昭和歌謡再発見~「夏のあらし」キャラクターソングアルバム~

 「夏のあらし」は、この6月に終了した1クールアニメだった。小林尽原作の漫画が原作で、第二次大戦をバックボーンとしたタイムトラベルものの話だ。主人公達は、喫茶「方舟」で、ウエイターやウエイトレスとして働きながら、シチュエーションコメディを繰り広げる。そんな中、タイムスリップ能力を有する少女・小夜子と、彼女にあこがれる八坂一が、第二次大戦の日本にタイプスリップし、人助けをすることで、時間改変が行われる話だ。シリアスな話も、幕間のコントの比重が大きかったせいで、必要以上に重たくならずにすんだ点で、一応評価できる作品に仕上がってる。しかし、ストーリー以外のノスタルジックな部分が目立ちすぎて、イマイチな感じが否めない作品であった。

 このノスタルジックな部分については、OPやEDに見られるシングルレコードのコラージュや、喫茶「方舟」のシックなたたずまいなどが担っているのだが、もっとも比重が高かったのは、劇中でかかる昭和歌謡である。この曲の歌唱は、キャラクターを演じている声優さんが担当している。DVDの特典ともなっているのだが、この度CDとして発売された。それが「歌声喫茶方舟」というタイトルのキャラクターアルバムである。とりあえずラインナップを見てみよう。

01 ひと夏の経験
02 心の旅
03 夜明けのスキャット
04 恋のダイヤル6700
05 どうにもとまらない
06 港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ
07 黒ネコのタンゴ
08 喝采
09 悪魔がにくい
10 サウスポー
11 東京ブギウギ
12 氷の世界
13 夢は夜ひらく

 さて、本ブログをご覧の皆さんは、どのあたりでピンと来るだろうか? このラインナップはまさに昭和歌謡の歴史そのものといっても言い。特に「東京ブギウギ」が昭和の歌謡ポップスで幕を開けた昭和歌謡は、演歌、フォーク、ロックとその時代に応じて姿を変えていく姿は、まさに昭和歌謡史だ。

 1曲目の「ひと夏の経験」は、山口百恵の初期のヒットソングだ。彼女の年齢に似合わぬ落ち着いた物腰は、そのまま歌唱に影響し、女性歌手としては低い声を武器に、大人っぽい曲を得意とする歌手だった。本作では主役・小夜子役の白石涼子が歌っている。その原曲キーに近い低い声を出して歌っているが、少々苦しそうにも聞こえる。だが「夏のあらし」という話そのものが、まさに「ひと夏の経験」という内容であるから、さびの部分の歌詞が、特に意味深に聞こえてくる。

 2曲目の「心の旅」は、ビールのCMでも使用されたチューリップの名曲ではあるが、大分前に吉田栄作によるカバーでヒットしたこともある。三瓶由布子が男の声で歌唱している。多少の無理は織り込み済みである。むしろこの男の子声を維持しながら歌唱するのは、大変だったろう。いつかくる小夜子との別れの予感が、この歌を切ないものにする。

 3曲目の「夜明けのスキャット」は、お姉さんの安田祥子さんと童謡を歌って活動をしていらっしゃる、由紀さおりさんの歌が原曲だ。冬場のキンと底冷えのする朝焼けの空の下でこの曲を聴くと、由紀さおりさんの美しく澄んだ歌声が、心にしみいってくる名曲だ。これをカヤ役の名塚佳織さんが歌う。名塚さんがもともと幼めの少女の声を得意とする声優さんであるから、大人の女性による歌唱というわけには行かなかったが、ピンと張り詰めた空気感が醸し出されており、聴き応え十分の1曲に仕上がっている。

 5曲目の「どうにもとまらない」は、マスター役の生天目仁美さんが、もうノリノリで歌っている。まるで録音ブースで踊っている彼女が見えるかのようだ。しかもうまい。原曲の山本リンダさんの歌唱に全く引けをとらないねっちこい歌唱が、この曲を正当に平成の世に復刻させている。ぜひ普段からカラオケでも歌っていただきたい。

 8曲目の「喝采」は、ちあきなおみさんの名曲中の名曲だ。そもそもちあきなおみさんの声は低い。この歌を歌っている堀江由衣さんの、素の音程を知っているので、まさかとは思ったが、実に彼女らしくかわいらしい楽曲として仕上げていた。劇中、加奈子の声を、低く演じていたので、この声で来るかと予想していたのだが、あっけなく裏切られた。すこしあっけらかんと歌われて、多少残念な気がする。あの堀江由衣さんが、昭和歌謡どストライクな曲を歌うと、こうなるのである、ということがわかっただけでも儲けもんだと思いねえ。

 圧巻は10曲目の「サウスポー」だ。ピンクレディーの名曲で、モチーフは現在は監督として活躍している王貞治である。しかしこのピンクレディーの楽曲というのはふしぎな楽曲である。このピンクレディーの大ブームの洗礼をあびたものにしかわからない、時代の共通言語としてのパワーに満ちあふれている。かつて作詞家の阿久悠氏がお亡くなりになった時、NHKにて特番が放送されていた。これに出演していたあのデーモン木暮閣下は、これらピンクレディー曲は、どのジャンルにも属さない、「ピンクレディー」という1つのジャンルだったと評していた。まさにその通りだと思う。
 そのパワーもそのままに、白石涼子さん&名塚佳織さんのコンビによる歌唱は、見事なほどの再現率でこの曲をものにしている。目を閉じれば、二人があのピンクレディーのダンスを踊っているのが想像できるだろう。そしてそのダンスが、まぶたの裏で再現できるあなたは、間違いなくアラフォーである。

 さて、ざーっとアルバムの楽曲をレビューしてみたが、いかがだったろうか? 興味のない人々もいただろう。よく見ると阿久悠氏作詞の楽曲が、以外に多いことに気づく。「昭和歌謡」を舞台に、阿久悠氏が活躍されたかが、わかろうというものだ。
 それはさておき、こういった曲たちが、ノスタルジックな雰囲気を醸し出していることはよくわかる。だがしかし、現在の楽曲群と比べても、いささかの見劣りもないことにも気づかされる。新しい編曲を得て、新しい舞台で、新しい歌手を得ることで、埋もれていた楽曲が、再び日の目を見ることができるのは、うれしい限りだ。
 現実に目を向ければ、こうした昭和歌謡が、ふたたびリスペクトされ、あらたな歌手を得て、リバイバルヒットとなることも、近年ではよくあることだ。エグザイルが「銀河鉄道999」を歌ったときの驚きと爽快感は、近年の日本のポップシーンで気持ちがいいと感じることができた希有な例である。
 また声優さんによる歌唱もまた、堂に入っている。ふだん歌手活動をされていない人々でも、キャラクターソングという舞台なら、遠慮なしに踏み込んでくれる。こういう舞台があればこそ、昭和歌謡も輝きを増すのではないか、という可能性も見せてくれる。作品としての「夏のあらし」は別としても、こうした副産物が生まれる土壌となったことは、よいことだ。せっかく第2期も決まった「夏のあらし」であるのだから、このアルバムの第2弾も期待して良いのではなかろうか。
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テーマ : 映像・アニメーション
ジャンル : 学問・文化・芸術

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