映画三題~2013年、痛恨の見逃しの話~

 筆者個人的には、去年夏のSF映画シーンはとてもアツかったように思っていたのだが、いろいろとやることがあったおかげで注目作品のほとんどを見逃してしまっていた。そのうち映像ソフトもでるだろうから、それまで待てばいいかと気楽に考えていたら、筆者の周辺だけではなく、世間的にも要注目だったらしい。結果的に劇場で見逃したことをいまさらのように後悔しているわけで。んで、そうしたムーブメントも終わりを告げた今、せっかく購入までして見たので、ほじくり返すように感想を書いてみたいと思います。今回扱うのは「マン・オブ・スティール」「パシフィック・リム」「スタートレック イントゥーダークネス」の3本。これまでならそれぞれをヒトネタとしてブログで扱ってもよさそうなタイトルだけど、そこはそれ、もはや今更なネタなので、3本同時に書いてみることにしました。お付き合いいただければ、幸いです。

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「マン・オブ・スティール」
 70年代後半に映画界を席巻した、クリストファー・リーヴ主演による「スーパーマン」シリーズが大好きだった。リーヴのクラ-ク・ケントでのユーモラスな演技もさることながら、強くたくましいボディラインを惜しげもなく強調した赤と青のスーツとマントに身を包んだあからさまなヒーロー像のリーヴも大好きだった。都合4作が制作された後、これ以上のスーパーマン像が結びにくかったのか、「ジャスティスリーグ」などのアニメ作品以外からは遠ざかっていたスーパーマンではあったが、「~リターンズ」や「ヤング・スーパーマン」のTVシリーズなどが制作され、ついにというか満を持してのリメイク作品の登場となった。それが本作だ。
旧シリーズにおけるスーパーマン誕生編となる1作目と、スーパーマンの故郷クリプトン星崩壊の直前に反逆の罪で幽閉されていたゾッド将軍らと戦う「~2冒険篇」をリミックスして誕生した本作は、スーパーマンの持つ超能力に宿る責任のありかを強く問いかける物語となっており、「スパイダーマン」シリーズのテーゼにも通じるものがある。一方ゾッド将軍の設定が単なる悪人ではなく、故国クリプトン星を救おうとして決起した者として描かれており、こちらもまた能力にまつわる責任の所在を、武によって行使するというキャラクターとして登場する。

面白いことにスーパーマンには地球を守る大義すらない。その力を抑制させられ、いつも一人で孤独を囲っていたクラークには、守るべき人は親だけなのだ。しかも父親はすでになく、その死の間際にクラークは彼の能力が衆目にさらされることを父に禁じられていたために、その父を助けることもできなかったトラウマを持つ。スーパーマンが守りたいものはあくまで自分の目の前で苦しんでいる人であり、限定的なのだ。それは旧シリーズの1作目で、数か所で同時多発的に発生した事故を、次々と解決するスーパーマン像とは決定的に違う。ゾッドが絶対悪ではないように、スーパーマンもまた絶対的正義ではない。もはや痛快娯楽ヒーロー映画などどこにもなくなっているかのような気分にさせてくれる映画だった。それは平成ライダーがたどった足跡でもあるはずだが、「スーパーマン」という絶対正義的なコンテンツですら、そんな呑気な事を言っていられなくなった世知辛い世の中を思い知らせてくれた映画だった。

「パシフィック・リム」
 去年の洋画シーンでもっとも話題となったのが本作だったのではないか?
「Kaiju」と呼ばれる次元の裂け目から現れる謎の巨大生物を、2名の搭乗員のシンクロによって稼働する巨大ロボットで迎撃する人類の物語。怪獣という響きに二速歩行の巨大ロボットが戦うという、日本なら「ゴジラシリーズ」や「戦隊シリーズ」が受け持っていた範疇の特撮を、精一杯のCGで出し惜しみなくそのバトルで見せてくれる作品だった。とにもかくにも「巨大ロボット」や「怪獣」の先達である日本のアニメ・特撮が下敷きとなっており、その引用は多岐にわたる。その一つ一つを検証するのは、ある意味ヲタクの資質を問われる気もするので、個人個人で列記してみるのも面白いだろう。ちなみに現在発売中の別冊映画秘宝「新世紀怪獣映画読本」にもその元ネタ探しのページがある。
 本作に登場するヒロインは菊地凛子が演じている。だがその声の吹き替えは林原めぐみ、幼少期は芦田愛菜が演じている。この1点だけはどうしても筆者が好きになれない点ではあるが、まあこれは些細な話。

