ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス~繰り返されるシチュエーション~

 TV「ウルトラマンコスモス」とそれに関連する劇場版シリーズは、一度何かの折にきちんと取り上げてみたいと常々思っていた。問題は「コスモス」TV版がウルトラマンシリーズ最長の65話という長さと、映像ソフトを筆者がすべて所持しきれていないことに起因するが、それはまたレンタルでなんとかすることにしたい。「コスモス」というシリーズは「怪獣の保護」や「共存」といったタームで特徴づけられる作品であり、「ウルトラマンの愛した日本」(宝島社新書,2013)によれば「いばらの道」とウルトラマンタロウが語っている。「汝の隣人を愛せよ」とでも言いたげな「コスモス」のお題目は、敵であるカオスヘッダーすら改心させることにより、そのテーマ性を貫いた。たとえ主演俳優にまつわる騒動があって、TV放映時には全話放送が叶わなかったとはいえ、65話という長丁場でテーマを完遂させたことは十分評価に値すると思っている。劇場版は都合4作品公開されており、前日談である「~FIRST CONTACT」、TV版の後日談となる「~2 BLUE PLANET」とその改編版「ムサシ(13才)少年編」と、今回取り扱う「ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE」で終了となる。ところがこの「コスモスVSジャスティス」は、それまでの「怪獣保護」や「共存」といった「コスモスシリーズ」で唱っていたテーマが後退しており、ややそれまでのシリーズと異なる感触の作品だ。今後「コスモス」シリーズを取り扱う前に、まずこの作品から触れていこうと思う。

劇場版 ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE [DVD]劇場版 ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE [DVD]
(2010/01/27)
杉浦太陽、吹石一恵 他

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<作品と概要>
 「ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE」は2003年に劇場公開された作品。前述のように長期にわたった「ウルトラマンコスモス」というシリーズの最終作となった作品である。
 時は2015年(来年じゃんw)。長年にわたるムサシの努力の甲斐あって、怪獣と人類の共存を目的として新しい居住可能な惑星へ怪獣と人間を送り込む、ネオユートピア計画は着々と進行しつつある。怪獣を搭載できるほどに巨大なロケットが準備され、その乗組員としてムサシも選ばれていた。同時刻、宇宙では地球に向かって進みつつある謎の巨大宇宙船を止めようと、ウルトラマンコスモスが奮闘していた。だが巨大宇宙船はついに地球に到達してしまう。宇宙船はロボット・グローカーボーンを吐き出し、ロケット発射準備をしていたSRC宇宙開発センターを襲い始める。そこにウルトラマンコスモスも到着し、三度ムサシとともに戦うことになる。だがコスモスが動きを止めたはずのグローカーボーンを再起動させたのは、サンドロスとの最終決戦(「~2 BLUE PLANET」参照のこと)でコスモスに助力したウルトラマンジャスティスだった。あろうことかジャスティスはコスモスを攻撃しはじめる。コスモス=ムサシはロケットを守るためにその身を犠牲にして消滅してしまう。ムサシの仲間たちは、ムサシの生存を信じて微弱な手掛かりを追って探し求める。
 一方地球に迫っている謎の宇宙船は、宇宙の正義を名乗るデラシオンの先兵として送り込まれたものであるという。SRCの会議に乱入したジャスティス=ジュリは、2,000年後に地球人類が宇宙の脅威になることを予見し、デラシオンの意志に賛同したのだ。だが地球人類はあきらめることをせず、徹底抗戦する構えだ。街に出たジュリは人間を観察する。それはジュリに地球人類をあきらめさせるのに十分なことばかりではなく、臆病な子犬をいたわる少女のやさしさに触れるひとときだった。
 ふたたびあらわれるグローカーボーン。街は破壊され、人々は逃げ惑う。その中で子犬を助けるために必死になっている少女の姿を見たジュリは心打たれ、地球人を守るためにジャスティスに変身し、グローカーを撃退する。だがグローカービショップの登場で危機に陥るジャスティス。それを助けたのは、多くの仲間の想いによって甦ったコスモス=ムサシである。ビショップとの激闘を制したコスモスとジャスティスは、地球に到達したリセット兵器・ギガエンドラに向かう。コスモスとジャスティスはギガエンドラの発動を止められるのか?

