宇宙戦艦ヤマトIII~その2・2大国家の戦争、平和への願い~

<後半の物語の概要>
 ヤマトおよび地球への友誼の想いから、デスラーは帝国の科学力を持って太陽の核融合異常増進をコントロールしてみせると豪語。ボラー連邦の攻撃の中、フラウスキー技術士官率いる工作艦が太陽に向かって出発する(16,17話)。だがフラウスキーの尽力むなしく、太陽の異常を制御できなかった。古代たちは再び新惑星探査の旅に出ることになった。デスラーの元を辞去した古代は、マザー・シャルバートの信者たちが迫害されているのを目にする。ヤマト出発の時、デスラーから一報が入る。惑星ファンタムという星が移住可能かもしれないというのだ。惑星ファンタムに急ぐヤマト(18話)。だが惑星ファンタムはガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦の国境沿いに位置しているため、ボラー連邦の艦隊はヤマト迎撃に発進する。

 ファンタムへの途上見知らぬ救難信号をキャッチする。発信源をたどった土門たちが見たものは、傷ついた1隻の宇宙船であり、マザー・シャルバートを探し求める巡礼者の姿だった。宇宙船を修理し、負傷者を助けるヤマト。巡礼者の宇宙船は再び出発する。ボラー艦隊から巡礼者を守ったヤマトは、マザー・シャルバートの導きによって惑星ファンタムに到達する(19話)。古代たちが見たファンタムの地上は緑あふれる地球によく似た星だった。だが古代たちがそこで見たものは、かつて死んだはずの親類縁者やヤマト初代艦長・沖田の姿、そして英雄の丘が現れる(20話)。いぶかしんだヤマトクルーたちはアナライザーの協力で再びファンタムの探査を始める。その結果、惑星ファンタムは巨大なコスモ生命体であり、サイコエネルギーによって見るものの生活習慣によって見える風景が異なって見えるというのだ。デスラーが派遣した技術者は探査ドリルを打ち込んだ時、惑星の植物が古代たちを襲い始める。その一方で揚羽と土門は草原の先に一人の女性を見つけることになる。シャルバート星の次期女王・ルダである(21話)。揚羽と土門は惑星ファンタムの中心生命体に呼ばれ、ルダ王女を引き取りヤマトにかくまうことになる。ルダはベムラーゼによって惑星ファンタムに幽閉されたのだという。ヤマトは再び惑星探査の途につくことになるが、デスラーは惑星ファンタムを破壊するために艦隊を送り込んできた。惑星破壊ミサイルによってファンタムはついに消滅してしまう。だがルダをかくまったヤマトは、ガルマン・ガミラスからもボラーからも追跡されてしまう(22話)。

ETERNAL EDITION File No.7「宇宙戦艦ヤマトIII」ETERNAL EDITION File No.7「宇宙戦艦ヤマトIII」
(2001/02/01)
TVサントラ、ささきいさお 他

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交響組曲 「宇宙戦艦ヤマトIII」 Symphony交響組曲 「宇宙戦艦ヤマトIII」 Symphony
(1995/01/01)
シンフォニック・オーケストラ・ヤマト