 ツイッター上でも著名な方が呟いておられたが、本作に登場する巨大ロボット「イェーガー」は、何か物足りない。何が物足りないかと問われれば、それはもう「カッコイイ止め絵」が徹底的に足りないのである。もうちっと言えばロボットのフォルムにも文句をつけたい。まず首がない。足が長すぎてバランス悪そう。そして何よりはったりとなる装飾がなく、前後の厚みがない。そして顔がブサイクなのである。もちろん人型のロボットがCGで動くことを意識してデザインすれば、こうなる事情は容易に予想がつく。動かすのに面倒くさいからだ。ロボットが頻繁に登場する日本の戦隊シリーズを見れば、戦闘シーンは(箱オバケ:栗本薫 談w)着ぐるみを使っているくせに、合体シーンや必殺技シーンではCGを多用する。こうした過剰とも思える演出にCGが多用されている日本の巨大ロボット特撮を念頭に置いた場合、あきらかにイェーガーははったりが足りないのだ。それを歌舞伎などに見られる「見得」の文化だというのは、もはや手垢のついた表現だろう。こうしたはったりが顕著に表れるのが「カッコイイ止め絵」のシーンとなる。だがこれが壊滅的にない。全編イェーガーを気持ちよさげに動かしているせいもあり、ホントに止まっているシーンが少ない。最もカッコイイと思えるのが格納庫でのメンテナンスシーンだとしたら、それはあまりにも活躍の場が狭すぎる。この格納庫という素材すらもやや演出が薄味で、「ウルトラシリーズ」の発進シーンなどを見慣れた目には、薄味を通り越して出汁の味すらしないうどんをすすっているようなものである。

 もちろんだからといって本作が面白くないなどとは言うつもりは毛頭ない。ただ怪獣から街を守るために、先手必勝とばかりにイェーガーを作った人類が、疲弊して敗戦を重ねた結果、役にも立たない壁を作る流れは、どうにも熱量が削がれる想いがした。先述の本によれば、この「壁」こそは専守防衛の象徴であるという。現実の人類は、こうした脅威に対して自国の軍隊を総動員して戦う道を選ぶだろうが、壁の建設もまた平行するだろう。だがそれではあまりにも希望がなさすぎる。戦意高揚の意味でも壁作りを対策の主軸に持っていくのは、人類の生命体としての衰退を意味しているのではないか? だとしたらこの地球の主座はKaijuに明け渡されてもいたしかたなしかなとも思えてくる。そしてこの皮肉こそ、熟成しかけた文化の中で生命力を半減させている現代人への警鐘とはいえないだろうか? もっとも私にはタコつぼ化した日本特撮界の比喩にも見えた。

 もう1点、面白かったのはマッドサイエンティストが最後の最後で最悪の事態を打開するという流れだ。彼らとパイロットたちとの絡みがもっとあればとも思ったのだが、その関連は彼らの上官に集約されているようだ。このあたり「インデペンデンスデイ」とか参照にしていそうだ。末端の兵士の奮闘を描きながら、彼らを戦場に送り出しつつ、最後には自身も先頭に立って戦闘に参加するアツい上司という偶像は、洋の東西問わずすでに映画やフィクションの中だけの想像上の生物になっているのではないか? すべからく会社の上司というものは悪どいのか。多分これが最後になるだろうから、書いておこうかな……倍返しだ!www

「スター・トレック イントゥ・ダークネス」
 2009年に公開された作品の続編として公開。前作が完全にリセットしてのリスタートした世界観の、新世代のスタートレックのスタートだったのに対し、その続編でありながら旧シリーズ劇場版2作目となる「カーンの逆襲」が下敷きになっていることに、いまさらのように驚いた。カークやスポックの新しい人材による新しいキャラクターには、前作同様突っ込みどころは多いのだが、どうしてこうもリメイクされる作品の主人公が所属する組織というのはこれほどまでに堕落するんだろうか。本作での惑星連邦の首脳陣は、以前のピカード時代の劇場版「~叛乱」同様、腐りきっている。しかもこのカークの上官・マーカス提督を演じているピーター・ウェラーは、「ロボコップ」を演じた俳優であるのが、なんだか意味深だ。そうそう、本作ではリニューアルされたデザインのクリンゴン人が大挙して盛大にやられている。

