追悼 金田伊功さん~OPは作品の顔~

 2009年7月21日に訃報が舞い込んだ。金田伊功さんがお亡くなりになった。彼は70~80年代に大活躍した名アニメーターである。この訃報に接したとき、大きな衝撃に見舞われた。後年、彼はゲームの世界に身を置かれたようだ。私は金田氏が活躍された、70~80年代の多くの作品に慣れ親しんだ。今はただ故人の冥福を祈るばかりである。

 それにしてもアニメ界の偉人「金田伊功」とは、どれだけ巨大な人だったろうか。
 その功績については、彼の研究者として名高い、氷川竜介氏に頼るほうがよい。名著「20年目のザンボット3」や、キネマ旬報別冊「動画王」のVol.1での、金田氏とのインタビュー記事、また「SFアニメがおもしろい」(アスペクト)における「アニメ技巧解説」の章などがあげられる。金田氏の仕事に心酔し、研究の第一人者である氷川氏も、ご自身のブログで哀悼の意を表しておられる。興味のある方はご参照ください。

 金田氏はいわゆる「エフェクトアニメ」の巨匠であったが、この「エフェクトアニメ」とはどういう物か? 上述の「SFアニメがおもしろい」によれば、ドラマ部分の人間の動きではない、メカや物体の爆発や破壊、ロボットの戦闘シーンなどのことである。実写映画におけるエフェクト(特殊効果)に相当するシーンをアニメートすること、といえばいいか。昔からこういう言い方があったかどうかは、勉強不足でわかりかねる。だが私が「エフェクトアニメ」という言葉を意識したのは、氷川氏の上記の著作に触れてからのことだ。

 そもそもこのエフェクトアニメの第一世代は、東映動画時代の「空とぶゆうれい船」などで見られたスペクタクルシーンだそうだ。この作画には大塚康生氏と宮崎駿氏が参加していたという。その後「宇宙戦艦ヤマト」など、第一次アニメブームを見て育った世代が、アニメ業界に参加する。ここから金田氏は自身のキャリアをスタートする。つまり金田氏はエフェクトアニメの第2世代に相当するらしい。だが氏がなしてきた仕事を見れば、その偉大な功績は一目瞭然だ。

 まず私が初めて触れた金田氏の仕事は、劇場版「銀河鉄道999」である。特にラストシークエンスの惑星メーテルの崩壊シーンや、逃げるメーテルと鉄郎のシーンである。美しく、はかなく、それでいて徹底的な破壊のスペクタクルを、自身のありったけの作画で表現していた名シーンだ。惑星表面から立ち上る太陽のプロミネンスのような炎が、画面手前の地表にたたきつけられるシーン。立ち上がる炎のぐねぐねとした動き、千々に分岐する炎、そして炎の動く緩急のタイミングなど、見る者に圧倒的なインパクトを与えるシーンだ。
 この崩壊と同時に、メーテルと鉄郎の逃避行が行われる。母を裏切り、自身の半分を失おうとするメーテルの切なさと、鉄郎の少年期の心の揺れが重なる名シーンだ。鉄郎は、崩壊で落下しそうになるメーテルを助ける。握ったその手の温かさに、鉄郎はメーテルが機械人間であることを忘れそうになる。その時のメーテルの表情は、美しさに怪しさが同居する。

 そして次に目もくらむ思いをしたのが、宇宙戦艦ヤマトの劇場版3作品目となる、「ヤマトよ永遠に」だ。特に暗黒星団帝国の中間補給基地をヤマトが強襲するシーンだ。物語中盤の山場である。
 羽佐間道夫氏のナレーションが入り、偵察の先発隊が、敵中間補給基地を発見。一転してヤマトは臨戦態勢に突入し、コスモタイガー隊が発進する。基地へ到達後、コスモタイガー隊は2隊に別れて基地を強襲する。しかし開かれていたハッチを閉じられてしまい、コスモタイガー隊は、瞬時に劣勢となる。ここで古代は機転を利かせて(これ都市帝国戦の経験が生きている証拠だろう)、基地の廃熱溝より進入し、内部からの攻撃で再度攻勢に転じる。たまらず基地は移動を開始したところを、コスモタイガー隊に帰投を命じた山南艦長の命令で、ヤマトは主砲を斉射。中間補給基地は、あえなく破壊されるのであった。
 上記のシーンは、DVDなど見返すことなく書いてます(病気だね、こりゃ)。公開当時、「スターウォーズ」におけるデス・スター攻略戦を想起させるシーンで話題になったが、ここでの金田氏の仕事熱は、ひたすらコスモタイガーをかっちょよく書くことに注がれていた。コスモタイガーの攻撃シーンは、どの作品においても緊張感が漂う名シーンの続出であるが、やや攻勢ぎみの上記のシーンでは、むしろ高揚感のほうが先立ってしまい、つい戦争の悲惨さを忘れてしまう。カタパルトに控えている古代の乗るコスモタイガー(コスモゼロを置いてきているので、新コスモゼロと呼ばれてます)の、うねりのある陰影、いかにもこれから飛び出すぞといった雰囲気が醸し出されるパース、にぶく光る突起。そして古代もまた、コクピット内で真剣な面持ちでいながら、操縦桿と古代を1つの画角に入れる独特のパースなど、要所要所のいいシーンが緩急自在に織り込まれ、一方的に高揚感があおられるのだ。
 そのほか「幻魔大戦」における富士での大戦闘シーン、「さよなら銀河鉄道999」での、鉄郎対黒騎士の対決シーン(銃を持つ鉄郎の小指に注目)、「無敵超人ザンボット3」での、氏の作画回(詳細は上記「20年目のザンボット3」参照)など、テレビ、映画問わず、活躍なさっていた。

