「宇宙刑事シャリバン」~その2・イガ星人の血に導かれ~

承前

 前回ご紹介したように、序盤は物語よりもアクションが優先された話が多く、渡洋史氏の若々しいアクションが堪能できる。特に1,2話のいわゆるパイロットに相当する話や、8話「泥の河は甦えるカムバックサーモン」などもこれに相当する。その一方で、マドーという超能力集団による怪奇現象を主体とした作戦は、オカルトチックな雰囲気の話を作り出す。7話「鏡の中に浮かぶ私は誰れ!?」や14話「連続夢魔におびえる億万長者」などはこの例に当てはまる。また曽我町子氏がビーストの人間体で登場する24話「テニスプレーヤーを襲う天国への誘惑」もまた同様で、このオカルトチックな部分は後述するレイダーの登場につながっていく。
 前作の主役であるギャバンは銀河パトロール隊の隊長に昇進したのみならず、シャリバンが命令を直接的に受ける上司という関係から再三登場する。そんなギャバンはシャリバンのピンチにたびたび地球に到来してマドーと闘うことになる。6話「戦場の森をかける小さな命」や15話「海鳴りの仕掛島」などがそうである。だがいっこうにギャバンは蒸着しようとしない。当然これは制作者側が主役であるシャリバンに配慮したものであるとわかりきってはいるのだが、前作からのファンにしてみれば再びギャバンとシャリバンのそろい踏みをみたいと願っているのだ。そうしたファンのいらだちを解消するには、最終回まで待たねばならない。
 特に15話に関しては、前作との関連が深い。ギャバンの父・ボイサーがマクーから守り通した「ホシノスペースカノン」のエネルギー増幅装置の設計図。この争奪戦が再び巻き起こるのだ。開発者の娘・月子がマドーに捕まり、月子の無事と引き替えにギャバンはマドーから拷問を受けることになる。またホシノスペースカノンはグランドバースの必殺兵器に転用されている。この秘密をマドーに知られることは、シャリバンの敗北にもつながり、地球の守りも危うくなる。ギャバンはかつての父と同様に、必死にマドーの拷問に耐えるという物語である。物語中にいくども前作「ギャバン」の映像を挟みながら、ギャバンはかつての父の必死の抵抗を思い起こしている。しかもその拷問を受けている場所は東京湾海上に浮かぶ「鬼首島」。かつてマクーの基地があった場所であり、父・ボイサーが拷問を受けていた場所である。結果的にリリイの機転で鬼首島を探し当て、シャリバンがギャバンと月子の救出に成功し、ホシノスペースカノンの秘密は守られた。戦闘の際、救出に来たシャリンガータンクをギャバンが操縦するシーンがあり、これもささやかなファンサービスだろう。月子はバード星へと移住し、後にコム長官の秘書となる。

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<熾烈!イガクリスタル争奪戦>
 さてこうした序盤の物語を承りながら、「宇宙刑事シャリバン」の物語は新たな展開を迎える。それが19話20話の連続によってスタートする「奇星伝」である。
 都会の雑踏の中で殺された一人の青年。彼が死の間際に残した「イガクリスタル」という言葉を聞いた伊賀電は、自分の故郷である奥伊賀島に急行する。幼き日の記憶を懐かしむ電。しかし島の人々は電に冷たい。だがそこにイガクリスタルを狙ってマドーが奇襲を仕掛ける。撃退することに成功するシャリバンだが、その戦闘の最中に島長であるジイが殺されてしまう。だがジイは電にイガクリスタルを守るように言い残して死んでいく。ジイが残した地図を頼りにイガクリスタルの捜索へと向かう電。マドーは電を利用してイガクリスタルのある滝に到達するも、邪悪を退ける仕掛けがマドーを近よせない。だが電が滝に刺さる黄金の剣を抜いたとき、電の目の前に獅子の顔を模したほこらが現れる。ほこらの奥へと進み入る電。何者かの声に従い剣を納めると、そこからまばゆく光るエネルギー帯・イガクリスタルが出現する。謎の声は、イガクリスタルを使って電にイガ星の再興を託す。だがそこにマドーが再び現れる。乱戦となる中で、島の少女たちは獅子のたてがみにある転送装置でイガクリスタルを転送させた。だがクリスタルと一緒に少女たちも転送されてしまう。マドーを撃退した電は、消えたイガクリスタルと少女たちを探しだし、マドーの魔の手からクリスタルを守り抜き、イガ星を再興することを改めて誓うのであった。

