「THEビッグオー」~特撮というアプローチ、記憶という罠~

 「THEビッグオー」という作品を語る際、どうしても40年前に何がおこったのか?とか、パラダイムシティという世界観とか、ビッグシリーズの出自だとか、作品中にちりばめられた多くの謎に関する言説が気になるところだろう。筆者もそうした部分をいろいろ考えてみるのが楽しかったし、なんといってもリベットが浮き出た無骨でロボット然としたフォルムのビッグオーが活躍する、ロボットアクションを楽しみに見ていた。んで好きなもんだから、記事を書くにあたって見直していたのであるが、見ている途中でわりと上記のこまごまとした話がどうでもよくなることに気がついた。それはとっても単純で、とっても当たり前なことに気付いただけで、わりといろいろとどうもよくなって見えてきたおかげで、この「THEビッグオー」という作品がまた好きになったのである。今回も小ネタではあるが、そんなお話を書いてみたい。お付き合いいただければ幸いです。

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(2011/12/22)
宮本充、矢島晶子 他

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<作品概要>
 「THEビッグオー」は1999年から2000年にかけてWOWWOWで放送されたロボットアニメ。当初は1クール13話のみが放送され、その後2003年にもう1クールが放送された。現在発売されている映像ソフトでは最初の1クールを第1シーズン、後の1クールを第2シーズンとして明確に区別されている。監督は片山一良氏。
 40年前に起こった「何か」によって人々の記憶(メモリー)が失われた街。その街の名は「パラダイムシティ」。大小のドームに富裕層が住居し、ドームの周囲に貧民街が並び、ドーム同士を主要道路がつないでいる。街で最も大きなドームは巨大企業「パラダイム社」が所有しており、街全体を支配している。そのパラダイムシティで一番の腕利きネゴシエーターとして名をはせている男がロジャー・スミス。彼は依頼を受けて様々な難事件にネゴシエーターとしての能力で立ち向かう一方、メガデウスなどを相手にするときには、メガデウスの「ビッグオー」を駆り、事件の解決に乗り出すのだ。こうしてアンドロイドであるR・ドロシーとともに、メモリーに振り回される悲しい人々の事件を解決しながら、やがてこの世界の秘密にかかわる重大な事件に巻き込まれていく。はたしてロジャーが垣間見たこの世界の真実とは・・・?

 40年前のすべてが失われた世界で、唯一残った街パラダイムシティ。かつてマンハッタンと呼ばれたその街を舞台に、ロジャーやドロシーが巻き込まれていく事件を解決する1話完結の物語でありながら、少しずつ提示されていくこの世界の謎はこの作品の数多い魅力の一つでもある。メガデウスの出自やこの世界の成り立ち、40年前に起こった事件の謎、そして現れてはビッグオーの前に立ちはだかるビッグシリーズたち。第1シーズンではまったく解明されないままであった謎の数々であるが、謎のいくつかについては第2シーズンで解答を得ているものの、それでもすべての謎が解明されたわけではなく、含みを持たせたままで終了している作品だ。「新世紀エヴァンゲリオン」以降、作品世界のすべてを説明しないまま作品が終了する作品が増えたというのは、間違いないことだろう。そうした製作スタイルに納得しない向きもあることもわかる。誰もがその謎の解明を待ち望みながら見続けたファンにとっては、まさに裏切りなのかもしれない。その気持ちはよくわかりますけどね。

<この素晴らしき世界で・・・>
 本作の魅力の一つに、登場するロボット・メガデウスの存在が挙げられる。本作の企画の発端にOVAの快作「ジャイアントロボ THE ANIMATION」があり、デザイナーのさとうけいいち氏による「ジャイアントロボとは異なるアプローチのロボットアニメ」の企画として作られたのが本作だという。そして本作に登場するメガデウスの特徴を一言でいえば、「特撮ロボット的」であるということだ。これは単巻で発売されていたDVDのブックレットでも明かされていることだが、デザインとしては「スパーロボット レッドバロン」などを参考にして描かれているという。作画においても特撮ロボットの着ぐるみ風な「シワ」を書き込んでくる作画マンを待望したところ、そうした作画を挙げてくる人はいなかったというインタビューが残されている。確かに間接部分などが省略され、蛇腹状に書かれた股関節や、問答無用に変形する手の形状、ギミックが多い割にそれを支える手順の省かれた動きなど、特撮ロボットの着ぐるみを意識した動きが多いのもうなずける。それに気がつくと、本作のカートゥーン的なキャラクターデザインや、どこか懐かしくってユーモラスなロボットの動きにも好感が持ててくる。ところがこうした「特撮的」な要素は、別にロボットだけではないのである。

