「ウルトラマンサーガ」~主役は誰だ?~

 「宇宙戦艦ヤマト2199」を見た同じ日に見てきました。最初に断っておきますが、イベントムービーとしては実にエンターテインメントに徹した作りになっており好感の持てる作品となっている。マイナス面と思っていた秋元才加をはじめとするAKB48のメンバーによるチームUや、DAIGOにしたところでまったくマイナス面には感じなかった事だけは間違いない。時間と空間をまるっきり無視してしまった設定には問題はあると思うのだが、近年のウルトラ作品はこの「マルチバース理論」が前提の世界であるため、これを真っ向否定する気にはなれないでいる。この作品の最大の問題は、「核」となるウルトラマンの設定を曖昧にしてしまったがゆえに、だれも主役になれなかったことだ。それゆえに作品全体にぼやけた印象がつきまとい、なにか全体像がつかみにくい作品になっている。

<作品概要と物語>
 ウルトラマンゼロを主人公と据えるなら、この作品は劇場用作品としては3作目、オリジナルビデオ作品を含めれば5作品目となるのだろうか。1作品ごとにゼロは確実に成長を遂げ、彼はウルトラシリーズの看板を担うキャラクターとして成長したことは、まことに喜ばしい。しかも過去のウルトラ戦士たちをすべて包括できる設定と、前述の「マルチバース理論」によって、時間も空間を越えて活躍する彼を制限できる世界はない。最終回を迎えた過去のウルトラ作品が、如何に閉じた物語になろうとも、ゼロの存在がすべての空間をこじ開ける。それをどう評価するか? ゼロの評価は今後の作品に負っているとみていいだろう。

 ある日突然人間が消えてしまった地球。それはバット星人の実験場として選ばれた地球であり、地球上に残された人間は残りわずか。Uローダーと呼ばれる可変メカを使って活動する女性たち<チームU>。その目の前に怪獣アーストロンが襲いかかる。だがそれを助けたのは、宇宙のかなたに消えたはずのウルトラマンダイナだった。
 同じころゼロは全く別の宇宙で、カイザーベリアル軍の残党と戦っていた。ウルトラの国ではウルトラ兄弟たちが、怪獣墓場より怪獣を集めている不可思議な存在を知る。戦いの最中にゼロは謎のメッセージを受け取り、そのメッセージを受けて別の宇宙へと旅立っていく。

 また同じころ、かつてウルトラマンダイナが戦っていた時空では、太陽系消滅の危機を逃れた人類が、火星をベースとして再建されたTPCの主導のもと、15回目のアスカ記念日を祝っていた。だがそこに現れた生き残りのスフィアの来襲を受け、新人隊員タイガが勇躍していた。だがスフィアを捕獲しに来た謎の円盤によって、タイガは消息を絶ってしまう。タイガが目を覚ました世界。それは地球人が消えてしまったあの世界だ。そこで謎の円盤から放たれた戦闘機とドッグファイトとなるタイガは、敵戦闘機を撃墜するものの、少年の危機を救うべくその命を投げ出してしまう。それを見ていたゼロは、その勇気ある行動を見てタイガと一体化する。タイガの中に同化するゼロ。だが内側から声をかけるゼロの声を無視するタイガは、かたくなにゼロに変身しようとしない。
 怪獣グビラが暴れまわる。だがグビラは突如現れたウルトラマンコスモスの慈愛の力によってグビラを倒さず大人しくさせる。コスモスもまた謎の声に従って時空を超えてやってきたのである。人間の姿でタイガやチームUのメンバーの前に登場するムサシ。チームUのメンバーは、ムサシとタイガを自分たちの基地へ招き入れる。そこには幼い少年少女たちを守るチームUの姿があった。ムサシとタイガにこれまでの経緯を説明するチームU。だが彼女たちの前にバット星人が現れる。時空を超えて怪獣墓場に入り込んだのも、スフィアを捕獲したのも、クビラやアーストロンを操っていたのもバット星人であり、すべてはバット星人が育てている怪獣「ハイパーゼットン」を、人間の恐怖を餌にして成長させるための実験だったのだ。

