5分アニメは本当にビジネスチャンスか?

 もうお気づきの方も多かろうと思うのだが、ここ数年の深夜アニメシーンの傾向として、放送時間の短いアニメ作品が増えている。10~15分程度の作品がある中で、最近では5分の番組も増産されている。筆者は何気なく観ていたが、今期だけで調べてみると以下の通りのラインナップになっていた。

DD北斗の拳
ガッ活
鉄人28号ガオ!
波打際のむろみさん
血液型くん!
あいうら

さらにNHK教育やテレビ東京系の番組内で放送される作品もあったりして、実際には上記以外にも作品数がある状況だ。筆者としても「ポヨポヨ観察日記」や「大人の保健体育」なども楽しんだクチだし、気に入ってもいる。
 これに対して過日、こんな記事がネットにあったので気になって読んでみた。

(1)<5分アニメ>急増の理由は・・・DVD不振の切り札となるか
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130413-00000016-mantan-ent&p=1

(2)ショートアニメが増えれば、アニメ業界の活性化につながるのではないか
http://kazuyukihozumi.com/anime/short-anime/

上記2つの記事は、いずれも放送時間の短いアニメが増えることが、アニメ業界にとってプラスに働くのではないかという予想の元に書かれている記事で、趣旨自体はほとんど同じ内容である。ただし、こうした楽観論的な記事を読んでいると、本当にそうなのだろうかという疑問が湧いてくる。今回は放送時間の短いアニメによるアニメ業界への影響についてちょっとだけ考えてみたい。

<記事内容について>
 まずは先述の2つの記事について言及しておきたい。(1)の記事は2013年4月14日付けの「まんたんウェブ」の記事を「Yahoo!ニュース」が拾ったニュースだ。4コマ漫画雑誌を発行する竹書房の関係者から話を聞き、短い放送時間は4コマ漫画に向いているという話からスタートし、制作費の安さとパッケージの売り上げハードルが下がるという話、総務省社会生活基本調査の結果から、近年テレビの視聴時間が減じている点を指摘した上で、見やすいために時間の短いアニメが支持されているという話を展開している。また(2)の記事は、京都在住の大学生によるブログの1記事であり、ネット配信にも適している時間の短いアニメは時代の流れに沿っているとし、こういったアニメに向いている4コマ漫画のアニメ化の流れが認知されビジネスモデルとして確立していくことで、ビジネスチャンスが拡大するのでは?と予測している。2013年1月の記事だ。

 どこかで聞いた話だなあなんて思いながら記事を読んでいて、急に思い出して蔵書をひっくり返してみたら、同人誌ではあるが「ロトさんの本 Vol.28 時代の大波 2011年アニメの激変期」(氷川竜介著、2011年)という本の中で氷川竜介氏も言及しており、「よんでますよ、アゼザルさん。」と「gdgd妖精s」の2作品を取り上げていらした。また「HDで作り込んだアニメは楽しいけれど、大量に見ると疲れる」ので、こういったアニメはホッとすると書いてらっしゃる。また制作時期と実際の世間での認知のされ方のズレに言及されており、いくばくかのタイムラグの後で時間の短いアニメが増えたら「受けたということになりますよね」と予想をしていらした。

<放送時間の短いアニメを振り返る>
 さて現在流行しつつある放送時間の短いアニメであるが、単に放送時間の短さを指摘するだけなら、昔からあったじゃないと思いませんか。冒頭の文でも書いたけれど、番組中の1コーナー的に放送されるアニメは昔からあった。現在でも山寺宏一さんの司会で放送されている「おはスタ」はこうしたアニメのコーナーを持っている番組だし、NHK教育の「天才!テレビくん」もまた番組内コーナーとしてアニメが放送されていた枠だ。NHKは昔から5~10分のアニメを放送しており、「忍たま乱太郎」や「おじゃる丸」は、それこそ息の長い作品だ。かつて夕方6時台にテレビ朝日系列で放送されていた藤子不二雄作品だって、「ドラえもん」から始まる作品群はいずれも放送時間が短い作品だ。NHK教育には「プチプチアニメ」という枠があって「ニャッキ!」や「ロボットパルタ」などのコマ撮りアニメもある。

