魔法騎士レイアース~その2・光が残した影と後悔の回収~

<作品概要(後半)>
 現世界に戻ってきた光、海、風の3人は、異世界セフィーロでの出来事を振り返り、ただ無力感と後悔にさいなまれていた。東京タワーで再会する3人は、その後悔と向き合いながら、再びセフィーロに戻ることを願う。その刹那、あのときとまったく同じようにまばゆい光に包まれる3人は、本当にセフィーロに再び舞い戻ることになる。ところが彼女たちの目の前に現れたセフィーロの姿は、以前とは似ても似つかない荒涼たる台地がむき出しの荒れ果てた世界だった。セフィーロの中央にそびえたつ城で導師クレフと再会した3人は、柱を失って崩壊の危機に瀕しているセフィーロに他国からの干渉が始まっているという深刻な事態に直面していることを知る。またクレフによれば、柱のいないセフィーロでどうやって3人が再び召喚されたのか、その事情がわからないという。かつて戦った人々が味方となって城で再会し、死んだと思っていたプレセアとも再会した3人は、改めてセフィーロのために戦うことを誓う。だが光は夢の中で見た悪しき幻影のことを、誰にも話せずにいた。


魔法騎士レイアース 2 (なかよしメディアブックス 26 なかよしアニメアルバム)魔法騎士レイアース 2 (なかよしメディアブックス 26 なかよしアニメアルバム)
(1997/01)
CLAMP

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 セフィーロに干渉を始めた国とはオートザム、ファーレン、チゼータの3カ国。オートザムは緩慢な滅亡へと向かう国を救うため、チゼータは国土拡充のため、ファーレンは第1皇女アスカのわがままによって、セフィーロに攻め込んできている。それぞれの国の戦力との戦いの最前線に立つ魔法騎士の3人は、それぞれの国がセフィーロに侵略を企ていていることを知る。セフィーロに戻った3人は次の「柱」候補となる人材を求めることとした。新しい柱が決まってしまえば他国の干渉を退けられると考えたのだ。だが魔獣が頻出するセフィーロの城外に出ることは危険を伴う。光はザガートの弟で、かつてオートザムで暮らしたことのあるランティスと一緒に「柱」候補探しの旅に出る。その旅の中でランティスへの想いを募らせる光であったが、夢に登場する謎の少女ノヴァの影にもさいなまれていた。そんな隙をついてオートザムのイーグルが光を拉致する。光は捕らわれの身でイーグルたちからオートザムの現状を聞く。オートザムは機械化によって人の精神エネルギーを消費していく故国を救うために、セフィーロの「柱」システムを必要としているのだ。ランティスによって救出された光だが、夢の中で出会った少女・ノヴァと出会うことになる。そしてノヴァの背後でセフィーロ滅亡をたくらむデボネアの存在を知る。ノヴァが操る魔神レガリアの猛攻を、レイアースで受け止める光。海や風の魔神も駆けつける中、レイアースの剣はレガリアにへし折られてしまう。剣の破壊とともに戦意を失った光ではあったが、プレセア(実はその妹のシエラ)によって再び剣と戦意を取り戻す。だがついにイーグルたちオートザムはセフィーロに攻め込んできて、イーグルは城の中に潜入を果たす。激しく争うイーグルと光。だが場内にまで進入してきた魔物を退治するために後手に回ってしまう城の仲間たち。なんとかイーグルを捕虜とすることで一瞬の平安が訪れるセフィーロ城であったが、場内に現れる魔物は後を絶たない。だが魔物を恐れる子供たちの悲鳴が、魔物をさらに強くすることを知った海と風は、セフィーロの人々の恐怖が魔物を生み出していることを知る。そして再びファーレンとチゼータの攻撃が始まる中、海と風はセフィーロの柱システムにまつわる悲しい話を語り、それぞれのやり方で2国の侵略をやめさせることに成功する。一方ノヴァは光が愛するランティスに目をつけ、ランティス抹殺に動き出す。だがランティスの心の強さに撤退を余儀なくされるノヴァ。ノヴァの正体とは、エメロード姫を殺してしまった後悔からセフィーロに残した光の影だったのである。ノヴァは光の心の隙をついて精神攻撃を繰り返す。
 捕虜にされていたイーグルがついに動き出した。イーグルは、今は亡きエメロード姫の王冠が収められている王冠の部屋へと侵入を試みる。その王冠こそ、「柱」候補の力の証であり、王冠はまるで生きているような水に守られていた。王冠の間に突入したイーグルと、それを止めに入ろうとした光。だが気がつけば、王冠の部屋の前で気を失っている2人がいた。それは2人が「柱」候補であることを告げていた。光とイーグルのどちらが柱となるべきか? セフィーロの崩壊が進む中、その問いをよそにノヴァがレガリアで襲撃してきた。イーグルはその短い命を戦士として燃やしつくすと決める。彼はセフィーロと友人である光たち魔法騎士を守るために戦いに赴く。光の怒りにふれたノヴァは、心の中の戦いでも光に圧倒され始める。光の心の強さがついにノヴァの攻撃を退ける。そして真の敵・デボネアまでも襲来すると、デボネアに挑もうとしたイーグルはその強大な力で殺されてしまう。デボネアがセフィーロの裏側にいることをアルシオーネから聞き出した魔法騎士たちは、デボネアに最後の戦いを挑もうとする。魔法騎士たちはセフィーロを守れるのか? そして最後の「柱」候補となった光の願いとは?

