劇場版「魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語」~文脈としてのまどマギ~

 完全に周回遅れではあるが、せっかく購入して見たんだから何か書き残しておきたいなと。ただこの作品に関しての言説は、ネット上にもあふれているし、関連書籍もしっかりあるので、作品考察はもういいかなと思っている。んで当ブログでは何をやるかといえば、とある二つのタームを抜き出して、似たような作品を探してみようかなという趣向です。元ネタを探すというのではなく、本作で扱われている2つのタームが、他作品ではどう扱われているかを再確認し、本作との差異や同一性を見ることで、本作に少しでも近づいてみたいという試みです。

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<世界改編の代償、それを望む者はだれ?>
 本作の前段にあたるTV版のラストでは、魔女「ワルプルギスの夜」を消滅させるために、まどかはついに魔法少女となり、その代償としてすべての魔法少女を消滅させることで、ワルプルギスの存在を根本から排除する。かわりにまどかはこの世界の概念となる。この世界はまどかを概念化することによって、ワルプルギスの発生しない「世界改編」が行われたのである。もっとも改編後の世界に異を唱えたほむらが、再度この世界を改編するのがこの物語の骨子でもある。

 「世界改編」というのはそう簡単に成し遂げられるものではない。その改編の力が何に起因するかも問題ではあるが、その改編は何のために行われているかが常に問題となる。
 わかりやすい話としては「ドラえもん」に登場する未来の道具「もしもボックス」による世界改編だ。wikiを読む限りにおいてはその使用頻度は意外なほど高い。なおもしもボックスによる世界改編は本当に世界を改編するのではなく、もしもボックスで依頼された世界に最も近い異世界を現出させる方法論らしく、もしもボックスはあくまでも「IFの世界」を体験するための道具でしかない。ただそれはあくまで設定上の話であって、それを体験する改編者本人にとっては世界改編には違いない。
「ドラえもん」の話の要諦はのび太という主人公が、ドラえもんからもたらされる便利な未来の道具で失敗や成功を繰り返すが、読者はその物語からいくつかの教訓を得るというものだが、小は自分に有利な世界を体験したいなどの些細な欲望の充足から、大は劇場版5作目「のび太の魔界大冒険」の発端といった大規模な物語までと使用の範囲は幅広いが、その根源が「のび太の欲望」であることに違いはない。あくまでも「ドラえもん」での世界改編とは、のび太の欲望に寄りそっているのである。

 昨今リメイクが話題になった「美少女戦士セーラームーン」であるが、ここでも1度世界改編が行われている。最初のTVシリーズの最終回、ダークキングダムの本拠地における激闘の末、セーラー戦士全員が戦死する。ラストにおいてすべての戦いの記憶を失って現代に転生という形で全員を復活させ、いつもの日常へと戻っていき、次作「~R」へと続いていくのである。この作中での「転生」はあくまでセーラー戦士5人を生き返らせたという形ではあるが、単なる時間の巻き戻しであればダークキングダムの一党も復活していいはずだ。しかも失ったセーラー戦士達の記憶を塗り替え、その記憶に見合った世界がそこにあるためには、世界改編がある程度は必要だったのではないかと推測してみる。セーラームーンがラストバトルで使った「幻の銀水晶」の力がどのような発現の仕方をするのかは、劇中定まっていないことを考慮すれば、この銀水晶の力はセーラー戦士を復活させるために世界改編を行ったとするのが妥当なのではないか? だがこの世界改編を望んだのはおそらく銀水晶の持ち主である月野うさぎ自身だとすれば、他のセーラー戦士達の復活とは、失われた日常を取り戻すという意味が込められている。そもそもうさぎ達セーラー戦士の戦いは、自分たちの日常を脅かす非日常との戦いであったから、取り戻すべきは自分たちの命ではなく、戦いで失われた自分たちの日常の世界そのものを取り戻すことだったろう。したがってこの世界改編は非日常から日常を取り戻すものだった。
面白いことに本作を担当したシリーズディレクターである幾原邦彦氏は、その後に監督した「少女革命ウテナ」のTV版とその劇場版にて、「世界を革命する力を」というスローガンをもとに、少女たちが戦いの末に日常を突き抜けようとする、セーラームーンとは逆のベクトルの物語を紡ぐのである。少なくとも物語においては、その世界を革命するという世界改編は果たされなかったようだが。
 上記のような例は、いずれも世界改編を望んだ者を明かしていることで、世界改編の結果自体が物語のオチとなる構成だが、逆に実施された世界改編の首謀者が謎として物語が進行し、その世界改編の是非を問う物語も存在する。実は「新編 叛逆の物語」も、一度はまどかによる世界改編で落着した世界をもう一度問い直すという意味では、むしろこちら側の物語である。前半の謎ときも、その後のほむらによるどんでん返しも、改編前の世界を問いただすという意味においては等価なのだ。
 例えば劇場版「涼宮ハルヒの消失」は、原作小説をそのまま映画化したかのような作品だが、それゆえに狂言回しであるキョンの思考の過程をつぶさに追う形で、物語の謎ときに埋没できる作品だった。世界改編の首謀者である長門有希の力がどうとかいう話はおいといて、有希が作った改編後の世界になぜ手がかりを残したのか? また改編後の世界から元の世界へと戻るための二択を、なぜキョンに託したのか? その謎ときこそが物語の中核にある。ただその改編に悪意はないことは、「新編 叛逆の物語」との比較の上で重要な意味を持つ。善意であっても悪意であっても、その改編は誰にとって有益で誰にとって不利益なのか?という問題が発生するのだ。

