、完全な生命体として自立するために、ひろしを使って博士の能力を利用しようとしただけだったのだ。つまりまるっきり「フランケンシュタイン・コンプレックス」を地でいく話だったわけだ。もうびっくりするほどシンプルな話である。あとはライダーがドラスを倒して、映画は終わりかと思っていると、意外なびっくりが目の前に突きつけられる。

 ドラスとの最終対決が開始される。このアクションシーンは、クレーンにカメラとカメラマンを釣りながら撮影されており、ハンディカメラによる間近で見られるアクションシーンと、激突時のフラッシュなどの効果を併用し、迫力ある戦闘シーンに仕上がっている。しかも実力伯仲であり、一進一退の攻防は、どちらに天秤が傾いてもおかしくない、ぎりぎりの戦闘だ。その戦いは、ドラスのデザインが、ライダーの意匠を取り入れている事情から、正義のライダーと悪のライダーという趣がある。しかもワイヤーアクション(ここは操演ではない)が巧みに取り込まれており、ドラスのパワーを遺憾なく見せつける。ほどなく変身がとけるZO。

 生命体として、また父である望月博士に好かれようとして、ドラスは麻生をその身に取り込もうとする。ドラスの力の源であるプールを傷つけられて怒るドラスは、とうとうひろしにビームを発射する。これをぎりぎりで背中で受けた麻生は、ここで初めて変身ポーズを披露する。この変身もシンプルな動きでかっこいい。隠れていた口のクラッシャーが飛び出し、すぐに引っ込むギミックも、ここで初登場する。こういったシステムが、仮面ライダーのメカニカルな部分を見せているといってもいい。

 最初は優勢に戦いを進めていたZOだが、渾身のパンチを胸で浮けとめられ、ライダーはその体をドラスに則られてしまし、「赤ドラス」が誕生する。まさに一瞬の出来事だ。望月博士を放り投げ、ひろしの首に手をかけた直後、ひろしのポケットから形見の懐中時計が飛び出した。そのオルゴールの音に、動きが止まる赤ドラス。一瞬の隙にドラスを逃げだしたZOは、最後の力を振り絞って、最後の力にかけた。
 結局父親と死に別れ、ひろしはライダーと一緒に逃げ出した。その爆発の威力は、物語の最後のシーンを盛り上げるにふさわしい大スペクタクルシーンとなった。
 バイクにまたがる麻生とひろしの別れのシーンでは、ひろしにジャケットを掛けてやる麻生の男らしい仕草や、ひろしに呼び止められた麻生が振り返る表情は、やはり「本郷猛」を想起させる。

 まあメイキングで雨宮監督も言っているように、仮面ライダーとしてのエッセンスが詰め込まれた48分の映像は、あまりにも短く、少々もったいないという気がするのである。実際の映像をご覧いただけるとわかるのだが、物語を紡ぐというよりも、アクションシーンの連続を、幕間のドラマがつなぐという趣が強い。それは本作にとってはむしろ好結果であり、細かい設定を消化するためだけに、ドラマ部分を増やしても、全体のテンポが悪くなることは、想像に難くない。

 そして雨宮監督が生み出した映像は、次作「~J」を生みだし、同様の興業形式により「人造人間ハカイダー」という快作が生まれる。同時に平成ライダーを生み出す土壌の1つとして、その映像技術は現在の目で見てもまったく色あせることがない。
 現在ではもっと多用されているはずのCGによる映像は、最小限で抑えられている。それはDVDに収録されているメイキングを見れば、この作品が手作りの特撮で作られていることがよくわかる。この手作り感は、「映画を撮る」という快感、それも映画撮影の原体験に近いものがあるのではないだろうか。本当に基本的な特撮技術を、お金をかけてきちんとやることで、これだけの映像が出来るということや、撮影技術が日常感にあふれている点が、仮面ライダーの「売り」であることを、あらためて証明している作品でもある。

 現在の劇場用ライダー映画が、テレビ版のスピンオフとして発展して来た背景があるが、それとは別に「仮面ライダー THE FIRST」や「仮面ライダー THE NEXT」は、「ZO」や「J」という劇場版オリジナルのライダーという背景があってこそ成立しているのだ。
 「仮面ライダーZO」という作品は、撮影技術や時期的にも、昭和ライダーと平成ライダーとの中間地点に位置する作品である。だがたしかに作品としてはただの「点」に過ぎないかもしれないが、全体を俯瞰したときに常に意識される、きらっとした輝きが気になる、そんな作品であった。
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