 バット星人が送り込んでくる怪獣と戦うコスモス。ゼロはやはりタイガとのシンクロの問題で巨大化できない。子どもたちを元気づけたはずのウルトラマンダイナ=アスカはもういない。ハイパーゼットンの誕生を阻止するために、戦って消えたのだというチームUのリーダー・アンナ。だがハイパーゼットンの誕生は目の前だ。怪獣の攻撃におびえる子どもたち。その姿にかつての自分を重ねていたタイガも、バット星人の卑劣な攻撃に、ついにゼロと心を一つに合わせる。そしてコスモス=ムサシとともに、タイガはゼットンとバット星人を倒すために立ちあがる。ゼットンの誕生を阻止したダイナもまた、チームUと子どもたちの助けによって復活した。誕生した巨大な姿のハイパーゼットンを前に、時間と空間を越えて集まった3人のウルトラマンが立ち向かう!

<ほめるべきはAKBの底力?>
 シリーズ初の女性隊員だけによる特捜チームの誕生は、ある意味で本作のトピックだ。だが最初にそのニュースを聞いて喜んだ特撮ファンがどれだけいただろうか?しかもそのメンバーがAKB48のメンバーだと聞いた特撮ファンのほとんどは、本作に対する期待値がいやがうえにも下がっただろうことは容易に想像がつく。だがもし今の段階で上記を理由に本作を見に行かないのであれば、その不安は杞憂だといっておこう。彼女たちは実によくやったといっていい。いや冗談ではなく、この映画を見て最後の最後で記憶に残るのは、いやになるほど姉御肌のイイ女であった秋元才加、彼女の姿なのだ。チームUと名乗ってはいるが、その正体は子どもたちを守るためだけに結成された即席のチームであり、本職の防衛隊に所属していたのはたったひとり(梅田彩佳演じるミサトのみ)である。あとはOLや元ヤン、看護婦など、職業も出自もばらばらのメンバーで構成されていた。そのメンバーを、あくまで子どもたちを守るという1点のみで、すべてを統括しリーダーとして立った秋元演ずるアンナの姿は、この作品の最大の華である。しかも最後のバトルにおける活躍、そしてダイナを失った失望感から立ちあがり、バット星人の野望を打ち砕くためにウルトラマンたちに加勢する。勢い余って一度死んでしまうあたりの千両役者ぶりもまた、ウルトラマンたちの活躍を完全に忘れさせてしまうほどであり、ドラマ部分の充実はAKBおよび秋元才加の活躍でほぼ担っていると言っていい。私は舞台根性のなさそうなAKBのようなグロス売りのアイドルを完全に軽視していたが、前田敦子の卒業騒動や「モーレツ宇宙海賊」の主題歌を歌う「ももいろクローバーZ」などを見るにつけ、こうしたグロス売りのアイドルを見直すきっかけとなりそうである。

<コメディリリーフのゼロはアリか?>
 筆者は前作となる「ウルトラマンゼロTHE MOVIE」について述べた際、ウルトラマンゼロが1本でこれまでのウルトラのTVシリーズの匹敵するキャラクターを得るための映画だと断じた。ただしゼロのキャラクターの中で唯一触れられていない側面があるとしたら、「コメディ」の部分だと思っていた。本作ではゼロのコメディリリーフとしての側面を強化してある映画となっている。もちろんそれは「タイガ」というキャラクターありきなわけだが、結局タイガの心の奥底で眠っていたウルトラマンを欲する心と、体をなげうって子どもを助けようとする勇気にシンクロしてしまうことで、ゼロはコメディリリーフでありながらもヒーローたりえたのである。
 それはゼロ役である宮野真守の力量もある。スーツアクターのわかりやすいリアクションを、声の力で拾い上げたのは宮野の力量だろうし、これまでの「ウルトラマン列伝」における宮野のテンションをフィードバックさせた演技に転化したのはスーツアクターさんだ。こうした長きにわたる演技の積み重ねが、ゼロにコメディリリーフとしての役割を与えたことには、ゼロシリーズを見続けた筆者にとっては大変満足できる作品となるはずなのだが・・・・?

