宇宙戦艦ヤマトIII~その1・貪欲なセルフオマージュ~

 劇場公開された「宇宙戦艦ヤマト2199」第1章がパッケージされて5月末に発売。この6月30日には第2章が劇場公開をスタンバイしている。改めて「第1章」の劇場公開時に自分が書いた記事を読み直したが、なんかもう冷静さはどこにもなく、自分でもびっくりするほどテンション高めで書いているのがよくわかる。齢40歳を超えてなお、おじさんのハートを熱くし、鷲づかみにして離さない「ヤマト」というコンテンツのすごさ恐ろしさを、自分自身に垣間見たような気がした。そしてまたその熱量は、最初のヤマトのブームの時に感じたドキドキワクワクと、何ら変わるものではないと確信できる。
 そんなヤマトシリーズではあるが、かつて「ヤマト」の話をすれば幾分の失笑を買った時期もある。幾度も繰り返されるシリーズ、死んだかと思わせて復活するキャラクター、ご都合主義な展開、人死による演出、あまりにもしぶといヤマト(真田さんのおかげ)など、指摘すれば枚挙にいとまがない。それを承知でヤマトの名を口の端に乗せれば、笑いのネタとして消化されてしまった時期が確実にあった。そんな時期を乗り越えていま、「ヤマト2199」を語ることは、決して恥ずかしくない。苦難の時代を経て、「ヤマト」は再びアニメシーンの中央に再登場してきたのである。旧作シリーズからのファンにとって、これほど誇らしいものはない。

 筆者は「ヤマト」作品を扱うと、どうしても冷静さを失う傾向が強いものの、それでもどうしても本ブログを立ち上げたとき取り上げておきたい作品があった。それは「ヤマト」シリーズの中でもあまり顧みられない作品であり、現在ヤマトのテレビシリーズの最終作となっている「宇宙戦艦ヤマトIII」である。

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(2001/05/25)
富山敬、麻上洋子 他

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<作品概要、ヤマトの歴史>
 「宇宙戦艦ヤマトIII」は1980年10月から翌年4月まで、読売テレビ系列で放送された作品(全25話)。同じ年の8月に公開された「ヤマトよ永遠に」の後日談として制作された。当初4クール全52話を予定していたが、視聴率の低さ(15%程度らしいですが)から2クール25話と短縮されたとのこと。なお最終話での制作総指揮・故西崎義展氏のメッセージには1982年に「ヤマト完結編」の公開を予定していたが、周知の通り制作の遅れから1983年春の公開となった。

 ここでちょっとヤマトの物語の歴史について、年表としておきたい。あくまで簡易の年表ですのであしからず。

2119年:
ガミラス帝国からの襲撃により、地球は放射能に汚染。ヤマトは放射能除去装置を受け取りにイスカンダルへの長い旅路につく(ヤマト、劇場版)

2201年:
白色彗星が地球に到来。ヤマトはテレサの緊急メッセージを受け取りにテレザート星へと向かう。多くの死傷者を出しながらヤマトは強大な白色彗星帝国と闘う(ヤマト2、さらば)

2201年:
ガミラス残存艦隊と暗黒星団帝国による交戦。ガミラス星破壊によってイスカンダルが暴走。ヤマトはイスカンダルを救うために、訓練途上で出撃する(新たなる旅立ち)

2202年:
地球は暗黒星団帝国による襲撃を受け、重核子爆弾を打ち込まれる。ヤマトは敵母星へと発進(永遠に)

23世紀初頭:
太陽の核融合異常増進によって地球人類は死滅の恐れ。ヤマトは人類の移住先探査のために銀河系の中心へと発進する。(ヤマトIII)

2203年:
回遊惑星アクエリアスによって地球水没の危機に見舞われる。ヤマトはアクエリアスのワープを止めるために出撃し、黒幕であったディンギル帝国と交戦。(完結編)

2220年:
カスケードブラックホールによって地球は滅亡の危機に。ヤマトは移民船団を守りながら、星間国家連合と交戦する。(復活編)



 さて、お気づきになっただろうか? 今回取り扱う「ヤマトIII」だけ、年表上の年度がはっきりしていない。これに関しては次回作の「完結編」の年度設定に起因しているらしいとだけいっておこう。故人とはいえ、西崎氏の決断には恐れ入るばかりだ(笑)。

 23世紀初頭。銀河ではガルマン帝国とボラー連邦という2つの大国間で、激しい戦闘が繰り返されていた。そんな中、銀河辺境で行われた戦闘でガルマン帝国側が発射した惑星破壊ミサイルの一つが流れ弾となって太陽系に飛来する。ミサイルはそのまま太陽に飛び込んだ。これを契機に太陽の核融合は異常なまでに増進し、膨張を始めた。それを太陽観測によって突き止めたサイモン教授は、地球防衛本部に報告を行った。その報告書によれば太陽の異常増進の結果、1年後には地球上の全生物は死滅してしまうという。地球連邦政府はこれを鵜呑みにして全く行動を起こそうとしない。業を煮やしたサイモン教授は、この話を藤堂長官に直接持ち込んだことにより、第二の地球を探すための特務艦として、宇宙戦艦ヤマトの発進が決定され、旧乗組員が招集されることになる。

