花の詩女ゴティックメード~素材としての人、メカ、舞台~

 先日(11月9日)「ファイブスター物語」の原作者・永野護氏が監督を務めた「花の詩女 ゴティックメード」を見に行った。ここ1ヶ月ほど「ファイブスター物語リブート」シリーズを順に読んでいると、やっぱ面白いんですよね、これ。筆者が敬愛する氷川竜介氏のツイートには、「素材勝負の・・・」というつぶやきがあった。この「素材勝負」という言葉は、そもそもデザイナーである永野護氏の描く「ファイブスター物語」をはじめとするキャラクターやメカニックに顕著に見られる特徴ではないか?「重戦機エルガイム」に登場する小物やヘビーメタルなど、メカニックデザインの細かい設定を、映像となったエルガイムOPの走るエルガイムの二重関節の動きを一度は見ていただきたい。これらデザインや設定が現実の風俗や文化を参照し、地に足の付いた思想から想像の羽を羽ばたかせて昇華されたデザインのすばらしさは、他の追随を許さないモノだ。「エルガイム」という作品は、残念ながら物語がこういったデザインの背景にある設定を使いこなせていない印象がぬぐえず、それ故に作品を形作る要素が空中分解を起こしていたのを、監督・富野由悠季の手腕によって強引にまとめられた作品といえるだろう。貢献したはずの永野護氏のデザインは、物語の要素を多分に含みながらもあえて無視された。そうした「エルガイム」での無念が正攻法で発揮された作品が「ファイブスター物語」であると筆者は思っている(もちろん私論です)。「リブート」における永野氏のライブ感あふれるマンガを読むにつけ、永野氏の頭の中で飛び回る思考や興味の断片が垣間見える瞬間こそ、この作品の面白さの一端であることは間違いない。こうした「ファイブスター」熱に浮かされるように本作を見に行ったわけですが、なんというか、ああこういうことかと、見終わった後に感嘆と納得の声が漏れるような作品でした。先に断っておきますがこの作品、「ファイブスター物語」好きな方は、こんな駄文を読むよりも先に本作を見に行かれることをオススメしておきます。
ユリイカ2012年12月臨時増刊号 総特集=永野護 『ファイブスター物語』の普遍、『花の詩女 ゴティックメード』の衝撃ユリイカ2012年12月臨時増刊号 総特集=永野護 『ファイブスター物語』の普遍、『花の詩女 ゴティックメード』の衝撃
(2012/11/13)
永野護、武井宏之 他

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<まずは概要と物語から>
 「花の詩女 ゴティックメード」は2012年11月1日から公開されている劇場用アニメ映画。先述の通り永野護氏は監督ではあるが、それだけにとどまらず原作・絵コンテ・脚本・レイアウト・原画をこなし、まさに八面六臂の大活躍だ。
 惑星カーマイン。決して豊かとはいえないこの大地が物語の舞台だ。この星には「詩女(うため)」と呼ばれる女性がいる。詩女とは数千年にわたる先代の詩女の知識を得て、この星にいる人々を導く存在であり、惑星カーマインの精神的支柱となる人物だ。この物語は詩女に選ばれて儀式を終えた一人の少女・ベリンが詩女となって最初の公務となる「都行(みやこいき)」をスタートさせるところから始まる。都行はカーマインの首都ハ・リへ向かう道程で、祈りを捧げながら大陸に散らばった村々に挨拶回りをするというもの。ベリンたちがその旅を始めようとした時、宇宙船の船団がはるか上空から降下してきた。その宇宙船から一人の青年が降り立った。その名はトリハロン。ドナウ帝国の第三皇子だ。彼はドナウ帝国をはじめとする惑星連合評議会から、ベリンたちの護衛として派遣されたという。テロリストがベリンの命を狙っている可能性があるというのだ。ベリンたちは渋々トリハロンたちの同行を許し、都行の儀式が始まることになる。貧しいが争いの少ない惑星で幸せに暮らしたベリン。王族であるが故に王位継承や闘争に明け暮れ、対外的にも軍事国家であるドナウ帝国に育ったトリハロン。立場も考え方も違う二人は、互いに相容れるわけもなく衝突を繰り返しながら旅は続く。だがほんのひとときの安らぎの時間は、徐々に二人の心のわだかまりを解いていく。だが空が一転してかき曇って雷鳴がとどろき、電波障害が発生したタイミングで2体の巨大ロボット・ゴティックメードが現れ、ベリンたち一行に襲いかかる。ゴティックメードとは惑星連合の中で使用される戦闘マシンであり、ベリンたちにとっては恐怖の存在だ。だが2体のゴティックメードの前に立ちはだかり、ベリンを守ろうとして現れたのは、トリハロンの駆るゴティックメード「氷のカイゼリン」だ。トリハロンはベリンたちを救えるのか? この旅の終わりに二人が迎える結末とは?