<主役は誰か?>
 さて本作にはステージの異なるウルトラマンが3人登場する。メインステージとなる地球はあくまでバット星人が支配する世界だが、その世界はアスカ=ダイナがたどり着いた世界であり、まったくの新規の世界だ。そこへダイナの最終回から15年後の世界からタイガ、コスモスの世界からムサシ=コスモス、そしてゼロがやってきている。この意味において3人のウルトラマンそれぞれの世界とは全く異なる世界がメインステージとなっているだけに、主役が絞りづらい。実のところ、3人のウルトラマンたちにとって、この世界を守る理由がないのである。だからこそこの作品の中では「戦う理由」を探す必要がある。それぞれの世界のウルトラマンたちは、それを探して番組の看板を背負ってほぼ1年間を戦い続けた。それを探し出したウルトラマンたちは、あくまで自分たちの見つけた正義や守るもののためにこの世界でも戦い続ける。実はあまり突っ込まれていないが、この世界を守る理由と、ウルトラマンたちの守る理由はまったく合致していない。そこを埋めるべく登場したのが悪役・バット星人とゼットンだったというわけだ。そしてこのウルトラマンの描き方がパラレルであっただけに、どうしても軸がぶれてしまう。それゆえにドラマ部分をAKB48に依存する形となり、姉御肌で死んでしまうほどのエピソード持ちの秋元才加が目立ってしまうという構造になっているわけだ。

 実のところ、ダイナがきちんと活躍して倒れる場面をエピソード順に描いていれば、だいぶダイナ寄りだったかもしれない。特にアスカがいなくなった世界からやってきたタイガとアスカが会話するシチュエーションがあれば、ダイナ=アスカの帰還を待ちわびている仲間のことや、そこへたどり着くために旅するウルトラマンダイナというバックボーンが描けていれば、物語の軸となりうる可能性があった。ところがダイナが活躍するエピソードの大半が回想シーンとなっている。これが大変残念だった。もしエピソードの順序として少なくても先にダイナがゼットンを封印しているシーンがきちんと先付けで挿入されていれば、まだしもよかったのかもしれないが、物語のインパクトとしてのダイナの敗北を演出したかったがために、後回しになってしまったことが悔やまれる。

<特撮として見るべきシーン>
 などと苦言を呈してみたが、そうはいっても本作の構成は、AKBじゃなくてチームUを中心として組み立ててとしてあれで正解なのであるし、その意味では問題点であるとも言い難い。その代りと言ってはなんだが、特撮シーンに関しては、実に面白いシーンがてんこ盛りである。
 特に序盤アーストロンが登場する町並みを描きだしたミニチュアのシーンでは、かなり大きく作られたミニチュアの出来が素晴らしい。それを下からあおるように撮影された映像は、それだけで見ごたえがある。こうした特撮的には見ごたえのある背景があれば、怪獣自体にギミックがなくとも、その巨大感で十分に映えるのである。それだけにギミックの少ないアーストロンやゼロの笑わせどころを演出したグビラなど、怪獣のチョイスや使いどころが気持ちがいい。ウルトラQにあまり思い入れのない筆者であるから、ゴメスのチョイスには疑問を禁じ得ないのだが、それでも正道のストロングスタイルの二足歩行の怪獣のチョイスはアリだと思わせてくれる。

 これまでウルトラの劇場版では、おおむねウルトラマンを越える巨大さを誇る怪獣の登場によって、ラストバトルを演出してきた経緯がある。平成シリーズの1作目である「ウルトラマンティガ&ダイナ」や「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」などがそうだ。そしてまたその巨大な敵を葬るために誕生する、劇場版のみに登場するウルトラマンたちが合体して誕生する超常のウルトラマンの登場もまた、繰り返された。「ウルトラマンコスモスvsウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE」や「メビウス&兄弟」はまさに同じ展開だろう。それだけに今作の最後に登場する真打「ウルトラマンサーガ」の存在は、心配の種だったわけだ。だが今回とりわけ面白いと感じたのは、巨大なハイパーゼットンが前座であり、真打サーガはバット星人が融合したハイパーゼットン(イマーゴ)との一騎打ちがラストバトルになっていることだ。しかもミニチュアを盛大に破壊し、チームUのサポートによってサーガが有利になるシーンまで加わるとなれば、そのバトルはきちんと事前に展開した物語がラストで集約するため充実感があるし、なにより爽快感がある。CMでも見られるハイスピードバトルは、負けるウルトラマンとそれを覆すサーガという構成であるから、劇場で見たほうがその迫力がより伝わるだろう。

