「謎の彼女X」全話レビュー:10話「謎のアバンチュール」

<物語>
 書店を出てきた椿くんに声をかけてきたショートヘアの少女は、かつて椿くんが中学の頃に片想いしていた早川さんだった。同じ中学の同級生のその後の話、中学のころの懐かしい話。二人で懐かしい話をしながら、早川さんは椿くんが自分を好きだったことを知っていたことを話す。失恋したての早川さんを慰めるために、椿くんは長い髪の頃の早川さんの想い出を語る。すると突然、早川さんは泣き出した。そのつらそうな早川さんを見て必死で慰める椿くん。そのとき顔を上げた早川さんの口によだれが・・・。早川さんは椿くんにこれからも時々会ってほしいという。早川さんのよだれの顔にクラッとしつつも、卜部さん以外のよだれの味に興味津々の椿くん。「よだれをなめさせてくれたら会ってもいい」と、つい言ってしまう椿くんの目の前に、早川さんはよだれを差し出す。けれど椿くんは卜部さんとの絆を守るために、思いとどまった。早川さんはそこで椿くんに彼女がいることに気づいてしまう。早川さんに問い詰められた椿くんは卜部さんのよだれをなめたこと、卜部さんの名前を告白させられる。
 別の日の放課後、卜部さんと直接対面する早川さん。初対面であるはずの卜部さんは、一度写真で見ただけの早川さんにすぐ気づく。早川さんは卜部さんを、自分の通う女子校の文化祭に誘う。そこで「面白いものが見られる」というのだ。同じ日の夜に、早川さんは椿くんを呼び出して、暴力をふるわれた元彼と決別するために、文化祭で彼氏のフリをしてほしいと懇願する。卜部さんに罪の意識を感じながら、内緒で文化祭に行くことを約束する椿くん。でも早川さんの話は実は作り話のようで・・・。
 翌日の放課後に、卜部さんに今度の日曜日の予定を聞かれる椿くん。文化祭に行くことを内緒にして上野くんと遊びに行くと、椿くんは卜部さんに嘘をつく。ところが丘さんは上野くんと一緒に文化祭に行くという。食い違った話に引っかかる卜部さん。そして日曜日、早川さんの通う女子校の文化祭で椿くんの前に現れたのは、まるで中学の頃にもどったようなロングの黒髪の早川さんだった。波乱を予感させる物語は次回へ続く。

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吉谷彩子、入野自由 他

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●演出:上田繁 作画監督:小林利充

●出典は原作4巻第28話「謎のアバンチュール」5巻29話「謎の挑戦状」、30話「謎の文化祭・前夜」より。最後にちょっとだけ31話「謎の文化祭(前編)」を含む。

●アバン。いつもの書店で今井百夏のグラビアが掲載されている雑誌を購入した椿くん。前回、パッケージ版で丘さんが卜部さんに見せていた雑誌はコレです。

●書店を出た椿くんを見つけて声をかけたのは、髪を短く切って再登場の早川さんだ。椿くんは高校生になっても印象が変わらないだろうか? 確かに後の回想シーンの椿くんは、中学の時もガクランだった。けれど、後半の早川さんの策略っぷりを見ていると、この再会すら早川さんの仕組んだことだったんじゃないかって、勘ぐりたくなってしまう。

●脚本家・赤尾でこは、「キャラクターの死まで考えて脚本を書く」のだそうな。その彼女に言わせると、早川さんは「悩みなんてない」と言い切っている。つまり本編で見せる早川さんの悩み多き恋愛事情は、赤尾でこにとっては取るに足らぬものらしい。うん、まあそだね。一方コメンタリーに参加している男性陣二人は、「わかっていても早川さんに乗せられてしまう」のだそうな。それをして赤尾さんは、「男の目は節穴か」と。ま、節穴ですねwww

●早川さんと二人で歩く椿くん。早川さんが堂々と前を見て歩いているのと対照的に、椿くんはうつむきがちで、しかも顔を赤らめている。かつて憧れた女の子との二人っきりというシチュエーションは、確かに照れるだろうけど、それは早川さんにも見透かされてしまうわけで。

●それにしても早川さん役・嶋村侑さんのこの演技はもう、鼻血ものである。声が「私かわいいでしょ?」って言ってるもん。実は最初、このお声を聞いたとき、柚木涼香さんだと勘違いしておりました。

●ほのぼのした音楽に乗せて、あたりさわりのない会話を楽しむ二人(「あたりさわりのない会話」ってのは、こういうのをいうんだよ、「じょしらく」よ!)。早川さんだってフッてないのに、上野くんの話からつい恋愛話に流れてしまう。こういうのって、やっぱり男の子の心理としては、ちょっと自慢したいのかも。結局恋愛話をベースに今の相手(かつての片想いの相手)よりも大人になった優位性を示したいんじゃないだろうか?

