「特命戦隊ゴーバスターズ」その2~3.11後のKI・ZU・NA~

承前

 前回触れた内容以外にも、本作がそれまでのシリーズからそぎ落としたものはいくつかある。例えば前半では各個人の変身シーンにはバンクがないし、名乗りのシーンもあったりなかったり。そもそも歌舞伎の見栄に着想を得た名乗りのシーンがないことは、戦闘シーンへの無理のない流れを生み出しているし、各個人の手持ち武器が合体したりする巨大なアイテムによる必殺技も廃されている。こうしたいわゆるシリーズの「定番」を廃したことによって、事件や事態の緊迫感は増していく。シナリオの流れに無理がないだけではなく、見ているこちら側としては戦っているゴーバスターズと同じ気持ちのまま現場にいる緊張感を味わいつつ、ドラマやバトルの流れに気持ちよく身を任せていられる安心感がある。変身のタイミングや名乗り、必殺技の溜めの時間など、タイムラグを感じるシーンはこれまでいくらでもあった。本作においては各話担当の監督の自由裁量に任されているらしいことが、パイロットを監督した柴崎貴行監督のインタビューに見ることができる。だがこうして打ち出された新機軸によって、それがないことの意味とあることの意味を再確認できた気がする。

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(2012/08/10)
鈴木勝大、馬場良馬 他

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<エネルギービジョンとしてのゴーバスターズ>
 本作の世界観で重要なウェイトを占めているエネルギー「エネトロン」。ヴァグラスそしてエンターは、このエネルギーを求めて現世界にやってきてはエネトロンを強奪する。エネルギー管理局の特命課であるゴーバスターズは、これを阻止することでエネルギーの安全な安定供給を確保することが表向きの狙いではあるが、その背後には別の思惑が存在する。ヴァグラスにとっては首領メサイアの現世界への到達によって世界を支配下に置くために、メガゾードを現世界に送り込んだり、メサイア自身を現世界へ転送するために、膨大なエネトロンを必要としている。メサイアの野望をくじき、メサイアの脅威から人類を守ることこそ、ゴーバスターの使命なのだ。このダブルミーニングの面白さは、毎回のバトルの意義を考えてみれば、前提が個々に入れ替わっていることに気づくだろう。そしてその入れ替わりこそがバトルに起伏を持たせることにつながる。ゴーバスターズの面白さの一端はこうしたところに現れていると言えはしまいか。

 ところでこの「エネトロン」というエネルギーは、ちょっと変わっているのだ。18話「地底3000mの共同作戦」にあるように、エネトロンの元はエネルギー変換効率の高い鉱物のようで、その鉱物は日本の地下でも採掘可能なようだ。少なくても「エネトロン鉱石」というものが地下に鉱脈のように存在し、採掘された鉱石に何らかの手を加えることによってエネルギーを取り出し、各地区に設置された「エネトロンタンク」に収蔵され、そこから各家庭や企業体などに供給されているようだ。これまで石炭や鉱石の採掘で生計を立てていた皆さんの活躍が望めるので、失業率の低下にもつながる可能性だってある。このエネトロンの運用事業は国の経済政策にも一役買っていたことだろう。そういう意味でも「エネトロンのある生活」というのは、現在のような原子力発電所のある、極めて大規模な地震や津波が一度でも押し寄せたら危機に陥る可能性を秘めた「危うい生活」とは一線を画すことを示唆しているように見える。
 ところが、である。このエネトロンによるエネルギー供給システムというのは、13年前のメサイア事件が起こった時にすでに実現しており、劇中でこの「エネトロン」に関する説明はまったくなされていない。筆者個人としては、エネトロンというエネルギーにはなんらかの特殊性があって、それを欲してメサイアが暗躍するのだとばかり思っており、物語の進行に従って、エネトロンによる社会システムができあがるまでの歴史が、物語に大きく影響を及ぼすのではないかと想像していたのであるが、これはまったくの勘違いに終わってしまった。もっともそんな話をやっていれば、まるで「ジャイアントロボ THE ANIMATION」と同じだとのそしりは免れまい。そしてそれは、人間がこの地球で生きていくために強いる犠牲をどうするか?という重たいドラマをはらむことになる。子供向けの番組でそれはないだろう。
 「特撮ニュータイプ2012年4月号」における小林靖子氏のインタビューによれば、「エネトロンという設定は、その(ロボ戦をがメインというルール作り)中で生まれてきた作品内ルールのひとつなんです。」(カッコ内筆者追記)とのこと。筆者は2011年に日本で巻き起こった未曾有の事件であった東北大震災と福島第一原発の事故を背景に、エネルギー問題にも突っ込んでいこうとする東映の勇気を見た思いがしたのであるが、実際にはあくまで巨大ロボ戦をメインに描くためのルールの一つであったとのこと。とはいえ、エネトロンという新しいエネルギーシステムを創作しておいて、あの大事件がスタッフの頭をよぎらなかったはずはない。とはいえこうした日常にひそむ重たい問題を、いわゆる子供向けヒーロー番組に持ち込むのはどうか?という問いかけに対しては、“あえて触らない”という選択が働いたことは想像に難くない。ここは、たとえ原子力発電が新しく安全なエネトロンに置き換わっても、原発事故の恐怖は「ヴァグラス」という形に変わって人間の生活を脅かす可能性があるという寓意として受け取っておきたい。

