「特命戦隊ゴーバスターズ」その1~シリーズの先にあるものとして~

 1年の役目を全うして「特命戦隊ゴーバスターズ」が終了した。放送中に本ブログでまったく言及しなかったのは、リアルタイムで見ていなかったせいだ。なぜかと問われれば、本作に盛り込まれた新機軸のほとんどを、筆者が受け入れがたかった故であるし、もっと言えば前作「海賊戦隊ゴーカイジャー」の魅力に強く惹かれすぎていて、気持ちの整理がつかないままゴーバスターズになじめなかったからだ。そんな個人的な想いは別にして、最終回を迎えたのを記念して、「特命戦隊ゴーバスターズ」を振り返ってみたい。そこに現れたのは、シリーズ継続によって展開を約束された数々の新機軸を、余すところなく魅力的に見せてくれた見事な手腕だったのである。
スーパー戦隊シリーズ 特命戦隊ゴーバスターズ VOL.1【DVD】スーパー戦隊シリーズ 特命戦隊ゴーバスターズ VOL.1【DVD】
(2012/07/21)
鈴木勝大、馬場良馬 他

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<物語と概要>
 「特命戦隊ゴーバスターズ」は前作「海賊戦隊ゴーカイジャー」の後を受けて、2012年2月から放送を開始し、全50話として2013年2月に放送を終了。つい先頃、後に続く「獣電戦隊キョウリュウジャー」にバトンタッチしたところだ。
 13年前のクリスマス、転送研究センターのスーパーコンピューターが突如としてウィルスに乗っ取られ、自我意識を持ち出した。このままではネットワークに侵入してウィルスが蔓延し、このウィルスによって世界が混乱してしまう。これを懸念した科学者が、センターごと亜空間に転送することで難を逃れることができた。だがそのウィルス・メサイアが亜空間を抜けて世界に侵攻してくる可能性を考慮してセンター跡に残されていたのは、3人の子供たちヒロム、ヨーコ、リュウジと3体のバディロイドであった。彼らは科学者によってワクチンプログラムを施された選ばれし子供たちであり、彼らはワクチンの効果によって戦う力を身につけていた。そして悲劇の13年後、メサイア復活のためにヴァグラスのエンターが現世界に到来、この世界のエネルギーである「エネトロン」を強奪しようと暗躍する。その行動を阻止し、メサイアの野望をくじくために現れたのが特命戦隊ゴーバスターズ。13年前にワクチンプログラムを施された、あの子供たちの13年後の姿だったのである。こうしてゴーバスターズとヴァグラスとの長い闘いの火ぶたは切って落とされた。

<盛り込まれた新機軸>
 さて本作では前述の通り様々な要素が盛り込まれている。それは以下のようなものだった。

1.巨大ロボット戦の魅力的な強化
2.脚本上の流れの自由化
3.格納庫、バックアップ組織の復活
4.転送技術の明確化
5.スーツ素材の改良
6.「ゴーバスターズ」という複数形の使用

 東映の武部直美プロデューサーによって、意識的に「戦隊の変革」を目指して製作された本作は、まず「ゴーバスターズ」というタイトルからも読み取れる。この複数形の「ズ」の使用はシリーズ初であり、スタッフのこだわりにも見える。
 まずゴーバスターズ3人の見栄えからして特徴的だ。ゴーバスターズのシルエットは、「スパイ」をモチーフとしてデザインされており、マスクの目に相当する部分がサングラス状になっているのはそのためだ。また彼らが使うアイテムである「ソウガンブレード」や「イチガンバスター」がそれぞれ双眼鏡や一眼レフカメラをモチーフにしているあたりも同じ理由だ。また彼らが着ている「バスタースーツ」も下は黒で統一、上はパーソナルカラーで彩られており、中央にファスナーのようなラインまである。変身前のスーツにも形状が似ている。まるで上下がセパレートしそうな上に、まるで上着を羽織っている感じ。現実的にはまるで革のような質感のスーツとなっている。おそらくは平成ライダーシリーズのライダースーツなどに使われていた素材が技術的にフィードバックされてできているのだろうと思われる。しかしこれまで薄くて光沢のある化学繊維のスーツだったことを考えると、シリーズを継続して見てきた人間にとっては、隔世の感がある。

 彼らが使うアイテムは転送技術によって送られてくる。スーツの左胸にある「トランスポッド」を押すことで、転送されてくるのだ。この転送というシステムは、これまでの戦隊の中では当たり前のように使われており、これだけを取り上げればさして珍しい話ではない。だがこの転送システムが物語の中できちんと開発されている技術なのである。この転送技術によって武器の出し入れやメガゾードの現世界への登場、話の根幹となる13年前のエピソードなどに影響しており、物語世界に大きく関与する技術として使われている。なんとなく呑気にシリーズを見ていた人にとって、このこだわりようは逆に今更な感じも受けるのだが、転送という技術がきちんと物語内で消化されている印象はやはり心地よいのだ。

