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「謎の彼女X」全話レビュー:1話「謎の彼女」

<物語>
 ある日、唐突に転校してきた卜部美琴。転校初日からいきなり授業中に笑い転げ、昼休みには同級生の誘いを断ってまで机に突っ伏して寝ている。彼女の隣に座る椿明は、不可思議な行動を取る卜部を奇異に感じはしたものの、それ以上の感情は抱いていなかった。ところはある日の放課後、机で寝ている卜部を起こした椿は、前髪で隠されていた卜部のかわいらしい素顔を見てしまう。そして机に残された卜部の「よだれ」を、うっかりなめてしまうのである。その翌日、椿は体育の授業中に熱を出して倒れてしまう。その後いっこうに熱が下がる気配のない椿の元に、卜部が訪れる。卜部は椿の謎の発熱の原因を知っているという。それは「恋の病」。卜部の指摘によれば、あの放課後に椿は卜部に一目惚れしたにもかかわらず、一度は取り入れた卜部の「よだれ」を、その後摂取していないがために起こった禁断症状だというのである。だが卜部のよだれをなめた椿は、確かに体調を戻したのである。

 翌日から登校をし始めた椿ではあったが、その日から不思議な、それでいて誰にも秘密な放課後の毎日が始まった。椿は卜部と一緒の下校し、別れ際に卜部のよだれを椿がなめるという日課が始まったのである。そして椿は意を決して卜部に告白する。卜部のいう「ありきたりではないアプローチ」として、椿は中学時代に好きだった女子の写真を卜部の目の前で引き裂いて見せる。不思議な行動で喜びを表現する卜部は、授業中に爆笑したあの日から、椿からの告白を待っていたのだという。こうして椿と卜部はつきあい始めた。それはとっても小さな、そして不思議な恋の始まり・・・。

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吉谷彩子、入野自由 他

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●演出:上田繁 作画監督:金子志津枝

●出典は原作第0話「謎の彼女」より。ただし初のパンツハサミ発動は2話に組み込まれている。

●ファーストショットは大輪の椿の花に大きな蝶がやってきて、花の蜜をまさぐるシーンだ。よく見てほしいのだが、蝶のアップ時に花粉が細かく動いて、蝶のおかげで受粉する様子が描かれている。徐々に色が明確になっていくのは、覗いている椿の主観映像だからだ。

●受精卵が細胞分裂を行っている手前に目をつむった黒髪の女性が裸で立っていたり、女性の一部がアップになっている。原作第0話の最初のカラーページを、アニメで具現化したのがこの映像である。これは椿の本能の中でせめぎ合っている、生物学的な生殖よりも行為としての「SEX」に気持ちが惹かれていることを証明しているシーンだ。と同時に、それは見ている視聴者の誰もが通過した体験であり、まさに今思春期を迎えている人にとってはあらがいようのない欲望でもある。

●その目が見開かれて、覗いていた椿くんを見つけたとき、花は蜜であふれ、やがて花の下に蜜がたまる。それはまるで禁断の蜜。すくいとってなめたい、でも「なめる」には恥ずかしすぎる。そんなモラルのせめぎ合いが椿くんを夢から覚めさせていく。

●夢が映画のフィルムのような音を立てて目覚めていくという感じが面白いと思う。夢から覚めていくときのあいまいな感覚を、「フィルム」のように表現するという感覚は、むしろ椿くんにとって、この夢が「もしかしたら映画のようなフィクションなのか?」という感覚が、「フィルム」という表現の形になったのかもしれない。アニメでは扱われなかったエピソードではあるが、椿くんが映画研究同好会の幽霊会員であるという設定があり、それ故かもと思うのだが。

●椿の部屋には気になる物がたくさんある。もし彼が現在の16~17歳だったとしたら、彼の部屋に「70年大阪万博」のマークやらはどうしたもんだろうか? また本棚の上にはビッグオーもどきのロボットやサンダーバード1号のようなロケットの模型、パソコン前には原作者のアイコンキャラと「ビッグオー」の美少女アンドロイド「R・ドロシー」のフィギュアが置かれていたりする。また別のシーンでは「STAR WARS」のポスターが。原作ではいきなり卜部の転入シーンから始まるので、椿の部屋が最初に登場するのは、椿が体調を崩してからだ。パソコン前の2体のフィギュアが、椿のコケに合わせて向かい合わせになるのは、これからの椿を暗示している。原田知世主演の映画「時をかける少女」のキス人形と同じような物か。

