アダルトアニメの評価手法

 日常的に視聴しないものの、時折お世話になるアニメ作品群がある。劇場用アニメ?いやいや、今回はアダルトアニメの話なのですよ。あ、ここでこの先の話を怪しいと踏んだ方は、ここでお帰り願った方がよいかと思われる。今回はアダルトアニメの歴史を俯瞰しながら、アダルトアニメの評価について考えてみたい。はっきりと申し上げれば、アダルトアニメの評価手法は、劇場用アニメやTVアニメ以上に確立されていないのではないか?という疑問から、この記事の執筆はスタートしている。もちろん「私にとってアダルトアニメもTVアニメも同じだ!」とおっしゃる方々には、なんの役にも立たない話である。だが筆者にはどうしてもそう思えないのである。

<アダルトアニメの歴史のお話>
 私たちが一般的に「アダルトアニメ」といって思い出す作品は、いわばビデオやDVDのパッケージとして販売される作品のことだろう。調べてみると、日本初の成人を対象としたポルノアニメは1932年(昭和7年)に発表された「すゞみ舟」という作品だそうで、白黒で浮世絵の技法が使われたものだそうだ。もちろん当時の情勢下では、もちろん非合法として検挙されたそうで、アンダーグラウンドで視聴されていくために、いくつもの別名を持つ作品となったらしい。
 その後、「鉄腕アトム」以降のTVアニメで人気を博した手塚治虫氏が1969年~1973年に「アニメラマ3部作」として「千一夜物語」「クレオパトラ」「哀しみのベラドンナ」を発表した。手塚氏が亡くなった折、深夜の情報番組でこの作品をちらっと拝見した後、レンタルビデオで「クレオパトラ」を拝見したことがある。ん、まあ、それなりにおもしろかったけどね(笑)。つまりここまでのアダルトアニメの媒体は、劇場などのスクリーンが対象だったわけだ。この状況が一変するのがビデオデッキの登場によって、一般家庭にもビデオデッキが普及した1980年代半ばのことだ。漫画家・中島史雄氏(懐かしい名前だ)の漫画を原作とした劇画調のアダルトアニメがオリジナルビデオアニメとして発売になる。80年代のビデオデッキの一般家庭への普及は、アダルトビデオが一役買っているとのことだが、アダルトアニメもまた歩調を合わせていると言える。そして1984年から発売された「くりいむレモン」が火付け役となり、アダルトアニメは一般にも認知を広めていくことになる。当時その発売前に、いくつかのスポーツ新聞の紙面を、「くりいむレモン」の登場人物の絵が飾ったことを、筆者は忘れない。
 アダルトアニメは主に男女の性行為が中心だ。それを盛り上げるためにドラマがある。舞台が異世界だろうが我々の住む世界の延長だろうが、いってみればすることは一緒なのだ。ところがここに、女性をなぶるための触手が男性器を模しているというパターンが存在する。有名でしかもその代表格が「超神伝説うろつき童子」シリーズだろうか。エロの世界だとSMや緊縛などのハードコアな部分があるのだが、アダルトアニメではこの触手とそれを持つ異世界の生物による陵辱や、ホラーやスプラッターの要素がこれを支えているようだ。
 近年では漫画原作のアダルトアニメがあり、エロゲ原作のアニメがあり、その商売の形態は一般のアニメとなんら違いはない。しかも地上波で放送されている作品までエロゲ原作のアニメ作品が登場したり、いわゆる「おっぱいアニメ」と呼ばれる半裸のお嬢さんが画面狭しと大暴れし、地上波放送時に「消し」と呼ばれる修正が入っていた作品でも、パッケージとして発売されると修正が外れていたりするといった作品まである。その行為自体を描かないまでも、何を目的として描かれているかは一目瞭然としている作品があふれている状況だ。
 こうした時間の流れの中で忘れてはいけないことは、現在キラ星のごとく活躍されているアニメーターや製作会社、あるいは声優に至るまで、TVや映画のアニメーションの仕事の傍ら、こうしたアダルトアニメにも参加して、その技量を高めていった側面があることだけは記憶にとどめたい。「くりいむレモン」シリーズの「ポップチェイサー」という作品に参加していたスタッフに、現在では著名なアニメーターなどが名を連ねていることはつとに有名な話だし、先述の「うろつき童子」にしたところで、「宇宙戦艦ヤマト」シリーズのプロデューサー故・西崎義展氏がスタッフとして参加している。エロマンガが現在の漫画業界の下部組織として、多くの人材を世に送り出している事実はすでに当ブログでも指摘していたことではあるが、アダルトアニメの世界では製作に参加したスタッフの能力を底上げし、実力を磨いていったことによって、今の彼らの活躍がある。もちろんそれだけが全てではないにしろ、TVアニメが激減した80年代後半から90年代初頭は、こうしたアダルトアニメの製作で食いつないでいたアニメーターは多いとも聞く。