 ふと振り返れば、特撮の世界にだって「ウルトラファイト」や帯放送されていた「トリプルファイター」、「おはよう子供ショー」内で放送されていた「グリーンマン」「レッドマン」などがあった。また視点を変えてみれば、30分の時間枠に2~3本の話を放送するタイプのアニメだって、放送形態の問題だけで、作品単体を考えれば同じような感じだろう。「ドラえもん」などの藤子不二雄作品が帯放送していた時代、日曜日の午前中に複数本を集めて30分放送したり、「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」「天才バカボン」「ど根性ガエル」「クレヨンしんちゃん」「ケロロ軍曹」などは30分で複数話放送するパターンだ。1話単位の放送時間が短い作品なら、実のところ最近になって急に台頭してきたわけではなく、昔からあるし、ジャンルも多岐にわたる作品形態なのだ。

<製作サイドから見ると・・・>
 アニメ業界においては、折からの不況は制作費を圧迫し続けてきた。しかも本来のパッケージの購買層の財布のひもまで厳しくしてしまったために、パッケージ商売をベースにしてきた深夜アニメの隆盛に陰りを落とし始めた。「製作委員会システム」は部分的にリスク回避を旨として、現在でもアニメ制作費の出資に利用されているシステムだが、それでもパッケージが売れないことには資金回収がおぼつかないので、無用にリスクが発生してしまう。出資する側の心理的ハードルを下げ、実質的に出資額を下げることで、アニメが生き残りを求めた戦略としてのビジネスモデルが、今回の「放送時間の短いアニメ」だといえる。

 作り手サイドあるいは送り手サイドの話をもう少し考えてみたい。同じお金で製作されるなら毎週30分×1本よりも毎週10分×3本のほうが、単純に番組数が多くなる。同一スポンサーが出資すると考えると、毎週1本の作品にCMを出すよりも、毎週3本の全く別の時間に放送される作品それぞれにCMを出した方が、人の目に付きやすく宣伝効果が高いのではないか? つまり同じお金を出すのであれば、コンテンツ数が増えるほうが、出資する側にとっては有利に働く可能性がある。

 視聴率を問題にしがちな放送局側にとってはどうだろうか? これも一概には言えないが、視聴率の評価を「瞬間最大視聴率」や「平均視聴率」とした場合、放送時間が長い方が人の目に触れやすく、数字の上だけで話をするならば、1番組単位の放送時間は長い方が視聴率には有利に働きそうだ。制作費だって同じセット、同じ出演者で長時間放送する場合、単位時間あたりの制作費は安くなる。テレビ局側にしてみれば視聴率の1点で見れば、放送時間が長い方が有利になるはずだ。春や秋の番組改変期に長時間のバラエティ番組が多く放送されるけれど、こういった番組には手っ取り早く製作でき、なおかつ制作費が抑えられ、なおかつ視聴率が稼ぎやすいという思惑が働いていると思う。けれどこれは蛇足。アニメの場合は時間枠単位で放送局から放送権利を買うわけだから、やはり制作側にとっては放送時間が短い方が安いのは自明の理だ。

 次にアニメ製作をしている現場にとってはどうだろうか? 単純なことを言えば、原作の権利を有する出版社にとっては、コンテンツ数が増えることは、ビジネスチャンスそのものと言っていい。自社の作品がアニメ化されることで大きくお金が動くのである。ましてや放送時間の短いアニメだと4コマ漫画の起承転結のはっきりした流れのある作品は、さらに有利だろう。芳文社や竹書房あたりが躍起になるのもよくわかる話だ。

