「謎の彼女X」全話レビュー:11話「謎の文化祭」

<物語>
 星ノ瞳女学院の仮装文化祭にやってきた椿くんは、中学の頃の仮装をした早川さんと腕を組んで散策中。早川さんは積極的に椿くんを連れ回す。丘さんも上野くんと一緒に見て回るけど、そこで見知らぬ女生徒と一緒にいる椿くんを発見する。そして文化祭では利用されていない教室へと椿くんを誘う早川さん。早川さんは中学の頃の思い出話をしながら、椿くんを誘い始める。「今なら、あの頃の気持ちのまま、私を抱きしめられる」、「高校に入って彼女ができたら、あの頃の気持ちを忘れてしまうの?」早川さんの言葉は矢継ぎ早に椿くんに降りかかる。そして「椿くんが私に彼氏になってくれるなら、またあの頃のように髪を伸ばす」とまで言い出す早川さん。そしてトドメの言葉は「私のよだれも舐めてから、卜部さんと私のどちらかを選んでほしい」といってよだれのついた指を差し出した。椿くんは早川さんの真意もわからないまま、よだれを舐めようとする。それを覗いていた丘さんは、たまらず出て行こうとする。だがそれを止めようとする何者かの影。それは段ボールでできた張りぼてロボットに身を包んだ卜部さんだ。よだれを舐めることを躊躇した椿くんの前に、卜部さんは段ボールロボットの姿で現れる。そして卜部さんは椿くんに目隠しをして、どちらのよだれが甘かったかを勝負することになる。そしてじゃんけんに勝った卜部さんのよだれを舐めた椿くんは、いきなり鼻血を吹き出した!卜部さんと椿くんとの絆を見せつけた卜部さんはまるで挑発でもするかのように、早川さんにも椿くんによだれを舐めさせてみればいいという。その挑発にのって早川さんも椿くんによだれを舐めさせようとする。けれど、早川さんは椿くんを目の前にして、よだれの付いた指を引いてしまい、目から涙があふれてくる。それを見て卜部さんは本当に早川さんが椿くんを好きなら流すはずのない涙だという。早川さんの、好きな人には振り向かれない一方通行の想い。今回の一件は早川さんの満たされない想いがさせた小さないたずらだったのだ。
 文化祭も終わった夕刻。帰り道の椿くんは卜部さんに謝りはじめる。卜部さんは椿くんに小さな嘘をつく。卜部さんは優しく椿くんを許した。

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(2012/11/21)
吉谷彩子、入野自由 他

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●演出:中智仁 作画監督:坂本千代子・平野勇一・島千蔵

●出典は原作5巻31話「謎の文化祭(前編)」、32話「同(中編)」、33話「同(後編)」、34話「同(打ち上げ)」より。

●アバンは前回のおさらい。基本的に2話連続したエピソードは10,11話だけなので、こうしたアバンはこの回だけ。

●めちゃくちゃな段ボールロボットで登場する謎の人物。この星ノ瞳女学院の文化祭は、あくまで在校生が仮装する文化祭であり入場者が仮装するわけではないので、これって本当なら相当違和感がある。

●校門でパンフレットを配る西洋甲冑を着た門番がいるが、原作だとこの西洋甲冑の門番が、早川さんに荷担している描写がある。早川さんは確かにこのエピソードを見る限り、相当に用意周到にこの計画を準備しているし、策士の面が強い印象があるが、アニメではその印象は押さえられている。それはやはり尺の問題もあるけれど、「早川さん、ズルい」という印象付けをしたくなかったからではないだろうか。

●椿くんの腕に腕を絡める早川さん。必要以上に胸元辺りをクローズアップしている。椿くんが照れているけれど、ここまでくっつくと、早川さんの胸があたって、椿くんも集中力がそがれているに違いない。

●椿くんとしては卜部さんが念頭にある手前、あまり大っぴらに早川さんと腕を絡めたくはないのだろうけど。ところで椿くんは完全に失念しているのだが、これまでの早川さんから得られる情報では、早川さんが別れた元彼が、文化祭に来ることはおろか、その容姿にしても、なんら情報がない。実体として早川さんは椿くんをだましているので、ここで椿くんが元彼についての情報を少しでも早川さんから聞き出せていれば、この早川さんの計画は成立しなかった可能性だってあったはずだ。ま、詮索しないあたりも椿くんの人の良さがうかがえる。