<評価が難しい>
 さて現在では古本屋さんのチェーン店やレンタルDVD店などで、区切られた区画におかれたりして、アダルトアニメ作品は以外に手に取ることが容易になっており、アダルトアニメが発売され始めた当初に比べれば、手を伸ばしやすくなってはいる。この状況下だと手を伸ばせば手にとって見ることができる以上、普通のアニメ作品と同じ扱いができると思っていいのではないか? もっともいかなアニメファンといえど、女性はアダルトアニメがおいてある区画に立ち入ることもままならないだろうし、実際に手に取る女性はほぼいない。もちろん未成年が手に取ることはできない以上、まったく普通のアニメと同じ扱いをすることはできないだろう。だがここはあえて、一般のアニメ作品と同じ扱いをした場合、アダルトアニメをどうやって評価したらいいのだろうか?

 アダルトアニメを一般向けのアニメと同じように評価するとしたら、以下の項目が一般的に考えられる。

 ・作画・動き(人物・背景)
 ・演出
 ・物語
 ・スタッフ・キャスト
 ・原作
 ・音楽その他

 この内「スタッフ・キャスト」に関しては、まったく評価のしようがない。なぜなら、こうしたスタッフ・キャストについて、作品末にあるスタッフロールに表示される多くの名前が仮名であり、多くの人材が別名で仕事しているからだ。実体としてその仕事内容から名前が知れる人材がいることは確かだが、アニメが総合劇術である以上、名前が判明する人物一人をあげつらってその仕事を評価することは難しい。特に比較対象として別のアダルトアニメ作品を横に並べてみても、同じ人物が異なる別名を使っている場合も少なくないそうで、ディープなファンはそこに注目するのだろうが、一般のアニメ作品と同等に扱うには難がある。
 作画・動きや演出に関して言えば、一般のアニメ作品と遜色なく比較することができるかもしれない・・・とか思っていると、さにあらず。アニメの動きや演出、作画といった部類の評価軸は、確かに標準以上であることは間違いない。特に画のクオリティは必要以上に気を遣われているのは、本質的にアダルトアニメがOVAという媒体に則っているからである。しかしながらその動きに関しては、同じ動きを連続して見せるシーンが、当たり前のように続く。もちろん性行為のシーンだが、これが作品の主軸で描かれている以上、ここを無視しては評価がおぼつかない。だがこのシーン自体を評価することが難しい。体位やそれをエロティックに見せるアングルなど褒めるべきシーンはあるだろうが、一般のアニメの評価と同列に語ることがかなわない。
 物語や原作に関しても同様で、エロシーンを抜きにして語るのは、作品自体を無視しているような気がするし、さりとてエロシーンを評価するには一般のアニメと差がありすぎる。「ヨスガノソラ」や「School Days」などのように、それらしいエロシーンを盛り込んだ作品なら比較が可能かと言えば、直接的に描かれたモノと、地上波での放送を見越してそれっぽく描かれているそこはかとなさを同列に評価すること自体が、どちらも上手く評価できていない気がするのだ。

