仮面ライダーウィザード~魔法の力と父親の尊厳~

 この9月末に、大人気を博した「仮面ライダーウィザード」が最終回を迎えた。51話で本編の物語は終幕し、最終2話は平成ライダー勢ぞろいとなるイベント編として完結した。最終2話に関してはまた別途章を設けるが、まずは51話までの本編について書き残しておきたい。本作はSF設定に寄った前作「仮面ライダーフォーゼ」との差別化のために、逆にファンタジー寄りに作られている。それがモチーフとなっている「魔法」「指輪」「架空の生物」といったものに込められている。本作での「魔法」は「指輪」というアイテムを通じて発現するが、その力の源はまた別途の事情で発生している。まずはこの「魔法」という力についていろいろと考えてみたい。

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<まずは物語概要から・・・>
 「仮面ライダーウィザード」は2012年9月から約1年放送された、平成仮面ライダーシリーズの14作目に相当する。前述の通り本作は「魔法」とその力のありようを問う物語であった。
 女性刑事・凛子の目の前で、謎の怪人に襲われていた警備員を助けたのは、赤い宝石をかたどったような姿をした「ウィザード」と呼ばれる魔法使いだった。ウィザードに変身する魔法使い・晴人は、コヨミと呼ばれる少女に魔力を分け与えながら、「ゲート」と呼ばれる魔力を持った人間が、絶望することで生み出される「ファントム」と呼ばれる怪人と戦っていた。晴人たちが住みつく面影堂に集まる晴人の仲間たち。彼らの協力を得ながら、できるだけ多くのファントムを生み出すために暗躍する、謎の人物・ワイズマン率いるファントムたちと戦いながら、絶望の淵に落とされそうになる人々を、晴人は魔法の力で救っていく。魔法使いとなって魔力を食べ続けなければいけなくなった仮面ライダービーストこと攻介との和解と共闘を経て、晴人たちは物語の根幹にかかわる重大な事態に直面する。そも晴人が魔法使いとなった理由は、かつて何者かの手により実行された魔法儀式・サバトの中で生き残ったことによる。その時に晴人は白い魔法使いによって見出され、魔法使いになった。その際、コヨミを託された晴人は、コヨミを最後の希望として他人のために魔法を使うことを自らに課したのである。そのコヨミの右手に光るひび割れが入り始めた。晴人が魔力を送り込んでも一向に改善しない。そんな中、ゲートでありながらファントムとならなかった、魔法使い候補となる人間たちと出会う晴人たち。晴人を含め4人の魔法使いがそろった時、晴人を影から支えてきた白の魔法使いが、その隠された真意の牙をむき始める。ファントムたちを率いてきたワイズマンは白の魔法使いと同一人物であり、その人物・笛木こそはコヨミの父親であったのだ。失われた娘・暦の命を助けるために、笛木によって作り出されたコヨミの体内には「賢者の石」が埋め込まれており、コヨミの体は「賢者の石」によって維持されているという。そのために晴人は白の魔法使いに選ばれて、コヨミに魔力を与えるために魔法使いにしたという。そして4人の魔法使いを生贄としてサバトを行うことで、コヨミを暦として復活させようと画策していたのだ。用済みとなったファントム・メデューサさえも殺してしまう白の魔法使い・笛木。だがファントム・グレムリンは自らの願いを叶えるために、独自に行動する。共に歩んできたコヨミを助けるために、あえて自らサバトの生贄となる晴人。だがサバトが無関係の人々の命まで奪うことを知った晴人は、他の3人の魔法使い同様鎖に繋がれたままサバトが始まってしまう。そこに駆け付けたのはビーストの攻介。彼は自分に取り込んだキマイラを解放し、サバトで生まれたファントムを食らいつくしてしまい、サバトは失敗に終わる。再びサバトをやり直そうとした笛木を襲撃したのは、単独行動をとっていたグレムリンである。彼は自分の欲望である人間に戻りたいという願いのために、コヨミを殺害して体内から賢者の石を抜き出してしまう。晴人の腕の中で息を引き取るコヨミ。失意に暮れる晴人ではあったが、コヨミの最後の「静かに眠りたい」という願いを叶えるために、賢者の石で最強となったグレムリンと戦い、これを倒す。そしてコヨミの賢者の石から誕生した指輪を安置するべく、晴人は旅に出る。彼を慕い、集まった頼もしい仲間の下を後にして・・・