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<2大国家、激突!>
 これまでのヤマトシリーズでは、あくまで地球という星とそれに敵対する惑星国家という対立軸で描かれてきた。それは明確に敵対する相手を描く意味合いがあり、どこまでもヤマトの敵は一つだった。「ヤマトIII」の最大の特徴は、宇宙の様相がそれまでと一変してしまったことによる。地球を含む銀河はガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦という2大国家に二分されており、長く対立状態にあるという。これがちょうど当時の世界情勢であるアメリカのソビエト連邦(今のロシア)の2大国家の対立構造の相似形であることはいうまでもない。その後ソビエトの社会主義体制の崩壊と民主化によって、この対立は規模が縮小した状態が現在だ。この対立の中でアメリカの庇護下で経済大国として発展したのが当時の日本であり、それは知らないうちにデスラーの友誼によって庇護されてきたヤマトと地球に相当する。本作中に明示される2大国家の存在は、はっきりと当時の世相を反映してのものだ。次作となる「完結編」に登場したディンギル帝国は、地球への移住を目的とした独裁国家であり、それはかつてのガミラスやガトランティス、暗黒星団帝国などと同様である。常に地球が狙われる事情はあるものの、構造的にはヤマト(地球)対大国であるから、このガルマン帝国とボラー連邦の存在は、かなり本作の設定上の特徴となっている。「復活編」では「SUS」と名乗る星間国家連合であり、これに属しない地球およびヤマトとSUSの支配をよしとしないアマールの人々の独立が、物語の中心となる。しかもSUSと名乗ってはいても、実態として強権を持つ1国による独占状態だったことを考えると、それは現実の「EU」加盟の西欧諸国のようでいてちょっと趣が異なる。世相を反映しているようでいて、実態はヤマト対大国という構造である。それは物語としてわかりやすい落としどころではある一方、現実の複雑さには遠く及ばないという印象がつきまとう。それだけに本作でこれほどまでにリアルに当時の世界情勢が反映されていることは、やはり注目すべき点だろう。

 さてキャラクターの面でもメカニックの面でも明確に区別できる2大国家である。ガルマン・ガミラス側は青い肌色でかつてのガミラスっぽい軍服とマントが特徴付けられる。深い緑と黄色を主体とした艦船類は、かつてのガミラスの艦艇とは異なるものの、縦方向に伸びた艦型と多数搭載されている回転砲塔などで特徴付けられる一方、かつてヤマトと戦った空母類はリニューアルされて登場している。一方のボラー側は肩に特徴のある衣服を着込み、薄い緑から灰色の肌色。艦船類はやや丸みを帯びた印象のものがあり、往時の資料によれば深海魚をデザインの基礎としているという。艦艇の色は赤や紫、深い青などが使用されており、ガルマン側とは明確に異なる色調となっている。こうしたデザイン上の差別化は、画面上の区別を意識しており、一つの画面に入ってもどの艦艇がどちらの勢力かが一目でわかる優秀なデザインだ。

 ところがこのデザインを引き立てるもう一つの立役者があるのをご存じだろうか? それは故・宮川泰氏の手による楽曲群である。
 一度でいい。目をつぶって音声だけ聞いてみてほしい。筆者はかつてこの作品がテレビで放映していたとき、毎週テープレコーダーを使用して録音し、寝る前に聞きかじっていた記憶がある。たとえそんな映像のない状況でも、宮川氏の作曲した楽曲はきちんと区別して作曲されており、耳で場面を区切ることができるのだ。それも耳なじんだかつての楽曲も引き続き使用され、サントラマニア心をくすぐるだけではない。異常な状態にある太陽と滅亡を迎えようとする地球、ガルマン・ガミラス帝国、ボラー連邦、はてはヤマトの新乗組員のテーマまで、それぞれのメロディが作られ、そのアレンジによって楽曲が区別されているという念の入りようである。近年これほどまでに詳細に楽曲が分けて作られた作品は希有である。最近の作品ではサントラ盤が売れないせいで、CDとして売り出されるよりも映像ソフトのおまけとして売られることも多い。サントラマニアとしては実に嘆かわしいことだが、これも時代なのだろうか。ヤマトはこれまで何度かCDとしてまとめられているが、今年の7月からは新たにCDが発売され、これまで未収録だった楽曲までフォローされるとのこと。サントラ好きには朗報だ。本作をごらんになったのなら、是非とも音楽にも手を伸ばして聞いてほしい。

<願いとしての平和>
 本作のラストに登場するのはシャルバート星とその女王マザー・シャルバート、そしてマザー・シャルバートに宇宙の平和を祈る信者たちである。劇中「~教」という呼称がないため、これをして宗教と括ってよいものか迷うところではあるが、信者にとってはマザー・シャルバートを神と呼んでおり、信者は同様のペンダントなどを掲げて一日に一回祈りを捧げる儀式を行っている様は、イスラム教などに印象が似ている。かつてシャルバート星は強大な軍事力で銀河に覇を唱えた惑星国家であったが、突然その消息を絶ち、歴史からも消えてしまったという。