<後悔の影が生み出したもの>
 さて前段ではラストをぼやかしていたが、光はノヴァを自分の心の中に迎え入れ、魔法騎士3人でデボネアを打倒する。光はセフィーロの「柱」となって、セフィーロの「柱」システムをなくすという選択をもって、その役割を終えて3人一緒に現世界にもどっていく、というラストで締めくくられる。切ないのは光はランティス、海はクレフ、風はフェリオといったそれぞれが想いを寄せる相手との別れが、ラストで描かれることだ。この別れは物語が始まった時に決まっていた別れである。2部の話はやや時間に余裕がある作りで、話がゆっくりと進んでいったせいか、こうした色恋沙汰もきちんと物語の中に作り込まれていた。1,2部と別れてはいても、放送期間が約1年にもわたるシリーズだと、こういうことができるのである。近年1~2クールの深夜枠作品ばかりであるから、こうしてじっくりと物語の中でさまざまな事象が進行し、それがきちんと回収されていくのは気持ちのいいものだ。

 ところで光たち3人が再度セフィーロに召喚されたのは、第1部におけるセフィーロでの出来事が光たち3人の後悔がさせたことだという。もちろん後に判明するセフィーロの「柱」候補であった光の力の一部ではあろうが、彼女たちの強い願いがセフィーロへと召喚させた。その強い後悔の念こそが、「魔法騎士レイアース」の第2部をけん引している。まず光をはじめとする3人の後悔は、彼女たちをしてセフィーロを舞台にした新たな冒険を紡ぎだす。しかも後悔の念から、セフィーロを救いたいという想いが強いあまり、セフィーロのために戦いたいという願いに変わっていくのであるが、それ以上に戦う意味を知ろうとする。劇中の台詞「敵だとしても相手が何を望んで戦っているのかを知らないのはイヤ!」という言葉にも表れている。その行動は3人にオートザム、ファーレン、チゼータのそれそれの国の人間と対話することになる。
常々疑問に思っていたのであるが、「機動戦士Vガンダム」において主人公・ウッソが敵であるザンスカール帝国の人間とよく出会うのであるが、どうしてこれほどまでにウッソに敵、それもこれからウッソ自身が殺してしまうかもしれない敵と対話するシーンが続くのだろうと思っていた。だがそれはザンスカールとの戦争の中で、敵にも一部の理があることを説明する件として必要であるし、それを理解することと知らずに戦うことでは、ウッソというキャラクターの人間形成としては明らかに彼我の差があるのだ。同じことが光たちにも言える。ただこれは両刃の剣であり、光たちが他国の事情を知って同情し、セフィーロの敵に回ることだってありうるのだ。もちろんそうはならないところに、この最初の「後悔」というタームが重く彼女たちにのしかかる事情につながっている。もっとも領土の拡大を目論んだチゼータや、ファーレンの皇女アスカのわがまま(実はアスカは相談役サンユンへの想いからではあるのだが・・・)には同情できる余地がない。現実世界の歴史では意外に単純な理由で戦争は起こるものだが、この辺りは物語でオミットしている。そして残されたオートザムについては、国の存亡がかかっているという事情や、前線指揮官であるイーグルの命も短い。なによりイーグルの存在が、光にとって大きいのである。光が想いを寄せるランティスの友人でありながら、その想いの強さから「柱」候補であること。光にとってノヴァとは異なる意味でもう一人の自分のような存在がイーグルなのだ。