<魔力の強さとは?>
 本作でいう「魔力」あるいは「魔法」というのは、晴人が指輪を介して発現するさまざまな能力のことである。一方で晴人以外の魔法使い以外の人間が魔法を使う場合、それはひとえに「ファントムの発現」となっている。ファントムとは絶望した人間が怪人化した状態のことをいうのだが、晴人や攻介も体内(自分のアンダーワールド)にファントムを秘めている。つまりこの世界でいうところの「魔法や魔力」というのは「ファントムが持ち合わせている力」を人間が行使した力だと言える。この自分の中にファントムを入れるという行為を恣意的に行ったのが白の魔法使いこと笛木であり、彼が取り込んだファントムすら、笛木が人工で作られたファントムだという。このあたりから話がややこしくなってくる。この笛木という男、物理学者でありながら医学や科学の知識をもって科学と魔法の融合を行った人物とされている。ということは、この世界の魔法とは、笛木によって科学で体系づけられた力ということになる。笛木はひとえに失われた娘を取り戻すために、その研究成果を使用したのであり、あくまで私的な利用にとどまっている。その良しあしを言いたいのではない。むしろあまりにも魔法の科学体系を私的に秘匿しすぎたために、彼の発想もまた内側に突き進んでいったのではないか?と疑いたくなるのだ。もし彼の研究成果が世界に発信されたならば、よりよい方法論を導き出せたのではないかという想いが、どうしても生まれてしまうのだ。

 実はそのタコつぼ的な笛木の思惑は、対する晴人があくまで自分以外の他人のために魔法を使うという限定的な自己犠牲精神との対立事項となっている。ところがその笛木を断罪するはずの人物は晴人ではなく、より一層自分自身の欲望を満たすためだけに魔法を使おうとしたグレムリンなのである。グレムリンの素体となった人物はそもそも殺人鬼であったという変わった経歴の持ち主で、本来ファントム化した場合には素体の人間の記憶や性格は欠落するそうだが、彼だけは自意識を保ったままファントム化していたという。その自意識ゆえに、人間でもファントムでもどちらでもない中途半端な存在である自身を嫌い、人間に戻ろうとした。ここでもう一つ明らかにされることがある。魔力の強弱は、その願いの強さやファントム化するときの自意識の強さとは無関係であるということだ。その願いの強さなら、晴人よりも笛木やグレムリンが圧倒的に強いはずだし、笛木とグレムリンの直接対決は笛木がグレムリンを圧倒していたのに、あっさりと笛木はグレムリンに不意打ちをくらっている。その意味ではこの世界における個々人の魔力の強弱は、基本的に大差ないと言っていい。だとしたら、最終的に晴人がウィザードとして戦いぬいてこられた事情に理由がないのである。物語の必然としてコヨミの賢者の石というアイテムがあって最終決戦に勝ち残ったとしても、晴人は魔力を失ったわけでもないし、賢者の石というアイテム自体の魔力が、この世界の何にもまして強かったということになる。そう結論付けると、劇中最強の魔法使いはコヨミでなければならなくなる。あれ?