 惑星ファンタムにかくまわれていたルダ・シャルバートはヤマトに保護されことになる。ルダを乗せたまま惑星探査を続けるヤマト。しかし最後の望みであったスカラゲック海峡星団のβ星でその望みは絶たれてしまった。ガルマン・ガミラスもボラー連邦もヤマトへルダの引き渡しを要求するが、古代これを拒否、ヤマトはやむなく戦闘に入る。だがガルマン艦隊はデスラーの命令によって、ボラー艦隊からヤマトを守るために戦いグスタフ中将が戦死する。ヤマトは波動カートリッジ弾によってボラー艦隊を撃破する。第二の地球を発見できなかったヤマトは、最後の使命としてルダをシャルバート星へ送り届けることを決める(23話)。ルダの導きによって異次元空間に隠されていたシャルバート星への道が開く。シャルバート星は地球とよく似た環境の星であり、一見すると文明が退行したような星であった。それは平和を選んだシャルバートの民が、自分たちの戦闘力と科学力を封印して勝ち得た平和の姿であった。だがヤマトの善行はガルマン帝国とボラーの艦隊をシャルバート星に呼び寄せてしまう。ボラー連邦は一方的にシャルバート星を占拠しようと戦闘を仕掛けてくるが、シャルバートの民は無抵抗のまま死んでいく。ボラー艦隊はハイパーデスラー砲によって殲滅。地上部隊もコスモタイガー隊によって排除された。その後、ルダによってシャルバートの王墓に隠された様々な超科学兵器の中から、ハイドロコスモジェン砲を受領する。これによって太陽の核融合の異常を収束させられるという(24話)。
 
 次元トンネルを疾走して地球に急ぐヤマト。ハイドロコスモジェン砲の発車直前、またもボラー連邦の艦隊の攻撃を受けるヤマト。今度はベムラーゼ首相自ら出陣してきた。そこに到達するデスラー率いるガルマン・ガミラス艦隊。2代陣営は激突する。だがボラー機動要塞が放つブラックホール砲に威力によって窮地に立たされるガルマン艦隊。一方のヤマトは最初のボラーの攻撃によってハイドロコスモジェン砲を打つことができずにいた。その状況を打開したのは揚羽と土門の二人である。若い二人の命を代償とするかのようにボラー艦隊はベムラーゼごと壊滅し、古代と雪の願いはハイドロコスモジェン砲に乗せてついに太陽制御に成功する。こうしてすんでのところで地球は救われたのである(25話)。
 
 最後はずいぶんと駆け足であったが、それは前回も書いたとおり、打ち切りによって短縮されたことなので触れないでおく。ヤマトがたどり着いた先に暴走した太陽を制御するものがあること、タイミングよくデスラーが割り込んでくる、土門と揚羽の戦死などのご都合な展開にはいくらでも突っ込めることだろうが、そこはまあ「ヤマトだから」ということにしておきたい(笑)。
 さてここで話題にしたいのは「シャルバート星」の存在だ。それは本作の平和の象徴とでもいうべき存在でありながら、かつては強大な軍事力で銀河を席巻していたという国家だという。それはガルマン・ガミラスやボラーに対する明確なアンチテーゼであるが、同時に本質的にはまったくの同等の存在だといえる。銀河の混乱はあくまで2大国家の闘争によるものであり、統一された後にはガルマン帝国も同じようになる・・・・かといえば、そんなことはないだろう。デスラーはそんな人じゃないものねえ。

