宇宙戦艦ヤマト2199 第一章~伏線が回収されそうな心地よさ~

 ついに、あの「ヤマト」が完全新作として帰って来た。そしてあくまで「2199」と題されたそれは、一番最初の「ヤマト」のリメイクとして劇場に登場した。アレンジしたものではなく、さりとて一度完結したものを復活させたのでもない。現代の作画技術、新しい解釈、そして「ヤマト」のフォロワーであった人材を軸にしてリメイクされたのである。基本的な物語は同じ。だから見る側にとってはどこでどうなるのか、次の展開がきちんと読めてしまう。にもかかわらず、見ていてこれほど高揚感が高まる作品に仕上げてきたのである。まだまだたった2話。ヤマトは地球を進発したばかりであるが、まずはこの2話分の劇場公開バージョンをとっくり語ってみたい。
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(2012/05/25)
菅生隆之、小野大輔 他

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<概要と物語>
 今年は2012年。最初のヤマトが放送されたのが1974年なので、38年の時を経て甦ったことになる。最初の「宇宙戦艦ヤマト」は全26話が放送されたが、それは3クールの予定が視聴率不振などの理由で打ち切りになって26話となったものだ。当時の裏番組が「アルプスの少女ハイジ」と「猿の軍団」であったことはご存じだろう。ところがこの打ち切りになった作品がその後、「まんが映画」から「アニメ」という言葉への転換期を発生させることになる。本作のパンフレットの巻頭に氷川竜介氏が寄せいている言葉を借りれば、現在のアニメ作品が見られる原点であり、「ガンダム」も「エヴァンゲリオン」も「ヤマト」が切り開いた血路の上にあるのだという。筆者もまた「ヤマト」でアニメに触れ、SFに触れ、この世界に足を踏み入れた一人である。思い入れも人一倍だということは、以前に触れた「復活編」や「SPACE BATTLESHIPヤマト」の時と何ら変わりない。ただし、前述の2作がオマージュ的な位置づけであるのに対し、今回は原点回帰を目指したものであるので、ここはきっぱりとこだわって書いてみたい。

 時は2199年。地球は今、最期の時を迎えようとしていた。
 遡ること8年前、突如として地球人と接触を図ってきた謎の星間国家ガミラスとの間に戦端が開かれた。一度は大艦隊を退けた国連宇宙艦隊であったが、ガミラスは遊星爆弾による爆撃に切り替え、爆弾に含まれた放射能によって地球の環境は激変し、人類は地下での生活を強いられていた。ガミラスは地球人の自滅をただ待つだけとなったのだ。だが座して死を待つ人類ではない。ある一つの計画が秘密裏に進められていたのである。
 沖田十三率いる国連宇宙艦隊は、冥王星宙域にてガミラスの大艦隊と激突する。その感大戦で戦力のほとんどを失い、沖田の息子や古代守を含め、多くの戦士を失ってしまう。だがその艦隊戦は、地球に救いの手を差し伸べてきた惑星イスカンダルの女王スターシャからの使者と確実にコンタクトするために仕組まれた作戦だったのだ。そして艦隊戦の背後で、火星に不時着した宇宙船とのコンタクトに成功する。だがそれはさらにイスカンダルの使者の命によってあがなわれた作戦成功であった。イスカンダルの使者を看取ったのは古代進と島大介。古代は先の作戦で戦死した古代守の弟である。古代はただ1隻地球に帰還した沖田の艦と合流し、会戦の真実を知る。そして地球に帰還した古代は沖田の元を訪れ、沖田に詰め寄る。だが古代の心は晴れることはない。だが古代と島は国連が秘密裏に進めていた作戦のために選抜された人材として召集されていたのである。
 そんな古代と島を待っていたのは、ガミラス偵察機。彼らは偵察機を撃墜するために試作艦上機にて出撃するも、兵装がロックされており返り討ちにされてしまう。だが落ちた古代たちが目の当たりにしたものは、はるか昔の戦争で沈んだ大戦艦のなれの果てだった。だがこの鉄クズこそが人類最期の希望なのだ。そして古代たちの見ている前で、ガミラスの空母を艦砲一発で葬って見せる。その鉄クズは最新のメカニックにより再びよみがえり、「宇宙戦艦ヤマト」としてはるか16万8000光年の彼方にあるイスカンダル星に向かい、地球を救うことを宿命づけられた船だったのである。
 そしてヤマトは旅立つ。冥王星より放たれた巨大ミサイルを粉砕し、自らの道を作り、はるか彼方の宇宙の虚空へとこぎ出していく。

<改変部へのこだわり>
 前述の通り、本作は1974年のテレビ版を踏襲し、それを見たスタッフたちによって再生させられた作品だ。元の作品のフォロワーによって作られたオマージュ作品という見方も正しいのだが、そのこだわりようこそが旧来のファンにとっての楽しみの一つだろう。
 古代や島のキャラクターにはかなり変化を感じる。古代は熱くストイックに清潔感のあるキャラクターになったかと思いきや、島はやや軟派な明るい性格設定に変更されている。逆転というほどではないにしろ、特に島の変化には驚きだ。だが島というキャラクターが古代をいさめる立場だとすれば、この島の性格改変はイマドキでわかりやすいかもしれない。