 こうして始まった「奇星伝」は、電という人物の背景を深く掘り下げる物語を見せ、同時にマドーの壊滅という電の使命自体に意味を帯びてくる。マドーの壊滅は同時にイガクリスタルを守り抜き、自分の本当の故郷であるイガ星を再興する事につながるのだ。これまでの電の行動に嘘があったわけではない。むしろ視聴者は、電の戦う動機が祖国である地球を守るためだと思ってきたのだが、さにあらず。彼はすでに一度滅んだ遠い星の子孫であり、彼はマドーを倒してイガ星を再興するための勇者という立場になってしまうのだ。これは前作「ギャバン」にける「父親探し」の縦軸と同じ扱いではあるが、電自信の戦うためのアイデンティティが入れ替わっているだけでなく、最終目標を20話の段階で方向付けたことになる。マドーとの丁々発止の闘いは、平行するイガクリスタルの探索と保護、そして一緒に消えた少女・みゆきたちの行方を捜し出すことを含むものとして繰り広げられることになる。つまり見ている側に取ってみれば、たとえその1話で通常通りのマドーとの闘いが展開していても、常に「イガクリスタル」の行方やみゆきの生存が気になって仕方がない。これはもう強力な物語による牽引力を発揮し始めていると言っていい。しかも「奇星伝」にはさらに伏線が張ってあるのである。それは「イガ星人の血」である。

 その一つの例は27話「裏切りの空・暗黒刑務所からの逃亡者」で見せる、マリオという男が見せた悲しい裏切りの物語である。マドーの暗黒刑務所から脱走したマリオはマドーから追われる身となる。それを助けた電は、彼から採取した血液が自分と同じイガ星人の血であることを突き止め、瀕死に彼に自分の血液を輸血する。それ故に彼を兄弟だといって浮かれる電に釘を刺したのはコム長官だ。長官はかつてだれも脱走に成功していない暗黒刑務所からの脱走者であるマリオをいぶかしみ、電に注意を喚起する。だがマリオはマドーの手に落ちる。マドーによって故郷を追われた人々によって結成された「オルガナイザー」の3人とマリオとの人質交換を要求してくるマドー。電はその要求に応じてしまう。だが電のもとに戻ったはずのマリオは、剣を抜いて電に襲いかかる。マリオは魔王サイコの命を受けて、母親の命と引き替えにシャリバンとオルガナイザー抹殺のための伏兵となったのだ。だが間一髪リリイの助けによって難を逃れるシャリバンたち。リリイの証言によれば、息子の卑怯な振る舞いを悲しんだ母親は自ら命を絶ったという。その事実に半狂乱となったマリオは、マドーの反撃によって命を落としてしまう。本話の脚本は高久進氏。
 
 どこかで同じような話・・・と思えば、東映版「スパイダーマン」でも輸血によって血の兄弟となった拓也と少年の話を思い出す。本話でのバトルは今までになく熱く怒りに燃える電の姿が描かれることになるが、この電に怒りの矛先はマドーに向けられているものの、その怒りの事情を想像してみると、いかようにも解釈が可能となる多層的な構造が特徴的だ。卑劣な手段に身を投じてしまったマリオへの怒り、信じていたマリオに裏切られた悲しみ、マドーの罠を見抜けなかった自分への悔恨、そして何よりマリオを救えなかった自分への怒り。本作のメインライターである上原正三氏は、肉親の血よりも人間どうしの約束を重んじる。それゆえに人間同士の絆を裏切った人間には相応の報いが訪れるという、脚本執筆上の一定のテーゼのようなものがある。本話におけるマリオも電からの輸血によって血の兄弟となったはずが、電を裏切っていたマリオには母親の死という報いを与えている。これは上原イズムが本作で徹底していた事情なのか、高久氏が上原氏によって影響を受けた結果なのかはわからないが、この「血」という部分に触発されたのか、上原氏はこのあと、もう一人の「イガ星人の血」のキャラクターを登場させることになる。

<血よりも濃い絆>
 36話「風雲の宇宙海にイガ戦士のZ旗あがる」から登場するベル・ヘレン。同話で弟ビリーとともに地球に到来し、マドーへの復讐を遂げようとする姉と弟。二人はイガ星人の末裔だった。だがマドーによってビリーは殺されてしまう。二重の意味でマドーへの復讐を誓うヘレンは、その後電の庇護の元、戦士として成長していく。このベル・ヘレンの登場は、リリイの存在感をどうしてもかすめてしまうものの、みゆきたち以上に電に身近な存在として、電にとってイガ星復興への意欲を促す大きな存在へと成長していく。イガ星の末裔である証となるイガ獅子のペンダント。死に行くビリーから手渡されたそれを持って、出会ってから日も浅い同士を失った電は、泣き崩れるヘレンを眺めつつマドー打倒とイガ星復興が同一の目的となっていくことになる。こうして上原正三氏は自身が持つイズムである「血より濃い絆」へのこだわりを元に、ベル・ヘレンというキャラクターを生み出した。しかも彼女は電にとっての戦う理由を一致させた仲間であり、電の牽引役となっていく。