この発進に合わせ、古代進は艦長に、島と真田は副長に任命され、宇宙戦士訓練学校を早期に卒業した新乗組員も多く配属されることになった。その中にはコスモタイガー隊の新人・揚羽や航海班の雷電がいる。だが優秀な卒業生であるはずの土門竜介は、戦闘班に志願したにもかかわらず、生活班炊事科勤務になったことに腹を立てていた。その土門の両親は、惑星破壊ミサイルが太陽に到来した事件に巻き込まれて死亡していたのである。新乗組員たちが着任早々、生活班の班長が女性である森雪であることに腹を立てた土門は、そもそもの原因である古代と激しく衝突する。だが殴り合いの中で土門は古代の真意をつかみ始めていた。古代は土門という男の優秀さに、いつかは自分の後を継げる人材であることを見抜いていたのである。そして見晴るかす日本アルプスの山中に落ち行く太陽を見つめながら、地球を救うことを誓い合った(1話)。

 さて日本アルプス(がガミラスの攻撃を受けてどうして残っているかは別にして・・・)から宇宙へと発進するヤマト。それは知る人もほとんどいない発進であった。だがヤマトの航海は困難を極める(2,3話)。出発早々強大な2大国家の戦闘に巻き込まれるヤマト。ボラー連邦のラジェンドラ号を救助したことで、ダゴン将軍のガルマン帝国の艦隊と交戦状態になる(5話)。ヤマトは新乗組員の教育を行いながら航海を進める。そんな中で土門は古代の期待通りに成長していく(4話)。ダゴン将軍との戦闘は熾烈を極める。第11番惑星での艦隊戦(6話)、アルファ星での新反射衛星砲による猛攻(7,8話)、そしてバーナード星から白鳥座中域での二連三段空母などからなる最新鋭空母艦隊による電撃戦(10,11話)を経て、ヤマトはついに猛将ダゴンを打倒する。その後に訪れた惑星にてボラー連邦のベムラーゼ首相の非道に怒りを感じた古代たちは、はっきりとボラー連邦と対立することとなる(12,13話)。

 一方ガルマン帝国もまた、地球侵略をあきらめておらず、ダゴンの上司に当たるガイデル提督自らがヤマト攻略に乗り出すこととなる。ガイデルは「ガルマンウルフ」の異名を誇るフラーケン提督率いる次元潜航艇部隊を呼び寄せ、ヤマト攻略に向かわせる。次元断層から魚雷を中心にした攻撃を受け、見えない敵に苦戦するヤマト。だが土門のアドバイスによって一度は窮地を脱するも、戦闘のさなかに古代は負傷。追い詰められたヤマトはついにガイデルの機動要塞に拿捕されてしまう。だがここで事態は一転する。ガルマン帝国とはあのデスラーが築き上げた帝国であったのだ。ヤマトおよび地球に対するデスラーの友誼から、デスラーは地球へ進軍したガイデルを叱責する(14,15話)。その後、デスラーは古代および地球への非礼を詫び、デスラーの本拠地であるガルマン・ガミラス帝国へとヤマトを招待する。時折しもデスラーは誕生日を迎えて盛り上がっていた。と、これが前半までの物語の概要だ。

<前半はオマージュの連続>
 さて本作は基本的に同年の夏に公開された「ヤマトよ永遠に」の後日談として制作されていることは前述の通り。それはヤマトおよびメインキャラクターのデザインについても、ほぼそのまま踏襲されている。たとえばヤマトの艦首、側面に描かれた白い碇マーク、主砲に描かれた三本の白い線などは、基本的に「永遠に」のデザインを踏襲している。また設定的にもスーパーチャージャーを搭載した新型波動エンジン、全天球レーダー室や波動爆雷、波動カートリッジ弾などの設定もそのまま使われている。

 その一方で追加された点もある。特筆すべきは新乗組員の補充により土門と揚羽という2人の優秀なクルーを迎えたこと。と同時に古代はヤマトの艦長として指揮を執ることとなった。これによって古代は次世代を担う若手の育成を成長した自分に課していくことで、新しい魅力を獲得していくことになる。特に艦長の重責に堪えるだけの経験を経てきた古代にとっては、艦長が不在だった「新たなる旅立ち」以来の艦の指揮である。正式な艦長としての辞令は古代をして、今回の旅の重責を重く受け止めたに違いない。そして古代の成長は、そのまま見ている我々の成長をも期待されたといえる。

メカニック的な面で言えば、惑星探査専用の機体として、コスモハウンドという大型の探査専用機が登場する。コスモタイガーを凌駕する大型のデルタ機であり、各種センサーが搭載されていながら同時に機銃などの戦闘用の装備も充実しており、7,8話の新反射衛星砲との戦いでは、その機動力を遺憾なく発揮してヤマトを窮地から救うことに成功する。もっとも次作「完結編」では序盤で失ってしまうのだが・・・。