もちろん目に見える範囲でいえば第1シーズンのOPの楽曲や映像などは、まったくのオマージュであることなどは言うまでもない。またパラダイムシティの遠景を見れば、ドームやその周りに立つビルの情景などは、ミニチュアのセット感があふれている。ロジャーがこのパラダイムシティの秘密を探ろうと地下に潜るエピソード(Act:04)があるが、ビッグオーが移動するための地下鉄のあるよりも深い場所にあったのは、アーキタイプと呼ばれビッグシリーズの1体と、それが打ち捨てられていた広大な空間が、ごみともつかない何かと一緒に広がっていただけだ。これを見る限り、上にある街がつくりものであることは一目瞭然だ。Act:09に登場したベックの乗るロボットは、どう見ても「レッドバロン」の敵ロボット然としているし、第2シーズン Act:18に登場する合体ロボットは、戦隊シリーズにでも出てきそうなデザインだ。本作の脚本の大半を書いている小中千昭や長谷川圭一は特撮作品でも腕をふるっている作家である。そしてとどめは、本作第2シーズンの最終回Act:26において、この作品世界のすべてが暴露される。背景は書き割であり、まるでしつらえたステージの上に乗っかっているパラダイムシティのセットに、年の上空から光を当て続ける撮影用のライトなど。それはまるで特撮撮影用のセットであり、円谷特撮のような広いセットではなく、「サンダーバード」や「キャプテンスカーレット」を作ったジェリー・アンダーソンの作った特撮作品のセットに近いものを感じるのだ。

 この作中世界と現実の錯誤感。最初に筆者がこれを見たときには、迷わず「勇者特急マイトガイン」の最終回を思いだしたし、「機動新世紀ガンダムX」におけるニュータイプの扱いの件を思いだした。2作品とも高松信司監督作品であり、最終回あたりで現実と作中の垣根を突破し、その境界を曖昧にすることによって、他作品と差別化した特徴を持つ作品だ。劇中の人物が2次元の存在であり、敵を(実在の)三次元の人間であるという「マイトガイン」に見られた錯誤感はやや本作に近い。特に世界観の作り込みがそのままセットに結実する本作の錯誤感は、見る者に裏切りにも似た背信行為にようにも思えるのだが、そうやって明かされてみると、ああ、なるほどと腑に落ちてしまうのが、本作での錯誤感の特徴といえるだろう。

<40年前に失われたメモリーとは?>
 さてこうして考えてみると、本作のキーワードとなっており、数々の事件の発端ともなっている「メモリー」という存在が気になるところであるのだが、先の「特撮」というワードが、これに答えをもたらしてくれる。劇中では「40年前の記憶を失った街として想像された舞台であり、メモリーの有無を問うことはナンセンス」だというセリフがあったが、これがすべてだといっていい。その意味するところは、本作の監督である片山一良氏の年齢が、第1シーズン放送当時40歳であったことに起因するのではないか。本作を製作したデザイナーのさとうけいいち氏にしたところで30代中盤に差し掛かっており、脚本家の小中千昭氏や長谷川圭一氏にしたところで、その40歳前後の年齢だったのである。つまり本作に投入された特撮的なアイデアや物語、アニメーションとしての見せ方やデザインセンス、楽曲の取り組み方にしたところで、本作に参加しているスタッフの「記憶」に依存しており、それゆえに彼らの生まれた以前の作品は参照元としていない。つまり40年前の記憶がない世界として成立している本作の世界観は、監督をはじめとするスタッフの40年という年齢によって縛られており、それ以前の記憶は本作の世界に持ち込まれていないという証明をしていることになるのではないか。メモリーの有無を問うことはナンセンスだといったセリフの真意は、そもそもこの世界には40年前の記憶など、最初からないのであるということであるから、この「40年前」が何によって誘導されるかを考えれば、おのずとこの結論にたどりついてしまうことになる。

 そういう思考の帰結として、「THEビッグオー」という作品を鑑賞する際に、こうした世界観の謎といったタームは、まったく意味を持たなくなる。一見すると「新世紀エヴァンゲリオン」のTV版において、最終回でも謎を明かさずに物語すら放り投げてしまうやり方を思い出してしまいそうになるのだが、上記の事情を考慮すれば、そんな謎など初めからなかったという結論であれば、それについ集中してしまうのは作り手たちの罠にまんまとはめられてしまっていることに他ならない。逆にそこにどっぷりハマってしまうことで本作が楽しめないのであれば、それはまた本末転倒といわねばなるまい。だとしたら、そうした謎をアクセントとして流しているぐらいで、本作の表層的な面白さを楽しめば、それで十分なのではないかと思えるのだ。こうして作品にばらまかれた瑣末な部分を、さらっと流しながら見ている分には、本作はとても楽しいロボットアニメであるといえる。また無愛想なアンドロイドのヒロイン・Rドロシーの成長や、一見万能とも思えるロジャー・スミスでもどうにも救えない人々の喪失感を見れば、物語の面白さだって十分に楽しめる作品だ。

 こういう作品が80年代に存在するわけではなく、これはやはり「エヴァ」以降の作品であり、アフターエヴァとしての性格を持っている作品であることは、疑いえない。ただしエヴァのように放り投げた形ではなく、明かしてみたら大した話じゃなかったってオチなのだ。筆者個人としてはこのオチが大変気に入っているのだが、それをして良しとしない向きがいることも承知している。また特撮テイストあふれたロボットのデザインや動きは、「ガンダム」以降の設定に縛られた自由度の少ないロボットが跋扈している状況をみれば、やはり食い足りないというのも一面の事実だろう。でもそんな否定語を並べても、本作の魅力は否定できない。特にちょいと年齢がいった特撮作品が好きな方々にとっては、世界観を含めた胡散臭さが、たまらない魅力を放っているように見えるはずだ。そしてそこには大した意味はない。これほど潔く気持ちのいい見せ方ってあるだろうかw 筆者が本作を大好きな所以である。


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(1999/11/20)
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THEビッグオー オフィシャルガイドTHEビッグオー オフィシャルガイド
(2003/07)
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今回はあまり参考にしませんでした(てへ)
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プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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