<素材の良さ、天下一品!>
 まずはタイトルにもなっている巨大ロボット、ゴティックメードについて見てみよう。本編にはトリハロンが駆る「カイゼリン」、敵となる赤青2体のゴティックメード「ボルドックス」、そして戦闘には参加しない「メロウラ」の4体だ。全体のシルエットとしては大変細身のロボットであり、大地にしっかりと足をつけているタイプではなく、背の高いヒールでつま先立ちしているような感じ。特に胴体はまるで人間の背骨のように見えるから、その可動範囲はかなり広いと思われる。膝の関節が特徴的で弧状でレール型のパーツを滑らせるように稼働する。また腕の形状も独特で、人間型のような肩、肘、手首といった関節ではなく、さらに多くの可動部分がいくつも組み合わさって、複雑な構造を見せる。全体的に細身の女性のような人間型のシルエットを見せながら、人間の構造を模して作られたロボットではないということが、デザイン画を一目見た段階でそれとわかるデザインになっている。特にカイゼリンは印象的なまでにモノトーンでまとめられているのだが、実はこの白の部分の装甲は透明のパーツで、本来は内部構造が透けて見えるという。カイゼリンの太ももには内部フレームが見えているし、劇中カイゼリンの顔のアップなどでは、透明の装甲パーツがはっきりとわかる。そしてこの透明装甲にはもう一つ秘密があるのだが、これはぜひ劇場に行ってご自身の目で確かめていただきたい。劇場で購入できるパンフレットには、ゴティックメードのコックピットのデザイン画が掲載されている。このデザイン画によれば、操縦者の手や足に当たる部分に細かい操縦ユニットが施されており、操縦者は最小限のモーションでゴティックメードの手足を動かせるように設定されているように見える。つまり操縦者の反射神経を最大限に発揮させ、最小の動きでゴティックメードに操縦者の人間的な動きを完全にフィードバックさせる。ゴティックメードは操縦者の動きをトレースし表現する。これをデザインの面で説得力あるものに見せているわけだ。こうしたことはデザイン画でわかる素材の良さだ。しかもその素材のよさが本編で十二分に表現されることで、素材が生きるのである。特に終盤の最大の盛り上がりであるゴティックメード同士による地上戦では、それが遺憾なく発揮されている。永野監督がこだわった「ロボットアニメ」としてこだわった素材は、こうしてデザインから映像にいたり結実しているといっていい。

 メカニックと言えば、トリハロンや劇中で呼称される「騎士」が持つ剣もまた細かい設定があるようだ。刀身を縮めれば銃になり、刀身を伸ばせば剣になる。しかも刀身を振って発振されるのは電磁プラズマであり、その効果によって接触物を溶解しながら切断するという代物らしい。このデザインは要注目であり、気づく人はここで気がつくはずだ。細かいことはここでは触れませんが(薄笑)。ベリンたちが移動に使う「セイラー」にも、内部の住環境まできちんと設定されているのだが、残念ながら劇中ではほとんど出てこない。しかしこうしたデザイン画が存在することこそが、こうしたデザインが単なる絵空事ではなく、現実的にあるものとして必要と思われるものを描き出し存在感を与えていく。