 そしてその利益不利益を世界に反映させていくという具現化が「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」という物語にあると思える。ラムという少女の夢は、無邪鬼というキャラクターによって具現化されるという形で世界改編が行われるのだが、その世界は巨大な亀の背中に乗った箱庭的な空間であったというオチ、そしてまたその世界の構築に寄与していたラムの願いがあったとしても、それを作る無邪鬼の意志が絡んでいるという、善意でも悪意でもなく、欲望でもない世界改編の中で、邪魔とされる人物はしれっと排除してしまうラムの邪気を取り込んだ無邪鬼の悪意の存在が、諸星あたるにこの世界に疑問を抱かせる。これによって物語は収束に向かうのだが、最後の落とし所としてのあたるの心情には、まったくもって同意できないw 本作は世界改編とおぼしき前段の謎ときが、後半にドラスティックに種明かしをしてみせると、箱庭的な作品世界の解釈を物語のオチにもってくることで、「うる星やつら」という作品全体を俯瞰して見せる。作品世界に埋没したい観客の想いを、映画を見ることで覚めさせる冷静さは、決して気持ちのいいものではなく、むしろ監督である押井守氏の偽悪さがにじみ出る思いだ。少なくても登場人物にとって都合のよい世界とは、どこかいびつで違和感を覚えるものなのだ。「新編 叛逆の物語」の前半における、誰もが見たかった(作り手すら見たかった)はずの5人の魔法少女の活躍場面に、観客のほとんどが感じた違和感の正体は、いずれの作品でも同じなのである。

<神殺し、神なき世界の神となりて…>
ほむらが違和感を覚えた世界。それはほむらが自分自身すら欺いて自分で作り上げた世界は、概念となる前のまどかがおそらく望んだであろう世界であった。ここからほむらの叛逆が始まる。本来の姿である概念化したまどかをからめとったほむらは、その力の一部をもぎ取ることで、ほむらはまどかと同等、しかもまどかとは真逆の存在となる。それはあたかもこの世界の「神」ともいうべき存在であるまどかを否定し、同時にまどかと一対の存在となるために、ほむらはまどかという存在を殺したにも等しい。

近年では「カンピオーネ!~まつろわぬ神々と神殺しの魔王~」なんて物語があるし、「勇者特急マイトガイン」のラストでは、作品自体の造物主が最後の敵となるどんでん返しが待ちうけており、それを打倒することで物語が収束する。これも一種の神殺しである。キリスト教圏ではあまり好まれない「神殺し」の物語ではあるが、この国では普通に採用されているあたりはお国柄なのかなと思う。神と呼ばれるギリシャ神話の神々が登場する物語には神殺しが多い。「アリオン」「聖闘士星矢」「タイタンの戦い」などはまさにこれに相当する。「新世紀エヴァンゲリオン」もまた使徒と呼ばれる神を殺す物語であるし、「もののけ姫」は自然をつかさどる代表としての「神」を設定し、自然への浸食を続ける人間に神殺しをさせることでその是非を問うている作品だった。