もう一つ指摘しておきたいのは、ファントムの発現がゲートと呼ばれる人間の絶望がキーになっていることである。これどこかで聞いたことがないだろうか? 最新作が劇場公開になった「魔法少女まどかマギカ」における「魔法少女→魔女」のコンバートもまた、「絶望」がキーワードとなっていた。つまり本作における魔力の設定には、「まどかマギカ」の影響が多分に見え隠れしているのだ。どちらも「絶望」によってエネルギーの膨大な相転移が起こっており、プラスが一気にマイナスに転じることによってファントム化したり魔女化したりする。本作では逆にファントム化しようとする人間でも、希望を見出すことさえできればファントム化する現象をリセットできる。晴人のキメ台詞である「俺がお前の最後の希望だ」ということばは、まんま「晴人=まどか」である証明なのだ。

<父親の復権>
 年齢が近いせいか、どんなにヒーローが活躍しようとも、最近は年配のキャラクターに思い入れしてしまう。特に面影堂の店主・輪島繁のおやっさんという立場や、必死に娘を取り戻そうと願う笛木のほうが気になって仕方がない。平成ライダーシリーズには、レギュラーキャラクターの父親という存在が、物語で重要な役割を演じることがある。「仮面ライダー剣」に登場するオペレーター・栞の父親は、トライアルシリーズの研究を続けつつ、自分自身もトライアルに取り込まれながらも、父親の意識を保ったまま死んでいくという複雑なドラマを見せてくれる。「仮面ライダー555」には流星塾に通っていた子供たちの父と呼ばれていた人物は、「スマートブレイン社」の社長であり、事件の黒幕であった。「仮面ライダー響鬼」では響鬼さんと明日夢くんの関係は師弟であると同時に、父親と離れて暮らしている明日夢くんにとっては父子のような疑似関係と見えなくもない。「仮面ライダーW」に登場した仮面ライダースカルこと鳴海壮吉という人物もまた、左翔太郎の父親的な存在だった。そも昭和の仮面ライダーシリーズにだって、立花藤兵衛や谷源次郎という父親役がいる。特に立花のおやっさんは本当の意味でライダーたちの育ての親だといえる。彼らが導き叱咤し、ともに喜び笑いあった日々があって、ライダーたちは困難な戦いの日々を続けていられるのである。やはり視聴ターゲットである男児や一緒に見ているその親を意識しているのか、登場人物の両親が悪にまみれるという例は少ないように思う。特に本作における笛木の最後にしたところで、前述のように彼の画策したサバトがいかに極悪非道だとしても、その目的である娘を助けたいという想いや、その純粋なまでの親子の愛を否定したりはしていない。その証拠に、本作の事の発端はどうみても笛木であるのに、ラスボスはあくまでグレムリンだった。なんというか「戦隊シリーズ」だと母親と子供の関係性はよく取りざたされるし、ドラマのアクセントになるのだが、こうして父親が物語の重要なキーマンとして登場するのを見ると、(筆者には子供がいないものの)なんだか照れくさいのである。とはいえ、アニメ・特撮の世界を見てみると、意外なほど親との関係性がオミットされていることによく気付かされることがある。昨今の日本人の親子関係が関係薄く、それが作品に反映されているのは仕方がないとは言いつつも、ドラマのアクセントではなくこうして笛木のようにガッチリと物語の根幹に食いついている父親キャラクターも珍しい。同じ魔法がモチーフの「魔法戦隊マジレンジャー」のマジレンジャー5人の父親の魔法使いというのも思いだしたが、最初は敵として主人公たちの前に立ちはだかり、超えるべき壁となって存在し、最後は味方となって子供たちと一緒に敵と戦うなんて、まさに父親キャラクターのいいとこ取りな感じの人物であった。しかも「花嫁の父」なんていうオプションまで付いていたのである。これは実にオイシイ(笑)。アニメ作品に登場する父親が、どうしてもバカ父だったりダメ父だったりしている分、特撮の父親ぐらいは現実の「父親の復権」に貢献してほしいと心から思う。


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テーマ : 特撮・SF・ファンタジー映画
ジャンル : 映画

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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
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戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
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後期必殺を好み、
スタートレックは
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