 そして(やっと本論)金田氏の一番の仕事といえば、アニメのオープニングの作画であろう。「サイボーグ009(新)」や「銀河旋風ブライガー」、「超電磁マシーン ボルテスV」「機甲創世記モスピーダ」など。後年「ふしぎ遊戯」のOPで名前を見たときには、うれしかったなあ。
 その作画スタンスは一貫している。OPの作画で、世界観や設定などを惜しみなく説明することだ。だからといって淡々と説明していたのでは、面白くない。主役をまず見せておき、次に脇を固めるキャラクターを見せる。時にはその秘めたる能力を惜しみなく表現する。そしてロボットの場合には、バトルシーンまで見せてしまう景気の良さだ。そして印象的なラストカットの止め絵によって、物語の世界観を示しながら、稲妻や光となって飛んでいったりする。おおまかにいえば、こういうOPだ。そこに金田氏特有の一見、バランスの崩れたように見えて、なんともかっこいい立ちポーズがびしっと決まったり、ロボットが剣を一閃して敵をなぎ払えば、だれもがしびれること間違いなしのOPがそこにある。
 「銀河旋風ブライガー」のOPについては、氷川氏がNHKのBS2で放送された「アニメ夜話」の第1回「劇場版銀河鉄道999」の、「アニメマエストロ」のコーナーで氷川氏が説明されていた。これはNHKで「ブライガー」が見られたという大快挙であり、あとにも先にもこれっきりの出来事であった。また女王プロメシュームの魂の炎のエフェクトや、爆発シークエンスの説明、村上隆氏のリスペクトなど、私がこういった文章を書こうと思った、きっかけの1つとなった番組でもあった。

 個人的に好きなのは、「サイボーグ009(新)」のOP映像だ。試しに動画サイトで探してご覧いただければ幸いだ。
 主題歌の前奏開始直後のティンパニーのタイミングで、光を増していく画面中心の光、ホワイトアウトして画面右からインしてくるジョーの顔。ジョーの表情はすでに切なげだ。そしてコーラスの男声にあわせて、正面から飛び込んでくる「009」の三文字でタイトルが完成だ。
 ソフトフォーカス気味のジョーの顔に、右側から9人の戦鬼がかけてくる。この時点で9人のキャラクターが書き分けられている。001はゆりかごごとふわりと流れ、003は女性らしく、006は中央でこける。ちゃんと9から1に向かって順に並んでいるのがミソだ。全員流れた後に、9人が全員集合しているシーンが流れる。このときの皆の表情に注目だ。少し遠目で描かれており、少し表情がつぶれた印象だが、007と004の表情の違いを見て欲しい。共に片眼がはっきりとしない表情なのだが、007はシニカルな笑いの、004はニヒルな表情を見せている。一瞬同じような表情でも、きちんと書き分けている。そしてジョーとフランソワーズ以外が白い影になる中で、ジョー一人の横顔にパーンする。フランソワーズに色を残すところが心憎い。
 圧巻はここからだ。009以外の8人の能力を、Bメロに乗せて一気に見せていく。叫ぶジョーを再びソフトフォーカスにして、奥から稲妻と共に現れる超能力の申し子001、やわらかに大空を飛翔する002、たおやかな表情の003、上方からジャンプダウンして右手のマシンガンを放つ004。004のマシンガンの火花のエフェクトにも注目だ。放たれた縦断の流れが、画面左から正面に徐々に移動し、我々を直撃するのだ。そして胸と顔のアップから大岩を持ち上げる、力の入った表情の005,あちこちに炎をはきまくる006,左から入り込むトカゲに変身した007は、画面中央で素の表情を見せ、008が泡沫を連れ立ってかろやかに泳ぐ。そして最後はジョーの涙で締めくくられる。実に計算し尽くされたタイミングで、歌唱に影響も与えず、邪魔にもならず、わずかな時間で彼ら9人の能力とパーソナリティが、余すところ無く表現されている。また8人の入る画面位置が、てんでばらばらになっているのがおわかりになるだろうか。9人が全員同じ方向から入ってきた最初のシーンとは対照的に、躍動感を感じる入り方である。
 特に「ゆめみてはしる しのこうや~」の最後の「や~」の時間のみでジョーは涙する。わずか数秒のシーンが、ジョー役の井上和彦氏を勇気づけ、監督の高橋良輔に方向性を与え、東映プロデューサーの鈴木武幸に作品の成功を予感させたのである。
 続いて右下より崖と海がせり出してくる。海は大荒れで、稲妻が走り、崖の上に立つギルモア研究所の窓辺に立つ、ギルモア博士の表情はきびしい。そして変形しながら海面から上昇するドルフィン2世号は、後ろ姿で去っていく。海面から顔を出したドルフィン2世号は、上昇の刹那背後のノズルからの噴射のエフェクトの瞬間に、カメラは背面を映し出す。このタイミングの良さには、まったく舌を巻く(このシーンはバンクフィルムとなっており、本編でも見られます)。そしてアップになるジョーの瞳にアップとなり、そこに稲妻が落ちると、9人が地平を走る姿で止め絵となり、OPは終了する。
 わずか1分数十秒。この短い時間の中で、「サイボーグ009」のすべてを詰め込んだ、名オープニングフィルムであることは、ガッテンしていただけると思う。と同時に、わずかな時間でこれだけの表現が詰め込める、アニメーションというものの、限りない可能性をも感じられはしないだろうか?