 ところが製作の現場にとっては、これが実は上手く想像できない。放送時間が短いアニメが増えることで、単にコンテンツ数が増えると考えた場合、年間数百~千人規模で排出される人材を受け入れる受け皿ができるといっていいのかなとも思える。だが実際の現場は結局手が早い人や使い勝手のいい人ばかりが重宝されるため、本当の意味で末端までお金が行き渡っている状況でもないらしい。結局牌が限られている中での仕事のやりとりとなっていて、コンテンツ数の増加はアニメ業界を単純に底上げしないのではないだろうかと思える節がある。
 もうちょっと説明すると、毎年専門学校から輩出されるアニメーターやアニメ製作志望の若手がいても、それを受け入れる製作会社側の採用はさほど多くない。ってことはコンテンツ数が増えてもそれをさばく製作体勢は、コンテンツ数が増える前となんら変わらない。アニメーター個人やフリーの監督個人に入る実入りは、そもそも一本あたりの制作費が少ないのだから、少なくなって当たり前。だとすると製作現場にいる人にとっては、30分×1本分のギャラをもらうために、10分×3本の掛け持ちをしなければ稼げないとしたら、これは下手をするとアニメ業界を疲弊させるだけっていう可能性もあるのではないだろうか? だいたいコンテンツ数が増えたって、買う側の人間が買えるコンテンツ数は限られているので、コンテンツ数が多ければ多いほど、かえってパッケージ商売には不利になるんじゃないだろうか? もっともコンテンツ数がどれだけあっても、その中で1作でもスマッシュヒットが出れば回収できるという話もあるだろう。だが選択肢の多さは選ぶ側にとって必ずしもプラスには働かないともいうではないか。やはり買い手が分散する現状では、スマッシュヒットは出にくい状況だとも言える。

<なぜ長編が作られるのか?>
 もう一つ筆者にはわからないことがある。これほど盛り上がりを見せる放送時間の短いアニメではあるが、人気が出ると劇場用長編を作るのはなぜだろう? 端的な例として「おじゃる丸」が以前「おじゃるとせみら」という劇場用作品を作ったことがあった。また「忍たま乱太郎」にしたところで、長編アニメや三池崇史監督によって実写劇場版が公開された。「ドラえもん」だって「のび太の恐竜」以降、原作者が亡くなった現在でも劇場用新作が作られているし、「クレヨンしんちゃん」や「ちびまる子ちゃん」だって劇場用作品がある(「ちびまる子ちゃんの」劇場用2作品は筆者のお気に入りだ)。

 テレビ放送と劇場用作品は違うと言うこともできるだろうが、先に示した2つの記事にあった「5分アニメは時代に沿っている」とするならば、そもそも存在する5分アニメがなぜその利点を捨ててまで長編アニメ作品を作るのか?という疑問に、答えが出ないと思うのだ。だがこうした長編アニメは、元の5分アニメの人気に後押しされて製作が決まることが多い。劇場用長編アニメでも十分に資金が回収される見込みがあると判断されて製作される。そこにあるのは商売の原理だが、それ以上に製作を後押しするのは、「もっとこの作品をじっくり時間をかけて見てみたい」という観客や視聴者側の要求でもあるし、作り手の欲求でもあるのだ。とすれば、「5分アニメが時代に沿っている」という物言いは、なんだかそぐわないような気がしてならない。5分アニメを見ながら、より時間の長い長編が見たいとのたまう観客や作り手の思いは、彼らのいう時代の流れに逆行しているではないか。手っ取り早く制作費が回収できる劇場用アニメの製作スタイルだと、製作スタジオにとっても還元率が高いし、スタジオの知名度も上がるので、一石二鳥だったりするけれど。

 そうやって考えを進めていくと、どうやら筆者には放送時間の短いアニメというのは、製作委員会システムという出資者集団にとっては有利に働く可能性があるし、原作の権利を有する出版社にとっては大きなビジネスチャンスとなるだろう。放送するTV局側にとってもコンテンツ数が増えるのは歓迎すべきことかもしれない。だが果たして視聴者側や製作側にとっては、それほどのビジネスチャンスといえるのだろうか?と疑問を禁じ得ないというのが筆者の偽らざる本音である。いや先の2つの記事に異をならしたいというのではなく、本当にビジネスチャンスなのかな?と考えていったら、どうもそれだけではなさそうで、一概にいいことばかりではなく別の側面もありそうですよ、という結論に達したわけです。とはいえ、このアニメの製作現場の問題は、別に放送時間の長短の問題ではなく、そもそも現場が抱えていた問題そのものなので、いまさらといった感じかも知れない。