そしてなにより光の後悔は、自分の中から切り離してノヴァを生み出してセフィーロの裏に残してしまった。ノヴァの願いが、本来の宿主である光とともにありたいということだった。光はレガリアとの魔神戦でも、心の中の戦いにおいても、ノヴァの真意は光(視聴者にも)には伝わらなかったが、ノヴァが光の後悔が残したもう一人の光であるとがわかってしまえば、これまでの行動の真意がはっきりするのである。そのノヴァをデボネアは共にいることを条件に、自らの野望の手ごまにしたのである。そう考えると、実はデボネアを生み出した遠因は光にあったのではないかと疑念がわいてくる。もちろんデボネアの発生が、柱を失って不安定化したセフィーロの人々が生み出した恐怖心からだとしても、その恐怖心が元の宿主を滅ぼそうとはしないだろう。だとすればデボネアもまた光が切り離した分身であるノヴァや、自ら悪に加担しようとしたアルシオーネという存在ゆえに、セフィーロ攻略を思いついたのではないだろうか?(いや、ないなw)

<大団円とはこのことさ!>
 第2部になってからの音楽では、第1部でのRPGっぽい電子音サウンドの楽曲はなりをひそめ、オーケストラによる壮大な楽曲によるBGMがやや目立つようになってきた。魔神同士の戦闘シーンにかかる曲などは、毎回のように使われて、使用頻度が高く印象深い。また悲しみやデボネアやノヴァのシーンなどで使われるあやしげな曲で頻出するヴァイオリンの弦が奏でる曲なども目立つ。この辺りは第1部からの脱却の意味も感じられるが、第1部がTVゲームのような楽曲であっただけに、第2部の音楽が第1部の音楽を包括して、まるで入れ子状態になっているかのようだ。これは第2部という物語が第1部を包括し、あたかも第1部が第2部の中の一部分(一側面)になっている。まるで第1部は第2部という部屋の中で見ているモニターの中の物語のようにも感じるのだ。

 第1部と第2部の入れ子状態の物語構成は、第2部のラストをいやがうえにも盛り上げる。光とノヴァは?、光とランティスは?、海や風の想い人との進展は?、光は柱システムをどうしたいのか?などなど、物語中にばらまかれた疑問を見事なまでに回収していく。特に終盤となる42話からの物語は激戦に次ぐ激戦が続き、激しい戦いの中でも人々のささやかな想いの交流は、やさしい輪を広げていく。報われないアスコットの想い、ラファーガとカルディナのラブラブっぷりも物語に厚みをつけていく。そしてすべての現況であったデボネアの居場所に殴り込みをかける3人の魔法騎士で、すべての物語に決着をつけるべく激闘の中に身を躍らせる。そし合体三魔神の攻撃によって、ついにデボネアを打倒することに成功する。デボネアを演じる高畑淳子さんは、あの「仮面ライダーBLACK RX」マリバロン役や「巨獣特捜ジャスピオン」の魔女ギルザ役を演じた女優さんで、最近ではバラエティ番組にも顔を出す女優さんだ。彼女の演技、特にデボネア特有の高音から入る笑い声の演技の、その背中にゾゾッとくる恐ろしげな笑い声の演技が実にたまらん。

 デボネアによってイーグルが殺されてしまい、柱候補として生き残った光は、デボネアを打倒した後、セフィーロを作りかえるたった一つの願いを唱える。それは、セフィーロを柱システムの必要のない世界を作るということだった。そして現れたかつてのセフィーロを彷彿とさせる美しき海と宙に浮かぶ大陸のある世界としてセフィーロを再誕させた光たち3人の魔法騎士は、最後の最後で想いを交わした人々と別れ行く。最後の最後で届きそうで届かない光とランティスの手というシーンを見て、さまざまな感慨がわいてくる。その美しい映像は49話の白眉だ。そして何より互いの想いを通じ合わせたにも関わらず、別れなければいけない人々の切なさが同居する。このなんとも胸アツのシーンが実にすばらしい大団円だ。