 1話冒頭で見せる迫力ある艦隊戦。冥王星会戦で、ヤマトという作品のマクラに相当する大規模会戦である。これが現在のCGを使ったメカニック戦として甦ったのは、本当に38年のアニメーション技術の隔世の感を覚える。原典ではあまり見わけがつかなったガミラス艦のバラエティさが目を引くし、はっきりしなかった指揮系統まで見えてくる。会戦で登場した艦艇と、地球を急襲した空母のデザインが、相変わらず混在している感じは否めないのだが、このデザインラインは原典をある意味で忠実に守っているのだから仕方がない。気になるのはいずれの艦艇もスピードが速いことなのだが、これにしたところで監督はじめスタッフが議論を繰り返したことだろう。ミサイル艦ユキカゼが回頭するシーンでいきなり度肝を抜かれた。旧作でのミサイル艦の最期のシーンをはじめとするガミラス艦のスピード感は、地球側艦艇よりも早く見せているのが地球とガミラスの技術力の差を感じさせたのだが、今作ではむしろ攻撃力の差異を際立ているようにも感じる。

 何よりも興味深い改変は、冥王星会戦の真の意味が、イスカンダルの使者とのコンタクトにあり、古代たちが持ち帰ったカプセル自体がヤマトの次元波動エンジンのコアだと判明するシーンである。この二正面作戦には本当に恐れ入った。この改変には筆者は個人的にかなり気に入っている。そしてまたそれだけにこの会戦に参加して死んでいった戦士たちの魂も、本当に意味で救われるような気がする。ミサイル艦で沖田を逃がすために盾となった古代守とそのクルーたちが、歌いながら虚空に消えていくシーンは筆舌に尽くしがたい。原典ではすでに老朽化しガミラスとの戦いもままならない艦艇での戦闘は、はっきりと無意味に感じており、それがわかっているだけに戦士たちの死のやるせなさも際立つのだが、この改変により太平洋戦争において無力な戦いを繰り広げざるを得なかった日本軍の色の一部は払拭されたのではないだろうか。「ヤマト」でありながら「ヤマト」ではない。そうした意味でもこうした改変の意味を見直してみると、まだまだ発見がありそうだ。

<回収されそうな伏線の数々・・・>
 さてこの作品、原典につながる伏線を数々埋め込んでいることは、賢明なるヤマトファンを自認する方々にはお分かりのことだろう。地味に面白かったのがヤマトで古代の部下となる南部が森雪のとなりにいたりするあたりだ。また沖田の戦艦の機関室では徳川機関長のそばに藪がいる。この藪という人、TV版ではイスカンダルに到着後に地球帰還を拒否して造反するメンバーの首謀者であるのだが、彼がちゃんとこの時点で登場しているのだ。もうこれだけで航海における反乱の物語が予想できて、ふと楽しい。加藤とともに戦闘機に乗る山本は、戦死した兄の妹という形で登場。こうなると初のワープ直前の山本機の被弾と回収のエピソードは、続編での山本の死はどうなるのだろうか? 続編といえば土方さんや山南さん、徳川機関長の右腕であった山崎さんなど、続編に登場する人々も顔を出している。これはもう続編もやると思っていいのだろうか?

 そして何よりも重要な伏線が「森雪がイスカンダルの使者と似ている」という点だ。劇中出航前の雪がなにやらコンパクトのようなものになにやら「帰らなければ」などとつぶやいているシーンがあるし、何よりイスカンダルの使者の名は、「サーシャ」と「ユリーシャ」の二人とされている。これはやっぱり雪=ユリーシャであり、最初のイスカンダルの使者として地球に到来し、なおかつ地球人として国連軍に参加していたと考えるべきではないだろうか。この伏線がどのような意味を持っているのかは現時点ではわからないが、想像してみるに、ガミラス襲撃以前にスターシャはガミラスの行動を感知し、ユリーシャを地球に送りこんでいたのではないか? そして雪として成長したユリーシャは地球が救うに足るべき存在であるかどうかを調査していたなどというのはどうだろう? 雪=スターシアの妹という設定はもしかしたら原作松本零士氏のアイデアにもあったボツネタだったとしたら、正しく復古したネタと言えなくもない(いや、自信ないけど)。

<いやもう、泣いちゃったもん(てへぺろ!)>
 それにしても、筆者はこれをみてほぼ全編泣きっぱなしだった。なぜ?とかなんで?とか聞かれてもしかたがない。泣けちゃうんだもの。別に懐かしいわけじゃない。見ようと思えばDVD見るし。物語が悲しいわけじゃない。だって物語のほぼずべてを知っているのだし。じゃ、なんで泣けるのか?
 筆者は「勇気」とか「雄々しさ」「強さ」「正しさ」とかに敏感で、自分にはまったくないものだからか、こういうテーマを真正面から見せられると、気恥かしさもある一方、ストレートに心が反応してしまう。しかも自分にはないというコンプレックスがあるものだから、余計に自分のかえりみては泣けてくる。つまりないものねだりとして見せられるまっとうなヒロイズムにやられているのではないだろうかと思うのだ。そう考えを進めてみると、こうした筆者が泣けるようなまっとうなヒロイズムを前面に押し出した作品は少ない。ウルトラマンやライダーでも戦隊でも、自分がどうしても泣けてくる部分は、そうした時代にそぐわないまっ正直なヒロイズムであり、作品数としての貴重さはさらに涙に拍車をかけていると感じている。もっともヤマトの物語はヒロイズムだと思っていたものが、実は星間戦争であり、生き残ろうとするエゴイズムのぶつかり合いでしかないというちゃぶ台返しが用意されているのだが、そこに至らない現時点では、素直にこのヒロイズムに酔える気がする。

 さて劇場では劇場オンリーのBDも売り切れではあったが、5月末には発売されるし、第2章は6月に公開予定だ。2012年はまだまだヤマトでいっぱいである。「ガンダムUC」もあるし他の作品群も予断を許さない。これはどうして、なかなかアニメを見ることを辞められそうにない。

追記
 森雪役の桑島法子さんは、あのフラグじゃないよね・・・・?

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(2012/07/27)
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テーマ : 宇宙戦艦ヤマト
ジャンル : アニメ・コミック

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