「APPLE SEED」~どうしてこんなに作り続けられるのか?~

 たとえば特撮の世界では「ウルトラセブン」という作品は、何度も映像作品として世に送り出されている。最初の「セブン」から時間軸を同じくしながら、後日談として描かれていたり、「私が愛したウルトラセブン」などのような制作背景をフィクションとしてドラマ化した作品まである。視聴者以上に作り手に愛されている作品だといえる。最近放送されていた「怪奇大作戦」なんて作品もまた、完全にキャストを一新しながらも新しい切り口で物語が紡がれており、息の長い作品となった。例に挙げた上記2作品は円谷作品なので、こういったことは特撮だけなのかと思うと、これがさにあらず。「キューティーハニー」なんて作品は、アニメとマンガとして誕生しながら、実写映画や特撮TVシリーズとしても作品が作られている。これもまた同じ傾向といえるだろう。士郎正宗氏原作のマンガ「攻殻機動隊」という作品も、マンガでスタートしながらも押井守監督の手によって劇場用アニメとして作られた後、「イノセンス」や「~SAC」シリーズと作られ、現在も「~ARISE」が作られている。
 こうした作り続けられる作品には、作品自体が協力に放つ魅力が存在し、その魅力には様々な理由が挙げられる。その理由は作品個々で異なるのだが、逆にどうしてもはずしてはいけない「核」となる部分があり、その肝心の「核」を抑えていさえすれば、どのようなアレンジをも受け入れる度量がある。同じ原作者の作品で、今回扱う「APPLE SEED」もまた、こういった作品に連なるものだ。


アップルシード (1) (Comic borne)アップルシード (1) (Comic borne)
(1985/02)
士郎 正宗

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<作品概要>
 「APPLE SEED」は1985~1989年に執筆され、物語は未完ではあるものの、その後作者によって凍結宣言をされて現在に至っている。1988年にはガイナックスにて制作されたOVA「アップルシード」が発売され、模型誌などにも取り上げられ人気を博す。原作漫画は判型を変えて販売されたりしつつ、「攻殻機動隊」関連と一緒に認知度を上げていく。2004年と2007年には荒牧伸志監督の手によって映画化されている。どちらもフルCGによる作品であったが、主人公・デュナンをCGのキャラクターとして作り上げるために、表情をトレースするための女優、体の動きをトレースするためのアクション俳優、声を出すための声優と3人の人物をつかってデュナン一人を作り上げるという念の入りようで、観る者の度肝を抜いた作品だ。そして2011年には「アップルシードXIII」として新たに作品化され、メディアミックスとしてマンガ化もされている。

 物語の基本的な骨子は以下の通りだ。5度にわたる世界大戦で荒廃した世界の中で、デュナンとブリアレオスの二人が生き残っていた。だが二人の知らないところで世界の再生が始まっていた。そして新しい秩序をうたう世界からやってきた一人の女性・ヒトミによって二人が連れてこられた場所は「オリュンポス」。そこはバイオロイドと呼ばれる人工的に感情をコントロールされた人々たちによって人口の半分が占められている街であり、人間とバイオロイドが共存する世界だった。この世界でSWATととして働きくことになったデュナンとブリアレオス。まさに理想郷のように見えるこの街にも、いくつものほころびが露呈する。そのほころびから生まれる様々な事件に関与するデュナンとブリアレオスを通じて物語は進んでいく、といったものだ。前述のように未完である。

 タイトルの「APPLE SEED」はリンゴの種を携えて旅をしたという西部開拓期のアメリカの偉人である一人の男の伝説を元にしているという。よくよく考えると、この物語における「リンゴの種」が何にあたるのか?がはっきりしないのではあるが、この話題についてはまたあとで触れてみたい。

<基本構造をばら・す>
 この「APPLE SEED」の世界は、いくつもの要素からできている。その要素を箇条書きで書き出してみたい。

・ミリタリー
・未来的メカニック
・遺伝子工学(バイオロイド)
・倫理(感情の抑制されたバイオロイド)
・世界大戦後の退廃した世界とオリュンポスの近未来的世界の対比
・人間の女性とロボット化した人間の男性の愛
・バイオロイドと人間の共存

もっと細かい要素はいくらでもあるだろうが、こうしてみると意外にシンプルなタームが並んだ感じがしないだろうか? SF的要素としての遺伝子工学や倫理の問題がある一方で、作品を構成する要素自体がシンプルで触りやすい手触りのよさを感じるのだ。同じ原作者の作品である「攻殻機動隊」と比較してみると、コマの外に山のような注釈がある「攻殻」よりも、わかりやすく感じるのは筆者だけではないだろう。もっともかつて「マンガ夜話」にて「攻殻機動隊」を取り上げたときに、岡田斗司夫氏によれば、この注釈とマンガ内表現こそが「頭がいいマンガ」という評価につながるのであるが・・・。

 そしてまた主人公の二人であるデュナンとブリアレオスというコンビがまた、男女でありながらバディものとしても機能していたり、二人の周囲にいるバイオロイドのヒトミたちが、人間とバイオロイドの格差を見せつけたり、オリュンポスというこの世界の統治者でありながら、なにやら秘密を多く抱えていたりしそうな組織といい、ある意味でおぜん立てが出来上がっているのである。これだけ多くの種がまかれた作品だから、物語内で自然発生的に事件が起こることになる。誰が見ても事件が起こることが必然にように感じられる世界観なのだ。ここ重要(笑)。つまりこうしたいくつもの事件の起こる種こそが「APPLE SEED」そのものといっていいのではないだろうか。西部開拓時代に一人の男がまき続けたリンゴの種は、その後に様々な事象を引き起こす遠因となった、と考えてみたら、この作品タイトルがどれだけ皮肉かって話で・・・・。

<ところがね・・・>
 OVAでも2004年の劇場版でも、オリュンポスが誇る対空防御システムである多脚砲台が動きだすことで、オリュンポスが壊滅の危機に陥るというエピソードを下敷きにしている。この事件自体も上記のように作品世界にまかれた多くの種によって、いかようにも解釈された結果、原作とは別の2つの物語が紡ぎだされている。ただですね、2004年劇場版においては、OVAや原作ではなんとなくぼやかされていた「アップルシード」に、意味を持たせてしまったのである。これは大変大きなお世話な感じのいらぬ出歯ガメであり、完全な蛇足である(笑)。とはいえ「アップルシード」の正体が物語の中心にあり、しかもデュナンの生い立ちにまで関連してしまうので、ここでネタばらしするぐらいならぜひとも本編をご覧いただきたいところである。なので、一概に批判すると、そのまま作品批判になってしまうので、いかんともしがたい。

 「APPLE SEED」は作品の骨子となる構造がSF要素満載であるながらシンプルで、触り心地がいい半面、作品世界にまかれた多くの構成要素は、事件が起こるべくしてちりばめられている。そのくせ物語はまるで中空構造のようになっているから、いかようにも物語が組みやすい。そのあたりが作り手に愛される要因の一つだろう。そもそも構成要素の一つ一つがSFアニメ好きにはよだれものの要素であるから、そこをうまく汲み取ればさまざまなアレンジができそうな気がする。事実2007年の「エクスマキナ」や2011年の「XIII」も、この範疇に相当する。ちなみに「XIII」のマンガ版ではオリュンポスの面々がなぜか関西弁だったりする(笑)。こういうアレンジはどうしたもんかと思うのだが、こうしたアレンジも引き受けてしまえるあたり、本作の度量の広さを示すものだとも思える。


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