●「じゃあ、椿くんは?」あえてゆっくりと言葉を切るようにして聞いているこのニュアンスは、椿くんが示したい優位性をあっさり見破って、椿くんの真意である「自分にも恋人ができたよ!」という心の声をくみ取っている女性の声だ。その後の「てっきり~」の台詞がそれを裏付ける。つまり、椿くんにとって早川さんは、まだまだ相手取るには手強い相手だってこと。

●早川さんのデザイン的な特徴の一つに、「必ず目が出ている」ことにある。丘にもあるが、それは「眼鏡」というデザイン上と気持ちの上のフィルターがかかっていることに留意。卜部さんが本意を表すとき以外に目が隠れているのとは対照的に、早川さんは常に目が見えているから、椿くんにとっては彼女の視線がどこを向いているのか?彼女が何を見ているのかがはっきりとわかる仕組み。例えば、二人で会話しているときは、ちゃんと早川さんは椿くんを見ているから、椿くんは会話に集中できる。ところが卜部さんとは目線が合うことが少ない(会話も少なそう)ので、椿くんはどうしてもモノローグが多くなる。

●中学の頃の思い出話を始める早川さん。もちろん手で触っているジャングル・ジムが遊具であり、時間を巻き戻すタイミングで示されるのは演出。原作ではこの会話以前に、二人はすでに公園のベンチで座っており、飲み物のやりとりをしたりしている。

●髪を切った早川さんに椿くんが気づく。このシチュエーションの扱いが、原作とアニメではちょっと違うニュアンスになっていて面白い。原作では楽しげに言っているのに対して、アニメでは寂しげに言っている。打算がないのは原作の方だ。なお、このシーンが入っているページは、ほぼ早川さんの台詞で埋め尽くされており、彼女が一気にまくし立てているシーンとなっている。

●原作の笑顔の台詞は、「終わっちゃった恋」を明確に打ち出している。一方アニメでは「その片想いの続きに用がある」といわんばかりに物憂げな表情と言い回しの早川さんだ。どうみてもこの台詞も仕草も誘っているとしか思えない。つまり早川さんは、明確な意思を持って椿くんに近づいている証拠だろう。しかも早川さんはこの手法がある程度男の子に通用することを知っている女子なのだ。

●「いつも私を目で追ってたでしょ」といいながら、腰を後ろに引いてかがんでみせる彼女の仕草。まさにコケティッシュというにふさわしい動きだ。その間も視線は椿くんに向けられているから、椿くんは彼女の言葉を誤解しようもない。んで、コロッとだまされるんだな。

●ここで埋められたタイヤの上に乗ったりしてる。これって、「ほぉ~ら、私を追いかけておいで~」っていっているようなもの。実際話につられるように椿くんは早川さんの後を追いかけている。ここらへん、完全に椿くんは早川さんの術中にはまっている。あ、念のため、筆者は早川さんを悪くいうつもりはないんです。ただ、高校生とは思えない手練手管はやはり怪しいのに、その魅力もよくわかるというお話。コメンタリーでも「見せ方をわかっている女の子」「女子を上手く使う才能がある」「2回ぐらい痛い目を見て、いずれ懐の深いいい女になる」という表現をされている。

●タイヤの上から照れてうつむいている椿くんを見る早川さんの視線がどこか冷たい。なんとなく加虐的な気持ちが彼女の中でわいてきているように見える。ま、こうしてきょどってる椿くんを見ると、そういう気持ちがわいてくるのもわかるけど。ってことは椿くんってM?