 ゴーバスターズのロボット・バスターマシンはそれぞれチーター、ゴリラ、ウサギがモチーフに選ばれていて、その意匠はバスタースーツのヘルメットにも取り入れられている。動物モチーフというのは「太陽戦隊サンバルカン」から何度も繰り返し登場しているモチーフであるが、そうした動物モチーフというのはこれまで作品のテーマやカラーに直結しているのだ。「星獣戦隊ギンガマン」や「百獣戦隊ガオレンジャー」などを見れば一目瞭然だ。けれど本作においての動物モチーフはレッド→俊敏さ→チーター、ブルー→パワー→ゴリラ、イエロー→脚力→ウサギといったイメージの継承にのみ適応されているかわりに、作品テーマとは無関係に設定されていることは面白い。そこにはヒーローとバディロイド、バスターマシンにある明確な関係性だけなのだ。

 本作では久しぶりにバスターマシンに格納庫が用意されている。これは特定の場所から常にマシンが離発着することを示しているし、同時に彼らゴーバスターズが組織のバックアップによって運営されていることを示している。「鳥人戦隊ジェットマン」以降、歴代の作品が意識的にとりやめた格納庫は、マシンを格納する大型のおもちゃと連動する。かつてはそうしたプレイバリューの高い大型のおもちゃも売れたかもしれないが、現在のような不況下では思うようには売れないだろう。合体ロボ自体の巨大化や複雑化の流れは、同時に格納庫や空母機能を持つ大型アイテムをオミットさせた。他方、格納庫を必要としない戦隊は、ロボット自体の存在を再考する機会に恵まれる。「忍者戦隊カクレンジャー」における「忍法」や「恐竜戦隊ジュウレンジャー」の「神」、「五星戦隊ダイレンジャー」の「気伝獣」、「激獣戦隊ゲキレンジャー」の「ゲキビースト」など、ロボットとなる存在が、ロボット以外の意味づけの元、格納庫やメンテナンスを必要としない流れがあったのだ。そして格納庫があるということは、マシンのメンテナンスやそれを運営する組織が必須となることを示す。かつて格納庫を必要としない設定によって極限まで削減された「組織」が、本作によって復活したことはまことに喜ばしい。それをなぜかと問われれば、やはり若い戦隊メンバーが独自の発想で行動し戦うことには、どうしても無理が生じるし正義による思い上がりにもつながりやすい(個人的には「百獣戦隊ガオレンジャー」や「炎神戦隊ゴーオンジャー」などはその傾向が顕著だったので苦手でした)。それがドラマを産むこともあるけれど、そうした懸念材料を払拭するために、戦隊メンバーよりも年上の大人が彼らをバックアップしている状況のほうがより好ましいし、メンテナンスや指示系統などによるドラマも発生しやすいと思うからだ。それは若人と大人の良好な関係性を示すことでもある。現実世界における大人がどれだけくだらなくても、若者を導く存在として大人がその役目を逃げちゃいけない。時には若者の独自性や自主性に任せることもいいが、締めるべき時に大人が締めることを、大人があきらめてはいけないと思うのだ。