<ウルトラマン=アメリカ軍説>
 主役であるはずのムサシが、物語冒頭で早々に姿を消し、上映時間の大半に登場しないで話が進むあたり、まずこの映画を見たときに一番びっくりしたことだった。劇場でこれを見た当時、まだあの事件が尾を引いているのかなと勘繰ったりもしたが、この物語はTV版コスモスの後日談である。だからコスモス=ムサシがこれまで主張してきたことが現実世界ではたとえ夢物語の理想論だとしても、物語世界の住人にとってはかけがえのない先駆者である。この物語はムサシ不在の中で、ムサシのなした成果を確認するための禊の物語だとしたら、ムサシの不在にも合点がいく。筆者ももういい年なので、どうしてもムサシの親の気持ちに沿ってしまう瞬間があり、高橋ひとみさん演じるムサシの母のリアクションに、つい同調してしまう自分がいてたじろいだりもした。そういう意味では子供と親が同時に見て、なおかつ得るものがあるのだとすれば、本作がファミリーピクチャーになりおおせている事実は無視しがたい。

 さてここから話が少し飛ぶのであるが、以前本ブログでもちょっとだけ触ったことがある神谷和弘先生の著した「ウルトラマンと「正義」の話をしよう」(朝日新聞出版,2011)という書籍の中で、本作を取り扱った部分がある。ここで少しだけ引用したい。

自分(デラシオン)が宇宙の正義と調和を図るという、自称正義の味方ですが、この横暴で尊大な正義とは、ブッシュ大統領の扇動したアメリカ的ナショナリズムと同じ構造を持ちます。



 この文章に先んじて書かれている内容によれば、「ウルトラマンコスモス」という作品が「自分の秩序こそが全体の秩序となるべきだ、という高慢な思想が破壊をもたらすという明確なメッセージを持った作品」だとし、本作についてもデラシオンには何の根拠もないとした上で、「テレビシリーズと同様のテーマ性を持っていますが、アメリカ的な正義に対する疑念がより如実に描かれている」と現している。これ自体の見解についてはまったくもってその通りだと思うし、疑念をはさむ余地がない。

 その一方で、筆者の大好きなウルトラ関連の作品である「私が愛したウルトラセブン」というドラマがあるのだが、この後編において、佐野史郎演じる金城哲夫がウルトラセブン最終回の脚本執筆を前にしてアンヌに語るウルトラセブン観は「セブンが第七艦隊に見えてくる」といったことをもらしている。もちろんこれはドラマであって史実ではない。だがこの脚本を書いた故・市川森一が故意にこの台詞を金城哲夫にしゃべられている事情を考慮すれば、怪獣や外宇宙からの侵略に対抗する手段を持たない人間をアメリカの庇護下にある戦後の日本とし、人間を守るために戦うウルトラマンとはアメリカ軍あるいは在日米軍だとする図式は、彼ら脚本家たちの認識の中にあったものだと思われる。

 ここで筆者は完全にこの二つの話がコンフリクトしてしまう。本作には二人のウルトラマンが登場する。一人は人類を守るために戦うアメリカ軍であるコスモス。もう一人はデラシオンの代理人となったアメリカ的ナショナリズムであるジャスティスである。この二人のウルトラマンがともにアメリカ的な何者かの代弁者であるのなら、二人は併存できるはずがないではないか? 本作の序盤に登場するコスモスとジャスティスの対決は、二つの時代のアメリカの対立に見えてしまうのだ。
 現在のウルトラの歴史の中で「慈愛の戦士」とされるコスモスは、その初登場時にずいぶんと揶揄されたもので、「戦わない」ウルトラマンとして認知度があったし、主演俳優の問題が発生したときには、最大限コスモスという物語のテーマ性に配慮したがゆえに、その対応に苦慮していた記憶がある。それほどまでに高潔たろうとしたコスモスは、はたしてかつての70年代初頭におけるアメリカのイメージと同じだろうか? 少なくとも本作におけるコスモスは、70年代のアメリカ的な正義を払拭し、デラシオン=現在のアメリカ的正義と対立させるために設定されたシンボルだと考えると、かつてのウルトラマンのイメージからの脱却を意図として設定されたウルトラマンではないかと思えるのだ。この考察はあらためてTV版「コスモス」を取り上げたときに考えてみたい。