 様々な宇宙をさすらっている「放浪のウルトラマン」ダイナ、彼のエピソードとしては先行する「ウルトラ銀河伝説」への客演があるが、今作では彼が地球を守りぬいてから15年が経過した火星が登場する。実は後日談がきちんと制作されている「ティガ」に比べると、その後のエピソードがほとんどない「ダイナ」であるし、「ガイア」も同様の扱いだ。それだけに15年後にスーパーGUTSの面々の姿が見られるのが個人的にはうれしかった。何より太陽系を守った英雄としてのアスカは、きっとアスカ記念日を照れながら受け入れるのだろうか。またコスモスのムサシにしたところで、怪獣たちの楽園でアヤノやカオスヘッダーとも楽しく暮らしているという情報が、なんだか嬉しい。しかも演じるつるの剛士や杉浦太陽の現在の活躍を見れば、彼らが今も現役で芸能活動をしていてくれて、心から良かったと思えてならない。彼らの現在を確認するだけでも、この作品は価値があるだろう。
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君だけを守りたい

 夢があるから人は生き、夢があるから人は、その儚さに涙を流す。  しかし、未来への希望を失って倒れても、 何時までも変わらぬ自然の営み、人の営みが未来を作り続ける限り、...

コメント

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No title

御無沙汰しております!

この映画、制作陣の「アレもやりたい」「コレもやりたい」というのが色々と空回りしてしまった映画であると思います。
要素要素はハッキリキッチリしているし突き詰めていけば面白くなるはずなのに、それらがヘンな感じで絡まり合ってしまってそれぞれの良さが発揮され切っていないように観ていて感じました。
『ダイナ』直撃世代としては、折角設定まわりが整っていたんだからきちんとした形でアスカとスーパーGUTSの面々を再会させてあげて欲しかったです……!

特撮面ですが、久々の地球の街での戦闘という事で心躍りました!
しかしながら観ていて、「なんかウルトラというよりも戦隊寄りなミニチュア配置だなぁ」と思いました。
……特技監督の三池敏夫さんは特撮研究所所属という事だそうですね。ああ、なるほど、と(笑)。

ウルトラマンの新作TVシリーズが観れるのはいつになるのかは分かりませんが、しかしこうして年に1度劇場映画としてウルトラが観れるのは素直に嬉しいです。
過去作品の再編集シリーズ『ウルトラマン列伝』もまだまだ続いています(が、私の住んでいる地域では放送されていません……。)し、TVシリーズの新作が出ない以上は「忘れられない」事と「新規ファンの獲得」を、しっかりじっくりとやっていって欲しいと思います。

No title

飛翔掘削さま

 コメントありがとうございます。
 「いろいろやりたい」を詰め込んだとのことですが、前作「ゼロ・ザ・ムービー」の時もそんな感じでしたね。毎回監督も変わっているし、そういう意味では、旧作リスペクトやアイデア一発勝負の傾向が強い作品群が、「ゼロ」シリーズという見方もありますよね。

 特撮、とくにミニチュアの件は、おっしゃる通りだと思いますが、戦隊とウルトラのミニチュア特撮の違いって、巨大感をどう出すかの違いだと思います。下からあおれるのがウルトラで、実景などとの合成で見せるのが戦隊(あるいは東映?)って感じ。あるいは壊すことに主眼をおいているのが「ウルトラ」で、らしくみせることを重要視しているのが「戦隊」ってな感じ。そのエッジにある特撮が今作のような気がします。

 平成ウルトラで「ダイナ」からみ始めた不見識な人間なもので、私としてもダイナには思い入れがありまして。
 なので、ダイナの後日談という方向性でよかったのになあ、という想いが本文のような書きっぷりになりました。ただし「超8兄弟」で違う次元としてリョウとアスカを書き込んでいただけに、いまさらという感じがあったのかもしれません。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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