<エロ故に・・・>
 ここで1ケースとして梅津泰臣氏によるアニメ「A KITE」を考えてみたい。この作品は、アメリカでの販売を考慮して製作されたアダルトアニメであり、殺人者である一人の少女がたどる数奇な運命を描く物語だ。主人公の少女はSEXを強要されるシーンがいくつか挟まれており、エロとバイオレンスが同居する作品であるが、宣伝による効果で認知度は高いモノのその評価は決して高くない。アダルト枠作品として発売されて以後、エロシーンを抜いた北米普及版なども販売されている作品だ。現在ではこちらのエロシーン抜きのほうが手に入りやすいだろう。一見すると少女による「必殺仕事人」的な作品でもあり、少女が構える重厚な拳銃による激しい銃撃戦や、冷徹なまでの射殺シーンの乾いた印象は、梅津氏の特徴が端的に表現されたモノだ。一方でエロシーンにしたところで梅津氏のもつ硬質でドライな印象はぬぐえない。普通のアダルトアニメにおいて、そういったエロシーンはむしろ汁気たっぷりに表現されることが多いから、これはもう作品のカラーと言ってもいいだろう。終盤の雨のシーンですらドライに感じるのだから。エロシーンを抜いた北米普及版を見る限り、エロシーンを抜いても、こうした梅津作品らしい印象に変わりがない。つまり梅津氏の力量はエロシーンに比重が置かれておらず、エロシーンを抜いたところで作品の評価が変わらないとしたら、この作品のエロシーンは一体何のためにあるのか?という疑問にぶちあたることになる。

 アダルトアニメを評価するにあたり、どうやら一般的なアニメの評価手法はそれほど意味を持たないのではないか? いや梅津氏の「A KITE」のように一般のアニメの評価手法を用いれば、エロシーン以外のシーンを評価することはできるだろう。だがアダルトアニメという作品群は、視聴側にとってある特定の目的によって視聴されている作品群なのだ。使用目的があると言い換えてもいい。アダルトアニメの最大の評価軸は、あくまで視聴側の使用目的がかなうかどうかという1点が非常に重要なのである。しかもその使用目的がかなうのであれば、そこに描かれている映像や動き、物語や背景などの情報は、必要最低限度にまで圧縮されていてもかまわないのだ。そしてあまつさえ、その使用目的にかなうかどうかの評価基準は、視聴する人間の好悪の問題に始終する。いくらアニメが嗜好品だといっても、人間個々人の性嗜好まで評価軸に乗せることは筆者にはできそうない。

 そうはいっても筆者にも好みの作品がある。3人の男女高校生による夏の秘め事を描いた「そらのいろ、うみのいろ」は大好きな作品だ。この作品、エロシーンの演出が実に生かしており、エロシーンと同時並行で進行する女子テニス部の練習シーンとエロシーンがカットバックで繰り返されたり、ちょっと切なげな歌曲がエロシーンのバックに流れたりする。また登場する2人の美少女たちのデザインが秀逸で、ピンクパイナップルがリリースする作品群の肉々しさとは一線を画す絵柄だ(とはいえピンクパイナップルの幸せそうなエッチシーンが続く楽しい作品も好みです)。世徒ゆうき氏の漫画を原作とした「ストリンジェンド」や「アッチェレランド」シリーズもいい。SEX以上にフェラチオに特化したエロシーンのなまめかしさといったらない。しかも学校というシチュエーションも最高に機能しているし、少しギャグめいているのもいい。だがこういった作品群を、一般のアニメと同じ評価軸で語るには、あまりにも自身の性的嗜好に左右されすぎている。実際筆者は陵辱ものやレイプもの、異世界を舞台にした作品などは苦手で、「鬼作」「臭作」などのシリーズや「夜勤病棟」シリーズなども苦手だ。こうした自身の嗜好により、どうしても見られなかったり、見たとしても自分の好みではないだけに評価しづらいといった感情は、いかんともしがたい。好きな作品だけを見ていればいいのだろうが、自身の嗜好がアニメそのものを評価する軸をずらしてしまうのであれば、やはり筆者にとってアダルトアニメは評価が難しいというのが偽らざる本音なのである。
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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
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スタートレックは
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