<繰り返されるシチュエーション>
 さてこの物語において特筆すべきポイントを押さえると、

1. 複数人のウルトラマン
2. 強大な敵、合体して巨大化する敵
3. 最強の敵に対して合体するウルトラマン
4. ウルトラマンの人格形成、擬人化

といった点があげられるだろうか。でもこのポイント、どっかで見覚えありませんか?
最近の「新ウルトラマン列伝」でも分割放送された「ウルトラマンサーガ」にも、この特徴は存在する。1は映画という興行形態を考えれば、どうしてもお祭り的にならざるを得ないので、いたしかたなし。2は「ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ」、「ウルトラマンティガ THE FINAL ODESSEY」や「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」「ウルトラ銀河伝説」でも同じ。グランドキングなんてのが登場した「ウルトラマン物語」なんてのも同様だろう。3については「メビウス&兄弟」や「サーガ」なんかはまさに同じシチュエーションだ。しかも映画の目玉として登場する。4については「ウルトラ銀河伝説」に初登場した「ウルトラマンゼロ」のおかげで、この傾向は最近加速気味ではある。元をただせば「ウルトラマン物語」に登場するタロウや父&母あたりには完全にキャラクターが付加されているし、「ウルトラマンZOFFY」のゾフィなんかも同列だ(ついでにいうと「ウルトラ兄弟VS怪獣軍団」に登場するハヌマーンなんかも同じ)。

 こうやって書きつらねていけば、こうしたシチュエーションがかつてのウルトラの映画シリーズでは繰り返されてきたことがわかる。そしてこれがサイクル的に使い回しされてきたことを考えると、キャラクターの一つの進化(深化?)の過程と見ることはできないだろうか。
最初は得体のしれない巨大なヒーローであったウルトラマンは、人間に化けたり人間と同化するという設定に引っ張られるように、人間味を付加されていく。その結果、分かたれていたはずの変身して巨大化した後とその前の人格は、いつのまにか同一となり、ウルトラマン=人間という過程を経ていく。物語は人間がウルトラマンに助けられながらも自立を促されるという方向性だから、やがてウルトラマンでも倒せない強大で巨大な敵が現れるのだが、敵に打ち勝つためにはウルトラマン側にとっても協力が必要であり、やがて人間の存在は置き去りにされてしまう。その結果、物語の主導権をウルトラマンが持つようになると、ウルトラマンに必要上にキャラクターが付加されていく。しかも人間が協力して強大な敵に打ち勝つことの誇大表現として、ウルトラマンも協力し、その象徴として合体ウルトラマンは存在を許されるということになる。

例えば、60年代後半から1980年にいたるシリーズの帰結として、「ウルトラマン物語」におけるタロウがキャラクターを付加されたように、平成のシリーズを経て70年代のアメリカの影を払拭するために誕生したコスモスと対立軸となるべく誕生したジャスティスに女性に潔癖さを兼ね備える人間性を加えられたのも、同じ道筋なんじゃないだろうか。長ずるに及んで「ゼロ」という新しいキャラクターを持つウルトラマンが誕生したのも、事情がうなずける気がするのだ。
そしていま、ウルトラマンがいて人間もいるのではなく、人間がいてウルトラマンがいるという逆転が起こっている。「ウルトラマンギンガ」という作品は、「メビウス」におけるウルトラマンと同列に並んだ地球人類が、主従関係をひっくり返すように人類の存在ゆえにウルトラマンが存在できる設定になっていることは瞠目に値するポイントだと思うのだ。まあそれゆえに袋小路に入っているのかもと思えるのだが。

そんな視点で眺めていると、長きにわたるウルトラシリーズが、結節点としての総決算に踏み切る時、上記のようなシチュエーションが繰り返されているのではないか?と勘繰ったりしてみる。とすれば最初期のシリーズにおける「ウルトラマンレオ」におけるゲン=レオの構図におけるウルトラマンへのキャラクター付加や、「ウルトラマン物語」におけるタロウやグランドキング、「コスモスVSジャスティス」や「メビウス&兄弟」におけるシチュエーションの数々の類似点、そして「ウルトラ銀河伝説」から「サーガ」への流れがさも当然の事象のように感じてくるのである。

さて、そろそろ「ギンガ」シリーズも劇場版の2作品で〆となりそうだから、この次の展開も楽しみではある。上記のような仮説を導入したとき、はたしてどんな作品を見ることができるのか、wktkで待ちわびたい。
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テーマ : ウルトラマン
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