 国が「クールジャパン戦略」だとかいって、アニメ業界になんのテコ入れをしてくれるのかわからないが、構造的な問題を解決せずにお金だけ出しても何の解決ももたらさないし、かつての地方再生をお題目にしたバラマキとなんら変わりがない。ましてや出資者のリスクのためだけに放送時間の短いアニメが増えたところで、益があるのは出資側だけで製作側に利益誘導できないなら、片手落ちもいいビジネスチャンスではないかと思うのだ。で、毎度こういう問題を考えていて私たちファンの側ができる事って少ないって気づかされるわけで。自分たちが見たいものを見るために、できることをするしかないのですね。
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コメント

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No title

5分アニメは、映像ソフトになった時の「気軽に買える感」が凄いです。
「12話入って3000円~5000円!特典もつくよ!」と言われると、ついつい「おお!安い!買いだ!」と思っちゃうんですよね。5分アニメだから総尺数は30分アニメの2話強分くらいなんですけれども。
30分アニメの映像ソフトに慣れた我々にしか効かない数字のマジックであります(笑)。
それもあっての「5分アニメのほぼ全てが黒字」なのかも知れません。
今後5分アニメに慣れた視聴者が、果たして映像ソフトを買うのか、というのがポイントになりそうですが、しかし最初からそれほど多くの売り上げを見込んでなさそうでありますので、売れようが売れなかろうが「黒字」にはなるのかもしれません……。

深夜5分アニメは、まだ劇場公開を果たした作品はありま……『秘密結社鷹の爪』がありましたね。
今後深夜5分アニメは、5分アニメでウケたら30分アニメへ、という流れになっていくのではないかとも思います。

しかし、5分アニメの急増は、業界がいよいよ最終手段に踏み切ってきたのか、という印象を持ってしまいます。
どちらにしても我々としては「買い支える」しか選択肢は無いのですが……。

No title

飛翔掘削さま

 コメントありがとうございます。
 どれだけ作り込んでも5分~15分のアニメなら、むやみやたらに制作費が高騰したりはしないでしょうから、クオリティにも限界があって、当然面白さの質も限定的になりますよね。反面HDクオリティのアニメには、まだ可能性があるかもしれない。「ゴティックメード」なんて作品は、その究極の姿かもしれません。すべてがこれを目指す必要などまるで無く、適材適所であればいいと思います。

 ですが買い手にとっての5分アニメって、おっしゃるようなトリックはあると思います。なんかお得でいいよね!って感覚。それで購買が進むのであればそれに越したことはないのですが。

 ここは商売原理とは異なりますが、どれも黒字であるからってイイってもんでもないでしょうが、むしろ赤字覚悟で作る作品もあるけど、他の黒字で補填するからトントンね、ぐらいのほうが業界の盛り上がりとしては歓迎すべきかなと思わないでもありません。

No title

こんばんは、記事内容全部拝読した上で恣意的な話をさせていただきます。
ビジネス「チャンス」というより、とりあえずリスクも稼ぎも少なめだが堅実的な「チョイス」だと思います。アニメ制作が博打というわけじゃないですが、やはりそのうえ大ヒットを求めるのに、5分アニメでは難しいでしょう(GOLDEN EGGSみたいな特殊な例もあるが)。
とまあ、こちらの話はまにまにさんのほうが詳しいくらいですので、もう一つのメリットを挙げてみます。5分アニメとはいえ、やはり制作手順は30分アニメとまったく同じものなので、アニメスタッフを育成するうえでは「比較的に手軽に育成できる」という利点もあると思います。ただし、これはきっとどの記事も取り上げることはないポイントでしょう。

No title

kaito2198さま
 コメントありがとうございました。
 なるほどね、その視点は失念してました。時間が短い作品が増えることで、スタッフを底上げして、なおかつ登用の機会を増やすと。30分×1年間という大作がほとんど消えた現在の深夜枠アニメの現状で、確かに新人の監督が登用されたことで、現在の人材の広がりを見せています。その意味では時間の短い作品が増えることで、作品数が増えていくことは歓迎すべきなのかもしれません。

 ただ、なんというか、富野監督のようなストーリーテラーですらあるような監督までは、生まれにくいかもしれませんね。5分、10分の作品の作品をいくら重ねても、30分×1年間の壮大な物語を演出できる人材は、果たして生まれてくるのでしょうか。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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