「宇宙刑事シャリバン」~その1・鍵はシンプルさ~

 映画「ゴーカイジャーVSギャバン」を見ていてふと思ったのだ。ああ、ギャバンがこうしている間に、シャリバンやシャイダーはどうしているのだろうかと。「宇宙刑事シャイダー」の後日談によれば、シャリバンはイガ星担当となって日々イガ星の復興のために汗を流しているし、シャイダーの相棒だったアニーは第二の故郷となった地球の古代遺跡を巡っているという。リリイはどうしただろうか、ミミーはギャバンと結婚したのだろうか。
 今年の特撮界隈でトップクラスのトピックであった「宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE」の公開は、決して上記のような旧作ファンの思いを満たしてくれる作品ではなかった。それはファンとしては残念な出来ではあったものの、「宇宙刑事シリーズ」の復活の狼煙であり、「ゴーバスターズ」の客演以外にも、もしかしたら別の作品ができる可能性を見せてくれたことに、ひとまずは拍手を送るべきだろう(と思っていたら、次の「スーパーヒーロー大戦2」では宇宙刑事がクレジットされているようで・・・)。
 そこで今回は宇宙刑事シリーズ第2弾「宇宙刑事シャリバン」を取り上げたい。大ヒット作である前作「宇宙刑事ギャバン」の後を受けて放送となった宇宙刑事シリーズの2作目。作り手が本作を送り出すにあたり、前作との差別化をいくつも盛り込んだことだろう。結論から言ってしまえば、ここで東映は差別化するために「盛り込む」のではなく「そぎ落とす」ことで差別化に成功し、本作をヒットさせたのだ。

宇宙刑事シャリバン Vol.1 [DVD]宇宙刑事シャリバン Vol.1 [DVD]
(2002/12/06)
特撮(映像)

商品詳細を見る

<概要と内容>
 「宇宙刑事シャリバン」は1983年3月から翌年2月にかけてテレビ朝日系列で放送された作品。前作「宇宙刑事ギャバン」のラストエピソードに初出し、そのまま主役を引き継いでの登板は、当時番組を見ていたものにかつてない興奮を与えた。同じ年の戦隊は「科学戦隊ダイナマン」である。本作の音楽を担当しているのは前作に引き続き渡辺宙明氏であるが、「ダイナマン」の方は前作「ゴーグルファイブ」を担当した渡辺宙明氏から京健輔氏に変更となっている。個人的にはこの些細な変更が「ゴーゴーダイナロボ」と「超次元戦斗母艦グランドバース」という2大名曲を生みだしたのだと思っている。「ダイナマン」と「シャリバン」は名曲が多い。「シャリバン」は前作「ギャバン」の影響下にある音楽が広がりを見せた作品だし、「ダイナマン」は「快傑ズバット」を担当した京健輔氏の手腕、特にあまり使われていない音を使ったキャッチーな音作りが功を奏している。

 物語はギャバンの終盤42話、宇宙犯罪組織マクーのバッファローダブラーによって瀕死の重傷を負わされた伊賀電(演 渡洋史)は、ギャバン(演 大場健二)によってバード星に搬送される。バード星で宇宙刑事にスカウトされた電は、コードネーム「シャリバン」を与えられ、一路地球へと帰還する。そこで電を待っていたのは、マクーの首領ドン・ホラーの息子・サンドルバとその母・キバに苦戦するギャバンの姿であった。キバのサイコキネシスによって動きを封じられ、サンドルバの一撃をくらおうかというその刹那、赤い光球がギャバンを助ける。そして姿を現したのは宇宙刑事となった伊賀電=シャリバンであった。その後、ギャバンはドン・ホラーを打倒する。ギャバンは銀河パトロール隊の隊長に昇格し、太陽系全域の警備に当たることになる一方、地球の守りについたのがシャリバンだった。そして「宇宙犯罪組織マドー」の地球侵攻に対抗するべく、超未来科学兵器を駆使してマドーと戦い続けるというのが、物語の骨子である。