 優性人種であるカーンがひたすらカッコイイ。原典である「~IIカーンの逆襲」では筋骨隆々でありながら年老いた感じの老獪な人物だった印象がある(もっともTOSに最初に登場したカーン役を演じた俳優が、再び同じ役を演じたためだけど)が、本作のカーンはひたすらストイックに自身の目的を遂行するために手段を選ばない男だ。しかも以前のカーンとはだいぶ違ってスマートで二枚目な上、カリスマ性すら感じるが狡猾だ。何よりカークたちを翻弄するさまは、「ダークナイト」に登場したヒース・レジャーの演じたジョーカーの狂気にも通じた何かを感じるほどだ。こういう悪どい人物が登場するとカークの悪辣さなどは些細なことに見えてしまうので笑える。カーンを演じたベネディクト・カンバーバッチのインタビューが「Pen」誌(9月16日号別冊)にあるが、「人間が本来持っている感情を表現することこそが重要だと思った」と応えているから、そのキャラクター形成はカンバーバッチに負うところが大きいと思える。このキャスティングは秀逸だと思う。

 さて本作のラストシークエンスでは、またもやスポックが大活躍する。カークがスポックのための前座にすら思えるほどだ。しかも「~IIカーンの逆襲」では一度はエンタープライズを救うためにエンジンコアに入り込んで死んだスポックではあったが、これが本作では逆転するのだから面白い。そしてバルカン人が抱いてはいけない強い感情をもってカーンを追い詰める姿は、もはやスポックであることを忘れてしまいそうになるほどの息詰まるアクションシーンが連続する。最後にウフーラに活躍の場を与えるあたりも心憎いではないか。
 スタートレックシリーズにしては艦隊戦もあり、エンタープライズを凌駕する大きさのドレッドノート級のスペースシップも登場する。真っ黒でマーカス提督の悪意が乗り移ったかのような艦体は、どこかエンタープライズEを皮肉っているようにも見える。二転三転する物語の起伏、カークやスポックの活躍、上官との確執、カーンの作戦遂行など、見どころも多くあきさせることなく最後まで見せ切る面白さがあり、ダレることなく最後まで見せ切る上質のエンターテインメント作品だった。

 最後に、どの作品にも言えることだが、9.11を無視できない映像表現が必ずと言っていいほど登場する。「マン・オブ・スティール」に至っては、クラークの父親の死のエピソードは、グラウンド・ゼロでなくなった救助隊員を想起させるもので、アメリカ人はあの悲劇を風化させないためにこうして映像を作り続けているようにも思える。その姿勢は大いに評価したい。のど元過ぎれば熱さ忘れる日本人が、東関東大震災の悲劇をどこか別の国の出来事だったんじゃないかと風化させそうな今だからこそ、忘れるものかと歯を食いしばってでもこうした映像を残すアメリカ人の心根に感服する。もちろんあれを超える映像インパクトはなかなかないからこそ、多用されるのも事実だろう。それを見たくない人もいるだろうことも、念頭に置くべきなんじゃないだろうかと、ちょこっとだけ余計な心配をしてみたりもする。


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テーマ : 特撮・SF・ファンタジー映画
ジャンル : 映画

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No title

パシフィック・リム観ました。あくまで個人的感想ですが。
がっかりしました。理由は、まず、おっしゃるとおり、

ロボットがかっこ悪い。
怪獣がかっこ悪い。
夜のシーンばかりのせいか、怪獣バトルで何が起きてるのかイマイチわからない。
必殺技が無いので闘いの決着が付いたのかわからない。
(実際、怪獣に逆襲されたりしてますし。)

これに入場料払って観るなら、実写のジャイアントロボ、大鉄人17、レッドバロン、
昭和ゴジラ、平成ガメラあたりをレンタルして観ます。

何というか、「ロボットで怪獣と闘うネットゲーのPV」みたいでした…。

No title

うめさん

 ごくろうさま。それでも去年の洋画シーンをアツく彩った映画なので、見ておいて損はありませんよ。
 とはいえ、頭をひねってしまう映画なのはおっしゃる通りでね。ま、なにかで口直ししてください。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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