●朝の食卓。コーヒーカップの上にトーストを乗っけて、上から蜂蜜をかけている椿くん。パンからこぼれた「蜜」が先ほどの椿の夢に出てきた「蜜」と連動しているのはすぐにわかるのだが、ここでは椿が先のアバンタイトルのシーンで「変な夢」といっていることを考えるに、この「蜜」の夢をおぼろげながら覚えていたはずの椿くんは、朝の出来事では思い出せないぐらい、夢の記憶がすでに埋没しちゃっているのだろう。だがこの「蜜」の夢がどのような形で思い出されるのか?ここではそのネタフリが行われていることになる。

●しかしかわいらしげなお姉さんから、手渡しで「はい!お弁当!」って、なんかすごくうらやましい気がする。とはいえ、姉である気軽さからか、まだ未成熟な男子だからか、椿くんはこういうシチュエーションをなんとも思わない、実に普通の男子として演出されている。実はこの朝の食事シーン、原作にはありません。

●教室での椿くんと上野くんのやりとりは完全アドリブだったそうです(コメンタリーより)。しかもゴルフネタでとの指定に対し、声優の二人はゴルフをまったく知らなかったとか。

●卜部さん初登場シーン。いきなりパシッと足をならして立ち止まり、かかとを軸にキュキュッと回転し、おもむろに挨拶する卜部さん。バックでかかる音楽も、まるで卜部さんを不審者扱い。これが「Another」なら彼女、間違いなく眼帯してますw

●先生に促されて「何か一言」といわれて、ちょっとはにかんだように小首をかしげて「よろしく」。結構細かく動かしている。あれ?椿くんの後ろ、すでに丘さんが!

●お昼休みで机につっぷして寝ている卜部さんに、3人の女子がお弁当を一緒にしようとよってくるが、むげに断るシーン。ここでも「はあ?」の台詞にあわせて、小首をかしげる卜部さん。細かい動きを台詞から拾って絵で演技をつけている。本作にはこうした細かい動きを与えるシーンは数多い。マンガとアニメの隙間を埋める演出だ。

●午後の眠たい数学の授業。卜部さん個人的に大爆笑のシーン。この笑いの演技の生々しさったらない。コメンタリーによれば吉谷本人の地声に近いものであり、普段から突然こんな笑い方をするそうである。

●椿くんが教室に戻るシーン。原作では鞄そのものを取りに行くシーンだが、アニメではお弁当箱を取りに戻る台詞に変更となっている。これは校内で遊んでいるシーンを挟まないで、椿くんを夕方の教室に立たせるために、一度学校を出た椿くんが学校に戻るシチュエーションを考えた変更だと思われる。

●原作では卜部さんの顔の左右で書き分けて、左側を覗いたら机に「よだれ」があった演出になっているが、アニメではよりはっきりと卜部さんが机から顔を上げたら机によだれが、という演出になっている。また直接卜部さんの口からつながっているよだれの生々しさも注目だ。このときのよだれは、まだ色味のない透明だ。

●そして卜部さんの素顔大公開のシーン!しかもよだれ付き!この女子をカワイイと思えるかどうかは、意見が分かれるところだろう。この卜部さんのよだれを見ても、椿くんは今朝の夢を思い出さない。けれどかわいい卜部さんの素顔に、びっくりときめいてしまったのは事実であって、呆けたような「なに?」の問いかけにどぎまぎしている椿くんは、どこまでも思春期の男の子なのである。実は原作では初期の絵柄で書かれているせいか、素顔の卜部さんはまた格別なかわいらしさがあるのだが、アニメ版では現在の植芝氏の絵柄で設定されているために、椿くんを見上げた卜部さんの表情は、ちょっと原作とは印象が異なる。

●さてここでちょっと考えてみるのだが、すでにこのとき謎の啓示は卜部さんに椿くんのことを語っていたのであるから、この時の卜部さんは椿くんが教室に現れて自分を見そめてくれるのを待っていたのかもしれない。それは好きな男の子の気を引くためにしていると考えるのが妥当だと思うのだが、ただ寝てるだけってのはどうしたものか(いや、違うか)。