<シンプルさ=魅力!>
 さて物語については次回以降に譲るが、今回はまず「宇宙刑事シャリバン」という作品にちりばめられた魅力について考察してみたい。そのキーワードは「シンプルさ」だ。
 まず「シャリバン」そのものについて見てみよう。出来ればギャバンとシャリバンを比較してみたいのだが、まずは下の画像を見てほしい。

syarivano2.jpg

 ここで前作ギャバンが黒と銀を基調としたコンバットスーツに対して、黒と赤(と銀)のコンバットスーツとなっていることは言うまでもないことだ。その「赤」ゆえに「太陽の戦士」という表現が似合うキャラクターとなったことは、すべて変身コードである「赤射」や伊賀電という人物設定にも大きく関与する。もう少しつっこんでみたいのだが、コンバットスーツの胸部のデザインを見てほしい。ギャバンが横と斜めを基調とした筋彫りとなっており、銀と黒のマッチングを行っているのに対し、シャリバンは赤のみ。より細かいモールドについて言えば、ギャバンが若干複雑なモールドになっていたり装飾になっていたりするのに対し、シャリバンは胸の部分にデザインの妙が集中しているといっていい。同じことが頭部のデザインにも適用できる。ギャバンは正面から見た時よりも側面にもモールドが施されており、耳の部分にあるメカニックを強調したデザインが目を引く。ところがシャリバンのマスクに関しては正面にも側面にもデザイン上の見た目がシンプルで、耳のメカニックが共通部分として目立つ以外は、額部分の電飾が目を引くぐらいだ。だが大きく開けた口のデザインは苛烈さや怒りを感じさせ、力強い。前作ギャバンとの差別化のために、シャリバンのデザインは実にシンプルにまとめられていながら、赤を基調としたデザインと口元に現れる怒りや力強さが際立つデザインになっている。

 劇中のシャリバンのアクションを見ていると、基本的にはギャバンのアクションを踏襲して発展させていることがわかる。特にギャバンの「スパイラルキック」はシャリバンが両足を開いて蹴る「シャリバンキック」へと大胆に昇華している。見た目の特殊効果はギャバンの序盤だけなので、特殊効果については目をつぶれば、その名前はシンプルでありながら、中身はアクションとして完全に昇華されているといっていい。またギャバンが右手から放つ「レーザーZビーム」は武器として「クライムバスター」として再整理された。これによって玩具として展開したが、次作「シャイダー」の「ビデオビームガン」や「ジャスピオン」の「ビームスキャナーガン」などに展開していく。

 メカニックに目を移せば、サイドカータイプであったギャバンの「サイバリアン」は、シンプルな流線型のバイク型となる「モトシャリアン」になる。サイドカー型がそれまでのキカイダーのような仮面ライダーとの差別化を意識していたとすれば、よりシンプルに未来型の車両となった「モトシャリアン」のシンプルさは目にも明らかだといえよう。変形+分離+格納といったギミックが特徴の「ギャビオン+スクーパー」の組み合わせはそのまま「シャリンガータンク+モグリラン」に受け継がれている。その一方でメイン兵装となる合体+変形の「ドルギラン」は、変形オンリーの「グランドバース」というシンプルなものに置き換わった。ここでもシンプルなものに置き換わっていることがわかる。
 
伊賀電=シャリバンについて考えてみても、ギャバンが地球にやってきた最大の理由が「父親探し」だったのに対し、そも地球人であった電にとっては、地球や大自然を脅かす宇宙犯罪組織と戦うことは自然の成り行きであり、自分自身の怒りや正当性の発露であるから、そこに疑う余地は全くない。だが物語中盤になると本作の最大の目玉となる「奇星伝」がスタートし、我々視聴者はその電自身のシンプルなヒーロー性に秘められた謎に直面することになるのだが、それはまた次回。
 またギャバンが地球に降りた際、相棒はいないはずであったが、コム長官の娘・ミミーがくっついてきてしまっている。その有効性が認められたのかシャリバンでは相棒としてリリイが随伴している。そして彼女には縁故関係がない。つまり人間関係が単純化され整理されているのである。