 「柱」システムというのは、人一人に依存したシステムで、何より柱となるべき人間は、その願いもセフィーロ限定であることから、セフィーロの巫女のような存在で、まさに「人柱」というべき存在なのだ。セフィーロという世界は、「柱」という人間の犠牲によって成り立つ世界なのだが、これって独裁体制批判である一方、それを否定した光の判断は強烈な民主主義肯定なのかもしれない。「柱」がいなくなったセフィーロの世界は、人々の願いがセフィーロを作るという、民主主義的な体制へと移行した。それがセフィーロのその後にとっていいのか悪いのかは劇中では語られないが、少なくてもそこに住む人々によって国が保たれるという意識で作られた世界は、まるで国民に政治参加を急激に促されたかのようにも見える。それほどドラスティックな展開を、国民はそう簡単に受け入れられないと思うのだが、戦乱と恐怖の時を過ごしたセフィーロの人々にとっては、この急激な展開も望むところなのかもしれない。

 本作の放送は1994~95年。当時は「美少女戦士セーラームーンS」が絶賛放送中で、本作ではエメロード姫&イーグルを演じた緒方恵美が、中性的な魅力のはるかさんを演じていた時期だし、勇者ロボシリーズも「勇者警察ジェイデイッカー」が放送中で、本作で作画を担当した石田敦子も、もっとも脂の乗った仕事をしていた時期だ。以前の記事でも書いたが、この当時は第2次声優ブームで、それをけん引していたのは主にセーラームーンに出演していた女性声優さんや、林原めぐみなどだった。本作で主演した椎名へきるは、まさにこの時期にスターへの階段を上っていった。この後97年にアーティスト活動に主軸を移した彼女は、声優の仕事から遠ざかっていくが、彼女の人気の起点は本作や「アイドル防衛隊ハミングバード」といった作品だったのである。そういった意味でも、ちょっと懐かしく、思い出深い作品ではある。別の側面では声優ブームのさなかで、女性キャラクターが主人公へとシフトしていった起点に位置していた作品の一つであり、現在の「萌」文化の遠因の一つにすぎないかもしれない。だが本作の1部と2部の入れ子構造や、1部からドラスティックに変化した2部のシビアな展開、そして誰もが納得の大団円を見るにつけ、つくづく忘れ去られるには惜しい作品だと思う。


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No title

 どうも、こんばんはです。

 いや~、こうしてまにまにさんの解説を読んでみると、中々面白そうですね~>レイアース第2部
でも何故か自分、第2部のストーリーってどんなだったか、あんまり覚えてないんですよね、
第1部と雰囲気が変わり過ぎて「?」ってなった事はよく覚えていますが(苦笑)
当時レイアース見ていたっていう女の子も第2部のストーリーを覚えている子が少なくて、覚えている子も詳しいストーリーまではよく分かってない感じ・・・だったので、
今回のまにまにさんの記事で、ようやく大まかなストーリーと雰囲気的な物が分かってきた気がします。
実際に見てみると、また違うのでしょうが(^^;

No title

レバニラさま

 ご無沙汰しております。コメントいただきまして、ありがとうございます。

 私としては1部のどうしようもない悲しいラストからの展開をこそ楽しんでみておりまして、むしろ1部のほうがなんとなくノレなかった記憶があります。その思い入れの違いは、前回の記事の文字数の差に歴然とあらわれていて・・・www

 マンガはマンガでまったく別の結末を迎えておりまして、それも含めて2部をご覧いただくと、よりいっそう楽しめるのではないかと思われます。とはいえ、現在の目で見るとなかなか難敵の絵柄ではありまして、CLAMPというより石田敦子の絵柄が、けっこう見る人を選ぶ気もします。

 なお、本文のストーリーについては、私が恣意的に誇大表現で書いている部分もありますので、実際にご覧になって?と思われたらすぐにごめんなさいしますw
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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