●さて机に残された卜部さんの「よだれ」を見て、初めて今朝の夢を思い出す椿くん。夢の中では指を伸ばしながらもなめることまではしなかった彼が、なぜか現実では卜部さんのよだれに指を伸ばし、ついにはそれをなめてしまう!あまつさえ彼はそれを「甘い」といったのだ。このアンモラルな風景こそが、本作の最大の問題シーンであるし、このシーンがなければ本作はまったく成立しないのであるが、同時にこのシーン故に多くの人にとっては敬遠されそうな作品でもある。

●地味ですが、夕焼けの夕日が夜の月に入れ替わるというシーンチェンジが心憎い。

●椿くんの夢のシーン。植芝漫画のファンなら、氏のとんでもない量の書き込みを、どうやって表現するのか、楽しみにしていたに違いない。本作では書き込まれた建物や鉄筋などを2DCGによって表現しており、DVDではメニュー画面にも転用されている。原作では毎回植芝氏の書き込みのテイストが少しずつ異なるのだが、アニメではその細かいニュアンスまでは作りきらない代わりに、CGによって奥の方まで作り込まれた映像に、卜部や椿を乗せる方法で演出されている。

●ちらっと写る電車にキツネ面の人物が。これ、「ディスコミュニケーション」の松笛くんだろうか? 序盤に椿くんの手を引いてハアハアいっている卜部さんがもうたまりません。

●椿くんが見たのは二人で楽しく踊る夢なのだが、OP映像にも出てきたシチュエーションだ。しかもホテルの上で。つまりこの椿くんの夢の中での「踊る」は「SEX」そのものを指しているに他ならない。具体的な経験としての「SEX」を知らない故の想像力が、「SEX=踊り」になってしまったと思われる。しかもこの夢は何日も覚えていられるほどの夢であり、物語冒頭の「椿の花の蜜」とは明らかに異なる印象だ。つまり椿くんのなかで対象が「卜部さん」に固定されたことで、抽象的なものからより具体的なものとして「卜部さん」をとらえた証拠である。

●体調を崩した椿くん。その容態を聞いている上野くんであるが、原作では名もなきクラスメイトが聞いている。黙って聞いている卜部さんだが、原作にはないシャープペンシルをノックする卜部さんのシーンが挿入される。筆者にはどうもこの卜部さんの行動は、「私は椿くんのことなんか気にしてませんよ」と言い訳しているように見えるのだ。だがその日の夕方、彼女は椿くんのお見舞いに行くのである。しかも彼の自宅に。

●椿くんが熱を測ってもらっているシーンから、卜部さんが椿くんの部屋に上がるまでの間には、原作ではたっぷり1ページほどのコマがあるのだが、キレイに端折ってくれました。こうした脚本によるシーンの短縮は、わずらわしいネームの多い作品には最適の手法だと思う。

●椿くんのベッドにドサッと座り込む卜部さん。こうしたぶっきらぼうな行動は、卜部さんの魅力でもあるのだが、ややもすると卜部さんがただのがさつな女の子にも見えてしまう。だが教室での大爆笑の後である。そこを考慮すれば、卜部さんは椿くんとの物理的精神的な距離を縮めるために、わざとやっているのかもしれない。しかもその不器用さったら、ハサミでなんでも切り刻めるクセに、こういう部分では必要以上に奥ゆかしいのだ。

●これも脚本での改編であるが、椿くん詰め寄っている時の台詞「私のよだれ」→「なめたでしょ?」が「なめたでしょ?」→「私のよだれ」に入れ替わっている。さらに「なめたでしょ?」と詰め寄る原作に対して、アニメでは「なめ・・・甘かった?」とやさしく問いかけ直している。この「甘かった?」に、卜部さんの確信犯的な行動の一端が見て取れる。彼女はきっとわかっててやってます。

●ついに直接卜部さんのよだれをなめる椿くん。このときの卜部さんのよだれ、あきらかに色がついている。それもやや淡い緑がかった透明な色。しかも「指先をなめて」とまで言い放つ卜部さん。自分のではない「指をなめる」という行為もまた、かなりエロティックである。よだれの交換を、かつて植芝氏は「ディスコミュニケーション」という作品でも「キス」という行為によって描いている。それを直接的にキスで行わない場合、互いの指を使ってなめることによって、擬似的に「キス」を成立させているシーンだともいえる。そしてキスではない手法でよだれの交換が行われていること自体が、かえってアンモラルさを醸し出す。