●コーヒーカップに口づけする話で、心の中で「いや、普通じゃないだろ」って突っ込む椿くん。普通じゃないのは君の方だ(笑)。髪の毛を持ち帰って云々のくだりは、どう考えても椿くんのほうが普通ではない。でもまあ、実体としてはこの二人、どこか似通っている。

●ところが椿くんの「かわいくて、性格もいい女の子」という早川さん評。コーヒーカップの話までさせておきながら椿くんの早川さんの評価は実に普通の女の子だ。これって本当は早川さんにとっては椿くんという同士を見つけたつもりでいたのに、早川さんは椿くんに拒否されたというシーンじゃないだろうか?(ちがうか)

●この首のかしげ方!女の涙と懇願。男がこれを振り切って生きていられるなら、たぶん世の中の男性の浮気の半分は存在しないはずだ。それを早川さんはわかっててやっている。その証拠に椿くんの願いである「よだれをなめさせる」という行為まで許そうという、なりふり構わない感じ。この時、早川さんの顔も紅潮している。つまり早川さんも「よだれをなめる」ことに興奮しているのだ。

●早川さんのよだれの色はややピンクがかっている。これは監督による色指定とのこと。早川さんのよだれは舐められないという椿くんを詰問し始める早川さん。「もしかしたら、とーっても甘いかもしれないのに」というシーンの「とーっても」がもう甘ったるい声に唇のアップ。実にフェティッシュな映像に仕上がっている。卜部さんの名前を聞いていやにあっさりと帰って行く早川さんは、振り返りもせずに立ち去っていく。

●赤尾さんによれば、この回の早川さんのよだれを差し出す行動を見て、キャスト陣が「こんヤツばっかかい!」と突っ込んでいたそうな。この時の椿くんの涙。それは椿くんの脳内妄想の中で、自分が早川さんのよだれを舐めたときの卜部さんのリアクションを想像しての涙だ。こういう想像力は抑止力になる。今時の政治家はこの程度の想像力も無いのだが、ま、それはさておき。

●部屋に戻った早川さん。「三国志」と書かれたポスターにはおそらく関羽将軍の絵。そしてちょっと不気味なツートンカラーの幾何学模様のぬいぐるみ。このぬいぐるみ、「超人バロム1」のアントマンみたい。

●「そっか~」の件、そして妄想の中でひざまずいた椿くんに上から目線でよだれを舐めさせる早川さん。この時点で今回の再会が仕組まれたことである可能性、そして過去の事象まで利用して椿くんを自分の自由にしようとしたこと・・・げふんげふん

●ここまでで10話の半分。原作ではここまでで29話と30話のほぼ7割を消化している。原作での引きが「早川さんが椿くんによだれをなめさせようとする」シーンと、「卜部さんを挑発する早川さん」のシーンである。アニメの引きは「早川さんが企み始める」ところにあるから、アニメでは主軸が少しだけ変更になっていることがわかる。

●アイキャッチ。卜部さんを抱きしめる長髪の早川さん。卜部さんは口からよだれを垂らし、あまつさえ涙さえ目尻に浮かべている。早川さんの冷たい目線の先にいるのは椿くんだろうか?

●卜部さんが歩く背景を見ると、道路構造物がずいぶんと複雑だ。椿くんと別れた後なのか。声をかける早川さんを振り返り、あきらかに怪訝そうに話す卜部さん。「話がしたい」という彼女の言葉で卜部さんは一瞬ジト目になるが、この時にすでに卜部さんは早川さんを思い出しているようだ。赤尾でこ曰く、「昼ドラっぽい」とのこと。

●相対する二人の後ろに黄色と黒の工事用のパーティションが。この黄色と黒が工事用に使われているのは、危険注意を喚起する色の組み合わせだそうで、万国共通。つまりこのシーンは卜部さん側の心理描写ということ。

●早川さんの学校は「星ノ瞳女学院」とかいうそうで、文化祭のパンフレットも名前のままの意匠で描かれている。ダイレクトすぎやしないか?(笑)まるで「宇宙人東京に現る」のパイラ人のようだ。デザインとしては華やかな文化祭にふさわしいかどうか・・・・(ちなみに原作ではもっと文化祭のパンフレットっぽいデザイン)。

●ここですぐに電話で呼び出された椿くんが走っている映像になるが、原作ではこの前に自宅で早川さんから電話を受ける椿くんのシーンがあり、アニメではカットされている。椿くんのお姉さんの出番だっただけに、ちと残念。

●椿くんの衣装は原作から変更され、上着を着ている。また早川さんの衣装は変更なしかと思いきや、ストッキングをはいているようです(原作では生足)。しかもスニーカーからブーツにも変更されている。普段制服ではおそらく生足の早川さんだけに、ストッキング姿もまた・・・げふんげふん