<キャラクター同士の絆、震災後の世界で・・・>
 「特命戦隊ゴーバスターズ」という作品の中心にあるもの、それはヒロムたち3人や黒木司令官および特命チーム、バスターマシンの整備チーム、亜空間に閉じ込められたヒロムの両親を含む人々など、多くの人々との関係性の中でドラマが進行していくことだ。特にヒロムたちが亜空間でメサイアを倒す30話「メサイア シャットダウン」までは、特にこの傾向が強い。
 序盤の数話に関してはヒロム、ヨーコ、リュウジ3人の関係性が強く打ち出されている。姉の庇護下で暮らしていたヒロムに対し、すでにリュウジとともに前線で戦っていたヨーコは、ヒロムが参戦した当初はずいぶんとつらく当たっていたが、ヒロムが13年前にバディロイドとともに事件の現場に放り出された時の約束を守るために戻ってきたことを知ってからは、その態度を軟化させてくる。13年前にすでに高校生だったリュウジは、自身が3人の中で年長であることを必要以上に意識しており、年下の二人を見守ることを自分に課しているようだったが、バディロイドのゴリサキには、それをして「おじさんっぽい」とからかわれたりしている。だがこの人間関係がうまく回り出すと、当初のぎこちなさが嘘のようにテンポ良く回り出す。この人間関係の成長過程は、まるで役者自身の役へののめり込みの程度や、お話の進行に沿っているだけにリアリティを感じられるのが面白い。

 面白いと言えばヒロムたち3人にはワクチンプログラムによってそれぞれウィークポイントが設けられており、彼らがただ強いだけのヒーローではないことが印象づけられている。だが彼らの本当のウィークポイントはそこではない、ということが物語の中心となって話を紡ぐ場合が多かった。ニワトリを見るとフリーズするヒロムは、本音を口にしてしまう傾向が強く、人間関係を構築する術を持たない子だ。それ故に言い過ぎてしまうことが多々あり、ヨーコをいらだたせてしまう。そのヨーコにしたところで、ウサダにいつもお小言を言われながらも、いつものそそっかしさでエネルギー切れを起こしてしまう。どうしてもヒロムやリュウジ、ウサダに勝ち気にも突っかかってしまうのは、まだ15歳(劇中で16歳になりますが)の少女らしい未成熟さが出てしまう。また年長者のリュウジにしたところで、年下の二人を想うあまり距離を取り過ぎてしまうきらいがある。リュウジのウィークポイントである熱暴走を隠していたために、逆にヨーコを驚かせることになったこともあるし、チーム内の自分の役目に準じるあまり、陣マサトに指摘されるまで、自身の夢がメガゾードの開発エンジニアになることであったことをわざと忘れていたこともあった。だがそういったウィークポイントとは別に存在する人間的な弱点を、3人は徐々にではあるが克服していく。その成長の連続性がドラマとして見ることができるわけだ。

持論ではあるが、「戦隊シリーズ」というのは、若手俳優の登竜門として認知されているが、その俳優としての成長を見守ることの快感があるシリーズである。これと同様のドラマは平成ライダーシリーズやNHKの朝の連続ドラマシリーズなどで、日本では希有な存在なのだ。本作もまたその最もわかりやすい俳優の成長が、彼ら主役3人の成長と合致する形で進行するのである。

 ヒロムたち3人と深い絆で結ばれている人物は他にも多い。黒木司令官は13年前の事件の時に施設の外にいて難を逃れたが、ヒロムの父からヒロムたちを託された人物だ。その人となりは時に厳しく、時に優しい。エネトロンを死守するためにリュウジやヨーコが腹を立てるような作戦を立案し、ヒロムに遂行させて自身の決意を見せつける一方で、ヨーコの宿題をだまされたふりして手伝ってあげたり、時には熱く体を張って部下を守ろうとする優しさも合わせ持つ、懐の深い人物だ。また7話「エース整備不良?!」でも見られるように、ヒロムたちがバスターマシンの整備員とも交流を深めることで、多くの人間の戦う気持ちを背景にしてヒロムたちが戦っていることを知る件は、いっそ感慨深いものがある。かつて「電撃戦隊チェンジマン」でもチェンジマンをバックアップする電撃戦隊基地の構成員の多くは、チェンジマンに適合しなかった地球守備隊の面々だったり、専用オートバイの整備に命をかける整備員の物語なども存在する。こうした組織論的な話は、その後「光戦隊マスクマン」や「鳥人戦隊ジェットマン」、「超力戦隊オーレンジャー」、「電磁戦隊メガレンジャー」などで見られることがあるが、全体としては少ない傾向にある。だからこそこうした人と人との交流のドラマが心に響いてくる。