●そして原作からさらに短縮された台詞のあと、再び卜部さん大爆笑!そして禁断の事実が突きつけられる椿くん。椿くんのあたまにかかる「蜜」といい、卜部さんの周りを飛ぶ蝶といい、椿くんはあの夢の真相に、ここでやっとたどり着くということになる。

●そして始まる卜部さんと椿くんの下校の毎日。これが二人にとってのかけがえのないデートの時間だって、実は椿くんは気づいていないようだ。EDの歌詞にもあるが、これは二人にとって「秘め事」なのである。椿くんに話しかける卜部さんの弾んだ声がたまらなくかわいらしい。

●ね、ほんのり色のついたよだれでしょ、卜部さんの。これってなんとなく「青い柑橘系」の甘酸っぱさの淡い緑なんでしょうか?それにしてもうれしそうな卜部さんである。

●卜部さん「伝えて」。この台詞の強さや動揺のなさが、前述の卜部さんわかっててやってる説を指示する最大の理由だ。「行動で示して」という卜部さんに、キスしようとする椿くん。そりゃそうだ。キスはよだれの交換があるから、インパクトに欠けるだろうし。だが卜部さんは知らないのだ。本当にキスをしたら、よだれの交換とは比べものにならないほどの衝撃が来ることを。つまり卜部さんだっていろいろ知らないのである。

●さて昔好きだった女の子の写真を捨て去る行為って、それほど感動的だろうか? 原作読んでいたときから筆者には疑問だったんだけど。原作では「いつまでも忘れずに」という言葉に引っかかった椿くんが、昔好きだった女の子の写真を引っ張り出して、それを捨て去ることで卜部さんにアプローチすることに成功する。つまり「いつまでも忘れない」ほどの想いをかけた少女のことすら捨て去れるほど、卜部さんを好きだといいたいのだろう。でも現実の男どもときたら(筆者も含めて)昔つきあった女性を忘れがたいのは、どこにでもある話だ(まあ、女性にもあるだろうけど)。だが椿くんにしたところで、その行為とは別に、後々のエピソードではかつて好きだった少女からの押しに負けているわけで。卜部さんにとって重要なのは、「想いの強さ」をどのように表現するか?なのかもしれない。過去を捨て去ってあなたと新しく歩きだそうという力強いアプローチは、確かに魅力的かもしれない。

●原作では卜部さんからハサミを借りて切り刻むところを、自分の手で引き裂いている。前段にパンツハサミの件がないための改変点ではあるが、ハサミで切るよりは、より椿くんの想いが伝わったのではないだろうか? ある意味改変が産んだ名シーンだ。

●深夜アニメだなあ、「椿くんって、童貞?」とかいう台詞聞くと。原作同様に椿くんが童貞であることに安堵の表情を見せている卜部さんは、ついでに自らの処女まで告白する。そして椿くんは、あの教室での大爆笑の秘密を知ることになる。さて謎の啓示は卜部さんに初体験の相手が椿くんだと告げたわけだが、意地の悪い言い方をすれば、何もこれは椿くんと卜部さんが永遠を誓い合ったりするというわけではない。「SEX」とはあくまで過程であり、二人が添い遂げるかどうかは二人の努力次第なのである。つまり読者側が抱くはかない期待は、いくらでも裏切られる可能性があることをほのめかしているし、「SEX」が二人をつなぐ絆である保証はどこにもないと断じているに他ならない。それよりも一見あやふやに見える「よだれによる二人の絆」のほうが二人の間を強固にしてくれるだろう。そしてよだれによる絆がまた、意外なほど強固な絆であることを証明していく、本作はそれを描く物語だということをここで宣言しているとも言えるのだ。

●それにしても、「今日から私は椿くんの彼女だよ!」と宣言する卜部さん。おそらく意外に思うかもしれないが、たぶん「今日から彼女」などといわれることもなければ、自らいうこともないだろう。人間の間柄とは、そんな言葉に乗せることに重きを置いていない。だからこそ結婚式での誓いの言葉はより荘厳なものでなければならないのだろう。


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テーマ : アニメ
ジャンル : アニメ・コミック

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アニメ『謎の彼女X』第1話について

突如思い立って『謎の彼女X』全話のレビューをやる予定です。 放送もとっくに終わったというのに、なんでこのタイミングでとお思いでしょうが、放送してるかどうか等、どうでもいい

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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
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