 ただ手放しで喜んでもいられない。
 1つは、この金田氏独特の動きやポーズについて、だめ出しをする人もいることは事実だ。なんでも「風の谷のナウシカ」に参加した金田氏は、本作の監督である宮崎駿氏に、そうとうだめ出しを食らった上に、原画修正までほどこされていたという。アニメーターとしての仕事であれば、監督の要求に応えることも、自身のパーソナリティを発揮するのと同じく価値があることである。善し悪しではないのだが、難しいことである。
 そしてもう一つは、近年魅力的なオープニングに出会えていないことだ。最近ではまれではあるが、一時的に放送開始にOP映像が間に合わないなどということが頻出した時期があった。忌まわしい話だが、私の記憶が正しければ「機動戦艦ナデシコ」や「ロストユニバース」がそうだったはずだ。両作品とも「エヴァンゲリオン」の後続として放送された作品であり、本編の質を優先させるために、OPが間に合わなかったなどの逸話が残されている。これとて当時でも珍しいケースであろう。しかし主題歌がかかるOPの映像は、作品の顔であろう。ここに心血注いで意地を見せないで、何をみせたいのか。そんな出来の悪いOP映像を見せられて、本編を楽しめと言うほうが、無理なお話だ。「エヴァンゲリオン」以降、アニメーションがビデオやLD、DVDで発売されて、それが収益になることを理解した上で、ソフト発売時に、修正することを念頭においているので、こういうことが発生する原因となっている気がする。それはもはや戦略ではなくいいわけだ。それならば「クイーンズブレイド」の乳かくしのほうがまだ可愛げがあるってものだ。こういった修正の事情も、「エヴァンゲリオン」以降であり、「エヴァンゲリオン」のせいにされるってのも、困ったものではあるが、実態としてそうである以上、養護できない場面でもある。

 すさまじく話が横道にそれたが、さまざまな作品で、媒体を問わず作品を提供してくださった故・金田氏の偉業を、今は静かに称えたい。そして彼の偉業のもう一つの側面は、さらに第3世代に相当するアニメーターを輩出したことだ。越智一裕、山下将仁、大張正己、摩砂雪など、金田氏のフォロワーである彼らの業績も、知らぬ者とていない状況である。
 金田伊功さま。本当に、本当に、すばらしい作品群を、ありがとうございました。残された作品を胸に、私たちはあなたの名前を、死ぬまでわすれません(今回も長文だった)。

追記
 今月はマイケル・ジャクソンの訃報もあり、個人的には忘れがたい年となったのだが、今朝の新聞で、脚本家・高久進氏の訃報を知った。数々の刑事ドラマや特撮作品、新聞報道にもあるように「マジンガーZ」などの脚本でも知られる氏が亡くなったことについては、さらなる衝撃を覚えた。この連鎖、断ち切りたいものであるが、小さきこのに身に何が出来ようか。ただひたすらご冥福をお祈りいたします。
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テーマ : 映像・アニメーション
ジャンル : 学問・文化・芸術

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