●公衆電話の緊急ボタン。この「緊急」がどこにかかっているかは、いわずとも解るでしょう。ここがね、うまいんだよ早川さんは。椿くんが早川さんから向かって右方向から来るのをわかっていて、自分顔の左側にアザを仕込んで絆創膏を貼っている。椿くんがやってきて早川さんが振り返れば、いやでも目に付く位置に仕掛をしてやがんだ、この娘はw ちなみにこのシークエンスは、台詞がちょいちょい変更されている。

●「前につきあっていた人に・・・」といながら電話ボックス側に顔をかしげてみせる。これもアザをよく見せたい素振りだ。原作ではあまり動きが読み取れないシーンだけに、このちょっとした仕草のコケティッシュさが早川さんの魅力でもある。電話ボックスのガラスに映り込む顔が、早川さんの言葉に裏の意味を持たせている。が、椿くんはそんなこと気づきもしない。

●「椿くんしかこんなこと・・・」のシーンでためらう椿くん。原作では表情のアップまでしかないが、アニメでは早川さんの目のアップまで寄ります。これは椿くんが早川さんの真意を確認しようとしているようにも見えるのだけど、椿くんは早川さんの真意までは見抜けない。椿くんはまんまと早川さんの思惑通りに星ノ瞳の文化祭に行くことになる。

●しかもおでこコツン。これは反則です(笑)。小泉今日子の「艶姿ナミダ娘」の歌詞にもありますが、こういうの男はめっちゃ萌えるシチュエーションです。ちなみにコメンタリーにおける赤尾でこさんの「早川さん評」は実に興味深いです。もし早川さんの企みが上手くいった時の彼女を、実に細かく分析している。

●翌日の放課後の帰り道。椿くんは卜部さんに対して一世一代の嘘をつくことになる。椿くんは自分の感情を知られないために嘘をつくことはあっても、こういう嘘の付き方ができない男子として設定されている。それまでの嘘が他愛のないレベルだからといって、その嘘は卜部さんには見え見えなので、いつもの嘘は悪意のない嘘でしかない。ところが今回だけは、盛大に嘘をついている。しかも周辺事情から卜部さんにはバレてしまっている。コメンタリーに登場した声優女性陣は、全員この椿くんの行動を否定したが、後ろめたい椿くんの嘘を責めきれないのは、たぶん筆者が男だからだろうか。

●しかし椿くん、男友達は上野くんしかいないのか?それもまた寂しいことだが。また丘さんとの会話で、卜部さんがこれほど驚くのも、これが初めてだとのこと。ともに初めての経験なのだ。

●ここで原作31話「謎の文化祭(前編)」の冒頭部に入ってしまう。しかもほぼ間髪入れずにロングのヘアウィッグをした早川さんが登場する。しかもスカートを広げて見せたり、回ったりしている姿がまた可愛い。普通できないってw 早川さんが友人に頼んで椿くんの様子を伺ったり、早川さんが準備するシーンはカットされている。だが全体のテンポとして、この改変は正解だろう。ちなみに椿くんの衣装は前々日の夜の上着を着た衣装だ。早川さんの衣装は長袖にベストを着用し、こちらも変更になっている。原作が夏に近い時期だったのに対して、アニメでは秋寄りの時間設定による改変だろう。

●しかも原作30話の終盤で出かける準備をする卜部さんのシーンもまるまるカット。これもまた次回の卜部さんの衝撃の登場を演出するインパクトのために、ベストの改変だと思う。音楽が最大限に不安を盛り上げておいて、次回に続く!くう、気になるってばよ。

●那須さんのコメンタリーによれば、この「仮装文化祭」は植芝先生のアシスタントさんの地元の学校で実際に行われていた文化祭からアイデアを得たものらしい。

●次回予告。どうやら丘さんは卜部さんのマネをして、パンツハサミを試したらしいのだが、ハサミを挟むパンツがハサミの重さで伸びることに困っているようだ。それってハサミが重すぎないだろうか?

●パッケージでは9,10話のコメンタリーを担当しているのは、構成・赤尾でこ、講談社編集部の那須利治による。

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(2012/06/01)
佐藤 ちはや

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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
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戦隊シリーズをこよなく
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