対する「宇宙犯罪組織マドー」に目を移してみよう。マドーは首領である魔王サイコを頂点とし、行動隊長ガイラー将軍と科学者ドクターポルターによって率いられる組織だ。ギャバンの当初、マクーにて行動隊長ハンターキラーが失脚し、ドン・ホラーの息子サンドルバの登場となるまでは、組織として曖昧な組織であった。それが本作ではシンプルでありながらも特撮作品ではもっともよく知られた組織形態に再整理されている。「宇宙刑事」シリーズの最大の特長であるバトルフィールドは「幻夢界」と呼ばれ、マドーのモンスターは通常の4倍の力を発揮するというが、これもまた魔空空間の発展形であり、シンプルさをそのまま継承している。
劇中マドーの犯罪には、「エスパー集団」という側面が強調されており、在野のエスパーや能力者を拉致・誘拐することで仲間を集めて強化する側面を持つ。組織の頂点である魔王サイコは最強のエスパーである。シャリバンの戦いの序盤は、こうした超能力による幻覚や幻視、目に見えない力によって攻撃されるなど、不可思議な戦いを強いられる。徐々にそうした演出は薄めになっていくのだが、番組当初の趣旨としては超能力による攻撃という不思議な演出によって、マクーとの差別化を図っていたものと思われる。

<シンプルさの理由>
 ではなぜ前作「ギャバン」との差別化のために、「シンプルさ」が選択されたのか?その理由を探ってみたい。
 デザイン上のシンプルさはあくまでギャバンとの差別化の意味が大きいだろう。そのシンプルさゆえに、光り輝く「赤」を基調としたコンバットスーツが、ギラギラとした太陽を背景とした青空のもとで映えるデザインだし、なによりOP映像でも登場した通り、夜間での撮影でも全身ライティングして暗闇に浮き上がっても、そのフォルムは1mmたりとも夜の闇に埋もれてしまわない上、電飾部分のシンプルさも暗闇で映えるもう一つのアクセントになっている。
 そしてもう一つの理由、それは人気の高かった戦闘空間がころころと入れ替わる不思議な映像作りにあったのではないか。本作の監督であった小林義明氏のインタビューによれば、そもそも撮影に時間のかかる氏の監督作品の中では、特にロケハン(ロケーションハンティング、つまり撮影現場の視察)に大きく時間を割いていたという。そうした空間の入れ替わりの激しさに答えるアクションを強いられていたのは主役の渡洋史氏であるがインタビューによれば、氏も部分的な骨折を隠しての1年間の撮影だったいうことを述壊している。前作ギャバンで人気があったアクション回は、ギャバン役の大場健二氏のダイナミックなアクションによって成立していたから、渡氏にとっても大きなプレッシャーだったに違いない。実際の完成作品を見てみると、1話の最初の方から数話に至るまで、ドラマらしいドラマよりも、マドー戦闘員との丁々発止のバトルが中心にあった。そのシンプルさを支えていたのは、渡氏の若きアクションと撮影する監督やスタッフの手腕だったのである。また消極的な理由としては、当時まだ新人だった渡氏の演技の未熟さもあっただろう。演技よりも主役としての渡氏の得意分野であるアクションを前面に出していきたい。そうしたスタッフの戦略もまた、これに合致したと思える。結果的に演技部分の余白がない一方で、主役・伊賀電の宇宙刑事として人間としての極限まで鍛えられたアクションを中心として作られたシーンをつなぐことで、ギャバンとは異なる魅力を作り上げたい。そうした狙いのもとで「宇宙刑事シャリバン」という作品の序盤は、シンプルさを身上として特長づけられるヒット作となりえた。まさに視聴者は伊賀電の少年のようでいて精悍なマスクにくぎ付けになり、渡氏の生身のアクションに息をのむ展開を目に焼き付けることになるのである。

 次回はシャリバンのもう一つの魅力であるドラマ部分、特に「奇星伝」と呼ばれるサイドストーリーに注目し、その面白さをお伝えしていけたらと思っております。更新まで多少お時間をいただきますが、次回もお付き合いくださいますよう。

ACTION WORKS 宇宙刑事シャリバンACTION WORKS 宇宙刑事シャリバン
(2007/11/01)
メガハウス

商品詳細を見る
スポンサーサイト

テーマ : 特撮ヒーロー
ジャンル : テレビ・ラジオ

コメント

非公開コメント

プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
namima2のつぶやき
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
リンク(リンクフリーです)
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
FC2 Blog Ranking
フリーエリア
blogram投票ボタン
ブロとも一覧

あにめにゅ~す の あににゅ

分水嶺☆大分のお土産といえば『ざびえる』

素足のアイドル達

有名人の珍言・名言集

宮廷アリス

TOY BOX
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

[FC2 Analyzer] http://analyzer.fc2.com/ -->