 ヒロムたちを中心とした人の絆は、何も人間だけではない。バディロイドたちもまた、ヒロムたちとの絆でつながる重要なキーキャラクターである。戦闘の際にはあまり出てこず、むしろ巨大ロボット戦になるとマシンの操縦&ナビゲーションシステムとしてマシンに乗り込むことになる。33話「モーフィン!パワードカスタム」にてカスタムバイザーが登場すると、バディロイドとの絆がより前面に出ることで、ゴーバスターズが追加装甲によって強化されることになる。だがそれよりもバディロイドが活躍するのは、日常描写におけるバディである人間たちとの絆にこそある。チダ・ニックはヒロムの兄貴分であり、ヒロムの言い過ぎを気にしながら、ヒロムの姉との改善されない関係に悩んだりする。常にヒロムの傍らにいながら、ヒロムを心配しヒロムの成長を促し、ヒロムを助け励ます存在がニックなのだ。時折自信を喪失したりする辺りもやけに人間くさい。ゴリサキがリュウジの熱暴走を心配するあまりやり過ぎてしまったり、ウサダがヨーコとぶつかってしまうのも、彼らバディロイドが人間くさいことに由来する。
彼らバディロイドはどうも必要以上に人間くさく設定されているのは、例えば「ナイトライダー」の“キット”ことナイト2000が操縦者であるマイケルと会話することと比較してみれば、彼らバディロイドが機械でありながら人間寄りに設定されていることは一目瞭然だ。バディロイドはヒロムやヨーコにとっては親代わりであり、リュウジにとっては身の回りの世話を焼く役目だ。実体としてバディロイドたちは戦闘に際してのバディではなく、人生をともに歩むバディなのだ。「ナイトライダー」での会話が面白いのは、キットがマイケルの日常に関与しないにも関わらず、お節介にも日常に口出ししてみたりするおかしさがあるが、ゴーバスターズではまた違う味わいがある。つまりバディロイドとヒロムたちの関係とは、人間のそれとなんら変わらないということだ。筆者はロボットが擬人化されて、人間のように振る舞うことはよしとしても、巨大ロボットが意思を持つことにはあまり歓迎できないでいる。「炎神戦隊ゴーオンジャー」の炎神たちや「爆竜戦隊アバレンジャー」の爆竜たちがしゃべるのはどうにも居心地が悪いのだ。だがこれらバディロイドは、これからのロボット技術の行く末の一つの答えとして、大いに希望が持てる未来像だと思える。まるでアニメ「イヴの時間」のようなロボットと人間の優しくも良好な人間関係と距離感を理想とすれば、バディロイドはあまりにも子供っぽい夢かも知れないけれども。

そうやって考えていくと、ヒロムたちを中心とした人間関係や、ヒロムたちが中途まで生存を信じていた両親たちセンター所員、あるいはヒロムの姉や陣マサトにいたるまで、そこで表現されている「人と人の絆」は、EDの歌の歌詞にも見られるように、本作の重要なモチーフとなっている。そしてまたこの安心して「人の絆」を結ぶことができる優しい世界こそ、3.11以後の日本が向かうべき世界像なんじゃないだろうか。13年前の事件で放り出された3人は、まるで震災後に家族や家屋を失った被災者にも等しい。そうした人々が元の生活を取り戻そうとする時、なによりも必要なことは多くの人々の優しさに触れることだったことは、復興を目指す現実の被災者を見ても明らかだ。人が人を想い、優しくなれるとき、その優しさが次の優しさを産む。そんな小さな優しさが人の絆を通じて広がっていけばいい。もちろん世の中はきれい事だけではすまされない。当然のように人の優しさにつけ込む人も後を絶たないだろう。けれど裏切られることを恐れることなく優しくあれたなら、今よりは少しだけいい世の中になっているのではないか? そんな希望を持つことは悪いことじゃないと思うのだ。せめて本作の本来の視聴ターゲットである子供たちには、そんな人の絆を信じられるドラマを見せてあげたい。「特命戦隊ゴーバスターズ」という作品に作り手が込めた想いの一端は、確かに「人の絆」の大事さだと思えるから。

さていささか教条的な話に偏ってしまったが、「ゴーバスターズ」についてはあともう1回お付き合いいただきたい。次回は陣マサトやエンター、エスケイプといったアバターの皆さんにスポットを当ててみたい。よろしくお付き合いくだされば幸いです。

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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
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