 シャルバート星は異次元空間にあり、外界と隔離された世界だ。それゆえに本来持っていた強大な軍事力は王墓に封印して、戦いを放棄して生活できたという。それは劇中シャルバートの長老が語るように、自分たちで軍事力や武力を放棄したことによって平和を勝ち取ったと思われるのだが、果たしてそうだろうか? 「非暴力・不服従」はマハトマ・ガンジーが提唱し、後にインドの独立を勝ち取ることになるが、独立前のインドとシャルバート星では状況が違う。シャルバート星が武力を封印したとき、果たしてシャルバート星に進行してくる勢力があったのだろうか? もしそれが存在したとすれば、シャルバート星の技術を盗みに来る侵略だったのではないだろうか。それを防ぐためにシャルバート側だって武力で排除したことだろう。その武力排除は、逆にシャルバートの技術の高さのアピールとなって、別の侵略者を呼ぶ。そうなるといっこうに侵略はなくならない。そこでシャルバートは異次元空間に逃げ込むことで侵略を防いだのである。つまりシャルバートが平和でいられたのは、異次元空間に隠れ住んだ事によるものであって、武力を封印したからではない。ましてや自分たちの武力や科学技術を封印することで平和を唱えるなど、どう考えたって「上から目線」ではないか。自分たちの科学力を使えば、負けないんだから、戦争なんてバカらしい。これこそがシャルバート星の掲げる平和の本音のように見えるのだ。武力を放棄することが戦争を遠ざけ平和に近づくというのは、一聴すると確かに平和への一歩に聞こえるかもしれないが、少なくてもシャルバートの状況からは「平和」を正しく導くことはできない。それは現在の大国としてリーダーシップを気取っているどこぞの国とたいして変わらない。逆にそうしたシャルバートの真実を知らずに盲信している信者にしたところで、自分たちが虐げられている状態だから平和を願い、その平和の根本について知ろうともしないのはさらに問題だ。ここまで来ると「宗教」から「平和」は生まれないという、宗教批判にも似た印象すら感じるが、たぶん作り手はそんなことは考えていないのだろう。ただ少なくても、画面に現れているように武力を放棄して平和になれる確証などはないし、日本が鎖国したところで戦争の火種がなくなるわけではない。それはもう、こうあってほしいという願いとしての「平和」でしかない。

 さて最後はずいぶんと話がそれてしまったが、「宇宙戦艦ヤマトIII」という物語は、「ヤマト」シリーズの中ではあまり顧みられない作品だ。しかし「完結編」へのブリッジとしてよりも、これまでのシリーズを承ってどう昇華していったかが鍵となるシリーズでもある。かつてのファンにとって魅力的ではあるが、この作品でご新規さんを誘うには、なかなか難しい作品かもしれない。それは「復活編」も同じ印象であり、青年期をとうに過ぎた古代がアマールやSUSの国交や内政問題などに思いをはせるシーンもまた、2大国家の狭間に揺れるヤマトやシャルバートの独立というタームが重なってくる感じがする。どちらも時世を取り入れた物語構成や設定だったりするのだが、どちらも中途半端な印象しか受けないところも共通している。こうした世界情勢などを取り込むには、「ヤマト」という作品は受け皿が小さいのだろう。むしろ「完結編」がちゃんと見られるのは、滅亡にたたされた地球と侵略する側の事情がちゃんと描かれているからであり、どちらの勢力も切羽つまっているからだ。その意味では「さらば」は侵略側の意図がない。「地球は美しい」が理由では、それまでのロボットものやヒーローものの作品のお気楽な世界征服意図となんらかわらないではないか。こうやって思考を進めると、「ヤマトIII」の立ち位置が見えてくる。「ヤマト」という物語の持つ受け皿が、何を受け入れて何を受け入れられないのか、その試金石としての役割が「ヤマトIII」だったのかもしれない。それは今年から始まった「ヤマト2199」でも注目される部分かもしれない。単なる作り直しではないリ・イマジネーションとしての「ヤマト2199」に、期待するや大である。
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まとめtyaiました【宇宙戦艦ヤマトIII~その2・2大国家の戦争、平和への願い~】

<後半の物語の概要> ヤマトおよび地球への友誼の想いから、デスラーは帝国の科学力を持って太陽の核融合異常増進をコントロールしてみせると豪語。ボラー連邦の攻撃の中

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波のまにまに☆

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