 さて本作の前半の特徴を一言で言い表すなら、それはかつてのヤマトのオマージュで構成されているということだろう。実は「ヤマトよ永遠に」を取り扱ったときにも、同じようなことを書いたのだが、より具体的に旧作からの引用を明確に意図して使用しているのは、「永遠に」よりも今作ではないだろうか。具体的に示していこう。

 まず最初に目につくのが、地球滅亡までのカウントダウンを1年に設定し,毎回のエンドに残された日数を示したことだ。これは第1作目を完全に想起させる作りだ。背景こそ違え、太陽の異常によって地球人類が滅亡の危機に瀕している状況は同じである。第1作の再編集版映画のヒットがその後のヤマトブームを作ったのである。しかしながら「III」も第1作同様、視聴率不振による打ち切りによって2クールとなってしまったのは残念ではある。だがこのカウントダウンの設定が、第1作のヒットにあやかろうとしたことは、想像に難くない。本作ではこれ同様に1作目からのオマージュがそこかしこに垣間見える。特に前半に集中するのはガルマン・ガミラス帝国の戦力だ。そもそもガルマン帝国は、かつてのヤマトの宿敵・デスラー相当率いるガミラス残存艦隊が、「新たなる旅立ち」以降に改めて地歩を固めた銀河の新興国である。そもそも本星となったガルマン星はガミラス星の祖先たちの星であり、両方の民族の血筋は同じとのこと。ガルマン・ガミラス帝国となってからはボラー連邦と星間戦争を繰り広げ、銀河を二分する大勢力となった。そのガルマン帝国の技術力のベースにあるのはあくまでガミラス帝国のものである。それゆえかつてのガミラス帝国の技術が発展進化して再登場することとなる。そうした設定上の魅力が現れるのが、前半のダゴン将軍率いるガルマン帝国艦隊とヤマトの戦闘シーンである。

 特に新反射衛星砲と空母艦隊の決戦は、かつての冥王星での戦闘や、七色星団での決戦のリメイクと言っていい。しかもその進化発展は、ヴィジュアル面での強化として如実に表れている点が、実におもしろい。新反射衛星砲は砲塔自体が惑星の基地外に多数存在していること、そして静止軌道にあった衛星は、よりアクティブに運用することを前提に、反射板を搭載した大型の航空機として登場する。また空母艦隊は航空戦力を二連三段空母に集中させ、同時に戦闘空母を3隻従えることで火力を増強している。また空母艦隊の最強の要である瞬間物質輸送機を使った強襲作戦、いわゆる「デスラー戦法」についても、二連三段空母の甲板上に設置されているワープエリアによって、1機ずつワープさせて強襲・・・・ってあれ? 戦闘機隊を一気にワープさせる方が効率よくね? なんだか劣化しているぞ(笑)。まあ、こうした強化に見える劣化がヤマトにつけいる隙を与えて負けるわけですが。

 さてヤマトの側に関しては、「新たなる旅立ち」同様の新兵の育成と成長を描いている。「新たなる旅立ち」では徳川太助や北野哲、坂本などの新乗組員が登場し、いくつかのエピソードを繰り広げているが、本作ではその役目を土門と揚羽という二人が担うことになる。特にコスモタイガー隊のメンバーとして操縦技術が完成されつつある揚羽に対して、生活班炊事科勤務になった土門については、本来の高いスペックによって徐々に成長していく様は、かつて古代が沖田艦長の下で経験を重ねて成長し、沖田の信頼厚く艦長代理となる過程の踏襲とみていい。土門のケンカっぱやさも古代の相似形であり、1話で見せた土門と古代の殴り合いも、かつての島と古代のケンカを思い起こさせる。

 下のものが成長すれば上の世代も成長する。今回は古代に対する島大介もまた、ヤマトの副長としての責任感を、持ち前の生真面目さで乗り越えようとする。だがその成長もまた古代と歩みを同じくしており、6話での酒場での乱闘シーンにおいて、再び古代と島の友情が二人の成長を促す物語は、土門ら新乗組員の成長との対比、土門と古代の対比、また古代と土門の先輩である平田などとのエピソードなどを加えて、彼らをより魅力的なキャラクターに成長させるのである。

 こうしたオマージュは、かつてのヒット作の人気にあやかったとうがった見方もできるだろう。だがこのオマージュはきちんと旧作を踏まえた上で、さらに追加すべきを追加し、物語上の時間の経過や設定上の変化部分を受け止めるようにして再構築されたものだ。これを単なる焼き増しというのは簡単だ。だが設定もヴィジュアルも見せ方も、以前のものを超えようとする意欲的なチャレンジ、それが本作前半に多く見られるオマージュの正体ではないだろうか。
 今回は前半を取り上げてみたが、次回は後半と本作の最大の特徴となる2大国家やシャルバートなど本作独特の魅力に迫ってみたい。
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テーマ : 宇宙戦艦ヤマト
ジャンル : アニメ・コミック

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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
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スタートレックは
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