 キャラクターに目を移せば、永野監督が「ファイブスター物語」で見せてくれたデザインラインのキャラクターが、漫画さながらに劇場の大画面で動き回るのは、ただ眼福というしかない。「リブート」の幕間で永野氏が書かれていたが、氏はキャラクターのデザインについては「人種」というものを意識しているという。ただ単に肌の色が違うというではなく、骨格や顔の特徴で見分けるべき点を見極めてデザインに反映しているというのだ。トリハロンやその腹心であるボットバルドが西洋風の顔立ちであるのに対し、ベリンや神官アデムは間違いなくアジアンビューティであるし、その下の神官たちはさらに平たい顔族っぽい表情を見せる。永野氏のキャラクターデザインは本作においても一貫していることが解る。はっきりと申し上げて、この1点だけでも本作は見る価値ありだった。

<とはいえ・・・だけども・・・>
 キャラやメカ以外にも美点を挙げることができる。舞台はあくまで惑星カーマインのみであり、惑星連合評議会にしたってドナウ帝国にしたところで画面には絵1枚すら登場しない。あくまで枕詞のように台詞で語られるだけだ。けれど惑星カーマインの風俗や舞台となる荒涼たる大地、空の青さや雷電響く暗雲、遠景に見える首都ハ・リなどは、とてもきめ細やかに設定されており、物語の舞台として十全に機能している。また「音」についてもこだわり抜いており、特に劇中曲を含めた音楽のすばらしさには舌を巻く思いだ。劇場で再現される音響については、パッケージとするにはあまりにも膨大な情報量があるため、現段階ではソフト化が考慮されていないらしい。
さらに主役ベリンを演じる永野護夫人である川村万梨阿さんの、ぶりっぶりの少女の演技がまた素晴らしい。彼女が歌う劇中曲もまた素晴らしいが、彼女が声優としていまだ現役であることが、ただひたすらにうれしい。その声の張りも艶も往時からいささかも失われてはいない。いつだって第一線に復帰できることは間違いない。もうそれだけで眼福ならぬ耳福である。

 とはいえ、まったく問題がないわけでもない。映画としては70分弱の上映時間で、どちらかと言えば近年の劇場用映画のトレンドに比してやや短い。その最大の理由は物語のシンプルさにある。基本的にベリンの旅程にトリハロンが同行する間の物語であるから、シンプルな物語なのはしかたがない。それ以上に問題なのは、舞台となる惑星カーマインの風景を描写するつもりで、旅の様子が遠景や俯瞰のカットを主軸に構成してあるためか、特徴的なアングルが少なく、映画の画面構成としてはややだらりとした印象がぬぐいきれない。見ていて引っかかりがないのである。キャラクターの描写にしても顔のアップをはじめとして真横からの人物を描写したアングルが多く、画面構成としては単調といっていいだろう。それは本作のアニメーション映画としての弱点ではある。

 事件が一段落し、ベリンがトリハロンと別れの会話をして物語はエンドになる。画面ではベリンの歌う曲が流れはじめ、スタッフロールが始まる。だがこれから本作をごらんになる方は、間違ってもここで席を立ってはいけない。このスタッフロールの後に流れる映像とそこに現れた情報に、観客の誰もが驚愕することになる。そして観客は初めてそこで全ての事情が、ストンと腑に落ちることになる。ここまで見て初めて本作を隅々まで味わったことになるはずだ。あえてここで詳しく申し上げるのは野暮というもの。上映劇場数が少ないので、現時点で誰もが鑑賞できるわけではないのであるが、今後本作を見に出かけたり、万が一ソフト化されたものをご覧になるという方は、是非とも最後の最後までご覧いただき、そこに映し出された映像に、精一杯驚愕していただきたい。この驚きは、「ファイブスター物語」という作品を愛した人に共通した感情であるはずだ。

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(2012/10/31)
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