<充実する巨大特撮の魅力>
 そしてなんといっても本作の最大の魅力は、巨大ロボット戦をバトルの主軸に据えたことであり、これまで常に添え物であった巨大ロボ戦をどれだけ魅力的に映像化できるかという点に腐心した作りとなっている。しかも物語構成も事件発生→等身大戦→巨大ロボ戦という流れが定番となっていたところをあえて変更し、巨大ロボ戦と等身大戦がパラレルに描かれることで、物語の構成がより巧みに感じさせることになった。
 「特撮ニュータイプ2012年4月号」に掲載されている脚本家・小林靖子氏のインタビューによれば、本作でロボ戦に注力することは企画段階から盛り込まれていた事項だったらしく、脚本執筆に当たっては「あくまでも等身大戦もロボ戦もやるけど、ロボ戦がメインというルール作りがややこしかった」と言っている。つまりこれまで培ってきた等身大戦→ロボ戦というフォーマットの正当性がどれほど有効かを理解した上で、本作のスタッフはあえて新しいスタイルを手に入れようとしていたことになる。
劇中、メタロイド(これまでの等身大の怪人に相当)が登場すると、その目的がエネトロンの強奪であるから、どこかでエネトロンの急激な減少が管理局で確認される。それに合わせて特命課であるゴーバスターズが現場に急行するが、タイミングを合わせるように亜空間から敵メガゾード(これまでの巨大化した怪人に相当)が転送されてくる。この時、メガゾードはメタロイド誕生時に発生したデータを受信しており、部分的にメタロイドの意匠が取り込まれてこの世界に転送されてくる。転送のタイミングはその時々で異なるが、メタロイド誕生からメガゾード転送までのタイムラグがいわゆる等身大戦になる。この転送までのタイムラグが短い場合、どうしても等身大戦と巨大ロボ戦がパラレルに描かれることになり、それがゴーバスターズの戦闘シーンにおける一つのジレンマとなっている。初期の段階ではヒロムが登場するゴーバスターエースによる巨大戦が主で、残る二人が等身大戦を担当する場合が散見される。後に6話で3体合体ゴーバスターオーが登場すると、いずれエースの出番は減るだろうと思われたが、これがあに図らんや。このジレンマを感じるパラレルな戦闘はなくならない。送られてくるメガゾードにもいくつかのタイプが存在するが、タイプγと呼ばれるメガゾードは序盤においてゴーバスターズにとって最も厄介な相手であったため、バスターオーの投入が必要となる。こんな風に等身大戦よりもやや巨大ロボ戦に比重をおいた作りは、完全に等身大戦と巨大ロボ戦がパラレルであった初期の「バトルフィーバーJ」や、敵巨大ロボが毎回魅力的だった「超電子バイオマン」のロボ戦を彷彿とさせる魅力を放ち始める。もちろんそうなった背景には、CGだけに頼らないミニチュア特撮の粋をこらした映像や、オープンセットで撮影された、突き抜けるような青空の広がりのある映像などの好条件が重なったゆえだ。

 これまでの戦隊ロボ戦のほとんどはスタジオ内で撮影されている。それは撮影後の合成の手間や天候に左右されない画作りなどが優先されたことが理由だろう。ここに屋外にミニチュアをセッティングしてオープンセットで撮影を行うスタイルを持ち込んだのは、「鳥人戦隊ジェットマン」でパイロット監督を務めた雨宮慶太監督だ。氏が撮影した魔神ロボ・ベロニカ戦や魔人合体ラモン戦などもそうだった。それ以前の屋外での撮影といえば建物のミニチュアこそないが、「科学戦隊ダイナマン」のダイナロボの必殺技である「科学剣 稲妻重力落とし」の前段階のシーンだとか、「超電子バイオマン」のロボ戦なども野外で撮影されていた記憶がある。また野外の青空を背景に戦隊の航空戦力が活躍するシーンなども撮影された記憶がある。いずれにしても野外にミニチュアを立て込んで撮影することはあまりお目にかからないスタイルであったが、ここにきて迫力あるオープンセットの空間的な広がりのある野外特撮の素晴らしさを思う存分堪能できることになる。「ヱヴァQ」と同時上映された「巨神兵東京に現る」でも、広大なオープンセットをド派手にぶっ壊して思い切った特撮映像の美を見せつけてくれた。企画した庵野秀明氏も本作のミニチュア特撮を絶賛していたようだ。本作の巨大ロボ戦も目指すところは同じであろう。

特に1,2話で見せた巨大戦のミニチュアの細かさ、下からあおるようにして撮影され、巨大感を表現するアングル、奥行きのあるオープンセットを惜しげもなく見せつける距離感の演出、なおかつ巨大に燃え上がるCGではないリアルな炎の赤さと大きさは、スタジオ内のセットでは表現しにくい映像だろう。特に下からの煽りの表現は、天井のスタジオ施設の映り込みを避けることを考えれば、ほとんど手が出せない表現の一つだ。また巨大な炎の爆発も、これまでスタジオ内で撮影された映像にCGで付け加えられたものだったことを考えれば、この炎のすごさがわかっていただけることだろう。その後もことあるごとに野外でのセットで撮影された映像が挟み込まれ、それだけを目当てに見ていてもミニチュア特撮好きの方なら楽しめること請け合いだ。

「特命戦隊ゴーバスターズ」という作品は、これまでの戦隊シリーズとは異なる特徴を目指しながら、そのことごとくがこれまでのシリーズの延長線上にあり、それらを承ってさらなる高見を目指して作られていることがわかる作りだった。今回は作品上の特徴について述べてみたが、次回はゴーバスターズ作品内における人間関係に焦点をあてて語ってみたい。そこには3.11以後の日本における大切な何かがあると思えるのだ。次回もよろしくお願いいたします。


『特命戦隊ゴーバスターズ』フォトアルバム GBレポート (学研ムック)『特命戦隊ゴーバスターズ』フォトアルバム GBレポート (学研ムック)
(2013/01/18)
TV LIFE編集部

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波のまにまに☆

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