 作品世界の「神」を直接的に殺すことで物語を終わらせる作品として思い出させるのは「装甲騎兵ボトムズ」のテレビ版である。その後のOVAシリーズなどでは触れられないが、TV版最終編となる「クエント」において、舞台となるアストラギウス銀河を裏から操っていた造物主「ワイズマン」に接触した主人公キリコ・キューピーが、冷徹なまでに仲間や敵を振り切ってワイズマンに接近し、その存在と目的を知った上でキリコは、ワイズマンを破壊していくのである。これほどまでに主人公が神殺しを行った例も少ないだろう。ワイズマンがアストラギウス銀河の造物主だったとしても、その巨大なメモリに蓄積されたデータの集積物であるのだが、その黒く得体のしれない機械のボックスを、キリコは直接自分の手によって一つ一つ分解していくことで、ワイズマンを殺すのである。ところがアストラギウス銀河における戦乱の世界は、この時点ですでにワイズマンの予測の範疇を超えており、キリコの戦いはまるで徒労に思わってしまうかに見える。この世界がすでに神のものではなく人間のものであるという、ある種傲慢な人間賛歌でもある。後のOVAシリーズではあまり触れない話なのもうなずける。神を殺しても、ボトムズの作品世界に転換は起きなかったのである。まどかが改編した世界も、そこに感じていた違和感も納得できずに何度も時間を繰り返すことを選択したほむらには申し訳ないが、何度やり直してもほむらの思うような世界とならなかった事情は、人間である魔法少女の力を持っていたとしても、ほむらという人間には超えられない世界の理によって、強固に構築された世界だったのではないか。だからこそほむらは人間であることを超えたかったのかもしれない。

 神とも言うべきキャラクターが殺しあうことで最終戦争を描いたのが、マンガ版「デビルマン」のラストだろう。堕天使である飛鳥了率いるデーモンは地球の先住民族で、敵対するのはデーモンが人間の肉体的にも精神的にも合体を果たしたデビルマンであり、そこに人間の姿はない。その前段において人間の排他的な性格ゆえの残虐性によって、最愛の女性を惨殺されたデビルマン・不動明にとっては、その醜い本性をさらした人間をして「悪魔」と呼ぶのである。そこには悪をなすから悪魔なのではなく、狂気に押されるようにマス心理の慣性に落ちて自己を揺るがせ続ける矮小な生物集団をして悪魔と呼んでいるかに見える。人間の一側面のみを徹底的に糾弾する一方で、それでもデビルマン・明は新しい生物種として、デーモン一族との最終戦争へとなだれ込む。その激しい戦闘の結果、了は永遠に明を失うことで決着する。劇中、飛鳥了がデーモン一族であることは、自分自身でも知らないままに物語は進む。最初にデーモンと戦う同士を欲して明をデビルマンにしたのは了なのであるが、その実、了は自分と対になる存在を無意識に欲したとすればどうだろうか。ほむらがまどかを神の座から引きずり降ろした上に、まどかと対となる存在になるべくまどかの力の一部を強奪したことと比べると、与えることで仲間を欲した了とほむらはネガポジのような関係にも見えるし、了が両性具有的に描かれている事情を考えると、本質的に了とほむらは同質にも思える。

 どうだろうか、今回の試みは。2つのワードを抽出して他作品と比較することで、「新編 叛逆の物語」の中核をなすほむらの思考をたどってみた。もちろんこうした乱暴な比較では正確な論評にはなりえないことは、本記事を執筆した筆者本人が一番よくわかっている。だが本作の脚本を執筆した虚淵玄という作家や新房昭之監督が、同じような作品に影響されたり感化されているとしたら、その思考のルーツの一端に触ったことにならないだろうか? もちろん彼ら制作者側が元ネタを自らバラすようなインタビューも読んだ記憶はないのだが、作中のみに限定することなく他作品との比較で気付くことも多いのではないか、という狙いがこの記事の執筆理由でもあった。またいつか別作品との比較で、外堀から理解するという論点で「まどかマギカ」を議論してみたいと思うのだが、どうだろうか?
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この人あぶない事をするんだ……!

読者が視点を少しでも増やせるならば価値がある文章ですよ。

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プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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