●メイド喫茶に入る丘さんと上野くん。入った喫茶店の名前は「PURE♡PURE」である。ちなみに「けいおん!」で最初にグループ名をつけるときに、澪ちゃんが提案したのが「ぴゅあぴゅあ」である。いや、たぶん偶然w

●丘さんたちのエピソードは、原作では先の椿くんと早川さんのシーンの前に来ており、アニメでは入れ替えられている。丘さんが二人を発見するシーンへのつなぎとして、どちらがよりよいかは、見比べたあなた次第。なんでも原作準拠がいいとは限りません。

●またアニメでは上野くんがトイレに行っているシーンが挿入されているかわりに、丘さんがメイド服を着る前段階のシーンが省かれている。これは後の丘さんのメイド姿にインパクトをもたらすための変更ポイントだ。これはこちらのほうが演出として優れているかもしれない。原作漫画ではアニメの裏話が見られるという意味でも、アニメと原作漫画が並び立っているともいえる。

●丘さんのメイド服姿での給仕。広橋涼の声も明らかに作り込んでいるのが笑えるところ。原作では服の説明(丘さんのは小学校高学年用の衣装)をするのに、別のキャラクターにしゃべらせているのだが、これを省略しているのは、声優の人数を減らすため。脚本というよりシリーズ構成として、こういうところに気を遣われていることがわかる。

●コメンタリーによれば、吉谷彩子嬢はオーディションを受ける前にたくさん練習していったそうで、本人曰く「林原めぐみのような雰囲気のナチュラルな声」をイメージしていたという。渡辺歩監督の弁によればどこかに卜部さん役の声の人がいると思ってオーディションに臨んだそうだ。結果としてそれは幸せな出会いを果たしたと言っていいのではないだろうか。なお吉谷さんのマネージャーさんの話だと、眠そうな吉谷さんの声が卜部さんの声に近いのだとか。

●そしてひとけのない教室に入り込む早川さんと椿くん。「あの頃のこと、覚えてないの?」とあるが、原作では「覚えてる?」となっており、これも変更点。この「~ないの?」というニュアンスに込められた早川さんの策略が見事だ。完全に椿くんを誘導している。

●果たしてあの時の椿くんは、本当に早川さんを後ろから抱きしめたかったのだろうか?卜部さんを押し倒しても耳を舐めた椿くんである。しかもそのシーンに挿入されている早川さんの長い髪のカットを見るにつけ、抱きしめたいよりも長い髪に顔を埋めて見たかったのではないかと疑っているのだが、「そうだよ」って言っちゃったからなあ、椿くん。

●ここで早川さんの動きの演出に注目したい。足下から上にパーンして衝撃の一言!その後思い詰めた表情のまま椿くんに詰め寄って、自分の意見を言った後で椿くんは驚きのあまりパンフレットを落としてしまう。それを見てトドメの一言のために、早川さんは一歩引いてからヘアピースを外して今の自分を印象づける。この一連の動作、一挙手一投足に早川さんの思いが込められていることがまるわかりである。原作ではそれほど動きのあるシーンに見えないため、ここまで膨らまして早川さんの心情を演技で表現するアニメのスタッフには脱帽である。

●さらにトドメ!椿くんの手に自分の手を伸ばす。この時、びくっとなる椿くんの手もまた緊張感が表れている。おまけは自分の髪に触らせる時、くるっと髪を巻き上げる指がなんともなまめかしい。そして早川さんの略奪愛の計画が完了する・・・はずだったのだが。原作だとここでエンドとなるところだが、アニメは次の話まで引っ張っている。

●卜部さんロボット登場!原作ではここで卜部さんのロボット仮装について早川さんが突っ込むというシーンがあるけれど、アニメでは緊迫感がそがれるためか、カットされている。これ以降のシーンも多少の台詞のテンポなどが考慮された変更はあるものの、ほぼ原作準拠だ。

●コメンタリーによれば、渡辺監督としては髪の短い早川さんが好みだそうで、原画の修正もかなりこだわったとのこと。この時の卜部さんは椿くんを略奪される可能性を感じて焦っていたのだそうで、監督も吉谷さんも声をそろえてそうコメントしている。筆者は別に焦っているとは思っていなかったが、なるほどことさら「よだれによる絆」を持ち出して勝負に出るあたり、卜部さんは内心焦っていたのか。つまりそれぐらい椿くんは、早川さんが好きだったってこと。かなり揺れていたんですねえ。