 「血」と一口に言っても、例えば日本人の血と○○家の血筋というのとは、まったく異なる意味合いを持つことはおわかりいただけると思う。もちろん地球外生命体とのコンタクトに成功していない現時点で、地球に住む人間の血が、地球外生命体の血と異なる特徴を有しているかどうかなど、わかろうはずもない。つまるところ上原正三氏がここで掲げた「イガ星人の血」というのは、ものすごく感覚的な表現であることはいうまでもない。劇中では「銀河連邦警察」という汎宇宙的な設定のおかげで、星ごとの宇宙人の血液的な特徴(あるいは遺伝学的な差異)がまさにあるものとして描かれているのだが、決定的なことはなんら示されていない。だが、ここで「イガ星人の血」がまるで「日本人の血」や「琉球人の血」といったタームに落とし込まれて聞こえてくるのは、単一民族(と思い込んでいる)日本人ならではの理解なんじゃないだろうか。多民族国家である欧米諸国の人々には決してわかり得ない話なのだ。そして一家思想や義兄弟といったメンタリティがすりこまれている日本人にとっては、さらに一段階上の「血より濃い人の絆」という目に見えないものの存在までも信じさせてしまう。「宇宙刑事ギャバン」では、「父親探し」を縦軸とし、父親の死を超えて成長を遂げるギャバンの姿を描くことで、血とともに継承されていく正義を描いていたが、本作では同じ星に生きた仲間という「血より濃い絆」を描くことで、前作を超えようとした。「宇宙刑事シャリバン」という物語は前作「ギャバン」とともに、作家・上原正三氏のイズムがかなり露骨な形で表現されている作品なのではないだろうか。

 さてベル・ヘレンであるが、まことに残念なことながら、42話で激闘の中で落命してしまう。シャリバンを追い詰めてもいざという時に助けに入るベル・ヘレンの存在に業を煮やしたマドーは、レイダーの力で女剣士レイサを死霊界から呼び寄せる。レイサは自殺志願者を装ってヘレンに近づき、彼女の同情を引くように行動する。その罠にまんまとはまってしまうヘレン。一転してレイサとの激しいバトルとなる二人であるが、ついに相打ちとなってしまう。電の腕の中でついに果てるヘレン。電は怒りのままにビーストを屠り、マドー打倒への誓いを新たにする。
 ヘレンの初登場が36話だから、彼女の活躍期間はたった7話。その中で初登場回を含めて彼女がメインの回は3回あるが、登場回数はとても少ないのだ。にもかかわらず、「宇宙刑事シャリバン」を語るときには決して外すことができない存在感を放っているのがベル・ヘレンなのだ。その最大の理由は、彼女がイガ星人の末裔であり、電と同種族であることだ。しかも両親を相次いで失った電にとって、肉親とは異なるものの自身のルーツにつながる人間であるベル・ヘレンは、ある意味では相棒のリリイよりも近い存在であったはずだ。ビリーが死んだことでヘレンの身柄を預かることになり、彼女を鍛えつつも同族意識を強めていったヘレンと電の関係がマドーによって絶たれたとき、電の心境は再び心の寄る辺を失ったに等しい。ヘレンの死は電にとって祖国・イガ星が失われたこととほとんど同じように感じたことだろう。両親の死がマドーによるものではなかったが故に、電にとってはヘレンの死こそ、マドー打倒への意識を高めた事件だったはずだ。そこにあるのは同じ祖国の同胞である、「血よりも濃い絆」をもった同胞として認めたヘレンを失ったことであり、イガ星再興を誓った電にとっては、両親の存在よりもヘレンを上位においたのではないだろうか。父から継承される正義としての血を描いた「ギャバン」の物語は、さらに上位の「血よりも濃い絆」である同胞と祖国再興の誓い物語である「シャリバン」へと昇華したのである。

 次回は「宇宙刑事シャリバン」の最終回までの足取りを追いつつ、その盛り上がりを感じていただきながら、シャリバンの魅力に触れてみたいと思います。よろしくお付き合いくださいませ。

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コメント

非公開コメント

No title

10話になっている個所を15話に訂正して貰えませんか。

No title

なお様

 ご指摘ありがとうございました。修正いたしました。申し訳ありません。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
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後期必殺を好み、
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