●んで、卜部さんの裸のシーン。ほぼ影で塗り込められており、これはパッケージ版でも放送版でも同じ。若干パッケージ版のほうが、肌色が多いかな?ぐらいでほとんど見た目わからない程度。ハサミのシーンも、段ボールロボットの手が引っ込むところからスタートするが、これが合体ロボのバンクシーンみたいでちょっとカッコイイ。

●アイキャッチは男女逆転の卜部くんと椿ちゃん、へそが見えてもちっともエロくない椿ちゃんだったりして。ちなみに原作3巻の巻末に元ネタがあります。

●一瞬だけ写る早川さんの衣服。ちゃんと畳まれており、彼女がちゃんとした家庭に育った娘さんだってことが、あのシーンだけですぐにわかる。そういえば「新世紀エヴァンゲリオン」TV版にも、24話の冒頭で精神崩壊したアスカがバスタブに入っている傍らに、衣類をちゃんと畳んでおいてあったシーンがあって愕然としたことがある。部屋でも現場でも脱ぎ散らかしているレイとは違うんだってことがよくわかるシーンだった。

●まなじりを上げて椿くんによだれを舐めさせようとする早川さん。完全に意地になっている。卜部さんがこのシーンを覗くところまでは予想していただろうが、こうまで敢然と立ち向かってくるとは、早川さんは予想だにしていなかったのではないか。だからこそ勝ちを焦って意地になっているのだ。ここで早川さんの計画は破綻し始める。

●当の椿くんは、卜部さんに促されるまま、早川さんのよだれを舐めようとする。この時の椿くんは、モラル云々よりも好奇心が完全に優先しちゃっているようだ。

●ところがここで早川さんの目に涙が! けど、どうして卜部さん、足まで組んで机にえらそうに座っているのだろうか? これは完璧勝ち組のスタイルw しかも上から目線で早川さんに説明を始めるのである。

●ここで早川さんは「椿くんは私を好きだった」と言っている。つまり早川さんは椿くんの想いを確かめたかったのではなく、振り向かせたかったということだ。しかも「ずっと片想いだった」という彼女の不幸は、自分が愛されていないと勘違いしていた事による。それが勘違いだったことがわかるのは、この後のこと。

●卜部さんが早川さんのよだれを味わうシーン。卜部さんのおしりからのパーンって、づよw これってつまり、「俺ならお前みたいないい女、ほっとかないけどな」というアレである。それをよだれで表現しちゃうあたりが、本作の醍醐味だろう。

●「来ると思うわ」のあと、原作だったら卜部さんが説明台詞を言うシーンなのですが、アニメではカット。これもこの後の余韻が十分に伝わるし、内容が全話との繰り返しになる(連載では重要なリフレイン)ので、有効な変更点だ。

●原作ではこのあと、「椿くんが気絶から気がつく」「早川さんが元彼とよりを戻す」という2つのシークエンスがばっさりカット。それを「また髪、伸ばそうかな」という早川さんのアニメオリジナルの台詞と晴れやかな表情でまとめてしまっている。話の辻褄では原作のような丁寧さが必要かもしれないけれど、オチとしての二人の帰り道を優先したら、こうなったという改変だろうか。あと早川さんの彼氏の声優さんもナシだし。

●卜部さんの「うそだよ~」には、賛否両論あるに違いない。これ、多分に照れも入っているし、演技としてはかなり稚拙かもしれない。ぎりぎり許せる範囲だと筆者が思うのは、どう考えてもひいき目だろうか。コメンタリーによれば、テストでの音声を使ったのだとか。渡辺監督いわく、快演だそうです。

●でも最後の「本当に男の子なのね」の声のはりつやは、本当に素晴らしいと思います。照れとかわいらしさとほんのちょっとの嫉妬が混ざった、微妙な声ではないかと・・・。

●10,11話は、原作における7話分を2話にまとめてあるおかげで、どうしても原作の再構成が必要なエピソードだった。オンエアでこれを筆者が見たときに、原作の編集や入れ替え、カットなどの改変点が実に巧みに行われており、その手際が素晴らしかったので、これはブログで全話解説をやってみたいと思わせた直接的な原因はこの話にある。こうやってきちんと比較しながら見てみると、やはり演出が優れている作品であることがよくわかった。アニメを見る楽しみが詰まっている間隔は、もうほくほくである(笑)。

●次回予告。ぎゅっ!

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植芝 理一

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